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六章 静寂のち異変

 正義がすでに広島へと発っていた朝、水実は有紗の部屋で目を覚ました。床に敷いた布団の上で、重い身体を起こす。大幸の警備に村叉をつけっぱなしにするため、昨晩に大量の霊力を召喚に使ったので、回復はしていても、満タンにはほど遠かった。本来なら長時間呼び出しておく場合、定期的に霊力を継ぎ足していくものなのだが、使役者である水実と、式神の村叉が離れているため、一度で一気に渡すしかなかったのである。

 横へ目をやると、有紗がまだベッドの上で眠っていた。あんなことがあった翌日とは思えないほど、穏やかに。

「……変な子」

 自分のことを棚に上げていることには気づかず、ポツリとつぶやいた。

 布団から出て、借りた寝間着を脱ぎ、元から持っていた替えの服を着る。しばらくして時計が鳴り、有紗が目を覚ました。

「あっ……。水実ちゃん、もう起きてたんだ。すごい早起きだね。すごい」

 目をこすりながら、部屋の主が上半身を持ち上げた。わずかに笑っている。呼び方が下の名前なのは、昨日の夜にそう呼ばれた時、水実が嫌がったりというような反応を特に見せなかったからだ。

「いつもどおりに起きただけよ」

 ぶっきらぼうな口調で、言葉を返す。ただ、表情を見せなかったので、有紗は自分の面白く思える方に解釈しておいた。実際、それで合っているという自信があった。理由は、単純に今までの態度である。

「水実ちゃんにはそうかもね。でも、私から見たら、すごいんだよ」

 もう一押し、ほめ言葉をかける。水実は予想通り、

「勝手に言ってれば?」

 さらに尖った声を出した。彼女がこっちを向いていなかったのでよかったが、有紗は必死で笑いをこらえていた。

「もう、下に行ってるわよ。あんたもさっさとしたら。授業があんのは、あんたでしょ」

 最後にそう言って、水実は部屋を出て行った。扉が乱暴に閉められる。

「……可愛い子」

 正義がいたら、確実に見とれたであろう穏やかな笑みを浮かべた。




 朝食でも、水実が爽快に箸を進め、新見親子のにこやかな視線に見守られた後、有紗と二人で家を出た。しばらくして、大幸もやって来た。村叉は、霊力は感じるが、一般人に見つかるわけにもいかないので、周囲からは知覚できなくなっている。

「おはよう、新見さん」

 相変わらず、今にも消えてしまいそうな雰囲気を漂わせていた。なんでこうも、彼らは昨日と変わりないのかと、水実は内心首をひねる。

「村叉、そっちは変わりなかった?」

 式神がいるであろう方向に声をかけた。ハスキーな音程が返ってくる。

「ああ、別になかったよ」

「そう。なら、別にいいわ。とりあえず、一旦戻って」

「あいよ」

 それから、水実が以前も使った呪文のような言葉を口にした。彼女にしか分からなかったが、霊力だけは感じられた村叉の気配が完全に消えた。

「あれ、戻しちゃうの?」

 やりとりを見ていた有紗が、首をひねった。召喚にはけっこうな霊力を使うことを知らなかったからだった。正義と暮らしてきたとはいえ、陰陽師にそれほど詳しくなく、おまけに彼は召喚を専門外にしているので、知識を得る機会がなかったのだ。

「当たり前よ。呼びっぱなしじゃ、あたしが保たないわ」

 水実が軽く勢いをつけて、首を左右へ交互に傾ける。肩が凝っているかのような動作だった。

「ふーん。でもまあ、昨日も息切れうんぬんて言ってたもんね」

「そういうこと。あんたたちが一緒にいる内は、あたし一人で十分こと足りるしね」

 有紗の言葉に答えると、手を腰に当てて息をついた。自然に交わされる会話を目にして、一人放置されていた大幸は、昨日との様子の違いに内心首をひねった。仲良くなっているように思えたのである。

