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黎明をもたらす者達①


「運命って、……あそこは本当に危険なんだ!君みたいなただの子供を連れて行けないよ!」


オリバーは必死に稀梨華を説得する。ただの子供を大佐クラスの部隊が全滅する危険な施設になど連れて行けるはずがない。


「いいの!私ただの子供じゃないから!」


稀梨華はオリバーの制止を振り切って樹の走っていった方へ全力で走った。


「おい!」


「どうしますか、オリバー副隊長!」


困った様子でオリバーは髪をかきあげる。


「どうするも何も追うしかないでしょう」


オリバーは部下達に冷静に指示を出す。

指示を出しながら稀梨華の無謀さに呆れつつも、その無謀さは隊長である樹にも似ていると感じた。



どれくらい走っただろう。どれくらい時間が経ったんだろう。


「はぁっ 、 はぁっ 、 」


1度立ち止まり息を整える。だいぶ近づいた。施設はもう目の前で、施設から見える煙と炎は大きくなり、戦闘の音が大きくなる。


本当はエルピーダで飛んでいきたいけどそんな事したら目立って狙撃されてしまうかもしれない。


「お父さん……」


体の透け具合は進んでいく。私が過去に来ちゃった理由は多分お父さんと過去の私を助ける為なんだ。


きっとこの体が透けてるのは、お父さんと私が死んじゃうからじゃないの?


お父さんが死んじゃったら誰が私を助けて見つけてくれるの?


オリバーさん達に伝えればいい?でも伝える前に私は透けていなくなっちゃうよ。


オリバーに指摘された時はまだ足が少し透ける程度だったが今はもう体のほとんどが透けている。


「早いな……」


迷ってる暇は無い、早くお父さんを見つけないと。


「天空の主オリビアの神よ私の願いを叶えたまえ」


いつもよりも祈るように唱える。両手を組むと心臓の部分に鍵穴が現れる。鍵をさしこむ。


最初はどうにでもなれと鍵穴なんてない心臓に差し込んだが今は馴染んだのか鍵穴が現れるようになった。


しーちゃんの唱える詠唱よりも、夢で見たこっちの詠唱の方が体に馴染んでる気がする。


「よし、待っててね。」


足音を立てずに進むと、施設が見えてくる。黒い戦闘服を来ている人達が白衣を来た人やロボットと死闘をしている。おそらく黒い戦闘服の人が日月星辰の戦闘員のはず。


イロアスの大佐クラスの部隊が全滅する施設の襲撃に成功する日月星辰の人達は相当強いって事だよね。気をつけないと。


確か稀梨奈は私を安全そうな建物に……って言ってたから、立派そうな建物を探せばいいはず。


飛んで上から見たいけど、羽が白だから夜の黒に白って目立つもんね。かと言ってこの煙と炎で視界が悪い施設周辺を探すのも時間がかかる。


でもこれは奇襲な訳だし、急な事態に施設側も困惑してるはず。なら飛んでもあんまり気にしない可能性が高いよね?追尾式の何かとか無いよね?あったとしても壊れてるよね!


稀梨華はエルピーダで翼を生やし上空に浮かんだ。


「立派な場所……」


上から見ると施設の巨大さがよく分かった。


施設の左上に研究員達の住まいだろうか?その中でも立派な建物があった。


「見つけた。多分あそこだ。」


稀梨華は地上におりて、そこを目指して走った。


「でも……こんな大きな施設がこんな研究してるのになんで許可が出てるんだろ?」


社会の闇ってやつ?パラティシリィもよく政府の関係者と会議してるみたいだけど、結構密接な関係なのかな?



