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第60話

もうすぐ中間考査である。

私はコツコツ自宅で勉強して、時々息抜きにお菓子作ったりしてる。この『時々息抜きにお菓子作る』って言うのは他のみんなの言うところの『試験間際になると無性に部屋を掃除したくなる』とかそういう類の衝動なんだと思う。

今日は息抜きにお菓子作りではなく、雪夜君とミルククラウンに来ている。

オレンジペコに口をつけながら言う。


「もうすぐ試験だね。雪夜君は勉強順調?」

「小学生に中間考査はないよ。ちょいちょいテストあるけど。今は全国統一小学生テストとかもあるよね。オレは受けた事無いけど。でもまあ、順調と言えば順調だね。悪い点数取った事ないし」


なるほど。小学生には中間考査はなかったか。気が付くといつも同年代と喋ってる感覚で話してるけど、こういう時にギャップを感じる。


「良い点数を取る秘訣とかあるの?」

「授業ちゃんと聞いてれば出来るよ。」

「みんなそれができないから苦労してるんだけど…」


出来たら苦労しないです。ハイ。私算数の時点で躓いてたもの。速さ距離時間とか求めるのしんどかった。図形は結構好きだったけど。そう言えば英語も必修化されたようだな。


「そうなの?不思議だね?結衣お姉ちゃんは?」


一応今回も学年順位一桁に乗るべく勉強はしている。


「ぼちぼちかな。私は前世の記憶のお復習(さらい)なわけだけど、その辺桃花ちゃんはどうなってるんだろ?やっぱり前世のお復習(さらい)?」


前世の記憶があるって高校生くらいまではまずまず有利だよ。大学は選ぶ学部が違うと全く学ぶものが違うから何とも言えないけど。そのへん桃花ちゃんはどうなってるんだろう?前世の記憶があるってことは知識もあるのかな?


「そこが不思議なんだよね。桃姉は『自分は前世の記憶がある』と思ってるけど、ゲームイベント以外の記憶ってどうなってるんだろう?」

「わかんないな。」


私に聞かれても知りようがない。雪夜君は困った私の顔を見ながら、ブレンドを美味しそうに飲む。


「一応考えてみた事はあるんだ。仮説としては4つくらい思い付いてる。

①前世の記憶はゲーム部分しかない 。

②桃姉自身の前世の記憶がある。

③架空の記憶がある。

④他人の記憶が移植されてる 。

辺りだと思うんだけど。もしくは全くオレの予想の斜め上をいかれてるとかだと分からないけど。」

「架空の記憶は難しいんじゃない?」


人一人の一生って大変だぞ。幼少期の些細な思い出から癖や家族まで全部架空の記憶があるって、どんな情報量になるか。


「オレもそう思う。矛盾なく、きちんと理にかなった人間一人分の記憶なんてさらっと創造されてるとは思えない。一番簡素なのは①だけど、簡素すぎて桃姉が自分自身に疑問を持ちそうだ。もちろん可能性としては十分にあり得るとは思うけど。問題は②か④だけど、どっちがいいかと言えば断然②がいい。」


それだと桃花ちゃん自身の前世の記憶に『ゲームをやった事がある』という偽の情報が足される複合記憶になるけど。まあ④でも複合記憶には違いないが。


「どうして?」


まあ、記憶があるなら桃花ちゃん自身のものであるのが最良だろうけど、それを雪夜君がわざわざ希望する理由がわからない。


「④だとしたら、その『他人』に心当たりがあるから。」

「?誰?」

「確証が持てるまで言えないよ。」


雪夜君はこういう所がある。あんまり不確証な事は言わない。特に他人に不安や不信を持たせることは。確信が持てる事は強く主張するけど。自分の言葉にちゃんと責任を持ってるんだと思う。私も深くは追求しない。雪夜君が言わないと決めた事なら絶対言わないだろうし、そんなことで険悪な雰囲気を作るのも嫌だ。この話はお流れだな。

ラフランスがたっぷり入ったケーキを食べる。

雪夜君がもぐもぐしてる私の頬を指で撫でた。


「?」

「良かった。もう殴られた痕消えたね。」


殴られた痕を確認してたのか。


「うん。元から一応手加減されてたみたい。意外とあっさり消えたよ。」


それでも完治するのに一週間近くかかったが。雪夜君は心配そうだ。


「首痛いのは大丈夫?」

「すっかり良くなった。」


それでやっと笑顔を見せてくれた。


「良かった。…オレもっとしっかりしたいし、強くなりたいよ。」


十分しっかりしてると思うけどな。強くって言うけど、既に結構強いんですけど。何を目指してるの?スーパーな感じの野菜の星の戦闘民族とか?


「結衣お姉ちゃんを守れるくらいには。」


ぐっと喉にケーキが詰まった。

なななな、何を……私より君のお姉ちゃんを守ってあげなさい。熱を持った頬を扇ぎながらそう言おうとしたけど実際口から出てきた言葉は違っていた。


「が、がんばってね…」

「頑張るよ。」



それからもコツコツ勉強して中間考査では学年12位についた。この辺が私の平均ラインなんだろうか。目指せ一桁。因みに里穂子ちゃんは238名中122位だそうだ。恥ずかしそうにこっそり教えてくれた。私と同じく理数系がだめらしい。国語と歴史で点数を稼いでるんだそうだ。桃花ちゃんってどれくらいなんだろう?流石にそこまで雪夜君に聞く気にはならないけど。義弟に成績ばらしてるとは思えないし。


目指せスーパーサイヤ人。


雪夜君は守ってあげたくなるタイプに弱いかもしれません。笑。


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