しーちゃんと再会
「だけどその前に医務室に寄っていこうか」
「そうだね朝火が心配だし」
しかし問題がある 医務室の場所が分からない
「医務室って何処にあるんだろう?」
「こういう施設は大体マップが何処かにあるはずですよ」
確かにそうだ
「なら1階にありそうだね」
稀梨華とリンクルは1階へと向かった
「1階に着いたけどマップみたいなのはないね」
大体でっかい柱とか壁に貼り付けてあると思ったけど
「そうだね誰かに聞く?」
「うーん……」
誰かに聞こうにも人が居ないんだよね
白瀬隊長と皇隊長が居るってことは会議は終わってるはずだから少なくともパラティシリィは
どこかに居るはず
「皇隊長が何処にいるか分かればいいんだけどね」
「まぁ朝火を医務室に連れていった人だからね」
「あれぇ?貴女は」
後ろから、おっとりとした口調の声が聞こえた
この声にも聞き覚えがある
「姫乃さん!」
稀梨華が言うと姫乃が優しそうな顔で答える
「貴女第二中の子じゃない!それと……」
姫乃さんがリンクルを見ると目の色を変える
「どうして君がここにいるの!」
姫乃さんが叫ぶ
しかも鍵がささった状態だ
そりゃそうだ 檻に入れられていた……
悪く言えば実験対象が普通に歩いていたら驚くだろう
それにこの感じだとまだ説明がされてないんだろう
やばいな馬鹿正直に言えば戦闘になりそうだし
「それは稀梨華ちゃんと朝火に助けて貰ったからです」
とリンクルが正直に言った
「本当なの!?」
はい終わった
「ちょっと何正直に答えてるの!?姫乃鍵さしてるよ!」
稀梨華が小声で叫ぶ
「事実じゃないですか。それにいずれは知られますよ」
「稀梨華ちゃん……だったけ?」
「はっはい……」
「会議中、支部が襲われたって報告を受けたんだけどやったのは稀梨華ちゃんと朝火っていう人?」
まずいって
でももうバレたも同然だし
「そうです でも私が最初にここに侵入しようって言ったんです」
言っちゃったよ どうしよう
稀梨華は戦闘を覚悟してネックレスの八芒星を握りしめる
「それはどうして?」
「……えっ?」
意外だった
姫乃さんは優しい声と表情……いや少し申し訳なさそうな顔をしてる
「その友達を助けるため?」
稀梨華がリンクルの手を握る
「……そうです」
「そっかぁ」
姫乃さんが微笑む
どうしてだろう
なんで笑うんだろう
「お前らまだ帰ってなかったのか」
後ろから声がした
「隊長!」
「なんだ姫乃も居たのか」
皇隊長は3人を見る
「悪かったな姫乃 説明ができてなくて」
「大丈夫ですよぉ 何となく分かりましたから」
「後で他の皆にも話す」
「了解です〜」
「それと嬢ちゃんとリンクルはどうしたんだ?」
「帰る前に朝火と……しーちゃ…雫少尉に会いたくて」
「あぁそれなら2人とも医務室にいる
特に雫は嬢ちゃんに会いたがってたからな
案内する」
皇隊長に着いてこいと言われ稀梨華とリンクルは後を追って行った。
エレベーターに乗り、3階に行く
そして少し歩くと皇隊長が止まった
止まった先には扉があり、その上には医務室と書いてあった
「ここが医務室だ
多分だがこの中には白瀬がいるかもしれない
でも気にしなくて大丈夫だ」
「案内ありがとうございます」
「ありがとう……」
「気にするな」
皇隊長はどこかへ歩いて行った
「それじゃあ開けよっか」
「うん」
稀梨華がドアを開ける
「失礼します」
中は病院みたいでベットが6個ある
しーちゃんは何処だろう
「稀梨華!?どうしてここに!」
よく知ったしーちゃんの声が窓際のベットの方から聞こえた
しーちゃんだ!やっと会える!