そんな事を考えて走っていると、近づくにつれ戦闘音と地ならしのような大きな音が聞こえてきた。


誰かが戦っている。剣の音が聞こえる。


大技を放ったのか土煙が上がる


「うわっ!」


思わず両手で顔を多い目を 守る。

暫くすると土煙は収まり、視界が段々と開けてきた。


人影が見える。剣だろうか、武器を持った1人が膝をつき、残りは4人くらいの影がその1人を囲い、何かぶつぶつと言っている。あまり良くない言葉のようで、武器を持った1人の顔が苦悶の表情を浮かべているように見える。


「よく見えない、敵か味方か……」


目を凝らすと少しずつ分かってきた。5人の周りに何かが沢山転がっている。その何かは負傷しているのか動きもしない。


「あれは……エクロス!」


転がっていたのは人型のエクロスだった。しかし知能型のエクロスも人型の形の為どちらかは分からないが、知能型なら最悪だ。だと言うことは囲まれている人はイロアスの隊員の可能性が高い。


その時エクロスの一体が隊員と思われる人に刃物を振りかざした。何かを叫んでいるようだ。言葉が話せるなら恐らく知能型のエクロスだ。よく見えないけど腕が刃物に変形しているように見えた。


「危ない!」


膝をついているということは負傷していてすぐに動けない状況なはず、なら私が助ける!


「フォスヴェロス!」


輝く光の矢がエクロスに向かう。そして命中し大きく爆ぜた。


その隙に膝をついている人に駆け寄る。段々と姿が見えてくる。体格のいい体に輝く金髪、間違えない。この人は……


「お父さん!」


樹だった。膝をつき怪我を確認すると、額に少し深めの傷を負ったようで左目に血が入ったのか開きずらそうだった。他にも腕に切り傷があるが命に関わるような大きな怪我は無さそうだった。


樹の方は突然あらわれエルピーダを使い、さらに自分のことをお父さん呼びした凛奈(稀梨華)に驚いていた。


「凛奈ちゃん?どうしてここに……って体が……!」


「それにさっき俺の事……お父さんって呼んだよな?」


エルピーダを使ったからなのか先程より体の透け具合はましになった。指摘されてやらかした事に気がついた。しかし今はそんな事を気にしている場合ではなかった、エクロス達が迫ってきている。


「凛奈ちゃん、隠れてろ」


樹は大剣を支えに立ち上がってエクロスに向かって歩き出す。余裕そうに大剣を肩に乗っけて見せるが顔色が悪かった。周りに無惨に倒れている知能型のエクロス達は全て樹が倒したんだろう。


「待って、お願い私にも手伝わせて!」


「ダメだ。危ない」


稀梨華を見ることもなく軽くあしらい迫り来るエクロス達を見つめる。


足手まといなのはわかってる、けどお父さんがもし死んじゃったらどうしよう?私だって少しは手伝えるはず!


