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第29話

待ちに待ったプール当日。快晴。絶好のプール日和。行ったのはちょっと大きめのレジャープールで何種類ものプール、ウォータースライダーがある。加えて温浴スパ施設まである。ただし料金はちょっとお高め。奮発しました。


「結衣ちゃんやっぱりセクシー系じゃーん!」


里穂子ちゃんが私の水着姿を見ての感想である。確かに露出は多い。


「違うもん!キュート&セクシー系だもん!」


言い訳を試みる。リボンやフリルのついたキュートな水着なのである。露出は多いけどセクシーだけにあらず!対照的に里穂子ちゃんは露出少なめの水着だ。きっちりお腹ガードのワンピース部分はワッフル地にノースリーブのカシュクールデザイン。Aラインで腿の上の方を覆っている部分はティアードフリル。微かに透けて見える中はピンクのペイズリー柄のビキニだ。正直私にはちょっと意外だった。入学当時地味ーズを地で行っていた通り里穂子ちゃんのファッションセンスはそんなに秀逸ではない。その割に水着はごくごくお洒落なものだった。


「里穂子ちゃんはなんか、お洒落だね。もっと地味な水着選んでくるかと思ってた。」


正直な感想を話す。


「実はお兄ちゃんの趣味なんだ。コレ。水着選びに行った日、お兄ちゃんに強制帰宅させられたじゃない?あれをみっちりねっとりしっかりおはようからおやすみまで陰気に呪詛ってたらお兄ちゃんがお詫びに水着買ってくれるって言ってきて。ついでだから一緒に選んだんだー。」

「へー。お兄ちゃんいい趣味してる。今まで一度も里穂子ちゃんのお兄ちゃん見たことないけど、格好いい?」

「いや、全然。現在三流体育大学に通ってる体格だけはマッチョなブサメンだよ。無論年間を通しての女日照り。よく合コンとか行ってるの見るけど大体意気消沈して戻ってくるもん。結衣ちゃんの彼氏には絶対推奨したくないな。」


里穂子ちゃんの評価はなかなか厳しい。里穂子ちゃんは面食いミーハー且つどちらかといえば知的な顔立ちの青年が好みのタイプなのでマッチョなお兄さんには風当たりが厳しいのだろう。


「結衣ちゃんももっと無理して可愛い系の水着選んでくるかと思ってたよ。初期の迷走ぶりが嘘みたいに似合う!」


うん。確かに買いに行った時は迷走してた。服ならそんなに迷わないんだけど、水着はちょっと選ぶの苦手。やっぱり露出と羞恥心との兼ね合いが判断力を鈍らせるんだと思う。露出するの恥かしいんだもん。


「実はあの後、六崎晴樹先輩と偶然出会って、水着選んでくれるって言うから選んでもらったんだ。」


キラッっと里穂子ちゃんの目が輝いた。


「晴樹先輩かー。結衣ちゃん意外とああいう可愛い系がタイプ?」

「や。全然。て言うかよからぬ勘違いしてないでしょーね?」

「してないしてない。結衣ちゃんがキュートな先輩とイチャイチャショッピングデートしてただけだよね?」

「ちっがーう!デートにあらず!大体イチャイチャしてない。晴樹先輩がうざいのは先天性!」

「ま、そういうことにしておこうか。」


里穂子ちゃんはにやにやしている。違うというのに!まあからかってるだけだろうから放置しても、問題ないか。私たちはビニールバック片手に空いてるパラソルを探す。それにしても人多いなー。里穂子ちゃんとはぐれないように気をつけなきゃ。まあ一応ビニールケースに入れて携帯持ってるから大丈夫だと思うけど。

……なんか道行く人にじろじろ見られてる気がする。なんかおかしいとこあるか!?恥ずかしい~。自意識過剰だよねこれ!?これだけ人が多ければ知り合いに合う事なんてないはずだ。それこそファンタジアランドで偶然知人に合うようなものだ。大丈夫!羞恥心を捨てて胸を張れ、私!



と、思っていた時期が私にもありました。

目の前にひと際大きい人だかりがある。私は見てしまった。その中心に桃花ちゃんと雪夜君が居る事を。知り合いにめっちゃ遭遇してるやん!


「ねえ、あれって?」


里穂子ちゃんも気づいたようだ。


「ハハッ、シラナイヨー、ナンダロウネー?」

「おーい、七瀬さぁん!」


っておおおぉぉい!何声かけちゃってるの!?ここは知らんぷりするのがベストアンサーでしょ!?大体雪夜君と一緒ってこれイベント中だよ!ノートに書いてあったもの。月絵先輩が居ない日、雪夜君の好感度が一定以上であること、桃花ちゃんと雪夜君が一緒に勉強してることを条件に、桃花ちゃんの親戚のおばさんがやってきて二人分のレジャープール入場券をくれるとこから始まるやつだ。ガチデートだよ!ラブラブしている真っ最中を妨害とかっ!マジ勘弁だよ里穂子ちゃぁ―――ん!!