「やっほ〜お見舞いに来たよ!」
やばい、嬉しすぎて変なテンションになった
「やっほ〜じゃないわ!なんでこんな所にいるのよ!」
医務室だからかしーちゃんが小声で叫ぶ
「ちょっと待って稀梨華の隣にいるのって……」
「あぁ私の友達リンクルだよ」
「稀梨華ちゃんの友達のリンクルです
よろしくお願いします」
リンクルがそう言ったあとしーちゃんがベットから飛び降りて稀梨華の手を引いて少しリンクルと離れたところに移動する
「ちょっとそんなに動いて大丈夫?」
「私は大丈夫よ!そんな事より稀梨華!あの友達ってあの雷門隊長の実験室にいた子じゃない?」
さっきよりも小声でしーちゃんが叫ぶ
「いやぁそれが色々あってね」
稀梨華は今まであった事を全部話した
「……ちょっと頭が追いつかないけど稀梨華エルピーダ使えたの?」
「いや使えるって言うか使えるようになったの方が正しいかな?」
「……はぁとりあえず分かったけど無茶しすぎなのよ!」
「すいませんでした!」
しーちゃんは私にデコピンをした後リンクルに近づく
「私は雨宮雫よろしくねリンクル」
「よろしくお願いします」
しーちゃんとリンクルが握手する
微笑ましいね
しーちゃんは見つけたけど朝火は何処だろう
医務室には6個ベッドがある
イロアスの隊員がベットに横になっている
でも皆目に生気がなく、包帯をしていたり、全身包帯だったり、酷い人は片腕がない人も居た
きっとエクロスと戦ったからだ
この人達のおかげで私達は暮らしていける
でも、もしイロアスに入ったら私もこの人達のように大怪我をするのかな
自分の片腕や目が無くなると考えただけでゾッとする
医務室のドアが開いた
「あれ稀梨華ちゃんとリンクルじゃないか」
入ってきたのは白瀬隊長だった
「お疲れ様です 白瀬隊長」
「ありがとう。もう怪我は平気なのか?」
「はい」
そう言えば白瀬隊長はしーちゃんの上司に当たる人なんだ
「それで稀梨華ちゃん達はどうしたの?」
「朝火と雫少尉に会いに来たんですけど……」
「あぁ彼なら彼の祖父を名乗る人物が迎えに来て帰って行ったよ。帰り際に君にこれを渡して欲しいって言って」
白瀬隊長は稀梨華に何かが書かれている
「これは……LINEのID?」
紙には 俺のLINEのID落ち着いたら連絡頂戴 と書かれていた
「これは何ですか?」
「これはLINEっていうスマホとかでできるコミュニケーションアプリだよ」
「便利ですね」
「そうでしょ」
「あっ、そうだ稀梨華ちゃん少し話せるかな?」
白瀬隊長が言う
なんだろう、やっぱり何か言われるのかな?
