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第74話

2月のとある日、倉持君にこっそり声をかけられた。なんでも休日一緒に出かけてほしいそうな。「なんで?」って聞いたらちょっと照れた様子で「伊藤にホワイトデーのお返ししたいんだが、プレゼントは女子の意見が聞きたい」とのこと。倉持君は元々プレゼントセンスは悪くない。そのまま選んでも良さそうなものだが、こと今回のホワイトデーには慎重になってるようだ。これはひょっとするとひょっとするかもしれない。私は二つ返事で了承した。

かくして日曜日、私の倉持君は出かける事となった。日曜日、待ち合わせ場所に行くと倉持君はまだ来ていなかった。ナンパを追い払いつつしばらく待つ。待った後倉持君が来た。約束時間ちょうどぴったりくらいの時間である。


「悪い。待たせたか?」

「ううん。時間ぴったりだよ。」


まずは雑貨屋による。可愛いめの雑貨を見ていくがピンと来るものが無い。


「朝比奈、伊藤って何貰ったら喜ぶかな?」


おお、この質問は大いに脈ありだと思うよ、里穂子ちゃん!


「そうだなあ、可愛い物、大切な人から貰うなら、できるだけ身につけて持てる物が良いかな?いつも肌身離さず大事にしたいって思うはずだから。」

「…俺は伊藤にとって大切な人だと思うか?」


自信なさげな倉持君の問い。


「とっても大切な人だと思うよ。」


自信を持て。それからいつも身につけてもらえる物とは何だという議論になり、ペンダントなどがあげられたが、私達は学生だ。日常で装飾品だと校則違反で没収されてしまう。腕時計が無難なところではないかと言う意見でまとまった。それからがまた一苦労。里穂子ちゃんの趣味と、里穂子ちゃんに似合う時計は別物だからだ。実際里穂子ちゃんに選ばせたら機能性重視の味もそっけもない地味な時計が出てくると思う。反対に里穂子ちゃんに似合う時計となると、ある程度アクセサリー性を確保したお洒落な時計となる。どちらを重視するか。議論を繰り返した結果、アクセサリー性を確保したお洒落な時計となった。里穂子ちゃんには色んな「初めて!」の感覚を味わってもらいたいのだ。雑貨屋と時計店を見て回りいくつかの候補を絞りだす。この辺でお昼くらいに差し掛かったのでオムライスの専門店で昼食を取る。オムライスは好物だ。半熟卵とホワイトソースがうまあー。


「旨そうに食うな。」

「美味しいですから。」


美味しい繋がりで倉持君のバースデーケーキの希望を聞いた。果実が好きなんだそうだ。私と二宗君の誕生日は夏に近かったので果実を乗せたケーキは用意できなかった。倉持君の誕生日には是非果実を乗せたケーキを用意しよう。

食事を取って再び腕時計の選考にかかる。可愛く、見やすく、使いやすい時計。あーでもない、こーでもないと議論を戦わす。時間はかかったが里穂子ちゃんが喜ぶ様を想像すると全然苦痛ではない。

最終的にベルト部分は赤のレザー、文字盤にはアリスの時計ウサギが模られた模様が入った時計が選ばれた。アナログだが、ちゃんと文字盤も見やすい物である。里穂子ちゃん喜ぶかなあ。



翌日学校に行くと、何故か里穂子ちゃんの元気がない。どうしたんだろう?体調不良かな?午前中もチラチラ様子を見てるが浮かない顔をしている。もしかしてなんか悩みでもある?私は昼休み里穂子ちゃんを特別教室に誘って一緒に昼ご飯を摂った。


「ねえ、里穂子ちゃん。今日なんか元気が無いよ。どうかした?」


直球で尋ねてみる。


「…ちょっとお腹が痛くて…」


いくら私でもこれは嘘だと分かる。お腹が痛いという割にはしっかりと昼食を取っているのだから。


「…なんか悩みがあるんじゃないの?」

「……。」


里穂子ちゃんはだんまりだ。


「私には言えない事?」


ちょっと迷った様子を見せる。それから難しい顔をしばらく続けていたと思ったら、急に意を決して発言した。


「結衣ちゃんの好きな人って倉持君?」


は?

私は質問の意図がわからなかった。


「今まで私の味方をしてくれてたのは知ってる。だけど遠慮なんかしなくて良いんだよ?倉持君格好良いし。結衣ちゃんなら家事は万能、勉強もできるし、凄くカワイイ。私も納得して身を引けるってもんだよ。あ、でも浮気はダメだよ?結衣ちゃんモテるし、他の人にも思わせぶりな態度とることあるから。」


里穂子ちゃんは笑った。だが明らかに無理して笑ってるのが丸わかりだ。

理解不能だった。里穂子ちゃんの頭の中では私の好きな人は倉持君という風になってるらしい。なんでだ。わけわからん。


「ええーと。まず、私は倉持君を友達以上に見てない。それは信じて。それからなんでそんな不思議な質問に至ったんでしょう?」

「隠さなくっても良いんだよ。私見ちゃったんだ。昨日結衣ちゃんと倉持君がデートしてるとこ。凄く楽しそうだった。きっと二人で上手くやっていけると思う。」


倉持君と出かけたところが見られたらしい。そりゃ楽しそうだろうよ。里穂子ちゃんの幸せを思って会話してたんだから。これは誤解されてるな。誤解は解いた方が良い。しかしプレゼントってサプライズじゃないのか?これ私が言っていいもの?それに倉持くんが他人の意見を参考にしないとプレゼントも選べない男だと里穂子ちゃんに認識されてしまう。考え込んだ私の沈黙をどう取ったのか里穂子ちゃんが悲しげな顔をする。


「私は二人を祝福するよ。お幸せにね?」


里穂子ちゃんは涙目だ。ダメだ。里穂子ちゃんにこんな顔をさせてはいけない。倉持君、君の名誉を傷つけるが私は真実を話すよ。倉持くんが里穂子ちゃんにホワイトデーの贈り物を贈りたいが、何を贈ればいいか迷っていて相談に乗るために日曜出かけた事を話す。プレゼントの詳細までは話さない。その辺は当日のお楽しみってことで。里穂子ちゃんはみるみる真っ赤になった。


「わ、私の勘違い?」

「そうだよ。倉持くん、里穂子ちゃんに喜んでもらおうと凄い真剣だったんだから。」

「あ、ありがとう。誤解してごめんね?」

「そうだよ。私が倉持君を好きな訳ないじゃない。私には…」


私には…?何を言おうとしたんだろう。思いついた言葉は口に乗せる前に霧散して思い出せもしない。


「結衣ちゃん?」

「あ、ああ、ゴメン。とにかく勘違いだからね。ホワイトデー楽しみにしててね。」


私は親指を立てて笑った。


倉持君と結衣ちゃんのフラグ?立たないってば!

倉持君は里穂子ちゃんに悩みぬいて選んだお返しを。にやにやですね。

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