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鏡よ鏡、私にふさわしい舞台はどこ?


「ここは……」


稀梨華が目を開けると真っ黒な霧に包まれた

壊れかけた街があった


別の所に転送されるのかと思ったけどそんな事は無かった


「ここを進めば菖ちゃんは居るのかな?」


進むべきか待つべきか


管理人(仮)にあったら嫌だし

でも何で私だけこの霧の中に引きずり込まれたの?


まさかリンクルを攻撃するために?

でもそうだとしたら私を霧の中に入れる必要は無いよね


なら私に何か用があるって事?



「あのー誰か居ませんかー?」


返事は無い


壊れかけと言っても街だし

家もあるから人がいるかもしれないと思ったけど居ないみたい


いや、もしかしたら声が出せないのかもしれない

だって家は酷い有様だし、生きている可能性は低い



すると何処からかヴァイオリンの音が聞こえてきた


「この音……ヴァイオリンだ」


私の知ってる中でヴァイオリンを弾けるのは

菖ちゃんだけ


菖ちゃんはヴァイオリンの音の先に居るのかもしれない



稀梨華はヴァイオリンの音が鳴る方向へ歩いていく



しばらく歩き続ける急に人が3人現れた



「ひぃ!何!?」



「あれ?でもよく見ると……菖ちゃんに似てる」



その幽霊のような人は菖に似ていた

もう2人は波風中の制服を着ている


するとその制服を着た2人がいきなり菖を殴った


「は!?何してるの!」


稀梨華は菖を殴った2人を止めようと手をのばすが、稀梨華の手は2人の体をすり抜けた



「なんですり抜けるの!?」


稀梨華がパニクっていると菖だと思われる人の

頭上に文字が現れた。




  recreate (過去の再現)



「過去の再現……?」


過去……もしかしてこれは菖ちゃんの記憶?



稀梨華のペンダントが光り、前を照らしている



「進めって事?」


稀梨華はペンダントに聞くが、ペンダントは答えない


「まぁ当然だよねペンダントは喋らない」


ここで止まっていてもどうしようもない

とりあえず先に進もう



歩き始めると菖のとても辛い過去がどんどん再現されていく




「だから私っ…私虐められてるんです!先生助けてください!」


菖が先生に泣きながら訴えている


「でもただの陰口とかだろ?先生も皆も言われた事なんていっぱいある。皆それを乗り越えるんだ」


その言葉を聞いた菖は絶望したような顔になっていた


「違う…違います……本当に辛いんです!

なんかもっと対策してくださいよ!停学にするとか!」


「停学は大袈裟だろう?とりあえず次の席替えでそいつらと席を離したりはするから、

とりあえず教室に戻れ」


先生は授業に言ってしまった


菖はその場に泣き崩れている



「何なのあの教師は!有り得ないんだけど!」


ふざけんな!その陰口が一生の傷になるかもしれないのに!


稀梨華は泣き崩れている菖の元に行き

菖を抱きしめる


でも菖に触れることは出来ない



泣き崩れていた過去の菖が消え、新たな過去が現れた




「お願いします!貴方たちが頼りなんです!」


菖がスマホで電話をかけている


「分かりました。学校に問い合せた後その後の対応について話し合いましょう」


「ありがとうございます!」


菖は涙を流しながら喜んだ


「やっと救われる……」



菖がまた消え、新しい過去が現れた



「どうしてですか!?ちゃんと対応してくれるって言ったじゃないですか!」


「学校側は虐めは無いと言い張るので……」


「私じゃなくて学校を信じるんですか!?」


「とりあえず証拠が無いと動けないので」


ブチッ

ツーツーツー


「ぁ……待って……なんで助けてくれないの……」



菖は声を上げ泣いている



テレビでいじめが原因で死んでしまった子達のニュースを見る

どれも学校の対応が良くなかったり、

教育委員会がちゃんと対応しなかったりしていた


ちゃんと対応出来ていれば救えた命だっただろうに


その度に教育委員会や教師は頭を下げるけど

死んでからじゃ遅い

何かあってから対応しても、もう遅いんだ

だってもうその子達は帰ってこないんだもん



菖ちゃん……菖ちゃんはこんな地獄のような世界を1人で生きてきたんだ

誰にも助けて貰えずに1人で抱え込んで




「絶対助ける」



泣いていた菖は消えた

新しい過去はもう現れない


稀梨華は真っ直ぐ進む




ヴァイオリンの音が近くで聞こえる





周りより黒く濃い霧が現れた


この中からヴァイオリンの音は聞こえる



「菖ちゃん」


ヴァイオリンの音が止まった


「私、稀梨華だよ」


「稀…梨華…ちゃん……こっち…に来て」


「分かった」



稀梨華は霧の中に入っていった



そこは真っ黒な空間だった


ベンチと木々と本棚がある



そこに美しいヴァイオレットの花飾りを付けた

黒いドレスを着ている菖が居た



「菖ちゃん…だよね?」



稀梨華は菖らしき人に話しかけると

その菖らしき人が振り返る



「稀…梨華ちゃん?」


「うん!そうだよ」



「稀梨華ちゃん……稀梨華ちゃん!」


菖が稀梨華に抱きつく



「どうしよう……私…」


菖は泣いている

稀梨華は泣いている菖の背中に手を回す



「大丈夫……辛かったね」



菖は稀梨華の腕の中で泣いている




大丈夫だとは言ったものの、実際は全然大丈夫じゃない

世間は菖ちゃんに同情するだろうけど、建物の倒壊した酷い様を見ると犠牲者もいる


菖ちゃんは殺人犯になっちゃうの?