「いいですよ」
「それじゃあ医務室の外で話そうか」
「分かりました」
「待って、僕も行きます」
「リンクルは僕のこと信頼出来ない?」
「……雷門隊長よりかは信頼してますけど」
「ハハッ!そうか でも大丈夫だ 僕は雷門と違って稀梨華ちゃんにも君にも手を出さないから」
「大丈夫よリンクル、白瀬隊長は信頼できる人だから」
雫が言う
「そうそう、這ってでもリンクルの元に帰ってくるから」
「それはちょっと……」
リンクルに少し引かれた
「それじゃあ行こうか」
「はい」
稀梨華と白瀬隊長は医務室の外に出た
そして近くにあったベンチに腰を下ろした
「さて、話したい事というのはもし君がイロアスに入隊しなかった時の場合だ」
「確か記憶を消されるっていう」
「その通り、稀梨華ちゃんは今のところどっち
を選ぼうと思ってる?」
正直に言うなら入隊したくない
私にはあの医務室の人達のように命を懸けて戦えない。
イロアスに入ったら日本の皆を守る為に命を懸けて戦う、でもその日本の皆には他人や嫌いな人、苦手な人も入る。
その人達の為に命を懸けられるかと聞かれたら
多分出来ない。
でもそうなった場合リンクルの事も忘れてしまうのだろうか。
「正直に言うと入隊したくないです」
「正直でいいね。理由を聞いてもいいか?」
「はい……理由は他の人の為に命を懸けて戦える覚悟も根性もないからです」
「そうなのか?でも君はリンクルの為にここまで来たじゃないか」
「それはリンクルだったからです 」
「性格悪いですけどもしリンクルじゃない……
例えばただのクラスメイトが連れ去られていたら私はここまで来なかったと思います」
「うん。それは普通の感覚だと思うよ
他人の為に命を懸けて戦える人なんて多くない」
「じゃあ白瀬さんは何の為に戦うんですか?」
「うーん……そうだね」
白瀬隊長は悩んでいるようだった
「言いずらかったら全然言わなくていいですよ
無神経でした」
「そんなことは無いよ。でもお言葉に甘えて
今は伏せさせてもらうよ」
「あと記憶を無くすってリンクルの事も忘れるんですか?」
「そうだよ 第二中学校であった事から記憶を消すまでの時間を全部失うんだ」
やっぱりリンクルの事も朝火の事も、しーちゃんがイロアスだった事もエルピーダを使える事も全部忘れるんだ
「もう1ついいですか?」
「いいよ」
「リンクルが危ないか調べるために攫ったんですよね?」
「あぁ」
「ならリンクルが記憶を無くすことを選んだら
リンクルはどうなるんですか?攫いまでした貴方達が簡単に諦めるとは考えずらいです」
「いい質問だね 確かにリンクルはエルピーダを使える。放置する訳にはいかない」
「うーんどうしようかな」
「何かあるんですか?」
「いや〜……一応機密事項なんだけど……」
機密事項なら言わないでくれ。
「機密事項なら話さなくてもいいですよ」
「いや一応言っておくよ君のこれからの人生を決める選択だからね」
白瀬隊長ってこんな適当だけど大丈夫なの?
上司に怒られたりしないのかな?もしかして
白瀬隊長って意外と権力があったりして?
「まぁ少し濁して言うけど、イロアスにはまぁ
すごい事が出来る人がいてね、その人はね““人の
エルピーダを奪う””事が出来るんだ」
「え!?」
「だからもし記憶を消す事を選んだらその人の所に行ってエルピーダを奪われて貰うよ」
「そう……なんですね」
「怖いかい?」
「まぁそれなりに」
「だけどまだ猶予の1週間まであるからリンクルや朝火と話してゆっくり決めるといいよ」
「そうします」
「それじゃあ戻ろうか」
「はい」
稀梨華と白瀬隊長は医務室に戻った
「やっと帰ってきた」
「ごめんね待った?」
「そんなに時間は経ってないから平気
それに雫に稀梨華ちゃんの事を聞いてたから暇ゃなかったよ」
「待って変な事教えてないよねしーちゃん」
「大丈夫よ それよりそろそろ飛行機の時間なんじゃない?今日札幌に帰るんでしょ?」
「そうだった!」
「なら送っていこうか?」
白瀬隊長が言う
「白瀬隊長って車の運転できるの?」
「それなりにはね君と稀梨華ちゃんを乗せれるくらいのスペースはあるよ」
「でも忙しいんじゃ……」
「大丈夫だよ。僕くらいじゃないと倒せないエクロスはそうそういないから」
それなら安心かも?
「それじゃあお言葉に甘えてお願いします」
「リンクルもそれでいい?」
「うん」
「それじゃあ着いてきて」
「はい」
「しーちゃんまた会いに来るね」
「うん、待ってる」
白瀬隊長、稀梨華、リンクルは医務室を出て駐車場に向かった。




