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Chapter22  「食べごろ七海 in GUAM & SPAIN」 【地球】

Chapte22 「食べごろ七海 in GUAM & SPAIN」 【地球】


 秋も深まった11月、私と佐山さやかとニセ七海の唐沢は橋爪さんの事務所にいた。橋爪さんとニセ七海の唐沢が海外ロケから帰ってきたのだ。メイクやスタイリストなど各種スタッフを含めて10人のロケ班で行ってきたようだ。机の上のノートパソコンにはロケで撮影した画像が映し出されている。グアムは水着や露出の多い服を着た写真が多く、スペインの名所で撮影した写真はシックな服装がメインだった。どちらも七海の魅力を引き出す素晴らしい写真だった。金を掛けただけあってゴージャスな感じがする。

「いやー今回のロケは良かったよ。きっといい作品になるよ。美波ちゃん頑張ったね、綺麗だったよ」

橋爪さんは満足そうだ。

「いいロケでしたよね、グアムは海が最高でしたし、拳銃も撃ちましたしね。スペインは景色も料理も良かったですね。マドリード、バルセロナ、グラナダ、どこも最高でした」

溝口先輩は観光に行ったような感想だ。

「グアムもスペインも最高でした。もー橋爪さんがのせるの上手いんですよ」

「美波ちゃんの素質が凄いんだよ~、本当に綺麗だったよ、僕が今まで撮影した女性の中で間違いなくナンバー1だよ」

橋爪さんがデレデレしている。

「橋爪さんったら、本気にしちゃうじゃないですかぁ~、橋爪さんの撮る姿も素敵でした。ダンディーです。うふふっ」

ニセ七海の唐沢も妙に色っぽい。橋爪さんとニセ七海は見つめ合った。なんか二人の雰囲気が怪しい。


 「あの、2月の発売に間に合いそうですか」

私は発売が気になっていた。

「ああ、もうカット割りして編集した原稿は秀優堂に送ってあるから大丈夫だ」

「楽しみですね。前回の写真集は七海ちゃんのデビューで、今回は発展版って感じですね。前回の写真集は清楚で綺麗でカワイイ七海ちゃんの感じが出てて、今回の写真集は唐沢さん・・・・・・じゃなくて美波ちゃんの色っぽさが出ていいと思います。ファンは喜びますよ」

佐山さやかの感想は的を射ていた。

「色っぽいだなんて。うふふ、嬉しいです。男達の目を釘付けにしたいです」

たしかに今回の写真は色っぽいものが多かった。特にグアムで撮った写真は水着で大胆なポーズが多く、セクシー系グラビアアイドルの様だった。対照的にスペインで撮った写真は歴史的建築物や街の風景をバックにした落ち着いた大人の色気を醸し出す感じだ。

「ガクちゃん、今回は前回より売れると思うよ。もしかしたら今回の写真集を買ったファンが前回の写真集も買うかもしれないぞ。内容が対照的なのがかえっていいかもしれないな」

「なるほど、それはあるかもな。よくある例だよ」

橋爪さんは溝口さんの意見に関心を示した。溝口先輩の分析は当たっているかもしれない。今回の写真集はそこそこ宣伝もうっているし、ブログの効果が期待できる。そして今回の写真集を買った人は前回の写真集も気になるはずだ。

「ですよね、ファン心理です。ファンになると過去の物も手に入れたくなるんです。結構儲かるかも知れませんね。50万部売れたとしたら3500円×50万で『17億5千万円』ですよ。橋爪さんが4.5%で『7千8百7十5万円』、七海ちゃんと美波ちゃんが2.5%づつで『4千3百7十5万円』、私が0.5%で『8百7十5万円』です。七海組いいですねえ! もっと売れるようにネット掲示板でガンガン煽りますよ!」

溝口先輩はアシスタントして売り上げの0.5%が収入になるのだ。

「そうだ、佐山さんもブログで協力してもらってるから0.5%払うよ。僕の取り分は4%でいいよ。佐山さんも立派な仲間だ。七海組だよ」

橋爪さんは太っ腹だ。超セレブの橋爪さんからしたら8百7十5万円ははした金なのだ。

「えっ、いいですよ、受け取れないですよ。私は好きでやってるだけですから」

「いや、さやかちゃん、貰っておきなよ。仲間なんだからさ」

捕らぬ狸の皮算用ではあるが盛り上がって愉快な気分だ。

「ガクちゃん、グアムで本物の拳銃ガンガン撃ってきたぜ、羨ましいだろう?」

溝口先輩は自慢げだ。

「いいですねえ、私も本物を撃ちたいですよ。いいなあ」

ぜんぜん羨ましくなかった。私は週1回のペースでMZ会の施設で撃っている。しかも観光用パウダーではなくファクトリー弾だ。撃てる銃の種類も豊富で弾の値段を気にしなくてもいい。

「でも、38式歩兵銃は撃てなかったんだよなあ。以前は撃てたらしんだけど残念だよ。じいちゃんが使ってた銃だから撃ってみたかったんだ」

「溝口さんのおじいさんは従軍してたんですか?」

「ああ、ニューギニアで戦死したみたいたいだけどな。会ったことはないよ。俺のオヤジが赤ん坊だったころ死んだんだ。『虎次郎』って名前だったらしい。おかげで溝口家の男は名前にみんな虎が付くんだ。オヤジが『虎勝』、俺は虎彦だ」

