続 七海ショートストーリー3 VS アリス・アバーナシー
続七海ショートストーリーは本編とはまったく関係ありません。「もしも七海がやらかしたら」のコーナーです。
続 七海ショートストーリー3
『七海 VS アリス(映画:バイオハザード)』
会社帰りに秋葉原駅の改札で七海と待ち合わせをした。七海は私を見つけると明るい笑顔になった。人混みの中でも七海の美しい笑顔は眩しいほど輝いていた。秋葉原には七海がエアガンを欲しいというので見に来たのだ。七海はMM378でM629ステンレス4インチを使っていたらしい。私の部屋にM629ステンレス4インチのエアガンがあったのでエアガンに興味を持ったようだ。リボルバーは飽きたのでオートマチックの拳銃が欲しいと言うのだ。
「タケル、そのスーツ似合ってるの。この前一緒に買いに行ったスーツなの」
「そうか、嬉しいよ。この色にして正解だったな」
七海はミリタリーショップで『デザートイーグルクロームステンレス』を買った。七海はMZ会の射撃場でもデザートイーグルで射撃練習をしていた。弾丸は50AE弾で、357マグナム弾の3倍、44マグナム弾の2倍の威力があった。威力のある分反動も強烈で、私は扱う自信がなかった。しかし七海は楽々と扱い、連射しても的の中央に弾丸を集中させていた。その腕前には藤原ミサキも驚いていた。
蔵前通りの近くの路地で私はいきなり殴られた。相手は上下灰色の迷彩服を着た金髪の女性だった。美人だった。見とれていたらいきなり右ストレートを頬に喰らった。私は衝撃で後ろに倒れ、危うく後頭部をアルファルトに打ち付けるところだった。路上の喧嘩の死因で一番多いのが殴られた拍子に転倒して後頭部をアスファルトに打ち付ける事だ。後頭部を地面に打ち付けずに済んだが強烈なパンチで脳が揺れた。倒れた拍子にスーツのズボンがアスファルトに擦れて大きく破けた。
「痛てえ! いきなり何なんだよ! それにこのスーツ買ったばかりなんだぞ! 高かったんだぞ、初めて買ったポールスミスなんだ!」
私は叫んでいた。私は先月、思い切ってポールスミスのスーツを買ったのだ。突然、今着ているスーツ2着のズボンが破れたので焦っていたせいもあるが、勢いで10万円超えのスーツを初めて買ったのだ。七海と一緒に池袋の西武デパートに行って、色は七海に選んでもらった。
「悪いけど死んでもらうわ」
迷彩服の女は足を振り上げた。靴はコンバットブーツだった。
七海が迷彩服の女にタックルで押し倒し、そのまま後ろから首に腕を絡めて締めあげた。
「あなたは誰なの? 名前を言うの!」
七海が訊いた。
「アリス。元アンブレラ社の特殊工作員」
「何でタケルを殴ったの?」
「B7の仲間を抹殺するようウェスカーに頼まれたの。B7はレッドクイーンと協力関係にあるから生かしておけないの」
またしても『B7』絡みだ。いったいユモさんは何をやってるんだ!? ここ最近、未来から来た『ターミネーターT-800』、CIAの依頼を受けた『ランボー』が立て続けに襲ってきた。
「B7ってユモさんの事か? ただ筋トレを教えてもらっただけだ」
