101 建築ミッション
ポケモンの新作が出るみたいですね。今からすごく楽しみです。
【大陸歴1415年10月17日 日没直後】
〈十四郎視点〉
せっかくマールが帰ってきて、面白い話が聞けるかと思っていた矢先、唐突に始まったこの外交イベント。
貴族風のいけ好かないイケメンと、マッチョなナイスガイおっさんとの長いイベントムービーが終わり、ようやく俺のターンがやってきたようだ。
銀髪の褐色イケメンから提示されたミッションは「大きな船が三隻停泊できる桟橋を作れ」というもの。
このゲーム始まって以来、初の建築系ミッションだ。
これまでもいろんな物を作ってはきたけど、あれは皆で話し合い、試行錯誤しながら作ってきたもの。
別に制限はなかったし、明確な条件も提示されてなかった。
ここでようやく、俺の建築スキルが試されるというわけだ。
これは張り切るしかないだろう。
でも、困ったことに、俺は建築系の知識がほとんどないんだよね。
一応、大学でデザインを勉強したから多少はかじってるけど、大型の港湾施設を作るような知識は当然持っていない。
そこで、ミッションの詳しい条件を確認しようと思って、質問してみたのだ。
「どんな物を作ればいいのか分からないから、具体的に教えてほしい」って。
そしたら、ナイスガイなおっさんが、やけに詳しく説明してくれた。
なるほど、このおっさんはチュートリアル担当ってわけだ。マールとも仲いいみたいだし、お助け要員的な感じなのかもね。
ユーリィとパトラに通訳してもらって、おっさんの話はなんとなく分かった。
要は、耐久と安定のバランスが大事だよ、ということらしい。柱の建て方とか、しっかり図まで描いて説明してくれたから、かなり分かりやすかった。
建築予定地は、拠点の西壁。
扉ゴーレムの大門は南側にあるから、そこから見ると左側に船の発着場を作ることになる。
予定地に停まっていた船は、すでにイケメンが人を走らせて、どかしてくれている。
基本いけ好かないけど、なにげに有能な奴だ。ミッションの試験官なんだし、当然か。
どうせなら、この試験官の予想を遥かに上回るような物を作ってみるか。
まずは桟橋の基本設計から。
オッサンの説明では、とにかく長い桟橋を真っ直ぐに作るってことだった。
ただ、これだと拠点から離れすぎてしまうんだよね。
防御や荷物の搬出入を考えたら、拠点からできるだけ近いほうがいい。
今来ている船で一番でかいのは、このイケメンが乗ってきた三本マストの帆船だ。
ざっと見ただけでも、全長5,60mはありそう。これが三隻と考えると?
一番いいのは、やはりT字型だろう。
中央の橋を広く作り、そこから横に停泊用の桟橋を伸ばしていくパターンだ。
中央の動線と停泊場所を分けたほうが、人の流れは整理できる。
一つの桟橋に一隻ずつ停まると考えれば、中央から3本の桟橋を伸ばせばいいってことだな。
でも、3本だとなんとなく座りが悪いから、左右対称に4本伸ばすことにする。
将来的に船が増えるかも知れないし、多い分には、別に構わないよな?
一本の桟橋を幅10m長さ80mくらいにすれば、大型の帆船も十分停泊できるはず。
そうなると、動線が混乱しないように、中央の橋は少し広めにしたほうがいいかも知れない。幅20m長さ120mくらいだろうか。
俺の領地にするための緑の立方体は5m四方。
だから、この設計でざっと計算すると・・立方体224個が必要ってことになる。
砂の中に五メートルほど基礎を沈めて足場を作り、その上に桟橋を乗せるなら、必要個数はその倍。
つまり448個か。それならギリギリ足りそうだ。
まあ、細かい部分を含めたらもう少し食うかもしれないけどな。それでもなんとかいけると思う。
そうだ。西の外壁に繋がるなら、そこに拠点への搬出入口を作ったらいいな。
ついでに倉庫も作っておくか。ちょうどそのあたりは、空き地になってたし。
あとは、防御面も考えたほうがいいな。ナイスガイなおっさんが、風よけの壁をつけろって言ってたし、ついでに屋根もつけちゃうか。
それなら空から魔獣が来た時の避難所としても使えるな。
後々に、自走式ゴーレムトロッコとか走らせたら、荷物の運搬も楽になりそうだ。
ん、待てよ? 避難所っていうんなら、桟橋自体の中を空洞にして、中に人が通れるようにしたらどうだろう?
