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Chapter44 「ドック崩壊1/2」 【MM378】

Chapter44 「ドック崩壊1/2」  【MM378】


 搬入口から降ろされた超小型核爆弾Badboyはリュックケースに入れて爆破班の9個体が背負う事となった。部隊はホバーバイクに乗ったナナミ大尉を先頭にドックまでの約20Kmを歩いた。岩だらけの登りが続いたが問題なく当初予定していた正面にドックが見下ろせるポイントに到着した。大きな岩影に5つの光学迷彩テントを設置した。標高は5000mである。ドックまでの距離500m。高度差は50mで遮蔽物もないため監視には最適な場所だった。ナナミ大尉は兵士達を集めた。

「ここで1週間ドックを監視するの。各自事前に決められた通りに行動して欲しいの。護衛班には周囲の警戒とドックの偵察をお願いするの。爆破班には機材の準備とドックの監視をお願いするの。監視活動が終わったら破壊活動に移行するの。何か不都合があったらすぐに報告するの。以上なの。質問ある?」

誰に何も言わなかった。大きな任務を前に気持ちが昂っているように見える。ナナミ大尉は電子双眼鏡でドックを見ていた。ドックは少し見下ろす位置にある。


<実際に見ると想像以上に大きいの。あれを爆破するんだ>


 ドックは岩山の側面をくり抜くように作られていた。2階建て構造で1階部分、2階部分にそれぞれ3つの大きなトンネルのようなドックが見える。大きな正方形の穴は1階と2階がずれて並んでいる。

「ナナミ大尉、ドックの中に見える灰色の物体がギガ・グランドクロスシップです。殆ど完成してるようですね」

リンゴ中尉がドックを電子双眼鏡で観察している。ナナミ大尉は電子双眼鏡の倍率上げる。ドックの中の超大型宇宙船はほぼ建造が終わってるようだ。各種の艤装を取り付けている段階だ。遠目にもその規格外の巨大さが分かる。前部はやや傾斜のある底面になっているが殆ど箱型だ。

「リンゴ中尉、下の一番左側のドックの中は宇宙船の塗装作業を行ってるみたいなの。最後の工程なの」

「そうですね。間に合ってよかったです。あんなのが出来上がったらたら地球にとってかなりの脅威です。おそらく最新の時空超越転移装置を使用すれば地球迄1カ月で移動できるはずです」


 ドックの監視は5日目になった。ドックに接近して偵察を行っているシルバーウルフの隊員達の情報では1つのドックに5個体の見張りがいるようだ。ドックの奥の天井付近に管制室があり、オペレーターの兵士が数個体いるようである。ナナミ大尉はマークマックスミニの調整を行っていた。

《こちらナナミ大尉、1時間後にガンビロンを発射する、各自シールド発生装置をONにせよ。装置に不具合がある場合は報告せよ》

ナナミ大尉はトランシーバーでガンビロンの発射予定を伝えた。

「ガンビロン発射まで60秒・・・・・・・・3秒、2秒、1秒、発射」

低出力ガンビロンが発射された。

《こちらシャーク、ドックAの敵の見張り、6個体倒れました、これよりドックA内部を探索》

《こちらアーネスト、ドックDの敵の見張りも4個体倒れています、これよりドックD内部を探索します》

6つあるドックは下段の左側からA、B、C、上段の左側からD、E、Fと命名した。下段と上段に2個体ずつを偵察に出してる。

《こちらミルコ、敵の中隊駐屯地は全個体が睡眠状態。約250個体です》


「ナナミ大尉、ガンビロンは上手くいったようですね。ただし敵の無線による定時連絡がなくなりますので怪しまれるでしょう。あまりのんびりできません。爆破班、出発します」

「すぐに私も行くの。作業を見せて欲しいの」

ナナミ大尉はホバーバイクでドックAの前に移動した。幅180m、高さ180mのドックが山の斜面に6つもある。その規模は圧巻だった。高さ180mは虎ノ門ヒルズ、東京ミッドタウン日比谷、渋谷ヒカリエと同等である。その高さがドックの高さと幅なのだ。ドックの入り口は巨大なホールに見える。奥行きは1000m。