私の嘆きもむなしく七瀬さんは戸惑ったようにこっちへやってきた。


「朝比奈さん、伊藤さん、二人もプール?」

「そうそう。七瀬さんも?そっちは弟さん?」


里穂子ちゃんが物珍しそうに雪夜君に顔を向ける。


「うん。そうなの。義弟おとうとの雪夜よ。ユキ、挨拶して。」


雪夜君は仏頂面だ。それがイベント回避に失敗して不機嫌なのか、デートを邪魔されて不機嫌なのかは分からない。


「…初めまして。七瀬雪夜です。」


その自己紹介に含まれるニュアンスを読み取ると、雪夜君と私は初対面ということになっているようだ。私は桃花ちゃんに雪夜君の事を話してないが、雪夜君は私の事を桃花ちゃんに話しているという可能性もあったのでひやっとした。


「伊藤里穂子です。お姉さんの七瀬さんとはクラスメートだよっ。」


にこっと里穂子ちゃんが雪夜君に微笑む。


「同じく、朝比奈結衣です。」

「里穂子お姉ちゃん、結衣お姉ちゃん。よろしくね。」


おお。何とも貴重な雪夜君の作り笑顔だ。


「七瀬さんはもうパラソル見つけた?」


里穂子ちゃんがまだ濡れていない桃花ちゃんの水着を目にして言った。

因みに桃花ちゃんはコットンレースに小花柄。肩紐とショーツのフリルより下の部分、胸元で蝶々結びにされてる紐部分は赤色をしているという非常に可愛らしい水着を着ていた。すごくよく似合って、滅茶苦茶可愛い。思わずメロメロになってしまうレベル。さっきの人だかりも桃花ちゃんの水着姿を眺めて足を止めた男性客の群れだった。隣にしっかり雪夜君がついていたのでナンパにまでは至っていなかったようだが。雪夜君の水着はグリーン地に極太黒のすごく目の大きいチェックのハーフパンツスタイルだ。


「うん。さっき空いてるとこ確保したよ。」


どうやらちょっと買い物に出てたらしい。桃花ちゃんと雪夜君の手にはそれぞれ飲み物が握られている。


「里穂子お姉ちゃんと結衣お姉ちゃんはまだ探せてないの?」

「うん。混んでてちょっと。」

「じゃあ。一緒のパラソルに入ろうよ!」


雪夜君はイイ笑顔だ。どうやらこのデートイベントを潰したいらしい。しかし此処で頷いては桃花ちゃんにお邪魔虫認定されるぞ…


「え?ホント?いいの?らっきー!」


里穂子ちゃああんん(泣)!!!無邪気に喜ぶ里穂子ちゃん。桃花ちゃんは弟と一緒にプール来てるだけだ。それがデートだとは夢にも思わないのだろう。弟も義弟おとうとも口語で言われただけじゃわかんないしね。

桃花ちゃんは顔が引きつっている。ここまで喜ばれては迷惑だともいえないようだ。そりゃそっか。


「ご、ゴメンね?」


私の顔も引きつった。私には二宗君イベント妨害の前科もあるのだ。桃花ちゃんに恨まれていたらどうしよう。

桃花ちゃんにパラソルまで案内してもらって私たちは日焼け止めを手に取った。紫外線予防は大事なのだ。世は美白。美しい白い肌こそ重要。まあ私は黒くなるより赤くなるタイプなんだけどね。黒くならなくても日焼けすると痛いからやっぱり紫外線は予防したい。

桃花ちゃんも同じように日焼け止めを手に取る。


「ユキ、背中塗ってくれる?」


可愛らしく微笑む。これもイベントの一部だ。イチャイチャふれあいイベント。


「お姉ちゃんたちに塗ってもらえば?」


飲み物を飲んでいる雪夜君はそっけない。桃花ちゃんの事を憎からず思ってるのはイベント発生条件『好感度が一定以上』を見ても明白だが、心情的にはイベントをことごとく回避したいようだ。


「ううん。ユキがいいの。ユキの背中も塗ってあげるから。」


おおう。大胆だ。

雪夜君が赤くなる。


「しょうがないな。」


塗ってあげるらしい。イベント回避失敗!桃花ちゃんが「ふふふ、くすぐったい」なんてニコニコしていたが、とりあえず私たちはそれぞれ日焼け止めを塗り終えた。


「じゃあ、どこいく?」

「混まないうちにウォータースライダーいっとかない?」


まだ結構早い時間帯なので込み具合も序の口なのだ。此処のスライダーはゴムのでっかい浮き輪のような物に座って流れるタイプだ。水着で直接流れる訳ではないので、まさかのポロリの心配がぐっと減る。安心して遊べるスライダーだ。


