58話(梓馬とディズニーの約束
「じゃあママ、荷物ここに置いたから、何か足りない物あったら連絡してね。」
「ありがとう冬子。抗がん剤副作用嫌だなぁ…。でもこれを乗り越えれば、次は冬子の地雷系?ファッション挑戦しちゃうから!!」
冬子は、最近少しやつれた母の姿を見て心がざわついてしまう。
考えないようにしないと。
ママの希望のために。悔いなく残りを過ごせるように。
冬子は涙を見せないよう、予定があるからと言い残し、早々と病院を後にした。
帰りのバスで、梓馬にラインを送る。
「梓馬さん、今日からママ、また入院しちゃった。寂しいよ。辛いよ。梓馬さんに会いたい。」
すぐに既読が付き、返信が来た。
「智子さん、今頑張り時やね。俺からも応援してるって伝えといて。
最近少し涼しくなってきとるし、ディズニーでも行ってみる?」
え?梓馬さんとディズニー??
ラインの文面を見ただけで冬子の胸は高鳴った。
「えーー!もちろん行く!行きたい♡」
「やっぱJKのうちに行っとこ!チケット取っとくね」
やっぱりJKブランドには未だに価値があるらしい。。
早速、今週末は梓馬とのディズニーデートの予定が決まった。
ママの容態を見て落ちてたけど、やっぱり梓馬さんのポジティブな力って凄いな。感謝してもしきれない。
冬子は梓馬とのツーショットの画像を眺めながら、梓馬への思いとバスの窓ぎわに、身を委ねた。