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君はヒーロー

「そうです。」


リンクルは真顔で答えた


「ということはリンクルもイロアスなの!?」

「イロアスではないですよ」

「えっ!?でもイロアス以外でエルピーダが使

える人なんていないんじゃないの!?」

「それは人の話でしょう」

「ロボットも似たようなもんじゃない!?」


もう頭がパンクした。イロアスでもないロボットがエルピーダを使うなんて。だけどこれがもしイロアスにバレたらリンクルはどうなるんだろう。あまりいい反応はされないと私は思うんだけど


「リンクル。多分エルピーダを使える事今は内

緒にしておいた方がいいと思う」

「でもこれを聞かれたらなんて答えればいいで

しょうか」


リンクルは自身が凍らせた水の波を指差しながら言った。


「…季節外れの大寒波が来たとか」

「今6月ですよ?もっとマシな言い訳ないんです

か」

「ごめんね!」


すると職員室のドアがドンドン!と叩かれた。

ガラスから見えるのは


「サイレンヘッドだぁー!」


あのニタニタと笑顔を浮かべた暴走ロボットことサイレンヘッドがドアを叩いてきた。しかし鍵がかかってなかったのでドアを開けて入ってくる。


「どうしようアイツこっちに来るんだけ

ど!?」

「待ってください。あいつサイレンヘッドに似

てきてませんか?」

「はぁ?」


そう言われてあの暴走ロボットを見ると、今までは細長い形で怖いからサイレンヘッドと呼んでたけど今は


「頭の形がサイレンヘッドだ…どういう事!?」

1人で焦ってるとリンクルが

「分かりました!オルドデール伯爵がなんのエ

ルピーダを使ってるのか!」

「えっ?」

「説明は後でしますのでとりあえず今は逃げま

しょう!」

「逃げるってどうやって!?」


サイレンヘッドがもう近くに来てる。


「僕が時間を稼ぐのでその隙に逃げてくださ

い!後で追いかけますから。」

「分かった!」


リンクルがサイレンヘッドに向かって攻撃する



「氷の断罪!ルースレアロアー!」



サイレンヘッドの足が氷で拘束された。頭にも当たったが何故か氷が当たらずサイレンヘッドの頭をすり抜けて行った。


「稀梨華ちゃん今のうちに逃げてください!」


私はドアに向かって走り職員室を出た。悔しいけど私はエルピーダも何も使えないからあそこに居てもリンクルの足でまといになるだけ。今は逃げることに集中しよう。そうだ。目の前にある階段を上がれば今はもう使われていない旧理科室がある。あそこは唯一鍵がドアの近くにフックで掛けてある。


「よし。旧理科室を目指そう。でもリンクルが分かるようにしないと」


階段のすぐ近くに2年生の教室がある。

2年1組の教室を遠くから見ると中には小型のロボットが居た。しかしそのロボットも暴走していた。


「まじか…」


次に稀梨華は2年2組の教室に入って紙とペンを

探した。ここには暴走ロボットは居ない。


「あった!」


急いで紙とペンに4階旧理科室と大きく書いて、それを階段の前にある窓に貼り付けた。


そして稀梨華は階段を駆け上がり旧理科室まで走った。

鍵をフックから取って鍵を開けて閉める。


「はぁ…疲れた」


その場に座り込んだ。


「あれ…なんでだ」


涙が止まらない。今になってやっと感情が追いついてきたみたい。なんでだろ。サイレンヘッドに追いかけられるし、そして何よりリンクル1人残して逃げてきた自分に腹が立つ。何も出来ない自分が悔しい。

私ってこんなに何も出来なかったけ?

