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第9話

「ふぅん?絶世の美少女だと言うから来てみれば。大したことないじゃないか。」


大量の取り巻きを連れて教室に来た上に、わざわざ桃花ちゃんを呼びつけたかと思えば、桃花ちゃんの顎を指で掴み上向けて鑑賞した上での一条先輩の発言だ。


「失礼じゃない!誰よ、あなた!」


一条先輩の失礼な態度に桃花ちゃんが噛みつく。


「お前…俺様を知らないのか?」


一条先輩が呆気にとられて聞く。


「知らないわよ!」


一条先輩は茫然。まさか自分の学校の生徒会長、しかも美形で金持ちだと有名な自分を知らないと断言されるとは夢にも思っていなかったのだろう。一条先輩は有名人であるし、自分がこの学校で有名であるという自負もある。一条先輩の取り巻きだけではなく教室全体がざわめいている。取り巻きの風当たりは強い。


「一条様を知らないだなんてなんて無知な生徒かしら…」

「一条様にお声をかけていただく資格もないわ。」


ノートの通りなら、桃花ちゃんの『お前なんか知らない』発言は当然嘘だ。桃花ちゃんは一条先輩の事をよく知っている。


「俺様は一条誠この光ヶ崎学園の生徒会長にして、一条コーポレーションの跡継ぎだ。」

「その一条先輩が何の用ですか?」


桃花ちゃんはつっけんどんな態度をとる。要するに気を引くための駆け引きだろうと思う。一条先輩は自分に張り合えるほど気が強く、きらきらと輝く女性に魅力を感じるから。


「美少女だというのなら俺様のファンクラブに入る資格をやろうと思っただけだ。」


一条先輩のファンクラブに入るには一定以上の容姿の審査に受からなくてはならないという他人に喧嘩を売りまくっている仕様だ。磨けばある程度光るだろうが、容姿なんて元地があるだろうに。大体審査してるのは誰だってーの。


「結構です。お引き取りください。」

「気が強いところは気に入ったぜ?」


一条先輩は桃花ちゃんの髪を一房とって唇を落とした。取り巻きの面々から悲鳴が上がる。桃花ちゃんが赤くなって一条先輩を振り払う。


「何するんですか!」

「ただのサービスだ。喜べ。」


一条先輩はにやっと笑う。


「そんな上から目線だと友達できませんよ」


桃花ちゃんは辛辣だ。一条先輩の顔が一瞬能面のようになる。一条先輩は高貴な家柄、優れた容姿と才能に恵まれ、華やかな取り巻きに囲まれる一方で対等に付き合える友達と言うものが存在しない。孤独な王子様と言うわけだ。一条先輩にとって『友達』というキーワードはかなり重要なものなのだ。


「一条様には私達がいます!」

「一条様に釣り合う方など元から居ないのです。」


取り巻きたちがいっそう一条先輩を『友達』から遠ざけている。一条先輩も薄々そのことには気づいているが、無条件に自分を肯定してくれる取り巻きに依存しきっているのだ。


「その通り。俺様には友人など不要なのだ。お前も俺のファンクラブに入りたければ言え。便宜を図ってやらない事も無いぞ。」


一条先輩は言い終えて背を向けて去って行った。取り巻きたちもぞろぞろ後に続く。

教室が平穏を取り戻してから長谷川さんが桃花ちゃんに近付く。


「桃花、生徒会長の事知らなかったの?」

「うん。有名?」

「有名よ。学校きってのお金持ちで美形で成績もよくて運動神経抜群で、まさに非の打ちどころもないって感じね。桃花が知らなかったなんて、あたし迂闊だったわ。これからはもっと情報流してあげるからね!でも生徒会と言えば桃花のお姉さんも生徒会だったわよね?あんまりそういう話ししない?」


桃花ちゃんはぎくりとしたように見えた。きっと家では生徒会の話も聞いているんだろう。


「うん。あんまりしないかな。」


その白々しさに長谷川さんは気付かなったようだ。


「生徒会長格好良いよね~。まさに俺様系王子様って感じ」


ミーハーな里穂子ちゃんはうっとりとしている。性格を知っている者としては素直に賛同できない。私としては一条先輩はあまりお近づきになりたくないタイプの性格だ。そりゃあ『乙女ゲーム』を主題とした作品を書く予定だったのだもの。色んな種類の男を集めるよ?自分の好みでないキャラクターもキャラ立ちしてればいいかなって…需要があるのかどうか今ひとつわかんないけど。

里穂子ちゃんはうっとりしているみたいだけど。


「ファンクラブ入りたくなった?」

「まさか。大体私程度の容姿じゃ審査受からないよ。そもそも関係無い所で見てるからいいんだよ。観賞物は。」


全く忌々しい仕組みである。一条先輩のファンクラブ会員は容姿、成績に優れている事が条件なので、ファンクラブ会員だと言うだけで一種の特権階級にある。ファンクラブ会員は学校でとてもモテる。しかし一条先輩に傾倒しているため彼氏は作らない者がほとんどだ。不毛…


「朝比奈君。八木沢先生がクラスに配るプリントを取りに来るように言っていたから取ってきたよ。」


二宗君がかなりの高さになるプリントを教壇の上に乗せた。


「ありがとう。仕事任せちゃってゴメンね?それじゃあ配っちゃおうか。」


二人でさくさくプリントを配った。二宗君とは委員会の仕事を通じて、かなりよく話すようになっている。このポジション本当は桃花ちゃんのじゃない?と未だに思う。


「それから、ゴールデンウィーク明けの球技大会の種目、人数調整を行ってもらいたいようだよ。」

「分かった。」


球技大会はサッカー、バレー、バスケに分かれて行う。野球は無いのだ。それぞれ校庭、体育館、第二体育館に会場も分かれている。里穂子ちゃんはバスケが良いと言っていたが、私はどうしようかな?サッカーという選択肢は無い。手でボールを扱うのもいっぱいいっぱいなのに足でボールを扱える理由がない。

LHRで人数調整を行ったが、結果バレーに配属された。嬉しくも悲しくもない。せいぜい怪我はしないように心に決めた。因みに桃花ちゃんはサッカーだった。黒歴史ノートには『ちょこまか動くので運動は案外得意』と書いてある。きっとサッカーも得意なんだろう。羨ましいこってす。


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