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Chapter41 「超小型核爆弾:Badboy」 【MM378】

Chapter41 「超小型核爆弾:Badboy」 【MM378】


 南方方面軍第1軍、第2軍、第3軍の正面からの攻撃と、東側からの北方方面軍の攻撃と西方からの南方方面軍第4軍、第5軍の攻撃により。ヒデキカンゲキ高地要塞はついに陥落した。敵の前線本部も降伏したのだった。第1政府はガンビロンによる勝利を目論んでいたが、ナナミ大尉率いるシルバーウルフ分隊のヒデキカンゲキ高地要塞の電源施設爆破によりガンビロンが使用不能となり戦況が大きく変わった。ヒデキカンゲキ高地要塞の陥落と第1政府の前線本部の壊滅によってヒロミゴー平原攻防戦は連合政府軍が勝利することとなった。勢いに乗った連合政府軍の南方方面軍と北方方面軍は第1政府の首都マコイシーノの包囲を開始した。


 ナナミ大尉とリンゴ中尉は研究所の研究製造棟の会議室いた。

「ナナミ大尉は日本にいたのですよね?」

「2年位いたの。でも私はMM378で育ったから地球生まれのMM星人ではないの。リンゴ中尉は生まれた時から地球なんでしょ? 爆破技術はMZ会で覚えたの?」

「私は19世紀前半にアメリカのペンシルバニア州で生まれました。爆破技術は第2次大戦時に陸軍の工兵部隊で覚えました。ノルマンディーに上陸してベルリン陥落までの間にドイツ軍の施設を多数破壊しました」

「私は爆発物については素人なの。今回は協力して欲しいの」

「ナナミ大尉と一緒にミッションに参加できるのは嬉しいです。力になれるように頑張ります」

「リンゴ中尉はいつまでMM378にいるの?」

「我々は第1政府が倒れるまで連合政府への支援を行います。地球に帰ればまたMZ会の工作員として活動します。今回は傭兵のような立場です。中尉という階級も連合政府から与えられました。カトーもそうです。軍にいた経験のない工作員は戸惑っています。私は第2次世界大戦の時は下士官の軍曹だったので士官扱いは少し嬉しいです」

「私は地球に帰ったらただの女の子なの」

「そうなんですか? もったいないですね、これだけ活躍してるのに一般人ですか。それにしても驚きました。まさか戦闘経験はなかったのですか?」

「地球に行く前は第1政府の軍人だったの。『ムスファ・イーキニヒル・ジョージフランクホマレ』だったの」

「ムスファだったんですか? 噂には聞いたことがあります。どうりで強いはずだ。度胸もある。戦術も凄い。きっとナナミ大尉は映画の『ランボー』より強いですよ」

「ランボーは私も観たの。パート2までは面白かったの。弓矢が興味深かったの。でもパート3以降は何の為に戦ってるのか分からなくなったの。戦う為の大義がないの。ただドンパチやってるだけなの。ロッキーもそうなの。パート3以降が酷いの」

「そうですね。私も同意見です。続編とかパート2以降でコケるパターンが多いですよね」

「きっと続編は難しの。小説もそうなの。パート1に全力投球すると後が続かないの。【南田先生】もたいへんみたいなの」

会議室にマッド主任研究員とジェーン博士が入ってきた。

「今回のミッションで超小型核爆弾の設計を手伝ってただいたジェーン博士です。核物理学が専門です」

マッド主任研究員とジェーン博士を紹介した。

「ジェーンです。超小型核爆弾の製造は成功しました。しかしこの施設では実験はできません。シミュレーターを使ったテストでは100%合格しましたので設計は間違ってないと思います。現物は製造施設の倉庫にあります。形、サイズは頂いた仕様書通りに出来ています。爆発の威力は10キロトン3発と5キロトン6発です。重さは30Kgになります」

ジェーン博士はいきなり本題に入った。

「ありがとうございます。さすがMM378だ。この短期間で造っていただいて、助かります。10キロトンなら十分壁を破壊できます」

リンゴ中尉がお礼を言った。10キロトンは広島型原爆の3分の2の威力だ。

「反重力装置製造の作業員と技術者を大量に動員したから実現できたのです。ナナミ大尉がゲイツ首相に直接交渉したおかげで産業大臣もこの件を最優先事項してくれました」

マッド主任研究員が言った。

「技術的に難しいことは何も無かったです。核分裂を爆弾として使うのは反対ですが、今回のミッションの内容を聞いて製造理由に納得がいきました。くれぐれも戦場で兵器として使わないよう、お願いします。もし使用すれば第1政府も使うでしょう。我々は核分裂のエネルギーの兵器化を封印してきたのです。反重力装置は例外になりますが」

ジェーン博士は基本的には核エネルギーの使用には反対のようだ。

「戦場では使わないの。地球では核で電気を作ってるの」

ナナミ大尉が発言した。

「この星では電気を恒星の光エネルギーから作っています。核を使うより安全です。核で発電するのは危険すぎる。地球人の考えは理解できない。地球人は賢いのか愚かなのか理解に苦しむ」

