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第24話

7月9日。二宗君の誕生日である。朝から桃花ちゃんが突撃!頬を紅潮させて誕生日プレゼントを渡していた。誕生日には特別イベントを作った覚えがないが、この分だと桃花ちゃんは攻略対象全員に誕生日プレゼント渡しているな。バイトしているとは言え結構な額になると思うんだけど。大丈夫か?二宗君は注目株のイケメンで人気者だが、二宗君の誕生日が今日だという事を知る者は結構少なく、誕生日プレゼントを用意しているような者は稀だった。里穂子ちゃんに誕生日プレゼントを買わせた手前、当然私はプレゼントを用意している。ついでに里穂子ちゃん、倉持君、林田君にも二宗君の誕生日情報はリークしてある。彼らは別にものすごく仲が良いわけではないが、付き合い上用意してくれると思う。昼食時二宗君、里穂子ちゃん、倉持君、林田君を一緒に食事を取ろうと誘った。心得たものでそれぞれが誕生日プレゼントと思しき包みを持ってやって来た。外は暑いので西校舎の適当な特別教室をジャックした。人気も無いし冷房もきいているし、いい感じだ。

概ね円形に、各自が居心地の良いスペースを確保したところで目くばせする。

せーの


「「「「二宗(君)。誕生日おめでとう」」」」

「ありがとう」


二宗君は嬉しそうだった。

各々がプレゼントを渡す。


「開けてもいいだろうか?」


全員がいいと答えると二宗君はそれぞれ包みを開けた。

倉持君のプレゼントは高性能のイヤフォンと輸入菓子。二宗君は勉強の時BGMをかける派なのでイヤフォンは良いかもしれない。輸入菓子の方はチョコレートのやつで、値が張るけどおいしいものだ。

林田君のプレゼントは大判の本だった。二宗君が広げてみる。


「水着姿の女性が沢山映っているようだが?」


なんとグラビアアイドルの写真集だった。

二宗君には馴染みの無いものだったらしい。怪訝な顔をしている。


「ボッシュート!林田は後日プレゼントの再提出!」


倉持君が素早く取り上げた。

ファインプレー!

でも林田君の教育もちゃんとやって!林田君は「結構高かったのに…」とかぶつぶつ言っている。

里穂子ちゃんのプレゼントはカエルが手を広げた形をした眼鏡スタンドだった。可愛い。私の時もああいうの欲しいな。

私のプレゼントはお馬さんのチャームが付いたシルバーのブックマークである。可愛いですよ。


「皆、有難う。とても嬉しいよ。今日は実り多い日になった。」

「まだだぜ。朝比奈のケーキがあるだろ。今回は俺たちの分もあるんだろうな?」


林田君が催促する。ちゃんとケーキも作ってきた。暑いのであんまり生っぽいケーキは避けてエンガディナーヌストルテだ。ビスケット生地にキャラメルと胡桃がたっぷり入ったケーキだ。


「あるよ。あんまり楽しみにされても期待に応えられるか分からないんだけど。」


私はケーキの入った箱を開けた。今回はちゃんと5切れ持ってきた。本当は6等分したのだが、一切れだけ余っても処理に困るので置いてきたのだ。


「おおっ。待ってました。今食っていいか?」

「待てよ、主役が先だぜ?」


はやる林田君を倉持君が制す。


「その前にお弁当食べる?それともケーキが先?」


結構胃に来るケーキを作ってきたので一応聞いてみる。


「見たところ食べ応えのありそうなケーキだからケーキの方を先に頂こう。弁当を食した後では美味しく頂けないかもしれない。」


二宗君が言った。お弁当残したらお母さんが悲しむぞ?

とりあえず持参した紙皿とプラスチックフォークを配る。皿の上に一切れずつケーキを乗せていく。


「ローソク立てて息で吹き消すとかやりたかったんだけどね。それは我慢して?どうぞ召し上がれ。」

「充分嬉しいよ。美味しそうだ。さっそく頂こうか。」


最初に二宗君が一口食べる。二宗君が「とても美味しい。」と言うのを待って、続いて皆が口にする。


「おおーマジうんめー」

「流石朝比奈だな。」

「こ、これは肥える味がするよ、結衣ちゃん!」


里穂子ちゃんは身を捩っている。そうなのだ。エンガディナーヌストルテはとてもハイカロリーなケーキなのだ。美味しい物は結構カロリー高かったりするよね?でも皆には十分満足していただけたようだ。良かった。私もケーキを口に運ぶ。うん、ホロっとしていて美味しい!


「有難う。朝比奈君。実はとても楽しみにしていたんだ。」


と二宗君。プレゼントの時より喜んでない?実は甘党?そんなデータ無いが。二宗君は好きな食べ物は肉じゃが、茶碗蒸し、出汁巻き卵だ。飲み物は緑茶派。今回のケーキには断然紅茶が合うんだが。因みに嫌いな食べ物は内臓系だ。ホルモン、レバーや砂肝とかも嫌いと書いてある。結構内臓系苦手な人はいるよね。

でもこんなに喜んでもらえるとは作り手冥利に尽きる。


「喜んでもらえて嬉しいよ。」


嬉しくて私は自然とほころぶように笑った。

二宗君がじっと黙って私の顔を見ている。なんだ?


「どうかした?」

「い、いや、なんでもないよ。」


目元に朱が入っているような気もするが何でもないらしい。何故か周囲がにやにやしている。なんだろう?まあ別にいっか。

私達はケーキを完食してからお弁当を食べた。ケーキを食べたらお弁当が食べられないんじゃないかと懸念していたが、予想は外れ、みんな余裕を持ってお弁当を食べている。


「次は朝比奈の誕生日だな。ケーキ楽しみにしてるぞ」


林田君がお弁当を食べていっぱいになった腹をさすっている。

私の誕生日なのにケーキ作るのも私なのね?まあ趣味だからいいんだけど。というか林田君、私の誕生日知ってたんだ?里穂子ちゃんが教えたのかな。

私はちゃんとケーキ作ってくる事を伝えた。


結衣ちゃんの微笑みの攻撃。

効果は抜群だ。笑。


次回は雪夜君と森林公園。

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