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第38話

放課後、人気のない廊下を歩いてると後ろから声をかけられた。


「結衣チャン、手帳落としたよ。」


その声は五十嵐先輩。振り返るとチェシャ猫のように笑う五十嵐先輩が私の手帳を持って立っていた。


「拾ってくださってありがとうございます。」


私は手を出した。が、五十嵐先輩は手帳を渡してくれなかった。それどころかその場でぱらぱらめくり始めた。ちょっ!その手帳にはあの写真が挟んであるから…!私は手帳を奪い取ろうとするが背の高い五十嵐先輩は面白がって手帳を返してくれない。手帳からぱらりと2枚の写真が落ちた。1枚は私と二宗君が二人三脚している写真。もう1枚は…


「あっれー。俺の写真?結衣チャン買ってくれたんだ~?」


長ラン&長鉢巻き&白手袋姿の五十嵐先輩の写真。

私は慌てて写真を拾った。なんて事だ…本人に見られるとか…

私は大いに凹む。恥ずかしいし。写真が欲しかったって本人に知られちゃったし。


「買ってくれたお礼にサービスしちゃおうか?」


またほっぺちゅーとかされるんじゃあるまいな。私は慌てて頬をガードした。


「結構です!そういうふざけてるところキライです。」

「じゃあ俺の本気見てみたい訳?」


ぐいっと廊下の壁に押しつけられる。近付けられる顔が真顔だ。キスされそうなほど近くに顔がある。

怖い!

私はがくがく震えてギュッと目を閉じた。


「…結衣チャン、こういう時に目を閉じるとそのままチューされちゃうよ?」


私は慌てて目を開けた。ぐいぐい五十嵐先輩を押し返す。

今度こそビンタだ!今回はなんの負い目もないもんね。私は手を振りかぶってフルスイングしたが、またもや途中で五十嵐先輩に手を掴まれ、止められてしまう。力の差は歴然。


「勝気なトコもかわいーね?」


掴まれた手にちゅっとキスされる。うっわ!キス魔か!!


「そういうことは止めてください!」

「俺の本気、見てみたいんじゃなかったの?」


本気になんてならないくせに!悔しい悔しい!


「オッホン。えー…何をやってるんだ?五十嵐。」


目を向けると困った顔の八木沢先生が私達を見ていた。


「八木沢先生!助けて!襲われる!」


今すぐ八木沢先生の後ろに逃げ込みたいところだけど、手を掴まれたままなので逃げられない。


「アハハ。たまにしか襲わなーいよ。」

「たまにでも襲うな、五十嵐。朝比奈を放してやれ。」

「チェー。ナイト登場ってヤツ?」


五十嵐先輩が手を放してくれた。私は慌てて八木沢先生の後ろに逃げ込む。五十嵐先輩みたいな危険人物の傍には寄りたくない。


「お前も相手が嫌がる事は止める事を覚えろよ?」


八木沢先生は五十嵐先輩に注意している。もっと言ってやって!

八木沢先生は五十嵐先輩を程々に注意して解放した。私はまだ言い足りない気分でちょっともやっとする。


「朝比奈もああいう遊び慣れた手合いには気をつけろよ。」

「はぁい。」

「そうだ、学級委員長、荷物運び手伝ってくれ。」

「ええー!」


雑用頼まれたよ。資料を八木沢先生の研究室に運んで欲しいんだってさ。重い資料をえっちらおっちら運ぶ。全部運び終えるのに2往復しちゃったよ。研究室では八木沢先生がコーヒーを淹れてくれた。


「頑張った朝比奈に御褒美だ。」


こういうご褒美なら歓迎なんだけどな。五十嵐先輩のほっぺちゅーを思い出して顔を赤くしてしまう。


「朝比奈、顔が赤いが熱でもあるのか?」

「ないです。」


ちょっと恥ずかしい事を思い出してただけです。


「だけど頬が赤い…」


八木沢先生は大きな手を私のおでこにあてた。八木沢先生の手は節張ってて、私の手とは全然違う。大人の男の人の手だ。私はますます顔を赤らめてしまう。


「やっぱりちょっと熱いな。」

「熱じゃありません…」


もっと自分の容姿や身体的特徴を考慮して行動してくれ。若いイケメン教師なんだから。やっぱり接触されると恥ずかしかったりするんだよ?


「だが…」

「ないです。」

「……もしかして照れてるのか?」


鈍い!今頃気づいたのか!


「や、すまん…」


八木沢先生の言葉は尻すぼみだ。それから無難にクラスの事を話題に出した。コーヒーを飲みながら桃花ちゃんの事に探りを入れる。「七瀬はちょっとドジだが良い生徒だ。部活も頑張っている。」と言っていた。夏合宿の食事は美味しかったらしい。桃花ちゃん、ちゃんと好感度あげてるのね。「でも朝比奈のカレーの方が旨かった」とも言っていた。八木沢先生の胃袋掴んでもなにも嬉しくないぞ。

今後の学級委員長の仕事についてもちょっと話されたりしたら結構帰りが遅くなってしまった。


「結構遅くなったな。親御さんが心配するだろう。朝比奈の家まで俺の車で送ろう。」


ええー。独身の若い男性教諭の車で送られる方が心配すると思うけどな。でもあの黒いBMWに乗ってみたい気もする。しとしと雨も降ってきたので送ってもらうことにした。

中々乗り心地は良かった。

よく考えたら手帳返してもらってないことに気付いて、後日五十嵐先輩とひと勝負した。あの人ちょっと苦手。

五十嵐先輩セクハラですよ!

八木沢先生は結衣ちゃんにがっつり胃袋掴まれてますが、桃花ちゃんへの好感度も着実に蓄積中。

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