プロローグ
魔獣の設定をいっぱい書きたくなって始めました。ご笑覧いただけましたら幸いです。よろしくお願いします。
熱い日差しを容赦なく照りつけていた太陽が、ようやく姿を隠した。
残光に輝く石造りの建物の間を、涼しい風が吹き抜けると、それを待ちかねていたかのように、ターバンを巻いた商人たちがいそいそと、露店の準備を始める。
「お兄さん、見ていっておくれよ! 正真正銘、掛け値なしの一級品ばかりだよ!」
「さあさあ、東方から伝わってきた魔法薬をご覧あれ! ほんの一滴垂らすだけでほうれ、この通り! どんなサビでもあっという間に・・・!」
魔法の街灯で照らされた明るい通りのあちこちで、商人たちの口上が響く。
彼らが呼びかけている客の姿も実に様々だ。
並べられた剣に足を止めるのは、立派なとさかを持つ蜥蜴人の男。
客引きの手を、うるさそうに副腕で払いのけている蜘蛛人族の娘。
宝石と銅貨を手に、声高く交渉しているのは、強欲で知られる地霊人族たちだ。
西方からやってきたと思われる修行僧の一団は、仕事場へ向かう美しい酒場女給にすっかり目を奪われている。
そんな彼らの財布を狙っていた草原小人族の盗賊は、衛兵の姿を目ざとく見つけて、あっという間に姿を消した。
酒場女給が歩いていく通りの奥へと目をやれば、そこは一層華やかな店々が並ぶ。
通りに並べられたベンチに座り、思い思いに酒を酌み交わす冒険者たち。
南方の港町で好まれる糖蜜酒。舌が焼けるような丘小人族の火酒。はるか北方の草原地帯から運ばれてくる麦酒。
この街では何だってござれ。世界中から集まってくる冒険者のために、どんな酒でも取り揃えられている。
酔客たちの喧騒を縫うかのように、美しい声を響かせるのは半妖精族の吟遊詩人。
彼女が歌うのは、この街に伝わる古い古い叙事詩。リュートの調べに乗せられた言の葉に、酔客たちは声を無くして聴き入っていく。
ああシャーレ 美しき砂の徒花
飽くこともなく 飲み干すは
さまよい惑う 人の業
まぼろし追うは 猛き戦士
くがね求むる 艶し手弱女
死にゆく我子を 救うため
見果てぬ夢を 掴むため
愛しき故郷 守るため
明日をも知らず 迷い路の
暗き顎に 身を沈む
雄々しき腕に 残るのは
その罪贖う 貴き勲か
あるいは乾いた 褥の砂か
嘆きより生まれ 光を求む
愚かな神に 栄えあれ
ああシャーレ シャーレ
永遠に呪われし 麗しの都よ
仕事の合間に息抜きで書いていますので、更新は遅めです。