 それから、会話もそこそこに、大学へ向かった。




 木曜日は、有紗の方は授業が少なく、大幸の方は多い日だった。受けるものもバラバラで、一つもかぶっているものがなかった。

 なので、片方だけ授業がある場合、もう一方も同じ教室にいさせ、霊力の消費を抑えた。二人とも別々に授業があるときは、水実と村叉の二手に分かれて警戒にあたった。実を言うと、水実は別々の授業の際もどちらかに欠席させようとしていたのだが、有紗の説得に応じて折れた経緯があった。

 とりあえず、四限途中までは、二人の身には何も起こらなかった。

「今日は、ずいぶんとおとなしいみたいね。変に沈黙されると、不気味だわ」

 その四限の最中、水実が顔をしかめてつぶやいた。隣の有紗が気づき、目をやる。そのまた向こうに座っている大幸は、授業に集中している様子だった。

 本来は彼だけが取っているものだが、最初に決めた方針通り、水実と有紗も同席している。有紗はわりと興味が出て、講義を楽しんでいたが、水実は暇を持て余していた。

「どうしたの?」

 声を抑えて、有紗が隣で突っ伏している少女に尋ねた。首がゆっくり動き、しかめっ面が向けられる。

「退屈なのよ。まったく、あんたら命が危ないっていうのに、よく悠長にこんなつまんないもん聞いてられるわね」

 心底嫌そうに、ため息をついた。その子供っぽい動作に、有紗は静かに笑う。

「あはは。確かにそうだね。でも、きっと水実ちゃんとまさちゃんが守ってくれると思ってるから、そこまで心配してないんだ」

「ずいぶんと過剰な評価ね」

 そう言って、ぷいっと水実は顔を背けた。有紗が口の両端をさらに上げ、目を細める。

 と、携帯のバイブ音がした。周囲の人間が顔を上げる。出どころは、有紗のカバンの中だった。慌てて取り出し、彼女は画面の表示を見た。

「まさちゃん……?」

 そこには、幼なじみの名前があった。メールではなく、電話。付き合いの長さから、急を要しているのを直感し、腰を浮かせる。

「どうしたんだ?」

 突然の行動に、大幸が首をひねった。水実も眉をひそめる。

「まさちゃんから電話がきてるんの。たぶん、何か分かったんだと思う」

「電話?」

 水実が声を出した。大幸も、顔色を変える。

「そう、電話。ここじゃまずいから、外に出たいの」

 有紗はうなずいてから、道を塞ぐようにイスを引いて座っていた水実に目線を送った。

「いいわ。外に行きましょ。あたしも出るわ」

 どいてほしいという意思を汲み取り、水実が立ち上がった。長い黒髪が揺れる。

「うん、分かった。じゃあ、行こ」

 有紗もすぐに反応し、二人は自分たちのいる机の列から出ようとした。しかし、そこで携帯への呼び出しが切れてしまった。

「あっ、切れちゃった」

 手元の携帯が沈黙する。それに騒いだのは、持ち主ではなく水実だった。

「ちょ、ちょっとどうするのよ。大事な情報だったとしたら……」

 焦りからか、目に不安の色を見せる。なんだかんだで、正義を頼りにしているようだった。

「大丈夫。大事な情報なら、もう一回電話してくるよ」

 そんな様子だったので、有紗はそう言ってやった。水実が首をひねる。

「そうなの?」

「うん。絶対そう」

 自信たっぷりに首を縦に動かす。経験上、間違いないという確信があったのである。

「なら、別にいいけど」

 あまりにもはっきりとした口調に納得させられ、水実はそれ以上質問を重ねなかった。代わりに、教室から出ることに話を戻す。

「それなら、結局のところ教室の外には出るべきね。行くわよ」

「うん」

 顔を見合わて互いにうなずき、出口に向かおうとしたのだが、

「あっ、ちょっと待てくれ」

 大幸に呼び止められた。

「何?」

 当然ながら、有紗は足を止めた。一方の水実は、なぜ急がないんだといった感じに眉間にしわを寄せる。電話のことが第一だが、周りの学生や、前方に立つ教諭もこちらを気にし出していたので、早く出たかった。