アリスは七海の腕を振りほどくと立ち上がってファイティングポーズになった。七海もファイティングポーズをとる。私はワクワクした。映画のバイオバザードシリーズのアリスと七海が戦うのだ。バイオバザードシリーズは全部観ていた。ゲームは『4』までクリアした。コードベロニカが最高に面白かった。私の知るアリスは滅茶苦茶強かった。Tウィルスによる覚醒で身体能力が半端じゃない。格闘戦が強く、銃器の扱いもプロだ。もちろん七海には勝って欲しいが、見応えのある対決だ。強い女性ナンバー1を決定する戦いだ。Tウィルスで人間離れした身体能力を発揮するアリスと人間の10倍~20倍の身体能力を持つMM星人の七海。しかも七海はムスファの称号を持つ最強の軍人だ。
アリスが連続してパンチを放った。七海は体を左右に振って避けた。アリスがジャンプしながら右ハイキックを放つ。七海はしっかりと左腕でブロックする。アリスが着地したと同時に七海が右上段回し蹴りと左後ろ回し蹴りを一連動作で連続して出した。左後ろ回し蹴りがアリスの顔面にヒットした。アリスが吹っ飛んでラーメン屋の壁にぶつかった。
「なかなかやるわね」
「あなたの攻撃なんて、河童の屁なの。『残念だけど七海の屁じゃないの』。ゾンビが相手なら有効かもしれないけど、MM星人には効かないの。ましてムスファには全然効かないの」
「MM星人? ムスファ? なんなのそれ?」
「大マゼラン星雲の惑星MM378に生息している知的生命体なの」
「馬鹿らしい、宇宙人が人間の恰好をしてるわけないでしょ。それに美人だし」
アリスは信じていないようだ。アリスが飛び蹴りをした。左右の脚による2段蹴りだった。七海は両腕でブロックしたが後ろに吹き飛ばされて勢いよく転がった。
「凄いパワーなの。地球人とは思えないの」
七海が焦っている。その後、アリスと七海の打撃戦は20分も続いた。周りにはギャラリーの輪ができていた。警察に通報されると困るので私と七海とアリスは昭和通りの首都高の高架下に移動した。そこでも打撃戦が10分以上続いた。七海の得意のラリアットもアリスはガードして弾き返した。七海は少し手加減しているようだ。T-800の顔を一発で胴体から吹き飛ばしたラリアットだ。お互いにファイティングポーズで睨み合いアリスは肩で息をしているが七海は息一つ切らしていない。持久力は七海の方が勝っている。凄い戦いだ。私はドキドキした。七海は思ったより苦戦しているようだ。ターミネーターT-800やランボーとの戦いは5分と掛からなかったのだ。アリスが高くジャンプした。直後に七海もジャンプしたがアリスより遥かに高く飛んだ。10m近く飛んだだろう。首都高の高架にぶつかるかと思うほどの勢いだった。七海は降下しながらアリスを空中で何発も殴った。着地したアリスが跪く。アリスの顔は腫れあがり、唇の端から血を流していた。七海は素早く踵を振り上げるとアリスの右肩に振り下ろした。
「ウグッ!」
アリスは前のめりに転んで俯せになった。
「あなた、強いわね、10mもジャンプするなんて普通じゃないわ。私も以前みたいにサイコキネシスが使えたら勝てたけど、今回は私の負けだわ。ねえ、私たちの仲間に入らない? こんな冴えない中年男といるより有意義よ。一緒にレッドクイーンを倒すのよ」
アリスが七海を仲間に勧誘した。私は腹が立った。冴えない中年男で悪かったな!
「私は組織には入りたくないの。MM378で散々戦ってきたの。核爆発にも巻き込まれたの。だからしばらくはタケルと平和に暮らしたいの。タケルに朝ごはんを作って、コーヒーを淹れて、玄関で行ってらっしゃいのキスをするの。それが幸せなの」
おおっ、嬉しい。七海は最高の女性だ!
