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第23話

学校で七夕をやった。偽物の大きな笹6本に飾りと短冊をくっつけて演劇部の七夕にまつわる演劇を鑑賞する催しものだ。私はお弁当だが、学食では七夕のメニューなんかが振る舞われるそうだ。笹は七夕が過ぎたら短冊と飾りを丁寧に外し、倉庫へ仕舞われる。私たち学級委員らは今後始末の方をやっていた。既に飾りと短冊は外されている。6本の笹を倉庫へ仕舞う。


「二宗君お願いした?」

「夢は自分で叶えるものだし、これと言って願いは無いんだ。『家内安全』と書いておいたよ。」


家内安全って…ロマンチックさに欠けるな。でも二宗君らしいといえば二宗君らしい。


「いつか、自分ではどうしようもなくて、もの凄く焦がれるくらいの願い事が出来たらそれを書くかもしれない。まあ、そもそも七夕はお盆行事の一環だと聞いたことがある。願い事を書いて叶うかどうかは甚だ疑問だ。」


現実的な答えを有難う。


「でも、もし1年に1度しか出会う事の出来ない恋人たちがいたら不憫だろうね。1年に1度しか出会えない関係であってもお互いの想いが薄れないのには憧れる。」


おや、意外とロマンチック。遠距離恋愛かー…恋愛ごとは私には縁がないけど。二宗君にこんな面があったとは。意外性のギャップにちょっとときめいた。


「もし、織姫と彦星のように離れ離れになってしまったらどうする?」

「私は再び会えるのを待つよ。いつまでも…」


二宗君はそっと目を伏せた。二宗君は忍耐強い。そしてとても誠実だ。二宗君みたいな人に好かれたら幸せだろうな。

倉庫の中は広く、奥に狭い掃除用具入れがある。私たちは軽く掃き掃除をしたので掃除用具入れに掃除用具を片付けた。パチン、ガチャン。突然明かりが消えた。


「な、なに?停電…?」

「いや、奥にいる私たちを認識できずに、誰もいないと思って照明を落とされたのだろう。それよりも重要な事がある。」

「何?」


二宗君が倉庫の出入り口に行って扉に手をかける。


「やっぱり。倉庫の扉があかない。鍵をかけられたようだ。」

「ええ!?」


それって相当まずいんじゃ…携帯教室だし。


「ど、どうする?」

「大きな声でも出してみようか。」

「うん。じゃ、お――――い!」


相当大きな声が出たと思うが反応が無い。


「聞こえてないのかな?」

「と言うより周りに人がいないのでは?」

「ど、どうしよう。」

「帰りが遅くなればそのうち自宅から捜索願が出されるのでは?」


しばらく外の音に耳を傾けじっと座っていた。あ、暑い。熱が籠ってるよ、倉庫。

じっと座っていると非常に重要な生理現象に襲われる。


「ねえ、二宗君…トイレ行きたくなっちゃった…」

「……。」


漏らすのとか勘弁。暑いからって調子に乗って水分摂り過ぎた。

とりあえず二人で倉庫の扉に体当たりしてみた。何度も試してみたが、流石に2人くらいの体当たりで壊れるようなやわな扉じゃなかった。大声作戦も実施。夏場で飲み物も無いし、二人ともすぐばててしまった。放課後だけあって人はほとんど通らないようだ。誰も応答しない。弱った。自然と視線が天井付近につけられた、横長な窓に向く。あそこから出られたら…


「二宗君あそこから出られないかな?」

「キミが行くのは止めておいた方がいいだろう。こちらからは倉庫の物で足場を作れば出られるだろうが、こちらの天井は高い。向こう側は約2階分段差がある。飛び降りたら怪我をしかねない。私が出てみよう。幸い横幅はそんなに狭い窓でもないし。」


二宗君が出てくれる事になったので二人で倉庫の物を移動させて足場を作る。即席で作った物なので中々にバランスが悪い。二宗君が足場に上って行く。私が押さえているが、グラグラ安定しない。


「大丈夫?」

「少しバランスが悪…っわぁ!」


足場が崩れて二宗君は落っこちてしまった。私の上に。いったぁー!

むにゅ。

胸が薄いシャツの上から鷲掴みにされる。


「きゃぅ!」

「すまない。どこか打ったかい?」


そう喋る二宗君の顔は私の胸の谷間に埋もれていて…吐息が。胸を掴んでるもう逆側の手は私の太股の間に。あっわわわわわあわわわわわっわわ!!

二宗君の眼鏡はぶっ飛んでいて物がよく見えていないらしい。太股の間の手が動きそうになって慌てて押さえる。


「に、二宗君。この手はそのままゆっくり上げて。決して前方向に動かさないように。」

「む?」


二宗君が言う通りにする。しかし片手の支えを失った分、二宗君の顔は私の胸に押しつけられる。


「なんだか柔らかいがこれは…?」

「深く考えたら負け!この辺に手をついて。」


二宗君の手を床に導く。胸を掴んでる方の手も離してもらって床につかせる。やっと二宗君の顔が私の胸から離陸した。

二宗君が見えない視界を極限まで得ようと目を細める。


「私はもしかして非常に君の具合の悪い所に手をついていたのだろうか…?」

「考えたら負け!忘れる!」


そう言う私が心臓がバクバクしてるんだが。腿の間にあったごつごつした手の感触とか、大きな手で胸揉まれた感触とか。あうー。凄く体が熱い。きっと今真っ赤だ。


「す、すまない…もしお嫁に行けないようなら私が…」

「結構です!」


流石にこれくらいじゃ嫁に行けなくなったりしないよ!嫁に行く予定が無いけど!それから二宗君の眼鏡を拾って懲りずに再チャレンジ。さっきよりしっかりした足場を作った。二宗君が登って倉庫内部に括りつけられたロープと共に窓から出る。ロープを使って下まで降りるのだ。運動神経0の私には不可能な芸当。


「朝比奈君。無事出られた。今から倉庫の鍵を取ってくるので、そのまま待っていてくれたまえ。」


ほっ。

二宗君脱出ミッションは無事クリアされた。私は二宗君が開けてくれた扉から出て大急ぎでトイレに行った。

不可抗力だけど、恥ずかしい所思いっきり触られちゃったし、もう閉じ込められるのはこりごりだ。


二宗君!破廉恥なまねは許しませんよ!

まあ役得ですよね。


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