「俺も行く」

「えっ? でも、まだ授業中だよ」

「かまわない。今は、授業よりもそっちの問題の方が急務だ」

 目をしばたかせる有紗に対し、大幸は強く言い切った。

「あっ、う、うん……」

 その語気に圧される形で、うなずく。待ってたとばかりに、水実が言葉を挟んだ。

「まとまった? さっさと出るわよ」

 尖った言い方をすると、二人の返事を待たずに、出入り口へと足早に歩いていった。

「あっ、待ってよ、水実ちゃん!」

「せっかちだな……」

 置いていかれた二人が、慌てて後を追った。最後まで、周囲の目線を気にしている様子はなかった。

 扉から、続々と外に出る。最後に出た大幸が後ろ手で扉を閉めると、タイミングよく、有紗の携帯に二回目の呼び出しがきた。音の少ない廊下で、携帯のバイブが響く。他の二人に目配せし、彼らがうなずくのを見てから、有紗は通話ボタンを押した。

『もしもし、あっちゃん!?』

 耳慣れた少年の声がした。いつもより早口で、どこか焦っているような印象を受ける。声も、ずいぶんと大きかった。

「うん、私だよ。なにか分かったの?」

 わざわざ指摘せず、重要な情報をまず問う。話の腰を折るよりは、早く内容を聞いた方がいいという判断だった。

 しかし、思っていた言葉とは違い、

『月原さん、そこにいる?』

 まず水実がいるかの確認だった。こちらの問いかけへの答えではない。今すぐ同業者である彼女に、何か伝えなければいけないのだろうと頭では納得したが、どこか釈然としないものを感じた。

「うん、いるよ。代わった方がいい?」

『あっ、うん。お願い』

 その感情を表には出さず、冷静に話を運ぶ。耳から携帯を離し、水実へ差し出した。

「水実ちゃんに言いたいことがあるんだって」

「あたしに?」

 一度、顔をしかめてから、彼女はそれを受け取った。

「もしもし」

『あっ、月原さん!? 相手の正体が分かったんだ! あの女の子は』

 そこで、正義の声はぶっつりと切れた。彼の声の大きさに、携帯から距離を離していた水実が不思議に思って耳に当てる。しかし、無音だった。

「何これ。切れちゃったわよ」

「えっ、嘘。ちょっと見せて」

 異変を伝えられ、有紗か手にとって画面を見る。すると、

「……圏外になってる」

 圏外の表示が出ていた。

「圏外?」

 大幸が訝しげな声を出し、画面を覗く。

「……本当だ。どうなってるんだ? ここは、そんなことになる場所じゃないはずなのに……」

 そこで、ふと気づいて、彼は自身の携帯をズボンのポケットから出した。待ち受けのアンテナ部分を見る。最大三本の棒が立つそこには、今は黒で圏外の二文字が書かれていた。

「……なんだこれは。君の携帯はどうだ」

 冷や汗を感じながら、大幸は水実に話を振った。

「あたしはそんなもの持ってないわよ」

 一瞬、他二名が固まった。

「……持っていない?」

「ええ。今まで、必要なかったもの」

 大幸の問いに、水実は何がおかしいのかと言わんばかりの真顔で答えた。圏外の携帯を握りながら、学生二人が目を合わせる。

「そんなことより、それたぶん、敵の仕業よ。やったことが小さいから、あたしじゃ霊力を追えないけど。妖怪ならともかく、幽霊っていうのは、電波障害を起こしやすいから。無意識でも、意図的でもね」

 それにかまわず、水実は冷静に状況把握につとめる。辺りを見回して、周囲に他の人間がいないかどうかと、もう一度霊力の気配がないかを確認した。結論として、どちらも見つけられなかった。

