表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

聡里くんの複雑な事情 1

「それは花嵐の中で」のあとくらいの雑談。


新学年が始まって最初の昼休み。思えば彼の行動は不穏だった……かもしれない。

晴れてるから外で食べようよ、と言い出した聡里に頷き、たどり着いたのはHR棟の屋上だった。まだ少し肌寒いせいか、生徒の数も疎らである。


「―――ねぇ、昶」

「何?」

「和意先輩とはどこまでいったの?」

唐突に振られた話題に、昶は飲み込みかけていたおかずを喉に詰まらせた。

中途半端にかまれたそれをお茶と一緒に胃まで押し流すと、ようやく呼吸ができるようになる。深く息を吐き出して何とか落ち着くと、僅かに潤んだ目で聡里を睨みつけた。

「い、いきなり何を言うんだよ」

「僕としてはいきなりでもないんだけどね。で、どうなの?」

「……どこまで、って」

それはつまりそっち系の話を示しているのだろうか。

かぁっと頭に上っていこうとする血をごまかそうと、昶は努めて冷静な声を出した。だが、伊達に付き合いをしていない聡里は誤魔化されてくれない。

「あ、映画に行ったとか、そういうボケはいらないからね」

「――――――ボケってなんだよ」

「言葉の通りだよ。昶って時々違う方面に走っていっちゃうじゃん。それにわかってるんでしょ?」

そうじゃなかったら、あんなに咳き込まないよね?

覗きこんでくる視線に昶は言葉に詰まった。

昶がいつまでも誤魔化しきれないことを良く知っているからか、彼は完全にこちらの反応を面白がっている。


そしてもう一つ、跳ね除けられない理由が昶にはある。

全校生徒を巻き込んだイベントが、実は昶達をくっつけるためだけのものだったなんて、一体誰が考えられるだろう。自ら進んで巻き込まれたとはいえ、聡里にしてもらったフォローは限りなくあるはずだ。

だからといって、自分ひとりが蚊帳の外に置かれていたことは今でも納得できないのだが。

「……なんでそんなに知りたがるんだよ」

少しだけ恨みがましい目で見れば、聡里がにっこりとした笑顔付きで退路を裁つ。

「決まってるじゃない。僕が満足するんだよ」

「ま、満足って……」

「だって、昶ってば本当にこっち系の話してくれないだろう? 僕たちのことは知ってるのにさ」

どうやら和意とどうこうというよりも、恋愛絡みの話をしてこなかったことが原因らしい。

だが、それはただ単に話すようなことがなかっただけで、故意に隠していたわけではない。それを知っているからこそ、和意という相手を得た今が聡里にとってのチャンスなのだろう。

「あのなぁ……」

「一応聞いておくけど、キスはしたんだよね?」

「……だからぁ」

なんでそんな簡単に口に出せるんだよ。

顔を赤くして恥ずかしがってる自分がいかにも恋愛経験が乏しいです、と宣言しているような気になってくる。

実際、乏しいのは認めるが、こんな誰が聞いてるかわからないような場所で聞かなくてもいいじゃないか。

是も否も言えずに口をパクパクさせるだけの昶に、聡里が悪戯を思いついた子供用に笑う。

嫌な予感がする、と身構えても対抗する手段はない。


「じゃ、あっちは? 痛くなかった?」


「……い、痛いって……」

絶句とばかりに固まってしまった昶に、聡里は違和感を覚える。

イベントからまだ一月しか経っていないとはいえ、間には春休みがあったのだ。今まで相手に不自由のなかった和意が相手だし、てっきり最後まで経験してきただろうと予想していたのだが。

意外と本命には弱い人間だったのだろうか。

昶が泣いて嫌がればそこまで強硬なことはできないだろうと予想はできる。

だが、何せあの会長様と対をなす人物なのだ。口八丁で落とすかもしれないと踏んでいたのに。


予想外な事実に考えをめぐらせていると、昶がその意識を引き戻した。

「あ、あのさ……」

「ん?」

「やっぱり、その……痛いの?」

怯えを含ませた瞳で見られ、聡里は言葉に窮する。

自分の体験を踏まえれば昶に言えることはたくさんある。互いに手探りだったあれは肉体的には辛くても精神的には幸福だったし、あのときの何とも言えない照れくささとかは誠吾と二人だけの思い出だ。

そのときどんな感想を抱くかは昶次第であり、ここで聡里が植え付ければ昶の中に刻み込まれてしまうだろう。何より昶を不安がらせるつもりはない。


それに、あの百戦錬磨な和意がそうそう下手な真似をしないだろう。

それを考えると少しだけ腹の内がむかむかしてくる。だからこそ、聡里はそれを完全に隠した笑みを昶へ向けた。

「気になるなら和意先輩に聞いてみれば? 手取り足取り実践してくれるんじゃない?」

「――――――っ、絶対聞かない!!」

想像をしたのか、昶は一瞬で顔を真っ赤になった。ぷいっと横を向いて誤魔化しても、その項までもが赤くなっている。

これは完全に拗ねてしまったかな、と思う。

でも、この反応を可愛いと思う自分は間違っていないはずだ。

「ねぇ、昶」

自分の見えない尻尾が尖っているとわかっていても。

「……何」

「痛かったら痛いって言うんだよ?」

「―――ばかっ!!」



えー……この話なんで思いついたんだっけ……あ、そうそう。

聡里の話を書こうと思って、でもなんだかすんなり書けないから脱線したらこんな話が浮かんだのであります。

そうしたら意外なことに和意がまだ最後まで手を出しないこととかが判明しました(笑)。

和意、百戦錬磨の称号返上か??


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