桟橋がそのままデカい半地下通路になる感じだな。
荷物と人の流れは分けたほうが安全だし、砂嵐のときにも使える。
ナビさんが作ってくれるこの壁はかなり丈夫だし、結構な広さの通路が確保できそうな気がする。
うん、それでいこう。
いいな、なんか楽しくなってきた。
でも、これ全部作ったら、外壁や水路を作ったとき以来の建築規模になるぞ。
レベルアップ直後で、立方体とmpにゆとりがあってマジ助かったよ。
プランもだいたいできたし、まずは立方体を配置していくか。細かいところは、あとでアップデートしておけばいいしな。
俺は建築予定地に立方体を配置するため、浮遊してその場を離れた。
「主様、お一人では危険です!」
「大丈夫だよ、パトラ。もう、日が暮れるから、魔獣もあんまりでないだろうし。でも一応、周囲を警戒していてくれると助かる。あと、ユーリィを守ってあげてくれ。」
「分かりました。主様に近づく者は皆、私が排除いたします。」
彼女の言葉が終わらない内に、外壁を警備していた彼女の分身体の一体が、俺の方に駆け寄ってきた。
パトラはやけにピリピリしている。あのイケメンのことをかなり警戒しているようだ。
あいつ、思ったよりヤバいやつなんだろうか?
外壁を離れた俺を見て、周りにいる人たちが「おおっ!」と歓声を上げた。
てか、ギャラリー多いな。全員ここらへんに集まってきてないか?
こりゃますます、変なもの作るわけにはいかないな。
30分ほどかけて立方体を配置し終えたときには、もうすっかり夕日が消え、2つの月が辺りを照らしていた。
この世界、月が2つあるから、現実よりも、かなり夜は明るいんだよね。
よし、ここからはいよいよ、現役デザイナーとしての腕の見せ所だ。
俺は建築アイコンを起動させ、実際の風景の上に、3Dで表示されたデザイン案を表示させていった。
〈アーディル視点〉
外壁を離れた光る球体。御使いは建設予定地をしばらくフワフワと飛び回っていた。
夕闇の中、小さな点がゆらゆらと動いているのだけが見える。
一体何が始まるのかと、集まっていた物見高い野次馬たちの中からも、静かなざわめきが聞こえ始めた。
「御使い殿は、一体何をしているんだ?」
ユーリィに尋ねると、彼女は笑顔で答えた。
「桟橋を作るための場所を決めていらっしゃるのだと思います。何か作るときにはいつも、最初にああやって場所を決めていらっしゃいますから。」
やけに実務的な返答が返ってきたことに、思わず黙り込んでしまった。
これでは神の奇跡というより、建築士たちの測量の様子を見ているようではないか。
そう思ったその時、アーディルは地面の奥から、低く唸るような魔力の波動を感じた。
ハッとして周囲を見るが、気づいたのはザヒールとマールを除けば、ほんの数人。
おそらく魔力感知に長けた者だけが、これに気づいている。
周囲を警戒し、魔力で自分の身を守ろうとしたその時、その奇跡は突然、目の前に出現した。
淡い光の線が、まるで定規を使って引いた図面のように砂の上へ伸びていく。
しかし、群衆からは何の反応もない。高い魔力を持つものだけにしか、この線は見えていないようだ。
続いて、正確で緻密なその線に沿って、地面から湧き上がるように石塊がせり上がってきた。
砂が震え、低い唸りとともに地面が隆起する。
ここでようやく、群衆からどよめきが起こった。
せり出した石塊は、見る見る間に形を変えていった。
太い石杭が砂を割って現れ、寸分の狂いもなく一直線に並ぶ。
その後、杭はひとりでに斜めに傾き、流れを受け流す角度を形作った。
見る見る間に足場が広がり、巨大な桟橋が出来上がっていく。
だが、それはザヒールが描いた図よりもかなり広い。
大型砂上船の舷側(およそ5m)ほどの高さを持つ広い桟橋。
その上に、次々と太い石柱が立ち上がり足場になっていく。
やがて、すべての足場同士はつながり、平屋根と防砂壁が出来上がった。
桟橋が接している西の外壁も大きく形を変える。
桟橋に繋がるアーチ型の出入口が現れた。同時に外壁の内側に、巨大な倉庫が地面からせり上がるように姿を見せた。
倉庫と外壁とは、荷運搬用の傾斜路でつながっている。
本国の主要港をも凌ぐ規模の桟橋が、たった一呼吸のうちに完成した。
風を和らげる防壁は自然な曲線を描いている。磨き上げられた砂色の素材には、何の継ぎ目も見当たらない。
その場にいた誰もが息を飲み、目の前の光景を呆然と見つめた。