「ダメか。あいつは、なんで追えるのよ」

 腕を組んで、不満をもらす。あの少年にできて、どうして自分にはできないのか。

「とりあえず、携帯じゃなくて電波がやられているから、ここじゃどうしよもないわ。中で電話するのはだめなの?」

「えっ? なんで、中なの」

 水実の言葉に、有紗は首をひねった。外でだめなら中、という発想が理解できなかったのである。

「人からはずれた存在っていうのは、よほど強力な奴じゃないと、生身の人間が大勢いる空間でなかなか力が発揮できないの。怪奇現象の類を、一度に大勢が体験したって話はほとんどないでしょ? まあ、離島とか山に囲まれた小さな村とかは、例外だけど」

 かったるそうに頭に右手を当てたものの、水実はきちんと説明をした。聞いた二人が、納得してうなずく。

「なるほどな」

「へえー。そうなんだ」

 ただ、

「でも、中で電話しても、すぐ先生に追い出されちゃうよ」

 提案自体は受け入れられなかった。

「面倒ねえ。じゃあ、他にどっか人がいる場所は? できるだけ、大勢」

 水実は肩をすくめ、そう尋ねた。大きい校舎の廊下であり、空間が教室のように区切られていないため、危険はあまりないが、人の姿がないのは不安要素の一つだった。彼女としては、早く移動してしまいたかった。

