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Chapter8 「ニセ七海誕生」 【地球】

Chapter8 「ニセ七海誕生」 【地球】


日曜日の朝、私はコーヒーを飲みながらテレビのニュースを見ていた。七海が毎朝コーヒーを淹れてくれていたので、朝にコーヒーを飲むことが習慣になっていた。七海はコーヒードリッパーで淹れてくれたが、七海が居なくなってからはインスタントンのスティックコーヒーを飲んでいる。

『では、次のニュースです。昨夜未明、神奈川県横須賀市観音崎の宗教施設で大きな火災が発生しました。近所の住民の話では、大きな爆発音のあと火が出たとのことです。消防車30台以上が出動して、現場一時は騒然となりましたが、火災は先ほどに鎮火した模様です。大量のガソリンと火薬類が燃えたとみられ、消防と神奈川県警が調査を行うとのことです。尚、死者や負傷者は確認されていません。

では、季節の話題です。東京都文京区の湯島天神では早くも梅の花が』

私はリモコンでテレビを消した。観音崎の宗教施設で火災、爆発。間違いない、MZ会の施設だ。観音崎の周辺の大きな施設は公園と海上自衛隊の施設とMZ会の施設しかない。まして宗教施設となるとMZ会で間違いないだろう。いったい何があったのか。私はMZ会の施設を思い出した。新しい建物で、内装も綺麗だった。おそらく消火設備も整っているだろう。大量のガソリンと火薬類というのが気になった。


 MZ会の宗教施設の火災から1週間が過ぎたが続報は無かった。ネットで検索してもそれらしい情報は見つからなかった。MZ会がマスコミに圧力をかけているのかもしれない。玄関のチャイムが鳴った。ネット通販で注文していたミリタリーグッズが届いたのであろう。今回は自衛隊グッズ専門のネット通販で、作業用ジャンパーを注文したのだ。レプリカではなく官給品の本物である。自衛隊では装備を一新するようで、作業用ジャンッパーも新しい型になる為、メーカー在庫が一部放出されるという。自衛隊の官給品が放出されることは稀である。届くのを楽しみにしていた。玄関のドアを開けるとそこには『制服を着た女子高生』が立っていた。紺色のブレザーに白いシャツ、ブルーのチェックのスクールリボン、ブルーのタータンチェックのミニスカート。かなりカワイイ。男子にモテそうだ。学年でベスト3に入るレベルだ。同じクラスだったら好きになっていただろう。ナマ足が眩しく艶めかしい。肩から大きなバックを掛けている。手にもボストンバックを持っていた。しかし私に女子高生の知り合いはいない。新手のセル―ルスか? 宗教の勧誘か?

「あの、どなたですか? 何か用ですか?」

そう言うしかなかった。

「お願いです、部屋に入れて下さい。唐沢です」

びっくりした。目の前にいるのはどうみても女子高生だ。しかし声は唐沢の声だった。

「唐沢さんなの!? どうしたの? 何があったの?」

「兎に角中に入れて下さい。詳しい話はその後です」

唐沢は焦っている。私は女子高生を部屋に入れた。女子高生は床に腰を下ろすと話しはじめた。横に崩した足に目が行ってしまう。とにかくカワイイ。

「水元さん、しばらく匿っていただけませんか? お礼はします。緊急事態なんです。お願いします。あと、私の事をいやらしい目で見ないで下さい。さっきからチラチラ私の足を見てます。気になります」

「見てないよ! 見られたく無いなら女子高生なんかに変身するなよ! しかもカワイイじゃないか!! それより何があったんだ?」

本当は見ていた。カワイイ女子高生の生足が目の前にある。見ない方がおかしい。見ない男などこの世に存在しない。もし存在したとしたらそいつはゲイだ。別にゲイを差別する気はない。

「MZ会の分裂です。この前お話したようにMZ会は国家を建設しようと思っています。もちろん地球人と共存するつもりです。しかし、地球を征服しようとする勢力がMZの中に誕生しました」

