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第5話

「さあて・・・どこまでももつかな?東洋の超能力者!」禍風の右手から放たれた風の刃

は信仁に一直線に進んでいく。

「インビシブル・バリヤ―!」信仁が両手を前に掲げそう叫んだ瞬間、風は信仁に直撃した。「ぐわぁぁぁぁ!!」叫び声と共に信仁の体が軽く5メートルは吹き飛ぶ。


「ふん・・・・なるほど力は本物のようだな。」禍風はおのれの両腕に新たな風の刃を生み出しながら、信仁を見た。

「『吹き飛ばされた』ということは、何かの力が攻撃をある程度防いだということだな。その反発で飛んだのなら納得がいく。だが・・・」禍風の口元が歪む、笑っているのだ。


「少年、貴様の力により作りだされた盾は相手の攻撃を『弱める』と言っていたが、それは間違いだ。俺は自分の力の強弱がすぐにわかる。だからこそ言えることだが貴様のその盾は相手の攻撃によるダメージを『半減』するようだ。」信仁は地面に倒れながら男の話に耳を傾けていた。起き上がろうも体が重くて持ち上がらないのだ。


「道理で、俺の部下が放った拳銃弾を喰らって死なないわけだ。実に反則な技を使うんだな。だが、それは俺には通じんぞ。」禍風は自分の両手を見つめる「俺の力は、わが名の通り『風を制御する力』だ。貴様に放った『風剣』はまだ低レベルの攻撃でしかない。

それを、貴様の力で半減してこのざまなら、貴様には勝ち目などないぞ。」


信仁は舌をかむ思いで、禍風の方に顔を向けた。

(いったい、なんなんだよ。こいつ・・・)

信仁の頭には混乱が広がっていた。

(今までの奴らとレベルが違いすぎる。)

信仁は今までも、地元のチンピラやヤクザ。果てはマフィアなどと戦った経験を持つ。

その戦う理由は、今とそう大して変わらない。苦しむ人、弱き立場に立つ人を助けるため。

それだけのために、信仁は自らが持つ『不思議な力』を振るい戦ってきた。

しかし、今まで相手を倒せてきたのは、相手があくまで『普通』の人間だったからだ。

こんな『超能力者』相手にまともにやりあうことができるはずがない。


「だから、なんだってんですか?」今のままではかなわないことはわかっている。それでも、自分の後ろに弱き立場に立つ人がいる以上、自分がやらなければならないことは決まっている。

「今の僕の力では、彼女どころか僕自身も守れない。そんなことわかってる。だけど、自分の理屈で、自分の勝手で、護ろうとした人の運命を放り投げるなんて・・・そんなことは絶対にできない!」それは禍風だけに向けられた言葉ではない、自分に向けた言葉でもあった。

弱気になりがちな自分の心を支えるためには、自分から心に刻んだ信念を再確認しなくてはならない。そのために自分にも言い聞かせることを心掛けているのだ。


「ふん、あくまでも立ちふさがるか。」再び上げられる両の腕「ならばけし飛べ、わが風と共に!」夜の空に禍風の声が凛と響く。「旋風斬!」声と共に禍風の両の手のひらからすさまじい旋風が吹き出る。


「本当は生きたまま捕まえて、サンプルにしたかったんだが仕方ない。どの道貴様程度の実力だったら、あえて捕獲する意味もない。よって・・・全力でつぶさせてもらう。」

禍風の手のひらの旋風はやがて巨大な剣の形を保ちだす。


「さあて、最後の選択権を与えてやる。そこにいる女をこちらに渡して生き延びるか。それとも、あくまでその女を守って死んじまうか。」信仁は唇をかんだ「そんなの決まってる・・・たとえ僕の命が尽きようとも、僕は最後まで自分の信念を曲げはしない!」


「そうか・・・・なるほど・・・愚かな選択だな。ぼうず。」禍風は苦笑を浮かべる

「その感情は、『勇気』とはいわないタダの『馬鹿の咆哮』だ。」禍風の両手が動く

身構えた信仁に、禍風は最後の言葉を放った「俺以外の超能力者と会ったのは久しぶりなんで期待したんだが・・・・とんだ期待はずれだったよ。」無造作に振るわれた禍風の両腕。

そこから放たれたふた振りの刀。それを視界にとらえるのが精いっぱいだった。


信仁の体は、上空に舞い上がった。体のあちこちが何かに切り裂かれていくような感覚の中、信仁は眼下の風景に目をやっていた。激痛が体中を駆け巡っているはずだ。だが神経が麻痺しているのか、その感覚がやってこない。


眼下では禍風と名乗った男がこちらを見上げている。表情はよく見えないが、おそらく笑っているのだろう。

だが、信仁の視線は、禍風だけに向けられているのではない、むしろ信仁が向けたかったのはたおれていた彼女の方だった。


だが、今頃になって激痛が体に回りだし、視界も薄れていく。(くそ・・・彼女だけでも今のうちに逃げられれば・・・)薄れていく視界、その端にようやく彼女をみつけた。だが・・・

(なえだろう・・・・なんか違和感がある)その違和感の正体を信仁は知ることはできなかった。信仁の視界が完全に暗闇に覆われ意識がやみの中に沈んでいく。

(く・・・そ・・・・・)暗闇の中必死に伸ばした腕も届くはずもなく、信仁の意識は完全に消えていった。


信仁の意識がもう少しはっきりしていたら、違和感の正体を知れただろう。

なぜなら、彼が守ろうとしていた少女は『立ち上がって』いたのだから。


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