「うーん……」

 有紗が考え込む。大幸も口元に手を当てた。

 しかし、水実はその答えを待たずに、

「ああ、別に難しいことじゃないじゃない。とりあえず、この校舎から出ればいいのよ。閉ざされた空間でさえなければ、どうとでもなるわ」

 勝手に言って、出口を覚えていたのですぐさま歩き出した。

「あっ、待ってよ!」

「はあ……」

 教室を出たときと同じ構図になって、二人は堪え性のない少女を追った。

 水実は、出口の扉を勢いよく開け放った。灰色の空が広がっている。辺りにはまばらに学生の姿があり、人数の合計はそこそこだった。

 後を追ってきた二人が出てきたところで、振り向いて口を開く。

「どう? ここなら、いけるんじゃない」

「えっ? あっ、見てみる」

 いきなり言われて、一瞬戸惑ったが、すぐに意味を察し、有紗は携帯を出して電波状況を確認した。アンテナは、二本立っていた。最大ではないが、電話にはこと足りる。

「うん。大丈夫。いけるよ」

「俺のも大丈夫だ」

 二人の返事に、水実は満足そうに笑った。

「よし! じゃあ、さっさと電話しなさい。電波妨害を起こしたってことは、向こうが不都合な事実かもしれないと思ったっていう証明だもの」

「分かった。私が電話するね」

 有紗が了解し、着信履歴から正義を選び、発信ボタンを押す。

 その様子を、水実は強気な笑顔を浮かべて見ていた。電話に気をとられていたために気づかなかったが、大幸は軽くうつむいていて、どこか不安げだった。

 しばらくして、正義の声が電話から伝わってきた。

『もしもし、あっちゃん?』

「うん、そうだよ。さっきはごめんね。ちょっとハプニングがあって。今、水実ちゃんに代わるから、説明はあの子から聞いて」

『分かった』

 かなり少ないやりとりで済ませ、有紗はすぐに携帯を水実に回した。どことなく、投げやりな感じに。

「もしもし」

『あっ、月原さん』

 先程よりも、少し落ち着いている様子だった。一度通話が切れたことで、焦りはしながらも冷静さを取り戻したらしい。

「さっきのことは、後でちゃんと説明したげるから、まずはそっちから話しなさい。敵の正体が、分かったんでしょ?」

『うん。写真で外見も一致したから、間違いない。あの子は……』

 そこで、言葉が一度途切れた。さっきのこともあり、水実が耳から携帯を離し画面を確認する。

「……まさか、また切れたとかじゃないでしょうね」

『あっ、ごめん。大丈夫だよ。ちょっと考えてて』

 つぶやくと、正義の応答があった。

「もう、びっくりさせないでよね。なんでもいいから、早く相手の情報をよこしなさい」

 文句を言ってから、催促した。また妨害をかけられないとも限らない。さっさと聞いておきたかった。

『それなんだけど、大きな声で反応しないでね』

「……はあ?」

 正義の注文に、彼女は訝しげな声を上げた。意図が理解できない。

『河竹くんもそこにいるよね?』

 自分の反応にかまわず問いかけをされ、少しムッとしたものの、それに答えた。

「あの押したら倒れそうな、存在感薄い男でしょ? いるわよ」

『河竹くんには、今から僕が話すことを知られたくないんだ』

「知られたくない?」

 水実は首をひねった。

『うん。できれば、僕から直接話したい』

「なんでよ」

 率直な疑問を口にする。

『面倒な展開になるかもしれないから、慎重にいきたいんだ。人づてだと、ちょっと不安で。実際に色々と立ち会った僕から話した方が、たぶんまだ安全だと思う』

「ふーん……。まあ、いいわ。あんたの言うとおり、内容を漏らさないようにするから早く話しなさい」

 説明されたものの、何がどう不安なのか、いまいち捉えきれなかったので、とりあえず先を促した。

『あっ、うん。えっと……』

 それに従い、正義は大幸の地元で知った事実を伝える。

『昨日の女の子の正体は、池田あかりっていう子で、二年前に死んだ、高橋くんの恋人なんだ。写真も見たから間違いない』

「恋人……」

 静かにつぶやき、横目で大幸へ目をやる。正義の言わんとしていたことを、ようやく理解した。

「なるほどね。確かに慎重になるわけだわ。どう転ぶか、分からないものね」

 自分の声と、携帯から漏れる正義のものが他二人に聞こえないように、有紗たちに背を向けて携帯を覆うように手を添えた。

『うん。だから、僕から話したいんだ』

 直接情報を得たうえ、友人でもある正義から話した方が、まだ危険は少ない。肌で、恋人を失った彼の周囲の空気を知っているのだ。ヘタをすれば、霊であるのにもかかわらず、恋人に与する可能性があった。

「そこまでは分かったわ。それで、媒体がなんなのかは分かったの?」

『そのことなんだけど……』

 正義はためらいを見せた。予想はあるが、言いづらいという感じだった。

 媒体というのは、霊にとっての依り代のようなもののことである。現世に異変を起こせるような霊のだいたいはこれがあり、そこが彼らの核となる。ようするに、力の源なのだ。裏を返せば、それに正義たち陰陽師が助霊の力を使用すればいかに強力な存在でも成仏させられるという、いわば弱点だった。なお、ものだけに限らず、人間が媒体になっていることもある。

 ただ、これを発見するには、霊の気配が消えた地点からあたりをつけ、手で触れなければならなかった。そうすることで、初めて媒体であることが分かるのだ。近くにいるだけでは、媒体が霊の気配を完全に包んでしまい、どんな陰陽師でも気づけない。

「何よ。そっちも厄介なの?」

 他二人への配慮から、声を潜めて尋ねる。そちらを振り返ることもしなかった。

『うん。媒体はたぶんあかりさんの遺骨の一部なんだけど、それのある場所が問題なんだ』

「場所が?」

 オウム返しで訊く。嫌な予感がした。

『そうなんだ。池田さんのお母さんにも会ったんだけど、話によると遺骨の一部を“河竹くん”が持っているらしいんだ』

「はあ!?」

 不本意にも、声を上げてしまった。しまったと思いながら、首をわずかに曲げ、後ろの二人を確認する。

「えっ……?」

 今度は、声を失った。

『どうしたの?』

「あ、えっと……」

 水実は答えに窮した。

 二人の姿が、なくなっていた。

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