何かとんでも無い事が起きているようだ。私はインスタントコーヒを淹れて女子高生の姿をした唐沢に出した。

「ありがとうございます」

女子高生の唐沢はコーヒーカップを口に運んだ。カワイイ。

「地球征服って、MZ会は平和主義じゃなかったのか?」

「はい。しかし地球を征服しようと考える勢力が台頭しています。MZ会は世界中に支部がありますが、主にヨーロッパの支部が地球征服論を唱えています」

「なんで今頃なんだよ? 征服する機会はいくらでもあっただろ?」

「それが、MM378の第1政府の工作員が3年ほど前に地球に侵入し、工作活動を行っていたようです。気が付きませんでした。第1政府は我々、地球に住むMM星人を殲滅するために地球侵攻を考えているようですが、地球の征服も考えているかもしれません」

「第1政府はMM378で苦戦してるんだろ?」

「はい、1年以内に崩壊するかもしれません。第1政府は、もしかしたら地球に移住するつもりかもしれません。かつての我々のように。ただ、我々とは違う手段を使うでしょう」

「武力を使うってことか?」

「はい、場合によってはガンビロンなどの脳波攻撃も使うでしょう。脳波攻撃で各国の要人を暗殺して世界を混乱させるかもしれません。アメリカ大統領に変身すれば入れ替わることも可能です」

「地球征服派のMZ会の信者はどれくらいいるんだ?」

「それにお答えする前に、この星におけるMM星人とMZ会について説明します」

唐沢の話をまとめた。

・MM星人は世界に130万人存在する

・MM星人の80%がMZ会の信者である

・MZ会は1900年代の初めにアメリカで誕生し、第2次世界大戦の後、各国に広がった

・MZ会のMM星人の信者はおよそ100万人、地球人の信者は700万人

・アメリカにいるMM星人は30万人。ヨーロッパは60万人、アジアは20万人(内日本は10万人)

・MZ会の地球人の信者はアメリカが140万人、ヨーロッパが250万人、アジアは60万人(内日本40万人)


 「1800年前にMM星人が来た頃は5万人だったんだよな? 今は130万人もいるのか」

「MM星人はMM378では2~3個体の子孫を生みますが、地球は環境がいいので6~8個体の子孫を生むので増えるのが早いのです。まあ、子孫を生むのは700歳くらいなのでサイクルは地球人より長いのですが。生まれた子供はコミュニティやMZ会の施設で100歳まで育てるのです。最近では地球人のように親が子供を育てて家族とういう単位で生活するMM星人もいます」

「ヨーロッパのMM星人と地球人の信者の200万人が地球制服派ってことなのか?」

「地球人の信者は地球征服論に関わってません。ですからヨーロッパのMM星人の信者50万人が地球征服派です。地球人の信者は割とインテリ層が多いのがMZ会の特徴です。著名な物理学者や天文学者も多くいます。宇宙の真理が教義だからです。MZ会は論文や学会で、地球ではまだ解明されていない物理法則や宇宙の謎について新しい理論発表しています。どれも真実ですが、小出しに発表しています。その為学者や研究者の入信者多いのです。いずれ時空超越転移装置についても発表があるでしょう」

「MM星人50万人が征服派なのか。怖いなあ。50個師団くらいか」

「すぐに征服の為の行動を起こすとは思えませんが、MZ会の主導権を取ることは狙っているでしょう」

「日本支部はどっちなんだ?」

「本部のあるアメリカと日本支部、アジアの各支部は反征服派です。約50万人でほぼ征服派と同数です」

「アメリカのMM星人が味方なのはなんか心強いな」

「それにMZ会の本部はアメリカの裏政府と良好な関係にあります。協力もしてきました」

「裏政府?」

「はい、実質的にアメリカを動かしているのが裏政府です。世間では『影の政府』(シャドウガバメント)とか『闇の政府』(ディープステイト)とか言われています。アメリカの大統領は裏政府の操り人形にしかすぎません。政治政策や外交も裏政府が操っているのです」

「なんか陰謀論みたいだな。『ケネディの暗殺』とか『9.11テロ』で聞いたことがあるよ」


 「話を戻します。観音崎の施設に地球征服派が攻撃を仕掛けてきました。おそらく威力偵察だと思われます。私は当直でした。私はあの施設に住んでいます。他に5人のMM星人が当直で施設にいました。征服派の工作員が施設に侵入し、銃撃戦になりました。私は施設の爆破装置を起動し、重要な書類と現金を持ち出して逃げて来ました。私は敵に顔を知られましたので横須賀駅で見かけた女子高生に変身しました。5人組の中で一番カワイイ子に変身したのです。制服はネットで調べた中古制服の店で買いました。その後、都内を逃げ回ってました。夜は怖かったです。何回かナンパされました。夜はひたすら歩いて時間をつぶしました。持ち出した資料の中に水元さんの住所があったので来ました」

