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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
71/75

71話

ホスピスでは、抗がん剤治療は行わない。


ただ癌による痛みや不快感を取り除き、患者が穏やかに余生を過ごせるようにするための場所だ。


つまり、こちらへ転院するという事は、智子は助からないと、答えが出たようなものだった。



そんな仁志の葛藤をよそに、智子の表情は穏やかだった。

今まで辛くて仕方なかった抗がん剤の副作用とも無縁となり、ゆっくりと時を過ごす事ができる。



その日冬子は、智子のふくらはぎをマッサージしながら、美月と料理を作り、失敗してしまったこと、期末テストの得点が少し落ちてしまったこと、、学校で友達と勉強を教えあったこと、梓馬が大好きだったこと、などを延々と話していた。


智子は痛み止めとして投与されているモルヒネの為、意識が朦朧とし、殆ど聞こえているのか分からないし、あまり反応してくれない。


それでも冬子は、ひたすら話し続けた。

珍しく父が勉強を見てくれた事を話した時だった。



「パパに、、パパ、まだ、殴ってないよ。」



智子は目を見開き、冬子に向かって訴えた。


「ママ…?」


智子がホスピスへ転院後、冬子はエイトビートに対し、今後取材は困難である旨を話し、現在企画は中断されていた。

そのまま企画終了すると誰もが思っていたため、冬子は目を丸くして驚いた。



「パパ…、浮気なんかして、許せない。一発殴ってやらないと、気が済まない…。」


「ママ…、パパ、許したんじゃないの…?」

智子の強い意志を感じる表情と口ぶりに、冬子はぼろぼろと溢れてくる涙を抑えられなかった。



「うぅん、、許してないよ?ママ、浮気がだいっっきらいなの。冬子…、パパを連れてきてくれる?」



「わかった…。」



冬子はそのまま病室を出るとスマホを取り出し、父へラインを送った。


「ママ、動画の企画でパパを殴るっていうの、やってないって怒ってます。

やっぱり浮気は許せないんだって。病院に来てほしい。」


すぐに既読が付き、返事が返ってきた。


「わかった。今から向います。って、ママに伝えてください」




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