時計を見ると時刻は2時45分。ゲーム終了まで残り2時間15分。


「あとちょっとしかない。」


ドン!ガシャ!と何かがぶつかり合う音が下からする。きっとリンクルが戦ってるんだ。

私に何か出来ることは…


「システム、残りの問題はあと何問?」

「はい。残りの問題は96問です。」

「分かった。ありがとう。」


いや多すぎるだろ!。問題を探そうかと思ったけど96問は無理がある。


「…何かないかな」


教室を散策する。すると奥の方にある棚の上に取り扱い注意と書かれたダンボールがあった。


「めっちゃ使えそうじゃん」


ぶつけないように慎重にダンボールを床に置いて中を開ける。


「これは花火と旅行ブック??と…何だこれ爆

竹?」


あったのは手持ち花火と旅行ブックと爆竹だった。


「パリピすぎない?」


花火と旅行ブックはわかんないけど爆竹は武器になる。


「爆竹ってどうやって使えばいいんだろう。叩きつければいいのかな?」


使い方はもしもの時に考えるとしてとりあえず持っておこう。爆竹をしまおうとした時、

ガッシャーン!とまた大きな音を立てて窓が割れた。


「また!?」


しかし今度は水は流れてこなかっ た。代わりにリンクルが飛び込んできた。


「リンクル!?」


リンクルは綺麗に着地する。


「サイレンヘッドは活動を停止しました。少し

時間がかかってしまいましたが怪我は無いよう

ですね」

「うん、お陰様で。リンクルは大丈夫?」

「はい。ロボットなので」

「ロボットでも怪我したら大変だよ」

「ロボットは怪我しませんよ?」

「比喩みたいなもんだよ。故障したら大変だよっていう」


そうなんですかとリンクルはまた真顔で言う。


「ひとまず救助が来るまでここで休みましょ

う」

「そうだね」



「そういえばオルドデール伯爵について何か言

ってなかった?」

「あぁちょうどその話をしたかったんです。」

「まずエルピーダには種類があることは知って

ますか?」

「うん。確か12個あるよね。それ以外はあんま

りは分かんないけど」

「そうです。火、水、氷、雷、風、草、花、

妖、毒、影、光、闇の12種類があります。」

「そしてオルドデール伯爵の使うエルピーダ

は“妖”だと思います。妖は幻影術や催眠術に特

に秀でています。」

「幻影術と催眠術…」

「そうです。そして僕が氷のエルピーダでオル

ドデール伯爵の用意したロボットを攻撃した

際、ロボットの部分には攻撃が当たりました

が、サイレンヘッドみたいになってる“頭”を攻

撃した時攻撃が当たらず床に当たったんで

す。」


「つまりあれは幻影術だったて事?」

「おそらくそうでしょう。そしてその幻影は恐怖によって起こされるものでしょう。稀梨華ちゃんはあのロボットの細い形で““サイレンヘッドみたいで怖い””と感じたはずです。」


確かにサイレンヘッドみたいで怖いと感じた。


「じゃあ怖いと感じなければ幻影術は効かない

ってこと?」

「術者の技術にもよるでしょうが今回はそうだ

と思います。」


なるほどそう言うことだったのか。


「それにしてもリンクル詳しいんだね」

「はい。あの綺麗な人が僕に地球の常識をくれ

たので」


ん?地球の常識?待てよリンクルはまさか地球じゃないところから来たのか?でも常識をくれたってどういうことなんだろう?


「常識をくれたってどういう事?」

「あぁそれは」


そう言ってリンクルは人間で言う心臓の部分に手を添えた。


「ここに歯車があります。ここには2つ歯車が入

ります。ひとつはあの綺麗な人から貰ったもの

で、その歯車に地球の常識が入ってたみたいで

す。凄いですよね」


ほんとに凄いよその綺麗な人。


「じゃあもう1つは?」

「もう1つは““あの子””がくれると言ってまし

た。もう1つの歯車に何の効果があるのか分か

りませんが」


また“あの子”か。


「リンクルはあの子を探しに来たんだよね?」

「はい」

「なら私にも手伝わせて。救助してもらってから一緒に探そう」

「いいんですか?」

「うん。リンクルには沢山助けてもらったし、

それに“地球”の色んないい所に連れて行ってあ

げる」

「稀梨華ちゃんは僕が怖くないんですか?僕は宇宙人かエクロスのような存在でしょう」

「それは違うよ。リンクルは私にとってヒーロ

ーだよ。」


リンクルはサイレンヘッドから私を守ってくれたヒーローだ。


「ヒーロー…いい響きですね。」

「地球にはどんな所があるんですか?」

「うーん…地球と言っても日本のことしか教えて

あげられないんだけど、日本はね有名な観光地

が沢山あるの。」


ジャジャーンとさっき見つけた旅行ブックを取り出した。


「これで日本の綺麗ないいとこを教えよう!」


おぉーとリンクルが手を叩いてくれる。

役に立ってよかった。


「まず北海道はねぇ青い池と、あと函館山に五稜郭タワー、札幌時計台、北海道大学のイチョウ並木、旭山動物園に富良野の花畑、小樽運河とかが有名らしい。私も青い池とか行ったことあるんだけど凄く綺麗なんだよ!」

「名前からして綺麗そうですもんね。他にもあるんですか観光地。」

「うん!でもまだまだあるよ」

「次は東北地方!鶴の舞橋、三春滝桜、厳美渓

、銀山温泉とかかな。東北地方は行ったことがないから少ししか分からなくてごめんね」

「十分ですよ。他にはどんな所があるんですか?」


リンクルは興味津々といった様子だ。



それにしてもただ旅行ブックを読んでるだけなのに、こんなに興味を持ってくれるなんて思わなかったな。日本に興味を持ってくれて嬉しいなぁ。


「リンクル」

「なんですか?」

「その…私の財力というか中学生の財力ではこの辺までが連れて行ってあげられる限界なんだけど気に入ったところはあった?」


正直もう財力的には北海道で厳しいんだけどね!

