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第15話

中間考査である。桃花ちゃんはここで数学の赤点を取り、八木沢先生とのムフフ補習がある。が、私は全く全然これっぽっちも関係無い。普通に勉強して出来るだけいい点数を取ろう。というか日常から勉強はしているが。普段は家に帰って勉強するところだが、今日は妹が友人を家に招くと言っていたので、図書室で勉強する事にする。数学と格闘していると頭上から声がかかった。


「そこ、使う公式間違ってるよ?」


耳元に声が当たってぞわっと肌が粟立つ。振り返ると思いの他近い位置に五十嵐先輩がいた。私の肩すれすれの位置に顔がある。いや、近いぞ。異常接近だ。なるたけ机に近付いて距離を取りつつ指摘された公式を見直してみる。確かに間違っているようだ。


「そうみたいですね。ありがとうございます。五十嵐先輩。」


五十嵐先輩はいつものにやつき顔だ。黙っていれば怖いような美貌をチェシャ猫のように歪めて笑っている。


「んん~?俺の事知ってるんだ?もしかしてファンの子かな?」

「残念ながら違います。」


五十嵐先輩は無遠慮に私の顔を見回して、「ああそうか。」と言った。


「眼鏡が違うんだ。オリエンテーションで月絵チャンと一緒にいた子でしょ?名前なんていうの?」


確かにあの時は黒のセルフレームで、今はただのツーポだ。しかし1回だけちらっと顔を見た人間の事をよく覚えてるな。


「朝比奈結衣です。よく覚えてますね?記憶力いいんですね。」


暗記科目とか得意そうだ。いいなあ。


「いんや。カワイイ子の事しか覚えてないよー」


とても言い慣れてますね?習慣みたいなものだと把握した。お世辞くらいで舞い上がったりしませんよっと。不細工ではないけど可愛くも無かろう。


「歴代武将の顔がプリティフェイスだったら、さぞかし歴史教科が得意になるでしょうね?」

「ははは、いいね!ゆるふわモテ顔信長とか?」

「甘辛ガーリー光秀とかです」


想像するとちょっと笑える。きもい。


「勉強教えてあげようか?」


五十嵐先輩が美人顔をチェシャ猫のように歪めながら言う。

五十嵐先輩が勉強を教えてくれるだとぉー…

そりゃ確かに五十嵐先輩は成績良いけど。


「代わりに何を要求されるかわかったもんじゃないので遠慮します。」


五十嵐先輩はあまり善良とは言えない性格だと設定してあるはず。


「ありゃ、ばれたか。『何でも言う事聞く券』1枚でも貰おうかと思ったのにな~」


そんな券発行してません。

お父さんの肩たたき券か!

というか内容が具体的じゃないところに悪意を感じるぞ。警戒心警戒心。


「そんなにピリピリしないでよー。じゃあ裏なしで教えてあげるから。」

「別に教えてほしい訳じゃありませんから。」


勉強なんて一人で出来るのだ。


「数学、苦手そうだったけどいいの~?補習めんどいよ?それに俺の裏なしなんてチョーお買い得なんだぜ?」


うう。体育ほどではないけど、数学は結構苦手だ。ついでに物理も苦手だ。理数は総じて苦手。文系なんだよ。国語は得意なんだけどなー。前世で国語教員やってたし。


「ホントのホントに裏なしですか?何にも要求してきませんか?」

「ホントのホント。なーんにも要求しないよ。」

「じゃあ教えてもらえますか?」


五十嵐先輩がするりと隣の席に腰掛けた。

教えてくれるのは良いし、解り易いんだけど、五十嵐先輩位置が近いです。いくら声を潜めなくちゃならないからって、そんなに顔を近付ける必要は無いはずだ。指先が触れてしまう必要も無いはずだ。しかしここで

「あんまり近付かないでください」とか言っていいものだろうか。これって私の自意識過剰だと思われない?もやもやしつつ問題を解く。五十嵐先輩睫毛長いです。


「だ~いぶ解るようになってきたみたいだねー」


うん。結構気が散ったけど、なんとかものになってきたみたい。


「おかげさまで。どうも有り難うございます。」

「いえいえ。結衣ちゃんが頑張ったからだよ~。ご褒美あ~げる。」


私の「要りません!」を聞く前に私の頬に柔らかいものが当たった。ちゅっというリップ音。これはまさに…ほっぺチュー!!


「なななななな、なんてことを!!何にも要求しないって言ったじゃないですか!」


勉強教えてもらう対価がほっぺチューだと知っていたら頼まなかった!


「要求してないよ。ご褒美だから俺が結衣ちゃんに奉仕してるんだよ?」


そんな屁理屈あるか!

私は言葉が出ずに口をパクパクさせる。


「あれ?お口にチューの方が良かった?」


五十嵐先輩がにやにや笑う。慌てて口を押さえる。ぶん殴ってやりたい。いや、平手の一つくらい許されるはず。私は口を塞いでいない方の片手を大きく振りかぶった。が、五十嵐先輩に手を掴まれ止められてしまう。


「結衣チャンの勉強教えてもらったお礼は平手打ち?」


……私は振りかぶった手を下した。それはさすがに礼儀知らずだ。しかしこれはずるいやり口だ。先に恩を売っておいて私の反撃を回避するのだから。


「もう二度と頼みませんから!」


私は荷物を抱えると捨て台詞を吐いて図書室を出ていった。


「また来てね~」


五十嵐先輩ののほほんとした声が聞こえて無性にイラつく。


テスト結果が出た。総合で学年11位。この学校では上位10位までは名前が貼り出されるようだ。あと赤点取ったやつの名前な。鬼畜。私は何とか一桁に乗りたかったがそれは叶わなかったか…桃花ちゃんは予想通り数学で赤点を取ってきたようだ。長谷川さんに慰められている。これは補習コースだな。数学は他にも赤点を取ってる者が複数いたが、そこからどうやって二人っきりの補習にもつれ込むのだろう。自分で設定しておいて謎だ。課題ができた者から帰宅で最後に残る、とかかな?


う、奪われちゃった…

お口ちゅーはちゃんと好きな人とできるといいね。


次回は天然さんの天然ぶりが拝めます。

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