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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
70/75

70話 ホスピスへ誘導される

年は明け、智子の「イケメンとデート企画」の動画がアップされた。


青葉とデートした時の智子の心情もナレーションで入れてみたところ、これが今話題の『蛙化現象』とも捉えられるため、サムネイルとタイトルにそのキーワードを入れてアップロードされた。


厨二企画メンバーがそのVTRを見ながら『蛙化現象』について討論するような構成にした所、その内容が様々な物議を醸し出した。「癌患者」という垣根を抜きにして様々な視聴者の興味を引き、再生数も好調だった。



「ママ、来世ではYouTuberを目指そうかな…。」


智子は昨日から体調が優れないため、ベッドに横たわりながら笑えない冗談で笑いを取ろうとする。


母が力無く冗談を言う様子に、冬子は居ても立っても居られず、思い出したように、鞄から一枚の紙を取り出し智子に見せつけた。


「そうだママ、見て!これ、模試の結果。全国で5万人以内に入れたの。塾の先生から、このまま頑張れば志望校いけるんじゃないかって言われたよ!」


智子は試験結果を見てふふっと微笑むと、そのまま眠りについた。





冬子の1年先輩達が共通テストを控え慌ただしくしている頃、仁志は主治医よりCT検査の結果を聞くために病院へ向かった。


共通テストはとうとう明後日だ。

電車に揺られる高校生達が、心なしか殺気立っているのが分かる。

冬子も来年はこうなるのか。


「冬子の受験、絶対にサポートしてあげて。」



智子の声が心の中で聞こえた。


今まで、子ども達のことは全て智子に任せきりだったが、こればかりは真剣に向き合わないと、智子に呪われるな。


仁志はふと笑みを浮かべると、看護師の呼ぶ声で我に返った。

「風間さん、どうぞ」



「この画像をご覧いただくと分かると思うのですがね、今やってる抗がん剤で、ほとんど効果が出てないようなんですね。


もう、使える薬は全て使ってしまったので。


ホスピスを紹介しますから、そちらへの入院をご検討お願いします。今後の事など、ご家族でよくご相談してください。」



「そうですか…。今まで、ありがとうございました…。」




この言葉を想像してはいたが、いざ面と向かって言われると、なかなか頭の整理が大変で、もう既に医師や看護師の前で涙をこぼすのは慣れてしまったのかもしれない。


この日の仁志は、なぜか溢れてくる涙を抑える事ができず、人目もはばからず、ひたすら声をあげて泣きじゃくった。

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