私は状況を理解したが、正直言って迷惑だった。それ以上に関わるのが恐ろしかった。でもカワイイ。

「唐沢さん、話はわかったけど、どうするつもりだ?」

「しばらくは大人しく身をひそめることにします。迷惑は懸けないようにします。日本支部のメンバーと連絡をとって対応策を検討します。現金は1000万円ほど持ってますのでお金の心配はいりません。それと、これはお土産がわりです」

そう言うと唐沢はバックから紙に巻かれた何かを取り出してガラステーブルの上に置いた。私は巻かれた紙を剥がした。ずっしりと重かった。

「M19コンバットマグナムか!」

M19コンバットマグナムは38スペシャル弾と357マグダム弾を撃てるスミス&ウッソン社製のリボルバーの拳銃だ。唐沢が持ってきたのは4インチモデルだった。M19は漫画のルパン三世で『次元大介』が愛用している拳銃である。

「銃、お好きですよね? 弾もあります。357マグナム弾30発です」

「いや、好きだけど、これはまずいよ、不法所持になる、唐沢さんは銃を持たなくていいのか?」

「はい、私は荒事が苦手です」

「でもMM星人だから身体能力は高いだろ? 太平洋戦争ではゼロ戦のパイロットでアメリカ機を40機以上撃墜したんだろ?」

「はい、身体能力は地球人より遥かに高いです。飛行機の操縦は得意でした。空中戦は相手の顔を見なくても戦えます。しかし地上戦闘はそうはいきません。顔を見ながら殺しあうのはイヤなのです。だから陸軍に招集される前に海軍兵学校に入ったのです」

唐沢が海軍航空隊に入った経緯が理解できた。

私はM19コンバットマグナムと箱に入った357マグナム弾30発をクローゼットの奥に押し込んだ。その日の夜は布団を二組敷いた。唐沢は下着姿になって布団に潜り込んだ。顔はカワイイがトランクスとランニングシャツだった。体は女子高生のようだった。

女子高生と枕を並べて寝るのは妙な気分だった。唐沢は寝たようだ。疲れているのだろう。しかし寝顔がカワイイ。


 会社から帰るとキッチンで制服姿の女子高生が食事を作っていた。「水元さん、おかえりなさい、今、食事の支度をしてます」

唐沢の作った料理は美味しかった。おかずは筑前煮だった。ほうれん草のお浸しと豆腐の味噌汁もいい感じだ。それにカワイイ。女子高生との食事にテンションが上がった。

「唐沢さん、女子高生の姿はまずいよ。買い物に行ったんだろ? 女子高生が部屋に出入りするのは目立つし通報されるかもしれない」

本当は女子高生の姿でいて欲しかったが、さすがにまずい。

「どうしたらいいでしょうか?」

「うーん、そうだな、七海に変身してくれ。七海は一年間この部屋に住んでた。俺と行動を共にしても怪しまれないと思う。パソコンに顔の画像がある。体は写真集の水着の写真を参考にしてくれ」

「わかりました。七海さんに変身すればいいんですね? 変身する時、『顔が1回ドロドロ』に溶けますけど気にしないで下さい。私は気にしません」

「普通は気にするだろ! トイレで変身してくれ!」

「わかりました。明日、水元さんが会社に行ってる間に変身します」

「声も変えてくれ。声優の『雨宮あゆ』の声だ。アニメを見てくれ、『私とアイドルゴースト』っていうアニメが深夜に放送してるはずだ、ネット配信もしてる」


 会社から帰ると唐沢は女子高生から七海に変身していた。私はドキッとした。七海が目の前に現れたのだ。七海の制服姿。いいかも! しかし不思議と心からの喜びは感じなかった。七海は七海でもニセ七海なのだ。

