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きょうはん  作者: 葉渡
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第一章

「きりーつ、はよざいまーす」

朝の号令とともに始まった新たな一日。担任が再び挨拶をし、今日の連絡を伝える。今日は六時間五十分授業だとか、朝の補習に行かなかった奴がいるだとか。そんなことをつらつらと話して、朝のSTが終わった。それぞれがばらばらに動き始めた。友達のところへ向かう人、授業の準備を始める人、机に突っ伏して寝る準備を始める人。さて、自分はどうしようか。一限は数Ⅰ。数学、英語は基本持ち帰っているので、鞄からとりだしてしまえば準備はすぐに終わってしまう。なら寝るか、いや、このタイミングで寝るのは違う気がする。なんとなく。もういっそのことトイレに…と思って時間を確認したらもうなんだかんだ後三分しかなかった。思ったより時間が過ぎていた。机の横に掛けてあった鞄の中から数Ⅰの用具を取り出し、机の右端に揃える。扉が開く音がして見るとジャージ姿の先生が教室に入ってくる。先生が入ってきたと同時に時間を見たか周りのクラスメイトは席に座り始めた。さっきの騒がしさとは打って変わって、空気の音が聞こえる程の静寂が訪れた。その十秒後に授業開始の合図が鳴る。号令を促され、学級委員が挨拶をする。


 三限目、地理の授業。さっき授業のチャイムが鳴ったばかりだが、先生はまだ来ていない。まあこれは日常茶飯事で、周りもそれほど気にしていない。今ちょうど二分程経ったから、そろそろ。

「はーいごうれーい」

扉を閉めながら教卓までゆっくり歩いている先生を気にもせず、ただ指示通りに動く。着席してすぐ、教科書を開かされる。開いたはいいものの、今日は最高気温が何度だー、政治がどうだー、嫁さんがこうだー、と教科書とは関係ない世間話をする。当然、まともに聞いている人など存在せず、机に突っ伏して睡眠学習にはいったり、他教科の課題を進めている人達が半分をしめていた。

話が終わったのか、はーいじゃあ、、と座席表を手に取り、誰をあてようか見定めている。といっても、この人は日付と同じ番号を当てるから。。あ

「じゃあ甲斐(かい)。本文読んで」

十四日。すっかり忘れていた。とりあえず指定されたところを読んだ。答えるのが問題じゃなくてよかった。適当に読み終えたら、次は後ろの席の人が当てられた。地域の気候についての質問だった。その後ろの席のまた後ろの席の人が次当てられるだろうと思ったのか教科書を開いていつ来るかと待ち構えていた。残念ながら、その予想は外れて右の席の人が当てられた。当てられると思わなかった本人は、質問の内容は聞き取ったものの、教科書のページをペラペラとめくっては素早く目を動かしている。待ちくたびれた先生が、「はい時間切れー、ちゃんと話きいとけよー」と言い隣の人にまた同じ質問をした。もう答えを用意していたのか、聞かれた瞬間にパッと答えた。そうして次々と当てられていき、また自分の番がくる四番目の前でチャイムが鳴った。号令をして、授業が終わった。授業中とは打って変わって騒がしくなったクラスに少し苛立って、すぐに落ち着いた。


放課後、皆ぞろぞろと帰り始める。部活の準備で着替える人や、友達と待ち合わせしている人。自分も例外ではなくて、これから部活に行く。写真部だから、カメラは鞄に入っているし、今から特に準備するものはないのでそのまま教室を出る。青みがかった廊下に、クリーム色の階段、さっきより白みが増した渡り廊下、窓の外は自転車があちらこちらと行き交っていた。しばらく歩いて、多目的室のドアを開くと三人ほどがこちらを向きすぐに元向いていた方に戻った。後ろから二列目の長机の一番右側に座り、鞄からカメラを取り出して、電源をつける。容量を確認して、試しに一枚、外の風景を撮る。外は大きな木に覆われていて、その奥にはグラウンドで微妙に見えるサッカー部が走り込みをしていた。その少し手前側には陸上部。一見どっちがどっちかTシャツがないと見分けがつかない。様子をじっくりと観察していたら不意にドアが大きく開かれた音がした。眼鏡をかけた頭の両側にだけ髪の生えた顧問と、背丈の高い制服姿の男が顧問を先頭に入ってきた。

