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第44話

調理実習である。今回のお題は『昼食』。我が班のメニューは手作りミートソースのスパゲティ、シーザーサラダ、白身魚のフリッター、ミルクプリンである。シーザーサラダのクルトンもドレッシングも手作りの予定だ。今回のメンバーは私、里穂子ちゃん、倉持くん、林田君、二宗君である。二宗君は例の如く桃花ちゃんの班に誘われていたが断ったようだ。曰く「朝比奈君と同じ班の方が美味しい物を食べられそうだから」だそうだ。色気より食い気か。期待しても大したもん作んないよ。

ミルクプリンのレシピを倉持くんに託して、私達はミートソースの具材(玉ねぎ、人参、セロリ、マッシュルーム)のみじん切りを始める。フードプロセッサーでがーっと刻んでも良いが学校にはフードプロセッサーが無かったので手で刻んだ。5人分だぞ?手が疲れたわ!里穂子ちゃんにみじん切りした材料をオリーブ油で炒めてもらいながら、私はガーリック味のクルトンを手作りする。林田君にはサラダ、二宗君にはフリッターの衣作りをやってもらう。クルトンを作り終え、皿にあけると、一回フライパンを洗ってからシーザーサラダ用のベーコンを炒める。カリカリが良い。それもできると皿に移してたっぷりめの油で茄子を焼く。ミートソースと茄子って美味しいよね。


「結衣ちゃぁん、大体炒められたと思う。」

「オーケー、じゃあ私が引き継いでソース作るよ。里穂子ちゃんは白身魚を一口大にして塩胡椒で下味つけてもらえる?」


炒めていた具材を一度取りだし、同じ鍋でナツメグとひき肉を引くように炒める。そして具を戻したら赤ワインでぎゅっと旨みを閉じ込める。因みに今回のミートソースはナツメグ、オレガノ、バジル、ローリエなどを入れたハーブたっぷりの物になる予定。


「朝比奈君、衣を作り終えたが。」

「油熱してあるでしょう。里穂子ちゃんが下味つけた白身魚に衣をつけて揚げてもらえる?油はねないように気をつけてね?」

「了解した。」


水、固形スープの素を混ぜてオレガノ、バジル、ローレル、を投入して灰汁を取りながら煮込む。灰汁が少なくなったらトマトの水煮缶投入。横目で見ると二宗君が慎重な手つきでフリッターを揚げている。大丈夫そうだ。私はソースと同時進行で温泉卵を作る。


「朝比奈、俺は?」


林田君がレタスなどを分解し終えて、上にベーコン、クルトンを乗せた様子。


「レシピどおりにオーロラソース調合して。」

「ラジャりました。」


若干うっかり者な林田君には油とかはなるべく扱わせない。


「朝比奈、ミルクプリンは今冷やしてる。俺は?」


倉持くんがミルクプリンの後片付けを終えたようだ。


「味見しながらレシピどおりにドレッシング調合して。」

「分かった。」


ドレッシングの味は完璧に倉持くんの味覚任せになるが、そつない彼の事だから上手くやってくれるだろう。

私が煮込んでいるうちにオーロラソース、ドレッシング、フリッターが完成した。


「朝比奈、大丈夫だと思うが、一応味見してくれ。」


倉持くんがドレッシングを少量スプーンに取った物を差し出す。ぱくっとそれをくわえる。


「あ、あぁぁぁぁああ―――!!!」


なに!?なに!?なに!?

里穂子ちゃんの絶叫に身構える。


「どうしたの、里穂子ちゃん?」

「今、あーん、した。」


あれですか?新婚さんがやるみたいな「はい、あーん?」?里穂子ちゃんってば、乙女脳だなあ。私よく雪夜君とかとしてるよ。雪夜君がそう言うのよくやりたがるんだよね。里穂子ちゃんがショックなのは分かるが、何故か二宗君も複雑そうな顔をした。どうした?


「里穂子ちゃんもやってもらえば?」

「え?いや、それはちょっと…」


もじもじして「あーん」はやってもらわないようだ。

やってもらえばいいのに。絶好の機会だよ?


「あ、倉持くん、味は大丈夫。完璧だよ。」


スプーンを持ったままフリーズしている倉持くんに話しかける。流石にそつなくこなすね。デキる男だよ。君は。

ミートソースはちょっと時間かかる。時間配分間違ったかな?フリッターはぎりぎりで揚げても良かったかも。じっくり煮込んだところでローレルを取り除き、塩、胡椒で味を調える。隠し味はカラメルだ。


「じゃあ、里穂子ちゃん、パスタ茹でてくれる?」

「うん。」


サラダに卵を落として、パルメザンチーズをかけ、ドレッシングをかける。うん、いい感じ。里穂子ちゃんも四苦八苦しながらパスタトングでパスタを分けているようだ。パスタの上に茄子とミートソースを。完成だな。

規定通り一部を家庭科教師に献上して、試食だ。


「「「「「いただきます」」」」」


ぱくり。うむ。うまい。

上品でいて複雑な旨味のある味わい。


「結衣ちゃぁぁぁんん!めっちゃ美味しい!うちのと全然違う。何コレ!感動の味がするよ!!」

「俺、家では市販のミートソースしか食ったことない。」

「俺も。」

「とても美味しい。今日の調理実習、やはりこの班に混ぜてもらえて良かった。」


ええ?そんなにか?フリッターもレモン汁をかけてオーロラソースで頂く。ちょっと冷めてるけどサクッとしていて美味しい。シーザーサラダはダイニングの味ですね。瑞々しい野菜にサクサクのクルトン。とろりとした温泉卵が美味しい。倉持君の調合したドレッシングもいいお味。


「クルトンにまで味が付いてる。おいしーい!」


手間かければかけるほど美味しいよね。

だから料理って好き。


「旨いなー。朝比奈ー嫁に来てくれー」


林田君が騒ぐ。


「……確か朝比奈君との婚姻は伊藤君と打倒しなくては成し得ないのだったな。」


ぽつり、と二宗君が漏らす。

全員が里穂子ちゃんを見る。


「や、やだなあ。冗談だよ。」


里穂子ちゃんがひきつった笑みを見せる。


「ていうか私の意見を尊重しようよ。」

「それもそうだな。」


私は誰とも結婚する気なんてないし。料理作るのは好きだけど。

わいわいとパスタ、フリッター、サラダを完食してミルクプリンを口に運ぶ。


「朝比奈、どうかな?」


ミルクプリン制作を任された倉持くんが感想を聞いてくる。牛乳のまろやかさとバニラエッセンスが美味しい。


「美味しいよ。完璧。倉持くんお菓子作りも向いてるかもね。ドレッシングも美味しかったけど。」


感想を言うとほっとしたようだ。というか私が総監督みたいなことになってるな。なんでだ。

ぱち。

桃花ちゃんと目が合いました。なんでこっち見てるのー!?あ、二宗君がいるからか。心臓に悪いなー、もう。

桃花ちゃんの班のメニューはヤキソバと豚シャブサラダのようだ。デザートは梨かあ。良い季節だよな。しかしかなり楽そうなもん作ったな。やっぱり料理は苦手なんだな。因みに班員は桃花ちゃん、長谷川さん、三国君、田中君だ。島津さんは今回別の友達の所に行ったらしい。田中君がいつものオーバーリアクションで桃花ちゃんの料理を褒め称えていた。オーバーリアクションなのはうちの班員も一緒か。


二宗君の反応が変わってきましたね。


倉持君とのフラグ?立ちませんw

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