リンクルはしばらく考えた後


「なら青い池と函館山と鶴の舞橋とに行ってみたいです。」

「いいね!私も行ってみたい!」


まぁこの3つなら夏休み中に親に全力土下座して貯めてきたお年玉を崩せばもしかしたら連れて行ってくれるかもしれない。


「日本には綺麗な場所が沢山あるんですね」

「まぁその分汚いところもあるよ」

「どんなところですか?」

「場所というか人間かな?」

「人間ですか?」

「そうそう、まぁ色んな人がいるからね。笑顔

の裏で何考えてるか分かんないやつとか」


泉さんとか泉さんとか


「人間って生きずらそうな生き物なんですね」

「うん、まぁそうかもしれないね。」


そう言って私は床に寝っ転がった。


「好きなものだけを見て、綺麗なものだけを聴いて生きて来れたら幸せなんだけどね」

「…稀梨華ちゃんの言う好きなものってなんですか?」

「うーん、私の好きな物というか理想になっち

ゃうけど、私は晴れた日の朝すごく綺麗な草原

を思いっきり走りたいの。周りには大きな大木

が一つだけあって、所々にエーデルワイスの花

が咲いてる。そんな空間が私の好きなものか

な。」


そんな綺麗な場所があるのかは知らないし、今はそんな事言ってられる場合じゃないけどせめて今くらい理想を語らせて少しでもこのボロボロに壊れた校舎から非日常を忘れさせて。


「なら僕も見に行きたいです。興味があります稀梨華ちゃんのその好きなもの」

「…うん。絶対見に行こうね」


約束。とリンクルに向かって小指を出す。

リンクルも小指を出す。

2人の小指がかさなろうとした時

窓の外からパトカーの音とヘリコプターの音が聞こえてきた。


「もしかして!」


私は窓の外を見る。


「見てリンクル!救助が来たよ!私たち助かる

よ!」


救助ヘリがこっちに近づく、イロアスの隊服を来た人がこっちに手を差し伸べてくる。

あぁやっと助かるんだ。やっと……

手を掴もうとした時違和感に気づいた。

あれ?でも救助ヘリってこんなに近くに来れるものなの?


「掴んだらダメ!」


リンクルの叫び声で我に返った。


「これはオルドデール伯爵の幻影術です!」


すると幻影の救助ヘリとイロアスの隊員がドロドロと魔法が解けるかのように溶けていき、オルドデール伯爵が姿を現した。


「オルドデール伯爵!?」

「貴女とはよく会いますねぇ稀梨華さん」

「どういうつもり?まだゲームは終わってない 

はずだけど?」

「私だって貴女がイロアスに通報したり、エル

ピーダを使えるロボットと一緒に行動しなきゃ

何もしない予定でしたよ」

「ですがさすがにイロアスを呼ばれると私も厳

しいというわけで貴女に提案です」

「提案?」


オルドデール伯爵は何も無い空間を切断するような素振りをする。するとそこから黒い空間が出てきて、オルドデール伯爵はそこから“人”を引っ張り出してきた。その人は…


「しーちゃん!?」

「しーちゃんに何をしたの!?」


しーちゃんは頭から血を流している。


「私は“これ”を人質にする予定だったのですが、イロアスは民間人の命が何よりも大切なので」

「変わりに““貴女””が人質になってください。そうすれば“これ”は貴女に返します。どうしますか?」


稀梨華は拳を握りしめる。


「稀梨華ちゃんまた幻影かもしれないよ」

「そうかもしれないけど許せないんだよ。しー

ちゃんを傷つけたこと、“これ”呼ばわりしたこ

とも」


会話が聞こえていたのかちなみに幻影じゃありません!とオルドデール伯爵が答える。


「そろそろ決めたらどうです?」


オルドデール伯爵がしーちゃんの頭を杖で強く叩く。


「分かった!!私が人質にな


私がいい切る前に屋上から ドォォォーン!!とすごい音がした。

リンクルもオルドデール伯爵も私も皆が音がし

た方を見る。


「その必要は無いぜ嬢ちゃん」


と今度は横から声がする。声の主はなんと空中にたっている。


「黒い軍服……」


するとその人の横にまた1人、2人、3人、4人と黒い軍服を来た人が並ぶ。


「やっとお出ましですかイロアスの皆様」

「あぁ待たせたなクソ共が」




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