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第7話

『もう知ってるかな?桃姉は陸上部に入ったみたい』と雪夜君からメールが来た。

攻略対象で部活に入っている者は少ないが、同じ部活動に在籍すると徐々に好感度が上がっていくのだ。これは中々侮れない上がり幅だ。初日のイベントを見て四月朔日君の居る園芸部に入るんじゃないかと思っていたが、陸上部か。

『陸上部は顧問が八木沢先生だよ。桃花ちゃんって陸上に興味あるの?』と返信する。

八木沢先生狙いなのか、純粋に陸上に興味があるのか分からなくて聞いたのだ。

『陸上に興味があるとは聞いたことが無いよ。多分八木沢先生狙い。本命かどうかはわからないけど。』と返ってきた。

雪夜君は桃花ちゃんの複数攻略の意思を懸念しているようだ。

八木沢先生は雪夜君に続いてイベントの少ない人物である。特に夏合宿にイベントが密集している。委員長にならなかった分、部活動を逃す手は無いということか。

『引き続き動向を探ってもらえるとありがたいです』お尻にお辞儀マークの絵文字を入れて送った。

『了解』と短い返信があった。


翌日の放課後、一応見るだけ見とくか、と思って陸上部の見学に来た。桃花ちゃんが八木沢先生の指導の元、走高跳びに挑戦しているのが見える。結構身軽だ。簡単そうにひょいっと飛んでいる。


「何見てるの?」


気が付くと横に里穂子ちゃんが来ていた。


「陸上部の練習。」

「ああ。八木沢先生格好良いもんね?」


なにやら別の方向性で納得している。私は八木沢教師には興味は無いぞ。確かに格好良い事は認めるけど。禁断愛は物語の中だけでお願いいたします。

しかし見てると結構接触が多いな。肩に手を置いたり、捻挫なんかを調べてるんだと思うけど足首を触ったり、結構イチャイチャするんじゃないか、これは。


「なんだ、朝比奈と伊藤も見ていたのか?良ければ参加するか?」


八木沢教師がにこやかに近付いてきた。

うひゃー来るなぁぁー!陸上競技という魔物を背負ってくるんじゃないー!!

断固として参加しないぞ。運動は敵!悪魔に違いない!安息という名の天使よ、降臨されたし!


「先生。私達制服ですよ。」


里穂子ちゃんは困ったように笑っている。体操着だったら参加したのか?!

私は信じられないようなものを見るような目で里穂子ちゃんを見る。


「伊藤は短距離磨けば結構いい選手になると思うんだがなあ。陸上興味無いか?」

「残念ですが…」


里穂子ちゃんは控えめに首を振る。


「そうか。朝比奈はもっと肉つけた方が良いぞ?」


八木沢教師が私の手首を掴み取る。かなり手が大きい。私の手首なんてすっぽり包まれてしまった。

こ、これはセクハラです!訴えて勝つぞ。

手首に伝わる体温に若干動揺したが、乱暴にならない程度に払いのける。


「私は生まれたてのバンビちゃんみたいな可愛さを追求するんでいいんです。」

「それじゃあ足がプルプルじゃないか」


八木沢教師はちょっと笑った。この笑顔が桃花ちゃんの前では優しく慈しむような笑顔になる日が来るのか。見てみたいような気もするが、残念にも感じる。私は八木沢教師に『平等な教師』の仮面をつけてもらいたいようだ。教師だからって全員に平等な訳じゃないって身を持って知ってるのにね。私は前世で教員をしていた。平等に付き合おうとは思ったが、当然人間だからそりが合ったり合わなかったりもあった。八木沢教師もそれくらいの差異はあるだろうと思う。私は和やかな練習風景を見てそっと溜息をついた。


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