「じゃあ援護だけでも!お願いお父さん!」


またのお父さん呼びに樹の表情が変化したのが見えたが、どんな表情だったかは見れなかった。


樹は稀梨華の方を向いた。しかしその時エクロスの一体が背を向けている樹に剣を振りかざしている。


「後ろがガラ空きだぜぇ!」


「あっ、お父さん!後ろ!」


咄嗟に叫んだ時、樹は後ろを振り返らずに肩に担いでいた大剣を振りかざした。大剣は正確にエクロスの胴を切り離した。エクロスの断末魔と共に返り血が服を染める。


樹の動きを警戒して他のエクロス達が動きを止めた。獣型や人型なら突っ込んでくるが知能型は知能があるため恐らく様子見をしているんだろう。


「……援護だけだ。そして俺より前に出るなよ」


それだけ言うと再びエクロスの方を向き、今度は顔だけを稀梨華の方へ向け、軽く頷いた。その目は稀梨華のよく知る頼もしい澄んだ瞳だった。


「うん!もちろんだよ!いつでも任せて!」


許可が降りた。意気揚々に弓を構えた。


樹は口角を少しあげると前を向き大剣を構えると、大剣が風のエルピーダを纏った。


そこからは凄かった。風が吹く度にエクロスの断末魔が聞こえる。多分風神がいるならこの人みたいな人の事なんだろう。


樹は地形を上手く使い色々な立ち回りでエクロスを倒していく。しかし樹がほとんどのエクロスを倒してしまうため稀梨華の出番はほとんどない。


死にかけのエクロスにとどめを刺すだけ、単に樹が強すぎるのか稀梨華を危険な目に遭わせないためなのか。恐らく両方だろ。


そして最後の一体を大剣が斬った。その衝撃で周りの木々が倒れていく。


「わぁ……」


ほとんど出番がなかった。私が手伝えたの三体だけ……



ふぅーっと息を吐き樹が稀梨華の方を見た。


「お父さん!大丈夫?怪我は無い?」


稀梨華が樹に駆け寄る。また口を滑らせたことに稀梨華は気づいていないのか。


すると樹は大きな手を稀梨華の頭の上に置いた。そしてもう片方の手で怪我が無いか確かめるように稀梨華の顔や弓を握っていたの手を見た。


「大丈夫だ。稀梨華も怪我は無いな」


「うん!私は大…丈夫……?」


待って?今この人私の事稀梨華って言ったよね!?凛奈ちゃんじゃなくて稀梨華!?


驚いて樹の顔を見上げると樹はニカッと笑った。


「いやぁ、驚いたな。未来の娘が来るとは。でかくなったな」


「いや、待ってよ!なんで!?」


なんで分かったんだろ?外見?雰囲気?

外見はお母さん似なんだけど、子供の頃から顔も変わってるだろうし……


「なんで分かったのか、って顔してるな」


「でも、なんか目的があってここに来たんだろ?俺に教えてくれないか?例えば過去の君の居場所とかな」


樹はしゃがみ稀梨華より少し目線が低くなりまた人懐っこい笑顔を浮かべた。


「じゃあ、着いてきて欲しい場所があるの!」


稀梨華の目的は樹を過去の自分がいる場所へ連れていくこと。樹の手を引き歩き出した。戦闘で消耗している樹を気遣うように歩く。少し前に飛んだ時に、過去の自分がいる場所は特定済みだった。しばらくして樹が口を開いた。


「じゃあまずなんでお前が稀梨華だって気づいたかはな……」


「お前の左手の薬指にある痣だな。最初から雰囲気は感じてたがそれが決定打だったな」


「あっ、だからさっき手を見たの?」


生まれつき左手の薬指に痣みたいなものがあった。でも普通の痣じゃなくて何かに噛まれたような跡がついてた。色も少しピンクっぽいだけで、医者も「痣のようなものでしょう」と言って特に影響はないしそのまま終わったみたいだけど。