「残念ね、それにしてもこんなおっさんのどこがいいの? 本部に帰ってあなたの事を報告するわ。いずれまた来るから仲間になることを考えておいて欲しいわ」
「『そうはいかないの。』タケルのスーツを弁償するの!」
「悪いけど、お金はあんまり持ってないのよ」
アリスが地面に崩れ落ちた。七海がポングを使ったのだ。
「七海、どうするんだ? でもこのまま本部に帰したら厄介そうだな。それにしても最初からポングを使えば勝てたんじゃないのか?」
「最初からポングを使うのは相手に失礼なの。この人、悪い人じゃないと思うの。だから命は助けるの。今、店長が『セクシー町中華』を企画してるの。この人、美人だから使えると思うの」
【1カ月後】
「アリスちゃんは今、池袋のセクキャバで修行してるんだよ。戻ってきたら『セクシー町中華』の立ち上げのスタッフになってもらうんだよ」
店長が楽しそうに話す。
「それはよかったの。セクキャバはよくわからないけど、アリスさんは頑張ってるのね」
「店長、この店のジャンボ肉シュウマイ、本当に美味しいわ。チャーハンとの組み合わせが最高よ。アメリカに店出したらヒットするわよ。それとこの店の奥に『セクシーゾーン』を作って欲しいのよ。特別料金でお客さんにセクシーなサービスをするの」
アリスは龍王軒に来ていた。ランボーが厨房でニコニコしている。チャーハンとジャンボ肉シュウマイを褒められたのが嬉しいのだろう。それにしても龍王軒は凄い事になっている。ランボーとアリスが働き、時々レジ横に店のマスコットとしてターミネーターTー800の頭部を置いている。七海が貸し出しているのだ。Tー800は愛想良く接客をしている。
龍王軒は間違いなく世界最強の町中華だ。
「アリスちゃん、それはいい考えだな。実験にもなるし、この店の売上も伸びるかもしれないな」
「タケルさん、スーツ代は来週払うわ。私、結構人気があって指名が多いから稼いでるの。あと、お店に遊びに来てね。サービスするわ」
アリスは私に店の名刺を渡した。店の名前は『ラブラブHゲッター』で源氏名は『亜理須』だった。
「アリスさん、タケルを誘惑しないで欲しいの!」
七海が怒っている。
私は七海の目を盗んで『ラブラブHゲッター』に行ってアリスを指名した。セクシーキャバクラどんな所か興味があったのだ。暗い店内の狭いソファー席で隣にアリスが座った。服装は胸元が開いたセクシーな服だった。
「あら、いらっしゃい。来たのね」
「どんなサービスがあるんだ」
私はセクシーキャバクラに来るのは始めてだった。キャバクラには数え切れないほど行った事があるが、セクシーキャバクラはハマりそうなので避けていたのだ。
「上半身のお触りとキスはOKよ。それ以上は相談次第なの。ゾンビの群れと戦う事に比べたら触られるのなんて全然たいしたことないわ」
かなり過激なサービスが可能なようだ。普通のキャバクラとは明らかに違う。
「七海に怒られるから飲むだけにしとくよ。水割りを頼む」
アリスはボーイを呼んで水割りを注文した。他の席を見ると男女が抱き合ってキスをしている。客の男の手が嬢の胸元をまさぐっている。店内は大きな音でユーロ―ビートが響いている。
「ねえ、七海さんってどんな人なの? 強いわよね?」
「七海は強いよ。MM星人のムスファなんだ。地球をMM星人の侵略から救ったんだ」
「本当に宇宙人なのね、そうは見えないんだけど」
「MM星人は変身できるんだ。七海の姿は俺が画像生成AIで作ったんだ」
「そうなの、MM星人は強いわね。それに変身できるなんて凄いわ」
「アリスはこれからどうするんだ?」
「セクシー町中華が上手くいったら暖簾分けしてしてもらって支店を出そうと思ってるの。もうゾンビと戦うのは飽きたの。何か違うことをやろうと思ってたから丁度いい機会なの。セクキャバのノウハウを学んで、セクシー町中華の立ち上げに生かすの」
「レッドクイーンは倒さなくていいのか?」
「ウェスカーがなんとかするわよ。もう私は自由になりたいの。Tウィルスと関係ない世界で生きたいのよ。それより、何もしないの? 料金は発生してるのよ」
私はアリスの胸元を見た。触ってみたくなったが七海の顔を思い出して我慢した。地球を救った七海を裏切るわけにはいかない。
「タケル、こんな遅くまでどこに行ってたの?」
「久しぶりに大学時代の友達と飲みに行ってたんだよ」
「怪しいの、香水の匂いがするの。まさかセクキャバに行ったんじゃないでしょうね? セクキャバってエッチなところみたいなの。インターネットで調べたの」
「違うよ。飲み屋でやたら香水臭い女性のグループが近くにいたんだよ」
「七海さん、タケルさんは七海さんにぞっこんですから大丈夫ですよ。それに男は少し遊んでるくらいの方が人間的に余裕や幅があっていいですよ」
T―800がフォローしてくれた。
「『ターちゃん』がそう言うなら安心なの。私にぞっこんなのは嬉しいの。でもタケルは遊ばなくていいの。余裕や幅なんていらないの」
七海はアリスに勝利した。アリスはセクキャバ嬢として池袋の『ラブラブ・Hゲッター』で働いている。珍しいブロンド美人なので固定客が多いようだ。アリスは映画の中とは違ってサバサバした性格だった。
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