「えー急ですがこの部活に新しい部員が加わります。間地光多(まじみつた)君です一年生です。テニス部から転部してきたそうです。まあみなさん仲良く受け入れてあげてください。席はいっぱい空いてるから適当に座って」

そういわれた後間地は少し全体をきょろきょろした後、真っ先にこちらに近づいてきて自分のすぐ隣に座った。は、なんで。

「写真部って何撮るの」

不意に間地が尋ねてきた。何も聞かされてないのかよと思ったが、あの顧問のことを考えたらそりゃそうかもしれんと思ったので普通に答えることにした。

「その辺の景色とか。あと部活動新聞の写真とか撮ったりする」

「あーそういえば前来てたなあ、あれ写真部だったんか。新聞部が全部やってんだと思ってた」

「今日は何撮んの」と聞かれたので今日は部活動の写真を撮るといった。陸上部と卓球部とテニス部。取り終わったら顧問に提出して解散。と言ったら「げっ」と間地が声を漏らした。

「テニスあんのかよ。絶対行きたくないんだけど」

「担当は先生が決めるから、流石に気使ってくれるんじゃない」

自分と間地はテニス部の担当になった。あの顧問は本当に何も考えてないみたいだ。間地は部に入って早々「あの顧問くそだわ」と言って、思わずにやけてしまった。


翌日。四限が終わり昼休みに入った。普段は鳴った瞬間に弁当を取り出して食べ始めるのだが、今日はそうにもいかなかった。ガラガラとドアがスライドされる音が聴こえた。振り返ると、財布を持った間地とその後ろに二人立っていた。

「ご飯食べよ」

席を立って間地についていく。どうしてこうなったのか。昨日昼は一人で食べていると話したせいかもしれない。その時は興味なさそうに聞いているように見えたのに、帰り際に「じゃあ一緒にご飯たべる?あと二人いるけど」と唐突にそう言ってきた。同情していってきているのかと思い最初は断ったが、何故か強引に誘ってきたので断れなくなってしまった。間地は購買に行くらしく先に行っててと言い小走りで階段を下りて行った。自分達は体育館の方へ行き、体育館入り口前の通路に一つ空間を空けて三人で座った。若干の気まずさを感じつつ、さっさと弁当を開けて食べ始めた。「名前、甲斐であってる?」と自分から見て右側にいる短髪で自分より少し背丈に低い間地の友達が話しかけてきた。

「俺北村集人(きたむらしゅうと)。よろしく、でこっちが」

中村広樹(なかむらひろき)

「…甲斐恵亮(かいめぐる)です」

「タメ口にしよ気まずいし」

自己紹介をした後、クラスの話や部活での話をしている途中で間地が右手にメロンパンの袋を握りしめて左側に座った。

「ぎりあと一個残ってたわ」

「あれ、飲み物買ってきてないの」

「金なかった」

間地は右手をぶらぶらさせて、メロンパンの袋を開けて口を大きく開けて食べ始めた。しばらくお互いのことを知るために『どこの中学』とか『何部だった』とか色々質問されてすべて一言で答えた。

少しの沈黙が流れて北村が突然「そういえばさ」と切り出した。

光多(みつた)ってなんで前の部活やめたん?小学校からやってたんでしょ?テニス。もったいなくね」

間地は瞬きを二回程した後「あーね」と答えて続けた。

「ここのテニス部結構緩くてさ、なんか真面目にやろうともしないし、いざ試合するってなっても準備は遅いわ試合中おしゃべりするわでもうやってられなかったんだよ」

「あーそれはだるいわ」と北村が共感する。中村も「確かに合わなそう」と同情した。間地は続けて愚痴をこぼしていた。間地のテニス部に対しての嫌悪と、静かな怒りを聞きながら、食べかけの卵焼きを突き刺した。




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