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第20話

雪夜君の運動会に行った。日焼け防止の長袖にデニム、スニーカー。桃花ちゃんに特定されないための帽子、サングラスにマスク姿で。ここで桃花ちゃんが借り物競走の『大切な人』という借り物で借り出される予定なのだ。男友達を連れていけば男が好きというレッテルを貼られ、女友達を連れていけばいい仲だと勘繰られる厄介なイベントだ。雪夜君はこのイベントに参加しないために、借り物競走を断固拒否したらしいが人数が足らず、補欠にぶち込まれたらしい。このイベントは借り物競走で連れて行った桃花ちゃんから「私の大切な人もユキだよ。お揃いだね。」と天使のように微笑まれて雪夜君からの好感度が上がるというもの。雪夜君との打ち合わせでは「結衣お姉ちゃんを大切な人として借りる。」という事になっていたんだが、ただ今絶賛不審者尋問中なう。サングラスにマスク姿が怪しすぎたらしい。あうー。今借り物競走中だよ。松葉野まつばの小学校の先生に「どちらのお子さんの保護者の方ですか?」とか尋問されている。「6年1組の七瀬雪夜君の友達です。」と言ったが信じてもらえない。「七瀬君が競技から戻ったら確認を取りますので」と拘束中。競技が終わってからじゃ遅いっての!結局借り物競走は終わってしまった。雪夜君はイベント通りに桃花ちゃんを借り出したらしい。ご両親とかを借りられないものかと期待していたが、無理だったようだ。あとから先生に連れられて私の元へやってきた。「このお姉ちゃんはオレの友達です。」という雪夜君の発言を受けてやっと解放された。


「ごめんね、雪夜君。役立たずで。」


折角日曜来たのに。無駄だった。がっくり。


「しょうがないよ。相合傘の時もそうだったけど、多分妨害されないように何らかの力が働いてるんだと思う。」

「うん…」


どうもタイミングが不自然だもんね。

でもこのままじゃ逆ハーレムコースだよ。逆ハーレムなんて現実で作ったってお互いの嫉妬でギスギスするだけで全然いいものじゃないと思うのに。


「オレ、騎馬戦とリレーのアンカーも引き受けてるんだ。良かったら応援してくれる?」

「うん。勿論。」


騎馬戦とリレーのアンカーって言ったら花形じゃないか。流石雪夜君。折角来たんだから雪夜君に激励を送らねば。


「雪夜君、口あけて。」

「うん?」


ぱかっと口を開ける。無防備だ。悪戯したくなる。でも我慢。私は保冷剤まみれの保冷バックのタッパーから大きな氷を出して、雪夜君の口に入れた。


「ん。甘酸っぱい。レモン?」

「レモンの蜂蜜漬けを作った後の蜜を水で薄めて氷にした物。レモンの蜂蜜漬けもいいけど、暑い時は美味しいんだ。どのみち小学校の席じゃ昼食時以外飲食できないし、氷なら口に放り込むだけで楽しめるよ。食欲ない時もいいんだ。」

「ふーん。ありがとう。今日暑いし、美味しい。」


雪夜君は舌の上で氷を転がしているようだ。


「残念。もっと食べたかったけど席に戻るよ。」

「うん。頑張ってね。応援してる。」


雪夜君の騎馬戦は三国君並みに無双していた。雪夜君は白組なので白い鉢巻きをしている。ぶつかり合って相手の手をかわして鉢巻きを毟り取る。雪夜君が鉢巻きを毟り取る度、歓声がわく。人気者だね。特にひと際体格の良い同級生とぶつかり合った時は凄い声援が巻き起こった。私も応援する。大きな声で「頑張れー!雪夜くーん!」と叫んだ時目が合ったような気がした。雪夜君は不敵に笑った。

どうやってるのか、片手で体格の良い相手の両手を封じ込めて鉢巻きを毟り取った。おお!なんかすごく格好良い…見ているこちらまで興奮してドキドキと高揚した気持ちになる。

結果白組の圧勝だった。

それからいくつか競技があり、お弁当タイム。小学生なのでそれぞれの保護者が持ってきたお弁当をそれぞれの保護者と食べている。一人でレジャーシートを広げている私は結構目立つ。怪しげな帽子にサングラス姿だし。お弁当はサンドイッチだ。一人でそそくさ食べるのでちょっと手抜き。具は卵とかハムとか鯖とかだ。ちゃんとクーラーボックスに入れて食中毒注意。鯖おいしいよ鯖。ランチタイムも終了の頃雪夜君がやってきた。


「さっきは騎馬戦応援してくれて有難う。結衣お姉ちゃんの声、ちゃんと聞こえたよ。」


やっぱり聞こえてたか。こっち見てたもんね。ちょっと恥ずかしい。


「凄く頑張ってたね。格好良かったよ。」

「そう?有難う。リレーも頑張るから応援していって。」

「うん。」

「あ、そうだ。氷まだある?」

「あるよ。食べる?」

「うん。」


私は雪夜君の口に蜂蜜レモンの氷を放り込んだ。もうだいぶ溶けてさっきよりちっちゃい塊だが、雪夜君は幸せそうな顔だ。ちょっとかわいい。この子が騎馬戦で鬼の無双をしてた子とは信じられないね。


「おいしー。」

「なら良かった。」


雪夜君は口の中で氷をころころさせながら席へ戻って行った。

リレーはアンカー。雪夜君がバトンを手にした時、雪夜君のチームは3位だった。雪夜君はバトンを受け取るなり超加速。一気に2人抜いてトップに躍り出る。大きくリードしたままゴールした。私はゴールが丁度写りこむ絶景ポイントで写真を撮った。今日の記念に。しかし格好良いな~。ちらと応援席の桃花ちゃんを見てみたが、目がハートだ。

雪夜君本命とか?

別れの挨拶はしないまま帰ったが携帯に『妨害は失敗しちゃったけど来てくれて有難う。結衣お姉ちゃんが応援してくれたから頑張れた気がする。』とメールが来ていた。妨害は失敗しちゃったけど行った甲斐あったかな。



雪夜君は運動はかなり得意です。

勉強も得意。

本編には出てきませんが、弱点は楽器です。苦手!


結衣ちゃんのいたずらを下記から選びなさい。

①くすぐる

②ちゅーしちゃう

③ハバネロチップスを入れる


……③な気がする。

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