小さい頃は友達に前世で巨人に食われたんだとか言われて笑われたけど、特にダメージもなかったから気にしてこなかった。


まじまじと自分の左手薬指を見た。


「そういえば体は元に戻ったみたいだな。」


「あっ、ほんとだ!よかったぁ」


運命が変わったからなのか、体の透明化は終わり元の体に戻っていた。


「しっかし、不思議なもんだなぁ。ほんとに稀梨華か?」


「ほんとだよ!さっきまで信じてくれてたじゃん!」


そう言うと樹は笑った。そして少し考えたあといい事を思いついたという顔で稀梨華の方を見た。


「コホン、じゃあ俺と母さんの初デートで起こった悲劇はなんでしょうか」


クイズを出してきた。これに答えられたら信じてやるという意思が伝わってくる。


「お父さんのアラームが鳴っちゃったんでしょ。当時流行ってた恐竜の映画の鳴き声のやつ」


お母さんがものすごく恥ずかしかったと、でも面白そうに笑いながらよく話してくれてたから覚えてる。


「ははっ!よく分かってるなぁ」


そこから2人は懐かしい話をした。稀梨華はイロアス襲撃や今の東京の事はさすがに伏せ、ここに来るまでの話を、樹は稀梨華が小さかった頃の話をした。


少しすると立派な建物が見えてきた。ここがきっと稀梨奈の言っていた場所だろう。


「ここだよお父さん!ここに過去の私がいる!」


走ってドアに手をかけようとすると樹がその手をそっと止めた。


「中に誰がいるか分かんないからな、俺が開ける。下がってろ」


樹は部屋の音を確かめると、慎重に扉を開けた。中は暗く視界が悪い、カーテンの隙間から差し込む僅かな月明かりが部屋を照らしている。


「……敵はいないみたいだな。いっきに開けるぞ」


樹がドアを開ける。中は豪華な部屋だった。


そしてソファの上に眠る小さな子供。稀梨華だった。


「あっ、お父さん!あの子が……」


稀梨華が言いかけた時、樹がその子の方へ走り出し抱きしめた。よく見ると手が震えている。力が相当入っているようだが傷つけないように手加減はしているようだ。


稀梨華は空気を読んでそっと離れた。

この間に考えを整理する。

どうやって元の時代へ帰るのか、戻った後どうするのか、考えることは山ずみだった。


近くにあった椅子に座り考えようとした時、急に意識が遠くなった。まずいと感じた時にはもう遅く眠るように意識を手放した。



「……っていうの。裁判とにているかしら?」


「すごいすごい!私も使えるようになりたいなぁ」


頭が痛い、誰かの声がする。どこかで聞いた声……あっ、たまに見る夢のお姫様みたいな子達の声だ。


目を開けると空が虹色だった。比喩とかじゃなくて、空に虹がかかってる。昼なのにオーロラがかかってるみたい。


手には芝生の感覚、草原の上で寝ているのかと理解した。上半身を起き上がらせると、やっぱりあのお姫様達がいた。


「あの子達も光のエルピーダを使うはず、なにか参考になるかな?」


姉と妹。二人で訓練をしてるみたいだった。姉が妹に教える形らしい。



「うーん、これはどうしようもない時に使うものかな」


「簡単に言うとね、天秤に敵の嫌な技を封じたい時に自分の何かを代償にして、自分の方の賭けた方の天秤が、敵の技より重くなって傾いた時に成立するの」


「重くならなくても一応成立はするけど賭けたものは帰ってこないから注意が必要よ。あと、差が少ない時もその分代償を持っていかられるからリスクが高い技ね」


「じゃあ上手く行けば大逆転もいけるかもしれないって事だね!」


「そういう事♪」


姉妹は談笑している。その少し離れた場所で稀梨華は話を聞いていた。


「ふむふむ、なるほど」


て事はあのMs.ハルニアの時間停止の攻撃をこれで封じちゃえば勝ち目ちょっとあるんじゃない?


そんな事を考えているとまた視界が揺らぐ、恐らくこれで戻れるはずだ。稀梨華の瞼が閉じる寸前、姉の方が稀梨華を見て微笑んだ気がした。




「……華…稀梨華!」


「……ん?」


「ふぅ……全然起きないから心配したぞ」


目が覚めると元の時代には戻ってはいなく、樹が稀梨華のそばにいた。樹の腕の中には小さな稀梨華が眠ってる。


「お父さん……ごめん寝ちゃってた」


えへへっと笑うと樹は安心したように息をついた。


その時稀梨華の後ろが光った。これを稀梨華走ってる。過去に来る前にこれを見たからだ。ここを通れば元の世界に帰れるだろう。


「帰るのか?」


「うん、やらなきゃいけないことがある」


「そうか……大きくなったお前に会えて良かったよ」


樹は安心させるように笑った。その笑みを見て稀梨華も少し困ったように微笑む。


「ねぇお父さん、わたし強い?」


「もちろんだ。俺の娘だからな!」


樹は当たり前だと言うように言ってのけた。


「なんで、……なんでそんな風に言えるの?」


私これまで勝てたことないのに。


「なんでって親だからだ。親は子供の可能性を信じてやるだろ?」


「じゃあ……嘘でもいいから私ならなんでもできるって言って、私ならなんでもできるって1番信じて!」


力任せにそれを叫ぶと樹は腕の中で眠る稀梨華を近くの椅子にそっと降ろし、稀梨華を抱きしめた。


「あぁ。信じてる」


「お前ならできる、これは偽善でも嘘でもない」


力強く抱きしめる腕は頼もしかった。



「……ありがとう、お父さん」


後ろの光が強くなる。まるで早くと急かしているようだ。


樹はゆっくりと手を離し笑顔を浮かべる。


それに答えるように稀梨華も頷いた。扉の方に体を向けると樹の手が肩に触れた。


「行ってこい、お前ならできる」


稀梨華は覚悟を決めたように息を吐いた。


「うん、行ってきます!」


1度振り返ると樹が言う。


「おう、気をつけろよ!」


笑顔で応え光の中に入っていった。




大きな音が聞こえる……誰かが叫ぶ声も……

そうだ、戦闘! Ms.ハルニアが……!


