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プロローグ
小さい頃から、"血"というものが分からなかった。
誰かが怪我した度に見る、赤い液体。それが"血"だと言われても、何となく納得できなかった。
そのかわり、薄気味悪さは感じていた。理由は分からない。
そんな分からない事だらけのところが"世界"だと言われても、納得しかねなかった。
ある日、母は私に言った。
『沢山の血を見る事が無いように生きなさい。見たら吐き気を覚えなさい。拒否しなさい。距離を置きなさい。それが、あるべき人間の姿です』
その言葉の意味が分からなかった私は、それでも頷いた。すると母は私の頭を撫でた。
『いい子、ね』
うん!
そう返したのを覚えている。
そして、私は変わってしまった。
それが呪いじみている事を理解したのは、母が死に、心が歪んでしまった後だった。