<凄いの、やっぱり第1政府はあなどれないの>


《こちらナナミ大尉、マクド少尉、ドックは制圧したの。大型ホーバーを移動させるの。ドックの下方50mは作業所の跡地で平らなの。着陸可能なの》

《こちらマクド、了解しました》

新型高高度大型宇宙船がドックのある山の中腹に着陸した。ナナミ大尉はリンゴ中尉のいるドックBに移動した。ドックBでは入り口から700m入った位置の右側の壁にドリルで穴を開けていた。ナナミ大尉は超大型宇宙船を見上げた。全長800m、高さ120mの宇宙船は巨大な建物のようだ。3万個体が搭乗できるのも頷ける。超大型宇宙船の側面は垂直の壁のようで色はダークグレーだが一部塗装されて白く塗られている。白い色は宇宙線や恒星の熱を反射する為だ。


<こんなのが地球に行ったら大変なの。タケルやさやかお姉ちゃんが危険なの。絶対に破壊するの。地球は素晴らしい星なの。絶対に守ってみせるの!>


「この場所がドックを崩壊させるのに最適な場所です。爆破すればドックは完全に崩壊します。宇宙船は左舷に爆弾を仕掛けます。木っ端みじんでしょう」

「仕掛けるのにどれくらい時間が掛かるの?」

「ドリルで穴を開けるのがあと2時間、爆弾筒の設置に30分、起爆装置の設定とテストに1時間です。他のドックも順調のようなので、4時間もあれば終わるでしょう」

「思ったより早いの。助かるの。爆破の範囲はどのくらいになるの?」

「山の斜面は崩れるでしょう。斜面から2Kmほどがドック崩壊の影響範囲です。地面が陥没したり、崩れたりするでしょう」

「敵の中隊の駐屯地はどうなるの?」

ナナミ大尉は妙な質問をした。

「5Kmほど離れていますから、衝撃波の影響はあるかもしれませんが地中での爆発なので大きな被害はないと思いますが、気になるのですか?」

「できれば誰も傷つけたくないの。通常の戦闘とは違うの。このドックの見張りの兵士や作業員は大型ホバーで運ぶの。途中で町の近くに放置するつもりなの。きっと助かるの」

ナナミ大尉は敵の兵士達の事も考えていた。

「ナナミ大尉は優しいのですね。やはり地球で感情を持ったのが影響しているようですね」

「よく分からないの。でも無駄な殺生はしたくないの。ここを守ってる兵士達も任務を全うしてるだけなの」


 各ドックの超小型核爆弾『Badboy』の設置が完了した。ナナミ大尉は全ての兵士達をドックBの前に集めた。

「今から起爆テストを実施します。この親起爆装置はこのドックBに置きます。このボタンを押して9つのランプが全て緑になればテスト合格です」

親起爆装置に9つの赤いランプが点灯している。親起爆装置はノートパソコン程の大きさだ。

「ボタンを押します」

リンゴ中は親起爆装置のボタンを押した。赤いランプが緑色の点灯に変わった。

「成功です」

リンゴ中尉が低い声で言った。

「良かったの。あとは大型ホバーで退避して電波で起爆させるだけなの」

ナナミ大尉が言った。

「大尉、撤収の準備をします」

リンゴ中尉が言った。

「ポピンズ曹長、倒れている敵の見張りと作業員の数は?」

ナナミ大尉が言った

「見張り30個体、作業員28個体、オペレーター12個体です」

「その個体を大型ホバーに運ぶの。70個体だから一個体で3回運べばいいの。大型ホバーはドックの目の前に移動させたの。お願いなの」

ナナミ大尉は兵士達にお願いした。

「大尉、なんで敵の兵士を運ぶのですか?」

アーネスト上等兵が不思議そうに尋ねた。

「いいから運ぶの。途中の町の近くで降ろすの。戦闘じゃなくてドックの崩壊で死ぬのは残酷なの。運ぶのは面倒だけど、後で絶対に良かったと思うの。せっかくの作戦成功なのに後味を悪くしたくないでしょ?」