はっとして目を覚ますとリンクルが稀梨華のそばにいて、叫んでいた。迫り来る攻撃を朝火が新しく習得したのか、炎の盾で防いでいる。


「稀梨華ちゃん!やっと起きましたか……」


「リンクル?朝火は……ここは今どうなってるの?」


「僕達はMs.ハルニアの攻撃を受けたあと、僕と朝火だけまた檻に入れられたんですけど自力で脱出しました」


「それでMs.ハルニアの攻撃を交わしつつ稀梨華ちゃんを見つけ今に至ります」


「すごいね、Ms.ハルニアの攻撃を交わすなんて……」


「朝火もだいぶ戦闘に慣れたみたいで、動きも様になってきましたよ」


「うん、私も頑張らないとね。朝火のところに行こう!」


「そうですね。行きましょう」


エルピーダを使い、弓を構えて朝火と合流する。


「ごめん朝火!ひとりで任せちゃって」


「稀梨華!もう大丈夫か?」


「うん、一気に片付けよう!私に考えがあるんだ」


「考え?」


「聞きましょう」


3人は攻撃を交わしつつ、稀梨華が作戦を伝える。恐らく夢で見たあの技の事だ。



「はぁ……この子達、しぶといわね」


Ms.ハルニアは攻撃を次々と仕掛けるが、少し疲れや焦りが見えてきている。稀梨華達が戦闘に慣れてきて連携が取れてきた、Ms.ハルニアも大技を使い消耗している。


「一気に片付けてあげるわ」


「第零楽章……」


Ms.ハルニアが言いかけた時、稀梨華の声が重なった。


「ソーリス・イウディキウム!」


すると稀梨華達とMs.ハルニアの間に半透明の巨大な黄金に輝く天秤が現れる。支柱には太陽を模した大理石が埋め込まれている。地面も同じく半透明のチェス盤に変化している。