「いいね~。」


里穂子ちゃんも同意して、私たちの予定は決まった。


「それじゃ、七瀬さん、またね?」

「うん、またね?」


桃花ちゃんがほっとしたように微笑んだ。



が、どうしてこうなるのでしょう。

私たちは確かにウォータースライダーに行った。けど雪夜君が誘導したらしく、桃花ちゃんと雪夜君もウォータースライダーに並んだのだ。順番に里穂子ちゃん、私、雪夜君、桃花ちゃんの順だ。長い列に並びながら雪夜君が話しかけてくる。


「結衣お姉ちゃんその水着似合うね?可愛いよ。」

「あ、ありがとう。」


水着を褒められるのって結構恥ずかしいよね。

大いに戸惑う。

それから桃花ちゃんに聞こえないよう声を潜めて言う。


「自分じゃ上手く選べなくて晴樹先輩、あ、晴樹先輩は例のノートに書いてあったからわかるよね?に選んでもらったんだ。」


その瞬間、雪夜君の目が据わった。


「へーえ。その水着選んでもらったやつなんだ?男に?結衣お姉ちゃん晴樹とそんなに親しいの?」


声が冷ややかだ。なんか怒ってる気がするけど何を怒っているのか全く分からない。


「や、全然親しくない。むしろ初対面に近かった…けど?」

「ふーん?全然親しくない男に水着選んでもらうのが普通な訳?結衣お姉ちゃんちょっと危機管理能力欠けてない?」


つまり「ほぼ初対面の男に水着選んでもらうのって常識外れじゃない?女としての意識に欠け過ぎている」と言いたいわけだな。私小6に非難されてる!


「えっと、選びかねてちょっと困ってるところだったし、晴樹先輩フレンドリーだし、そもそも晴樹先輩は七瀬さんの攻略対象な訳であって私を異性だなんてこれっぽっちも思ってないかと…」


声はどんどん小さくなる。ええい、水着選んでもらったくらいでそんなに怒ることないじゃないかあ!口に出して言い返せないけど。


「ハァ。桃姉の攻略対象だからってむやみに『異性』から除外しないように。攻略対象も結衣お姉ちゃんが思ってるほど無害じゃないから。それから初対面の相手に頼るほど困ってるならオレを頼って。」


雪夜君は溜息をついた。うう。呆れられちゃったかな?でも最近雪夜君に何かと頼りっぱなしな気がするし、これ以上頼るのは気が引ける…。ええい、余計なことは考えるのよそうっ。

私は話題を変えることにした。


「水着って言えば七瀬さんも可愛いよね。すっごい似合ってる。さっき人だかりができてたのって七瀬さんの水着姿が見たかったからでしょ?さっきからチラチラ見られてるし。」


並んでる間にも桃花ちゃんはチラチラ注目を集めている。カップル連れの彼氏が桃花ちゃんに見惚れて彼女さんに抓られている光景なんかも見受けられる。私の水着姿を褒めたように雪夜君は桃花ちゃんの水着姿を褒めたりしてるのかな?うーん、ラブラブ。


「ハァ。見られてるのは桃姉だけじゃないけどね。まあ、桃姉はちょっと普通と違うような気はする。」  

なんだか眉を顰めているがその辺は認めるらしい。確かにあの可愛さは反則だ。今にも芸能界入りのスカウトが来るレベル。すんごい可愛い。しかもスタイルも良い。その桃花ちゃんは話しかけたそうに雪夜君を見ている。雪夜君は振り返らない。


「七瀬さん雪夜君に話しかけたそうだよ?いいの?」

「いいの。結衣お姉ちゃん、今日は眼鏡してないんだね?見えてるの?」

「あー。私普段は眼鏡エンジョイだけど私的外出の時はコンタクトなんだよ。前にファンタジアランド行った時には目の調子が悪くて眼鏡だったけど。特に今日はプールだし。」

「そうなんだ?素顔の方がキレイだよ。」


さらりと。さっきから褒め殺しされてる!?もう勘弁してー!頬が熱を持ったのがわかる。う、嬉しいけどそんなに褒められると恥かしいよ。

列は順調に進んで、もうすぐ里穂子ちゃんの番だ。


「もうすぐ里穂子お姉ちゃんの番だね。結衣お姉ちゃんたちはこの次どこ行くの?」

「里穂子ちゃんに聞いてみないとわかんないけど波のプールに行こうかなって思ってる」

「じゃあオレもそっち行く。ビーチボール持ってきたから一緒にビーチバレーしない?」

「いいけど…」


桃花ちゃんはいいのだろうか。


登場人物は予想通りでしたか?


雪夜君に晴樹先輩とショッピングデートしていたことを怒られました。

桃花ちゃんも見られてますが、実は結衣ちゃんも結構道行く人に見られてます。でも全然気付いてない。

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