「やはり科学はMM378の方が進んでますね。今回は核爆弾を使って大型ドックを破壊します。爆破の設計は私の方で行います。ドックの壁に3か所、宇宙船に1隻につき1つの爆弾を使います。ドックは壁にドリルで穴を空けてそこに爆弾筒をセットします。潜入員が撮った画像を見て、場所はだいたい決めてますが、最終的には現地を見て修正します」

リンゴ中尉が爆破作業の概要を説明した。

「潜入員の情報ではドックは敵の警備小隊が巡回パトロールしてるみたいなの。ドックから5Km離れた地点に守備隊1個中隊が駐屯しているみたなの。ドリルで穴を開けるのは難しいかもしれないの。パトロールの人数や巡回のタイミングを観察して作戦を立てる必要があるの。場合によっては強力な睡眠ガスで敵を全員眠らせるか、ガンビロンや超大型ポングストを使って無力化する必要あるかもしれなの」

ナナミ大尉がドックの警備状況を説明した。

「爆弾の設置はドリルでの作業とリレー装置の設定で3時間くらいかかると思います。我々爆破班は15人で作業を行います。敵を無力化しないと難しいですね」

リンゴ中尉が見解を述べた。

「護衛戦闘班は私の分隊6個体なの。戦闘になったら作戦は中止なの。何も残さず撤収する必要があるの。今回の作戦は戦闘が目的じゃないの。気付かれないように作業しなければならないの」

「敵を無力化する低出力のガンビロン脳波増幅装置が完成間近です。一定時間脳の活動を停止させる効果があります。もし完成が間に合えばこの作戦で使って下さい」

マッド研究員が発言した。

「それは助かるの。ガンビロン用脳波は私が発射するの」

「ナナミ大尉、詳細な作戦実施要項は協力して一週間以内に完成させましょう。マッド主任研究員、ジェーン博士、現物を見せていただけますか」

リンゴ中尉がお願いした。


 ナナミ大尉とリンゴ中尉は製造施設の倉庫で超小型核爆弾の現物を確認した。倉庫には9発円筒形の超小型核爆弾が並べてあった。

「要求仕様通りに直径は18Cm、長さ60Cm、重さは30Kgです。爆弾を覆っている金属はアルミで厚さ5mmなので衝撃には弱いです」

ジェーン博士は説明した。

「このサイズは我々が地球から持ってきた爆弾筒にピッタリ入る大きさです。爆弾筒は強度があるので問題ありません。ライフルの弾丸を弾き返します。水密性も高いです。重さは40Kgです。通常は火薬の爆発物を詰めて使用します。ナイロン製のリュック型カバーがあり、背負えるようになってます」

リンゴ中尉が自信満々に言った。

「起爆装置は電気式です。電気雷管により、内部の片側に詰めた火薬が爆発し、ユモトン411を逆側に格納されたユモトン411に衝突させて核分裂を起こします」

ジェーン博士が原理を説明した。

「起爆用のリレー装置は我々が持ってきた物を使用します。核爆弾に着けた起爆装置を親装置からの電波で起爆します。9発を同時に起爆できます。親の起爆装置は30Km離れた場所からリモコンで操作することが可能です。爆弾を設置後にボバーで退避して起爆します。親起爆装置のタイマーによる起爆も可能です。それにしても、こんな大きな爆発物を扱うのは初めてです」

リンゴ中尉が興奮している。

「とにかく作戦を立てるの。マッド主任研究員、2週間後に大型ホバーでまた来るの。この爆弾は積み込めるようにしておいて欲しいの。この研究所から出発するの」


 ナナミ大尉とリンゴ中尉は作戦を練った。ドックの20Km手間までは高高度大型ホバーで移動して、徒歩でドックの近くまで移動した後は1週間ほどテントを張ってドックを監視することにした。爆弾を仕掛ける位置は監視結果によって変更することにした。また、往路は迎撃用ホバー10機に護衛してもらう事にした。作戦には爆破チーム15個体、護衛チーム6個体、ホバー搭乗員5個体が参加する。爆破チームはリンゴ中尉率いる地球のMM星人、護衛チームはナナミ大尉の『シルバーウルフ分隊』だ。


 高高度大型ホバーは最新型で兵員270個体、貨物は15トンの搭載が可能だ。形は従来通り台形型の直方体だ。全長70m、全幅40m、全高30m。上昇限度は1万メートルで従来の物より7000mも高い。最高速度は時速400Km、後続距離は2万キロメートル、旋回式のブローニングM2重機関銃を機体の左右に1丁ずつ装備している。今回は兵員26個体、超小型核爆弾9発、ホバーバイク1機を搭載する。ホバーバイクはブローニングM2重機関銃を装備したナナミ大尉の愛機だ。ナナミ大尉の愛機もチューンナップして最高速度は150Km増速して時速850Km、70mmロケット弾4発を装備することも可能となった。