「私の命を賭けて貴女の第零楽章・終焉のフェルマータを封じる!」


「おい!?命って、いきなり命賭けていいのかよ!」


「時間に釣り合うものって命ぐらいしか思いつかなくて、でもこれなら……!」


天秤が動く、水平だった天秤に、稀梨華の命とMs.ハルニアの第零楽章・終焉のフェルマータがのせられた。しかし天秤はMs.ハルニアの方に傾いていた


「稀梨華ちゃん、さっきの話だとこれはまだ成立してないんじゃないですか……」


リンクルが珍しく焦った声を出す。


「私の命を賭けても無理なの!?」


どうしよう!?絶対いけると思ったのに……


「じゃあ俺の命も賭けてやる!」


「朝火!?」


「お前だけに背負わせねぇよ!」


朝火が叫んだ。自分の命も賭けると。


天秤が動いた。あと少し、あと少しで釣り合うところまで行く。


「なら僕の命も賭けますよ」


ガシャンと音が鳴った。稀梨華達の命の方が重くなった。執行の合図だ。すると傾いた皿から無数の黄金の鎖が飛び出しMs.ハルニアに絡みつく。


「なっ!……何をしたの!」


Ms.ハルニアは完全に動きを封じられている。余裕の表情に初めて明確な焦りが見えた。


「今がチャンスですよ2人とも」


「うん、じゃあ……」


「あら、すごいじゃない♪」


すぐ横で声がした。実体はないけど声でわかった。


「アストライヤ!」


「久しぶりね♪」


突然の登場に驚いた。朝火は目が点になっている。


「何しに来たんですか、見ての通り忙しいんですけど」


「そんな事言わないで。あなたたちにプレゼントがあるの」


「朝火、エルピーダで剣を作れるかしら?」


「えっ、あ、はい!」


突然名前を呼ばれ驚いていたが炎のエルピーダで大剣を作り上げる。慣れてきたのは本当らしい


「じゃあその剣を稀梨華ちゃんと朝火で持ってみて」


言われた通り持つとアストライヤが力を送ったのか輝き始める


「リンクルには2人を引っ張ってもらいたいの」


そう言うとリンクルにアストライヤの祝福が送られるが、それだけではない気がする。


そして稀梨華と朝火にも祝福を授けた。


「さぁ、3人とも頑張って!」


Ms.ハルニアが数本の鎖を解き、ありったけの力でエルピーダを放とうとしている


3人は頷いた


「任せて!」


稀梨華は羽で朝火は地面を蹴り跳躍した。


Ms.ハルニアがエルピーダの砲撃を仕掛けてくる。それをリンクルが弾き飛ばしていく。


轟々と炎を纏う大剣がMs.ハルニアに迫る。


「あのお方の為に……負ける訳にはいかないのよ!」


残りのエルピーダを全部使ったのか強力なエルピーダを放った。禍々しい音のエルピーダが一直線に稀梨華達に向かってくる。それを稀梨華と朝火は大剣で受け止めたがMs.ハルニアの力は強く、大剣が弾き返されてしまいそうだ。


「くそっ……絶対手ぇ離すなよ稀梨華!」


「っ……分かってるよ!」


二人で大剣にエルピーダをおくって何とか踏ん張る。そこへリンクルも加勢して光、炎、氷のエルピーダが混ざるが、それでも厳しい、それだけMs.ハルニアの力は凄かった。


「っ……ダメだ、もう……!」


大剣から手が離れそうになった、その時、三人の手と大剣を蔓が結んだ。草のエルピーダだった、朝火はこの力を知っている。


「負けちゃダメだよ朝火!」


声がして肩に手が置かれる。忘れるはずがない大切な相棒の声。


「トリビア!?なんで……」


掠れそうな声が出た。

目が潤んだが1度閉じて開ける。手に力を込め、エルピーダを大剣に送る、さっきより強力な強い力。


「任せとけ相棒!」


過去で再開した朝火の大事な相棒が助けてくれている。



すると稀梨華の肩にも手が置かれ、声がする。泣いているみたいで震えているが力強い声。


「負けてこっちに来たら承知しないからね!」


「凛音……」


凛音だった、過去で再開した数年前に亡くなった親友。


「任せて、絶対勝つよ!」


光のエルピーダを送る、さっきより強い。凛音の応援のおかげで自信が湧いてきた。勝たなきゃいけない理由が増えた。


「じゃあリンクルの応援は私よね♪」


リンクルの周りに雪の結晶が舞う。それがリンクルの力を増強させているようだ。


「あの子達をよろしくね、リンクル」


「言われなくても、任せてください」


3つのエルピーダが混じり合いMs.ハルニアの攻撃を押し返していく。


「さぁ、一気に片付けちゃって♪」


3人は一気に力を込めていく。トリビアと凛音は朝火と稀梨華の傍で2人を支える。


3色の光が闇を照らしていく。Ms.ハルニアが劣勢で稀梨華達が優勢だった。そしてMs.ハルニアの攻撃を弾いた。


「あっ……」


Ms.ハルニアの困惑したような声が闇に落ちた。

見上げると3色の光がこっちに向かってくる。



そして光が闇を切り裂いた。Ms.ハルニアのペンダントが壊れ、闇のように真っ暗だったコロニーにヒビが入り、割れていく。


3人は全力を出し切り、大剣を握る力などもう残ってなく、重力に身を任せて落ちていく。



稀梨華は意識が落ちる前、割れ目から光が差し込んでいくのを見た。闇が空けていく、真っ暗な夜から変わっていく。


東京に夜明けが来た。








































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