しかし、そのとき誰かが小さく「すごい・・!」と叫んだ。
その叫びはやがて大波のようなどよめきとなって広がり、静寂を一瞬でかき消された。
「これ一体、何隻停められるんだ?」
「こんな桟橋、今まで見たことねえよ!」
「内砂海の船が全部ここに集まってくるぞ! 交易でがっぽり儲けられる!」
「これが神の奇跡・・!!」
群衆の中には、その場に膝をついて祈りを捧げる姿が、チラホラと見受けられた。
歓声はやがて、一つの方向へと収束していく。出来上がったばかりの桟橋の上を漂う、小さな光球へと。
かすかに咳払いをする音がして、後ろを振り返ると、ザヒールがマールに何事か耳打ちをしているところだった。
ザヒールは常になく厳しい表情をしている。しかし、それは彼も同じこと。
これは交易港としてみるなら、やや過剰。
だが、軍港としてなら完璧だ。必要な機能が、すべて過不足なく揃っている。
あまりにも完璧すぎた。これを単純に奇跡と断ずることは、到底できない。
御使いはザヒールの説明した設計思想を理解し、更にそれを上回る物を出してきた。
そこには明確な『意志』が感じられる。
この規模ならば、軍船三隻どころではない。桟橋の両面を使えば、最大で八隻。
随伴の小型船も含めれば、一個艦隊を駐屯させることも十分に可能だ。
さらに、補給動線・備蓄なども考えられた配置。
この村に湧き出す水量を考えれば、そのまま兵站拠点として利用することもできる。
これはもう、辺境の村に起こった奇跡ではすまされない。
ここを押さえれば、内砂海の制海権は完全に掌握できる。逆に失えば、本国に重大な危機をもたらすことになる。
文字通り、国家の趨勢を左右する戦略拠点。
御使いの力は限りなく有用。そして同時に、恐ろしく危険だ。
何が何でも国家の管理下に、そして出来ることなら、自分の属する主戦派の下へ置かねばならない。
恐れ慄く人々をよそに、御使いがフワフワと漂いながら、ユーリィの下へと帰ってきた。
「見事です、御使い殿。まさかこれほどの力を持っているとは、思いませんでした。」
ユーリィは、アーディルの言葉を御使いに伝えた。すると、彼女は無邪気な笑顔で、こう返答をしてきた。
「満足してもらえてうれしいと、御使い様はおっしゃっています。出来れば桟橋の中も見てほしいそうです。」
「桟橋の中・・? それは一体どういうことですかな?」
「あの桟橋の中には、倉庫に続く通路が作ってあるそうです。」
アーディルは、二の句が告げなくなり、目の前で揺れる光球を呆然と見つめた。
「それは・・一体どういう意図で?」
尋ねてから「しまった!」と思い直す。
桟橋の中に通路を通すなど、完全に軍事拠点としての運用を意識した構造だ。
もしも、御使いに敵対の意志があるとすれば、これはあまりにも迂闊すぎる質問。
しかし、彼のそんな内面とは裏腹に、ユーリィは無邪気な笑顔で、御使いの言葉を伝えてきた。
「特に意味はないそうです。」
一拍置いて、ユーリィは可愛らしく小首をかしげた。
「強いてあげれば、便利そうだから、とおっしゃっています。」
意味はない。それは文字通りの意味か。それとも、こちらを欺く虚言なのか。
探ろうとしても、目の前の光球はただフワリと揺れるばかり。表情も何もない相手だけに、真意を探る糸口すら見つからない。
この御使いの力、本国に何と報告すべきだろうか?
2つの月が、完成した港を祝福するかのように輝いている。
周囲を明るく照らす御使いを見つめながら、アーディルは未だ、その答えを決めあぐねていた。
種族:迷宮核
名前:澤部十四郎
迷宮レベル:12
総DP:10120
獲得DP/日:30830
消費DP/日:31600
種族:迷宮守護者
名前:ユーリィ
職業レベル:9(ガーディアン)
強打L4 突撃L6 短剣術L7
暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1
操船L2 登攀L4 騎乗L3 詐術L3
装備:守護者の剣
(自動回復L6 自動反撃L3)
守護者の鎧
(斬撃被ダメージ軽減L4 酸耐性L2
熱耐性L2 炎耐性L1 毒耐性L2
土魔法耐性L1)
水鏡の円盾
(光線攻撃反射L5 石化耐性L5
魔法耐性L3)
種族:人間
名前:フーリア
職業レベル:7(デザートシャーマン)
危機感知L3 自然の祝福L4
不死者払いL4 浄化L3 小治癒L5
お読みいただき、ありがとうございました。