でも私が菖ちゃんだったらこの世界を壊したいと思うよ




「菖ちゃん何があったか話してくれる?」


菖はゆっくりと顔を上げて頷く


「うん……稀梨華ちゃん達と別れた後、家に帰ったらいつも私をいじめてくる子達が家の前にいたの」


「そして私の家にスプレーで私の悪口とか

悪意のある私の似顔絵を書いたの」



それって普通に犯罪でしょ


「それでもう今までのストレスが爆発して

もうこんな世界壊れてしまえって思ったら

何処からか声が聞こえてきたの」



「声が?」


何処からか聞こえる声なら私も心当たりがあるけど……


「うん そしたらその声が体を貸してくれるなら

この世界を壊してあげるって言って」


「私はそれに同意したの もう全部壊して欲しかったから。でもこの悲惨な状況を見て私はとんでもない事をしてしまったんだってやっと気づいたの」


「体を貸す?それって今菖ちゃんの中にその声

の正体が入ってるって事?」


「そうなの。今もずっと滅ぼせ、壊せって言ってるの。」


「今はなんとか抑え込めてるけど、もう抑えきれない」



「菖ちゃん……」



どうすればいいんだろう

この悲惨な状況を作ったやつが菖ちゃんの体の

中に居る



「う゛ぅぅ……」


「菖ちゃん?どうしたの?」


菖が突然胸の辺りを手で押さえて苦しみだした



「逃げてっ!!」


菖はそう言うと黙って俯いた




「菖ちゃん……?」




「フフッ……やったわ…これでこの体は私の物!」




菖がそう言って笑い始めた


そして稀梨華の方を見た



「誰?」


「私は菖ちゃんの友達

アンタこそ誰なの?」



稀梨華がそう言うと菖らしき人は稀梨華を品定めするように見る



「私の名前を名乗るにはこの舞台と観客じゃ

勿体ないと思わない?」


「はぁ?」


こいつ遠回しに私じゃ勿体ないって言ってるよね?



「私の名前を名乗るには……そうねぇ

パラティシリィの前がいいかしら!」


「えぇ、それが良いわ!そしてパラティシリィを皆殺しにすれば()()()()が喜んでくださる!」



「あのお方?アンタは管理人なの?」


「だからお前の様な存在が私の事を知るなんて

勿体ないって言ってるでしょ?」



菖らしき人は手を前に出し稀梨華に向ける



「お前は少し寝ていなさい」



菖らしき人がそう言う



「う゛……」


頭と背中に衝撃が加わった


痛った……


小さい頃、足に洗剤つけて階段を走り回って

落ちて頭から出血した時より痛いんだけど


というか何が起きたの?


手を動かすと木に触れた


「え?」


驚いて後ろを見ると木があった



あの一瞬でこの木に打ちつけられたって事?


確かにリンクルが音速とか言ってたけど……


ポタ……ポタ


血が垂れる


グラグラと視界が揺れる


どうしよう

眠くなって来ちゃった







稀梨華が木に打ちつけられる少し前____




私は楠木彩


今日が初めての出勤日です


なんとずっと憧れだったイロアスの司令官に

なったのです!


でも、今札幌で管理人が現れたという情報が

入り先輩方は大忙しです



何も教えて貰ってないけど

私に出来る事をやればいいよね?




すると彩のデスクの電話がなった




来た!


大丈夫……ずっと練習はしてきたから



「こちら日本支部イロアスです

どうしましたか?」


「札幌に新しいエルピーダを使える管理人と同じくらい強い奴が暴れてるんです!」



「はい?新しいエルピーダですか!?」


管理人は知ってるけど新しいエルピーダ!?


彩の驚いた声が響き、彩の先輩に当たる人達が集まる


「どうした楠木」

「何かあったのか?」


「それが札幌に現れた奴は新しいエルピーダを

使うって言う通報が今入ったんです」


「新しいエルピーダ!?」

「楠木電話代わる」


「分かりました!」



「電話代わりました」

「詳しく教えてください」


「分かりました」





「えぇ……巻き込まれた人がいるんですね?