ナナミ大尉はドック破壊作戦の概要を説明する為にファントム中将のテントにいた。第8師団師団長のホーネット少将と参謀本部のロレックス大佐と情報士官のキリシマ大尉も同席していた。ナナミミ大尉は作戦概要を説明した。

「第1政府の大型宇宙船の建造について情報部でも確認をしました。1隻で3万個体を運べるようです。全長800mにもなるようです。大型宇宙船コードネームは『ギガ・グランドクロスシップ』です。6隻建造中とのことですが完成すれば脅威になります。近距距離時空超越転移装置を使われれば、18万個体での奇襲が可能です。連合政府軍軍令本部や首相官邸への奇襲が予想されます。ドック破壊は必須です。『ギガ・グランドクロスシップ』はほぼ完成しており、軍への引き渡しを待ってる状態との事です」

「ナナミ大尉、なかなかいい作戦だ。正攻法なら大隊単位の戦力を投入する必要があるが30個体で実施できるのだな。超小型核爆弾も完成したようだし成功すれば大きな脅威を潰した事になる。第1政府にとっても大きなダメージになるな。ナナミ大尉の着眼点は素晴らしい。タイミングも丁度いいな」

「超小型核爆弾はリンゴ中尉の発案です。研究所の協力も大きかったです」

ナナミ大尉が説明した。

「ナナミ大尉は生産ラインの調整と技術者の確保について直接ゲイツ首相にお願いしたそうだな。ゲイツ首相はナナミ大尉のことを感心してたよ。まったくナナミ大尉の行動力には私も驚かされたよ。首相官邸に潜入するなんて下手したら重罪で極刑もありえる。しかしよくやってくれた」

「申し訳ありませんでした。時間がありませんので強行手段を取りました」

「ナナミ大尉、やはり正式に連合政府軍に入って欲しい。軍令部もナナミ大尉の経歴を見せたら是非迎え入れたと言っていた。『大佐』の待遇でもいいと言っていた。私もナナミ大尉のような優秀な士官を見たことがない。対立関係にあった北方方面軍を15個師団も動かした。敵の究極攻撃へ対策を考えて実践した。おかげで迎撃の常設部隊も設立できたし、急襲部隊としても役立っている。それ以前にも脅威だった『ブラックシャドウ』を壊滅させたり、ギャンゴへの対処法を考え、兵士達に訓練をしてくれた。高性能な物理攻撃兵器を持ち込んだのもナナミ大尉だったな。我が軍が反撃して攻勢に出るきっかけとなった。ヒデキカンゲキ高地要塞の電源施設も破壊してくれた。わずか2年の間によくこれだけの事をやったもんだ。どれか一つでも十分な活躍だ。ナナミ大尉は南方方面軍、いや連合政府軍の宝だ。是非正式に連合政府軍に入ってもらいたい。地球の文化を広めてくれたのも素晴らしい成果だ」

ファントム中将はナナミ大尉にお願いした。

「ナナミ大尉のおかげで私の第8師団も評価が上がってます。兵士達の間では最強師団と呼ばれています。競技大会でも優勝しましたし、第8師団の兵士達は誇りに思っています」

ホーネット師団長もナナミ大尉に感謝しているようだ。

「兵士達だけではありません。戦況情報ニュースでナナミ大尉の活躍が何度も報じられてます。民間人の間でもナナミ大尉は英雄です。ナナミ大尉のブロマイドが出回ってるようです。その影響で地球人に変身する民間人も増えてます。近々、大マゼランタランチュラ星雲十字勲章と大マゼランパープルダイヤモンド勲章が授与される予定です。ゲイツ首相もナナミ大尉のファンのようです」

キリシマ大尉が補足した。

「申し訳ありません。私は今の立場がいいのです。自由に動けるから成果が出せたのです。私は組織には向きません」

ナナミ大尉はファントム中将の申し出を断った。

「ナナミ大尉、地球に帰りたいのではないかね? 地球の食事や文化が恋しいのかな?」

「それだけではありません。私は地球に帰ると約束したのです。誓ったのです。待っている人がいるのです」

「その地球人はどんな地球人なのだ? 軍人か? 政治家か? 何にせよナナミ大尉がそこまで拘るのなら、よっぽど重要な役割についているか、地位が高い人物なのだろうな」

「地位は高くありません。役割でいったらどこにでもいる地球人です。しかし私にとっては掛け替えのない唯一無二の存在なのです」

「うーーん、残念だな。我が軍にとってはナナミ大尉こそ唯一無二の存在なのだ。どんな地球人か気になるな。会ってみたい」

ファントム中将は残念そうだ。

「兎に角、第1政府の宇宙船建造ドックと『ギガ・グランドクロスシップ』の破壊を成功させます」

「わかった。作戦を承認しよう。作戦が成功したらまたゆっくり話をしよう。どうしても諦めきれん」

ファントム中将が作戦を承認した。作戦名は『山嵐』に決定した。そして超小型核爆弾のコードネームは『Badboy』となった。




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