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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
62/75

62話(写真撮影)

「ママ、こんな感じだけどどうかな?一応試着してみてー。ママ小柄だから、サイズは全部sでいけると思う!」


「わ、冬子の服だ…!ねぇ、ママこんなの着こなせるかな…?」

冬子は、先日智子と一緒にネットで選んだ地雷系ファッションの衣装を智子に差し出した。

クマのぬいぐるみがプリントされたオーバーサイズの黒いパーカー、白いシャツと黒いネクタイ、黒いミニスカート、黒いロングブーツ、

姫カットのツートーンカラーのウイッグだ。


今になって戸惑っている様子の智子の頭に、冬子は、姫カットのウイッグを被せた。


「うん、可愛いよ♡

明日のメイクは私が担当するから楽しみにしてて!」


抗がん剤の副作用が落ち着き、まだ元気なうちに撮影しておきたいという智子の希望で、明日は地雷系ファッションで撮影する夢を叶える予定だ。


「お姉ちゃん、美月にもメイクしてくんない?」

美月は母親のウイッグを自分の頭に乗せながら、冬子におねだりした。


「え、また?前教えたでしょ?自分でやってよー!」

「だって上手く出来ないんだもん!!」


明日の撮影は美月も見学がてら同行する予定だ。

念願のエイトビートの撮影見学に、美月は興奮気味だ。


智子は明日、自分自身の撮影も楽しみだったが、娘達2人と一緒に撮影に臨める事も楽しみで仕方なかった。


智子は娘達にスマホを向けた。

「2人とも、こっち向いて!」


言い合い中だった為、2人とも少し膨れっ面で撮れたのがまた可愛い。

智子は撮れた写真を見て思わず笑みがこぼれた。



翌日、3人は撮影スタジオである昭和レトロの趣ある洋館へと向かった。


「わぁ、、綺麗…」


スタジオへ入り赤い絨毯の狭い階段を登ると、ステンドグラスの照明が部屋をこぢんまりと照らす中、ビンテージ家具や、70年代を思わせるショットバーのセットに、智子は思わず声を漏らした。



「じゃーん!メイク出来ました~!皆さん、どうですか?」


冬子は控え室のカーテンをシャッと開き、智子をお披露目した。


「わ、智子さん?一緒冬子ちゃんかと思った!」

同行の大地と櫻井が目を丸くして智子を二度見する。


「ママ可愛い!」

美月も飛び跳ねて喜んだ。



「皆さん、ありがとうございます。流石にちょっと照れくさいね、、」

智子は恥ずかしそうに下を向いた。


カメラマンも合流し、いよいよ撮影だ。


「ではまず、こちらの椅子の上に座って、手を頬に当てて…」

智子はカメラマンの指示に従い、ぎこちない様子でポーズを取り始めた。

カメラマンの声とシャッター音がスタジオに鳴り響く。

「うん、その表情セクシーでいいですね、次はこっちに目線ください!」


カメラマンは智子をどんどん褒めながらシャッターを切る。

カメラマンのテクニックにまんまと乗せられた智子は、先ほどの緊張した様子は一切無くなり、時には笑顔で、時には憂いを帯びた瞳で、楽しみながら撮影に臨んでいた。


「ママ、初めあんな照れてた割には楽しそうだね…」

「うん、こんな楽しそうなママ初めて…」


姉妹は初めて見る母のモデルとして活き活きする姿に驚きを隠せなかった。



「ママ、お疲れ様。すごく綺麗だったよ。」

約1時間の撮影を終えた智子に、冬子は冷えた麦茶を差し出した。


「ありがとう…。」


屋内とはいえ、ポージング等で慣れない筋肉を酷使した智子は、疲労が蓄積された様子だ。



智子は2口ほど麦茶に口を付け、立ち上がろうとした所、急な目眩と共に意識が遠ざかり、そのまま床に倒れ込んだ。


「バタン」


スタジオ内に鳴り響く大きな音と共に、麦茶のペットボトルが床に転がった。



「ママ、ママ……!」



耳の奥で、冬子と美月が智子を呼ぶ声がこだまする。

辺りは何も聞こえなくなった。



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