分かりました 貴方も安全な場所にすぐ避難して下さい」



「先輩…どうなったんですか?」


「どうやら札幌に現れた奴は“音のエルピーダを”

使う。そして音速で物を飛ばすらしい

強さは管理人に匹敵する」


「音速!?」


「あぁそして民間人が1人巻き込まれているらしい」

「私は長瀬と一緒にイロアスの大佐達に伝えるから楠木はパラティシリィに伝えてくれ」


「私がですか!?」


「あぁ今伝えた事をそのまま伝えてくれ」



「分かりました!」









「あとどのくらいで札幌に着く?」


「40分ほどです」


「40分か」

「まだかかりますね隊長」

「あぁ」


「それより本当なんですか?管理人が現れたって」

「まだ分からないが管理人に匹敵する強さらしい」



「皇隊長!支部から無線が入っています」



「分かった」



「こちら第三機動隊用件は?」


「札幌に出現した管理人らしき人物について新しい情報が入ったので共有します」


「まずその人物は新しいエルピーダ……

音のエルピーダを使うそうです」


「音のエルピーダ?」


「はい

通報者によると音速で物を投げるそうです

それと民間人が1人、その管理人らしき人物に

囚われているそうです」


「分かった情報感謝する」


「当然の事をしたまでです」




「隊長、無線の内容は何だったんですか?」


「あぁどうやらその管理人らしき敵は

音のエルピーダを使うらしい」



「「音のエルピーダ!?」」


「そうだ」


「ならその敵はどんな技を使うんでしょうか?

今まで使ってきた作戦が効かない可能性もありますよね」


「残念だが、今分かっているのは音速で物を飛ばすくらいだ」


「音速!?」


「音速となると作戦の変更が必要かもしれないですねぇ」


「そうだな」

「とりあえず姫乃はいつも通り俺の援護を頼む」


「はぁい」


「早乙女と氷室は遠距離からの攻撃をしてもらう」


「了解です」「分かりました!」


「それと西森はサポートを頼む」


「了解しました」











「ねぇお前に聞きたい事が有るんだけど」


菖だった人が言う


「それは…無理だね……アンタのせいで話すのも

キツイくらいなんだから」



「へぇ?お前が答えないつもりならこの街を

全壊させるけど?でも、そうすればあの霧の外にいる子も無事じゃないと思うけど」



こいつ……リンクルと街を人質に



「分かった……何が聞きたいの」


「パラティシリィはここに来るの?」


「当たり前でしょ……アンタを倒して菖ちゃんを

助けに来るから」


「ふぅん?でもここの舞台は少し質素だわ……

そうだ!日本で一番の都会は何処なの?」


日本で一番の都会?

それは東京に決まってるけど


「その場所を知ってどうするつもり?」


「もちろんそこを舞台にするに決まってるじゃない!」


菖だった人がうっとりした声で言う


「それで?そこは何処なの?」


「…………」



「ねぇ……早く言ったらどう?

レディを待たせるなんて非常識じゃない?」



「アンタの方が……よっぽど非常識でしょ」



「教える気がないならこの子も殺すわよ?」

「街も壊すけど」


菖だった人が自分の心臓を指でさす



「菖ちゃんの事を言ってるの?」


「そうよ」



……



「言わない」


だって菖ちゃんはそんな事本当は望んでない

はずだもん


「お前……」


菖だった人が怒るが、菖だった人のスマホの

着信音が鳴る


「え?」


スマホだと思ったが菖だった人が取り出したのは可愛い鏡だった



「はぁいどうしました?」


すると物凄い萌え声で話し始めた



え?何コイツ

というか何その鏡

電話なの?




「はい、はぁい分かりましたぁ!

私にぃ任せてください!」



電話は終わったようだ



「日本で一番の都会は東京なのね?」



菖だった人はさっきの萌え声から冷たい声に

戻った



切り替え早



「なんで知ってるの?」


「なぜって……あのお方に教えて貰ったからよ!」



菖だった人はまたうっとりした声でそう言う




まずい、こいつを早く止めないと

東京に行くつもりなんだ


パラティシリィはこっちに向かってるはずだから東京に余り人は残ってないはず……!



菖だった人が稀梨華に近づく


「何……?」


「私には負けるけどお前よく見ると割と

綺麗な顔をしてるわね」


「それはどうも……」


急に褒めてきたんだけど……



パチンッ


菖だった人が指を鳴らした


すると稀梨華の頭から出ていた血が止まった



「え?なんで……」


「血が邪魔で顔がよく見えなかったのよ

でも改めて見るとそうでも無いわね

微妙だわ」


「は?」


え?こいつ失礼すぎるだろ

なんでこいつに顔が微妙とか言われないといけないの?



菖だった人は稀梨華に背を向け歩き始める


「待って……アンタ東京に行くつもり?」


「そうに決まってるでしょ」


菖だった人は黒の綺麗な翼を拡げる


「それじゃぁね〜」


菖だった人はその黒の綺麗な翼で空を

物凄い速さで飛んで行った


「待て!」


しかしもう菖だった人は見えなくなっていた


そして周りの霧がはれた




「稀梨華ちゃん!!」


リンクルが走って来る


「大丈夫だった?制服に血が付いてるけど

それに菖ちゃんは……」



稀梨華はリンクルの肩を掴む


「リンクル……」


「どうしたの?稀梨華ちゃん」



「私って音速で飛べると思う?」


「え?」

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