「水元さん、どうですか?」

「ああ、顔も声もそっくりだ」

「良かったです、声は『私とアイドルゴースト』を第5話までネット配信で見て変えました。面白いアニメでした。おっさんの幽霊が国民的アイドル女優に変身して中年のサラリーマンの主人公と一緒に住む話です。最初はおっさんの声でしたが、第5話から『雨宮あゆ』の声になりました。続きが凄く気になります」

「なんか聞いたような話だな。二番煎じっぽいストーリーだ。見る価値ないだろ」

「明日は服を買いに行きます。しばらくは七海さんになります」

七海の服はクリーニングに出したあと保管していたが、何故か唐沢に着せたくなかった。本物の七海が帰ってくるまでそのままにしておきたかったのだ。


 会社から帰るとニセ七海の唐沢が食事を作っていた。しかし服装がダサかった。灰色の『もんぺ』みたいなズボンに灰色のセーターだ。デザインも、もっさりしている。若い女性の服装とは思えない。70歳以上のおばあさんの服装だ。

「唐沢さん、その服どこで買ったんだ? もうちょっとお洒落な服装の方がいいんじゃないかな」

「巣鴨で買いました。ここから歩いて近かったんです。それになるべく目立たない服を選びました」

「なんていうか、ダサすぎてかえって目立つと思うんだよな。七海の顔が浮いてる感じだよ。巣鴨って『おばあちゃんの原宿』だろ。七海も最初はおっさんの服装だったけど、ファッション雑誌なんかを見て勉強してお洒落になったんだよ」

「わかりました、明日もう一度服を買いにいきます。それと唐沢さんと呼ぶのは止めてください。敵にバレます。七海と呼んで下さい」

「わかったよ。俺の事はタケルと呼んでくれ。七海は俺の事をそう呼んでたんだ」

「わかりました」


 会社から帰るとニセ七海の唐沢が部屋の真ん中に立って手鏡を見ていた。

えっ?・・・・・・私は目を疑った。ニセ七海の唐沢はピンクと白のツートンカラーのロリータファッションだった。白いタイツを履いている。『甘ロリ系』だ。でかいリボンと、やたらとフリルが付いた服だ。メイクもロリロリで髪は金髪でツインの三つ編みだった。

「唐沢さん、いや、七海、その服装はどうしたんだ!」

唐沢さんより七海と呼んだ方が怒鳴りやすい。七海との生活を思い出した。

「タケルさん、本当の原宿に行きました。これは店員に見繕ってもらったんです。美容院も教えてもらって、そこでメイクもしてもらいました。若くてカワイイ女の子になろうと思って原宿に行ったんです。似合ってますか? 店員さんはベタ誉めでした。もう、似合ってるって、カワイイってホメホメでした」

「いや・・・・・・」

私は返答に困った。唐沢はふざけているのか? 唐沢は原宿のロリータファッションの店に行ったようだ。おそらく何も知らずに店に入ったのだろう。店員に上手いこと乗せられてその気になったようだ。どうせなら『甘ロリ』より『ゴスロリ』にして欲しかった。同じロリータファッションでもまだましだ。

「鏡を見たんです。自分で言うのもなんですけど、私、カワイイんですよ。300年以上生きてきましたが、女性に変身するのは初めてなんです。女性も悪くないですね。お洒落を楽しまめます。目覚めちゃったかもしれません」

唐沢は笑顔で嬉しそうにしている。カワイイのは七海に変身したからだ。元は40代のおっさんだ。金髪三つ編みの七海は新鮮だけどなんか違う。一緒に歩くのが恥ずかしい。

「もうすこし普通の恰好の方がいいんじゃないかな。ロリータファッションは目立つと思うんだよな。もう少し落ち着いたお洒落の方が目立たなくていいと思うよ」

「はあ、そうですか。カワイイし似合ってるんですけどね。ダメですかね?」

「ダメだ!!!」

「似合ってるのに、残念です・・・・・・タケルさん案外イジワルなんですね」

カワイイとか似合うとか、そういう問題じゃねえだろーがよ! こっちは危険を冒して匿ってやってるんだぞ、地球征服の危機なんだろ! 襲撃されたんだろ! 私はクローゼットからM19コンバットマグナムを取り出して唐沢に向けて発砲したくなった。


「感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってるの!!」

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