「まあそうですね。さすが隊長だ。見殺しにしたら寝覚めが悪そうだ」

アーネスト上等兵が納得した。

護衛班のシルバーウルフの隊員も爆破班の隊員も敵の兵士を背負って大型ホバーに運び始めた。

ナナミ大尉は大型ホバーの操縦席でマクド少尉と話していた。

「ナナミ大尉、話は分かりました。帰投コースの途中に『マスカラシティ』という町があります。標高1000mの高原にある町です。『ドスカラビレッジ』も近いのでその間に降ろしましょう。しかしナナミ大尉は不思議な個体ですね、物凄く勇敢に戦うのに敵を助けるとは」

「感情があるとそういう選択をするの。不思議なの」


 兵士達全個体が大型ホバーに乗り、出発を待っていた。

『マクド機長です。ただいま大型ホバーを点検中です。30分ほどお待ちください』

『ナナミ大尉、操縦席に来て下さい!』

マクド少尉がナナミ大尉を呼び出した。ナナミ大尉は走って操縦席に入った。

「本部からの連絡です。敵の大型ホバーがこちらに向かってるようです。どうやら我々の作戦が漏れていたようです。情報部隊の『キリシマ大尉がスパイ容疑』で拘束されました。中隊を乗せた敵の大型ホバー3機が全速力でこちらに向かっているようです。敵の大型ホバーが飛び立ったのは16時間前です。まだ1500Km以上離れてます」

「どれくらい猶予があるの?」」

「敵の大型ホバーの最高速度は時速500Kmです。最低でも3時間の余裕があります」

「通常通りの手順で出発するの。点検も実施するの」

「はい、高高度で飛行します。エネルギーはギリギリですが高度6000mで飛行します。敵の大型ホバーの上昇限度は3000mです」


 新型高高度大型ホバーが点検を済ませると離陸し、時速300Kmで飛行した。ナナミ大尉とリンゴ中尉とカトー曹長はブリーフィングルームにいた。

「ナナミ大尉、あと5分で起爆電波の圏外になります」

「リンゴ中尉、お願いなの起爆するの」

「わかりました。起爆します」

「起爆!」

リンゴ中尉は文庫本くらいの大きさのリモコン装置のスイッチを押した。パイロットランプは赤いままだ。小さな画面にエラーコードが表示された。

「ダメです。起爆できません! エラーコードによると親起爆装置の受信機能が故障しているようです」

「どうしたらいいの!?」

「戻って修理するか、親起爆装置のタイマー機能を使うかです。修理には時間がかかるかもしれません。今回の起爆装置セットは初めての使用になるので修理はアニュアルを見ながらの作業になります」

「タイマー起動はどうなの? 難しいの?」

「タイマー起動はそれほど難しいと思えません、先ほどテスト起爆用のタイマー設定を行いましたが簡単でした」

「それなら戻ってタイマー起爆にするの。一緒に機長に話すの」

ナナミ大尉はとリンゴ中尉は操縦席に走った。

「マクド少尉、戻ってほしいの。起爆装置の故障なの。戻ってタイマーで起爆にするように設定するの」

「了解しました。敵の大型ホバーの速度が思ったより早いようです。もうじき当機のレーダーにも反応があるかもしれません」

「わかったの。急いで欲しいの」

新型高高度大型ホバーは大きく旋回してドックへ戻る針路をとった。

『機長のマクドです。当機は作戦地点のドックへ戻ります。ナナミ大尉より説明があります』

『ナナミなの。起爆装置に不具合があったから一旦引き返すの。戻って親起爆装置のタイマーをセットするの。1時間掛からないの。皆はホバーで待機して欲しいの。以上なの』

ナナミ大尉は機内放送で皆に状況を伝えた。


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