溝口先輩の名前は溝口虎彦だった。

「ニューギニアって言えば峰岸さんもニューギニアでしたね」

佐山さやかがぼそりと言った。


 季節は冬になり、年が明けて新しい年が動き出した。『一月は行く、二月は逃げる三月は去る』という言葉通りにあっという間に2月になり、写真集第2弾の発売日になった。有難いことに土曜日だった。写真集は事前に貰っていた本当に店頭に並んでいるのかが気になった。今回の写真集はグアムとスペインの海外ロケで撮影したのだ。前半は水着や露出の多い服を着たグアムで撮影した写真で、後半はスペインの名所で撮影したシックな服装がメインの写真だった。写真集のタイトルは『食べごろ七海 in GUAM & SPAIN』だった。私とニセ七海の唐沢は秋葉原の書店に様子を見に行った。ニセ七海の唐沢はサングラスとマスクをして変装している。すっかり芸能人気分だ。

「七海、あったぞ」

私は平積された写真集を手に取った。

「本当ですね、嬉しいです! 私の写真集が本屋さんに並んでる、凄いです、『B-17フォートレス』や『B-24リベレーター』を一撃で墜とした気分です。もう我慢できません!」

B-17フォートレスやB-24リベレーターも4発エンジンの大型爆撃機だ。ゼロ戦パイロットだった唐沢にとっては強敵で、墜とせば大金星だったのだ。


 ニセ七海の唐沢はサングラスとマスクを外すと写真集を一冊手に取ってレジへと向かった。

「七海、どうするつもりだ?」

「写真集を持って歩きたいんです」

七海は本屋を出ると秋葉原の駅を超えて中央通りを歩いた。ラウンドガールのように写真集を頭の上に掲げ、腰を振りながら歩いた。

「七海、やめろ! さっきまで顔隠してたじゃないか」

ニセ七海の唐沢は私の言葉を無視して歩き続ける。

「おい、天野七海じゃねえか。自分の写真集持って歩いてるぞ!」

さすがに秋葉原だ、アイドルやモデルへの食い付きがが早い。

「本物かよ」

「えっ、なになに? あの娘モデル?」

「天野七海さんですか? サインして下さい」

「ごめんね、今忙しいの。でも名刺ならあげちゃう」

ニセ七海の唐沢はサインを求めた男性に名刺を渡した。

「あっ、私にも下さい」

「俺も!」

たちまち10人位の男が集まってきた。

「みんな、ありがとう、写真集買ってね! あなたのハートに、ズッキューン!」

ニセ七海の唐沢は指を拳銃ようにして撃つ仕草をしながら名刺を配りまくった。何がズッキューンだ! 私は腹が立った。安っぽすぎる。

「七海、いい加減にしろ、安売りするな! マスクとサングラスをするんだ、写真集も降ろせ!」

私はニセ七海の唐沢を怒鳴りつけてマスクとサングラスを着けさせた。


 私達は秋葉原から丸の内線の淡路町駅まで歩いて地下鉄に乗った。

「七海、何やってるんだ、勝手に名刺作るなよ」

私は名刺を見た。『あなたのアイドル 天野七海』と印刷されていた。住所や電話番号は無いがブログのURLが記載されている。

「だって、嬉しくしょうがないんです。私の美貌で男共がメロメロです! ファンを大事にしたいんです!」

私とニセ七海の唐沢は茗荷谷駅で下車して龍王軒に寄った。店に入ると店長が駆け寄って来た。

「いやー凄いよ、七海ちゃんの写真集、事前の申し込みが30件だよ。七海ちゃんが働いてた時のお客さんが沢山来てくれたんだよ。最近は七海ちゃんのブログを見て来てくれるファンも多いんだ。良く話しかけられるんだよ。なんか俺も有名人になった気分だよ」

店長は顔が輝いていた。

ニセ七海の唐沢はマスクとサングラスを外すと龍王軒の客にも名刺を配り始めた。

「天野七海です、写真集、今日発売です。よろしくお願いします。あなたのハートに、ズッキューン!」

ズッキューンのポーズには片手バージョンと両手バージョンがあるようだ。

「そうそう、この娘が天野七海ちゃん。うちの店のイメージガール、小石川5丁目が生んだのアイドルだよ!」

店長も一緒にテーブルを回っている。

「第2弾発売おめでとございます。写真集買わせてもらいます。うちの若い衆にも買わせます。前回の写真集も買わせてもらったんです」

木村が声を掛けてきた。あまり関わりたくはないが私は頭を下げた。

私は席に座ってビールとジャンボ肉シュウマイを味わった。

「タケルさん、早く16歳のアイドルの顔を作って下さいよ、デビューしたいんです!」

ニセ七海の唐沢はすっかり味をしめたようだ。

「ああ、本物の七海が帰ってきたら作ってやるよ。とびっきりカワイイ顔をな」

「嬉しいです! もーーーう、七海さん早く帰ってこないですかねえ」

「MM378の戦争が終われば帰ってくるよ」

本当に帰ってきて欲しかった。





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