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第26話

期末考査である。総合順位一桁に乗るべく勉強を開始する。休み時間も勉強、家に帰っても勉強、昼食時さえ英単語帳片手だ。里穂子ちゃんに「頑張りすぎじゃない?」と言われたが、頑張って良い成績を修めることに意義があると思う。

桃花ちゃんは相変わらず甘いイベントをこなしているようだ。この時期は二宗君とラブラブ勉強会が開かれるはず。二宗君はというと戸惑いがち。


「勉強など一人でできるだろう。集団で行う意味がわからない。」


とのこと。二宗君の成績はトップクラスなのだ。人に教えてもらうことは少ないだろう。一方的に講師を引き受けるだけだ。しかし


「人に教えることによって自分の理解が深まることってあると思うよ。一緒に勉強することで自分が気付かなかった疑問点とかも見つかるかもしれないし。」

「そうか。そういう考え方もあるな。では君もどうだ?」


は?

私も?


「熱心に勉強しているようではないか。君と一緒に勉強すれば新たな視点が切り開けそうな気がする。」


さも名案だ、と言った様子で述べる。私もって…それイベント妨害なんじゃ…あんなに頑張っても成功しなかったイベント妨害がここで成功?


「いいけど。」

「では明日の放課後特別教室C-2で。」

「わかった。」


二宗君が遠ざかるのを待ってノートを開く。ノートには『期末考査前に二宗イベント、勉強会が起こる。ぬくもりが伝わるほど急接近で理数を教えてもらえる。勉強会で二宗の将来の夢を聞きだし、応援すると好感度アップ。』と書かれている。なるほど。異常が起きた理由が分かった。文面がただ単に『勉強会』と書かれていて『二人っきりの勉強会』とかになっていない。しかも“会”とつくからには複数だ。恋愛目的とした視点から見ると変則的だが、その場に複数人数いても不思議じゃない。しかし私一人で悪目立ちするのもなんだ。ここはひとつ、いつものメンバー(里穂子ちゃん、倉持君、林田君)を誘わせてもらおう。



翌日放課後。いつものメンバーは労せず誘い出せた。二宗君にはメンバーが増えたことによる不満はないようだ。桃花ちゃんは激しく動揺している模様。


「えっ?えっ?なんでみんないるの…?」

「二宗君が一緒に勉強しようって誘ってくれたからご一緒したんだけど、何か不都合だった?」


私以外のメンバーに聞くと「朝比奈に誘われた」と言ってしまいそうなので代表して答えた。


「そ、そういう訳じゃないけど…」


桃花ちゃんの性格的に正面切って迷惑だとは言えないようだ。あたりまえか。いちゃいちゃするんで出てってくださいとは言えないよな。勉強会だもん。


「林田君。言っておくけど、騒いだりふざけたりサボったりしたらつまみ出すからね。因みに今後一切のイベントに置いて林田君の分のケーキなしだから。」

「…ウッス。赤点とりたくないんで頑張ります。」


林田君は赤点予備君なのだ。因みに成績順で言うと二宗君>私>倉持君>里穂子ちゃん>桃花ちゃん>林田君である。二宗君は桃花ちゃんの講師、私は林田君の講師を担当する。倉持君と里穂子ちゃんは一緒に教えあって勉強している。

自分で言った事だが、一緒に勉強することによって、自分では気が付かなかった疑問点も結構出てくる。林田君ナイス。すぐ休憩取りたがるのが難点だが。私も教えながら質問された分は教え、自分で考えても分からなかった部分は二宗君に意見を尋ねたりした。質問の中には二宗君も結構新しい発見があったようで嬉しそうだった。二宗君と桃花ちゃんは額がくっつきそうな距離で勉強している。勉強しているはずなのに桃花ちゃんはどこか楽しそうだ。


「ね。眼鏡外すと全然見えないの?」


桃花ちゃんが二宗君の眼鏡をちょいちょいとつつく。


「ああ。ほとんど見えないな。ここからノートまでの距離だとかなり大きな字でないと読めない」

「ちょっと外して見せて?」

「何故そんな事をする必要がある?」


二宗君は不快げではなさそうだったが疑問ありげだった。桃花ちゃんが至近距離で発する甘い空気を全く読んでない様子。人の心に鈍感ってすげえな。


「眼鏡外した顔が見たいだけ。ダメ?」


こてんと可愛く首を傾げる。くはー。かっわいい!これで悩殺されなかったらすげーよ。


「別に構わないが。」


二宗君はすげー奴だ。平常運転の表情と声。微塵の動揺も見られない。

黒縁眼鏡をはずす。眼鏡を外した顔は私も初めて見る。やっぱイケメンだな。でもどっちかって言うと私は眼鏡ある顔の方が好きかも。


「今、私の顔見える?」

「いいや。ぼやけている。」


これは桃花ちゃん、テンプレの行動に出ているのでは?次のセリフが鈍い私にも予想できるよ。


「どれ位の距離なら見える?」


キタ―—―――!!!!急・接・近!


「そうだな。……これくらいか。君の顔が見えるが、今度は近すぎてパーツしか見えない。」


もうキスしちゃうんじゃない?ってくらい顔を近づけている。二宗君はどれほど近づいても平常運転だが、仕掛けた桃花ちゃんは意識して顔を赤らめている。


「もういっちょ!もういっちょ!」


林田君がけしかける。二宗君は何を言われているかよくわかっていないようだ。くるりと私達の方へ顔を向ける。


「何が『もういっちょ』なんだい?林田君。」

「え?チューまで。」

「注?」

「……ゴメン。俺が悪かった。なんでもない。」

「林田君。次の問題。はやく。」

「えっ…朝比奈だって見てたじゃん!」


ちっ!私が見てた事がばっちり見られてるらしいな。


「知りません。つまみ出されたくなければ真面目にどうぞ。」


素知らぬふりで問題集に目を戻す。倉持君と里穂子ちゃんを見ると熱心に二人で問題を見ていて気付いていなかったようだ。ある意味二人の世界である。

その後、桃花ちゃんは『二宗君の将来の夢を聞きだす』もやったが、途中で林田君が茶々を入れていた。一応将来の夢を応援されて、二宗君は嬉しそうな様子は見せたが、桃花ちゃんが望むほど好感度上がらなかったのではないだろうか(主に林田君のせいで)

やっている事はノートに書かれている通りになったが、桃花ちゃん初めてのイベント失敗かもしれない。

二宗君には「七瀬君はあまり勉学に意欲的ではないようだね」とか言われてたし。

私はきっちり勉強して、ついでに分からない部分は二宗君に教えてもらって、勉強会を終えた。

イベント不完全燃焼(?)の事は雪夜君に連絡しておいた。例えイベント自体を回避できなくても好感度の上昇率が下がるならおいしい情報だ。雪夜君も喜んでいた。



因みに勉強はしたものの、ケアレスミスが結構あって順位は学年11位。がっくし。


二宗君にとって「ちゅー」はものすごく聞き慣れない言葉です。笑。

自分で仕掛けて自分で照れる桃花ちゃん。自作自演乙。


因みに二宗君の成績は堂々の学年1位でした。

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