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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
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5話

トー横界隈に入り浸り、リンネの他にも少しずつ仲間が出来てきた頃。


冬子はトー横広場にて、いつものTikTokではない撮影が行われているのに気付いた。


何やらお笑い芸人のような、しかし知的で軽快なトークでカメラに向かう男性3人組は、トー横界隈とは異なる雰囲気を醸し出しており、キッズ達は身構えながら遠目巻きに彼らを眺めていた。


その中でも、リーダー的存在が梓馬だった。

無造作な金髪と、奇抜な原色コーディネートが軽薄な印象を与える反面、純粋そうでまっすぐな瞳と子どものような笑顔で相手を惹きつける、不思議な魅力の持ち主だ。


真面目な事を切実に訴えたと思ったその一秒後には、笑えない下ネタで誠実さを覆し相手の心を引き込む

話術は、独特の異彩を放っていた。



彼らはどうやら、YouTubeにおけるトー横キッズの取材で撮影に来ているようだ。たまに現れる人達だ。

冬子とリンネも遠目巻きから彼らを眺めていた所、その中の一人がこちらに向かって笑顔で手を振っているのに気付いた。


冬子は、とうとう私もYouTubeのチャンネルに出演かぁ。。美容系ありかも…なんて妄想したところで、手を振っている相手はリンネだと気付き、我に返る。


どうやら、中心に居るスーツの男はリンネの知り合いらしい。?彼氏かも。

リンネのワントーン上がった声と緩んだ表情から、冬子は何となく察した。


「せつな!何か久しぶり〜!何、撮影?いつからそんな事しだしたん?」

「先輩にお願いされて!YouTubeの撮影で協力してほしいって。前話した「厨二企画」だよ。トー横キッズに取材したいらしくてさ、リンネお願い!」


「別にいいけど?トーコも大丈夫かな??ここで売名してうちらもカップルユーチューバーやってみる?」

「『○○←オトナ系』でもいいけど…」

「は??ムリムリ!絶対にヤダ!」


2人は暫くぶりの再会だったようで、嬉しそうにじゃれ合う。

冬子は2人に対し「OK」と合図し、私とは別世界だなぁと羨望の思いを募らせた。


梓馬はせつなの肩を叩き、リンネとの仲を嬉しそうに冷やかす。

「せつな君、彼女と仲良しそうやな!何かこう…、若さと欲望が溢れんばかりやね!!

…この若き2人が取材協力してくれるん?よろしく〜」


初対面から下ネタを取り入れ距離を縮めようとする梓馬に対し、冬子の警戒心が膨れ上がる。


そんな冬子の怪訝な表情は全くお構いなしの梓馬。


学校はどうしてるのか?親は何をしてるのか?何も言わないのか?将来の事とか考えてるのか?何で生計を立てているのか?…


梓馬は2人に対し、今までも散々問われてきたであろう、心をえぐるような質問を事務的に投げかけると少しばかりの謝礼を渡した。

そして、「ありがとーサンキュー!!」と軽快にお礼を言うと、さっさとその場から立ち去ろうとした。



何て下品で失礼な人達なんだ…。チャラいし特段イケメンでもないし、、気にしてることをズケズケとさ。youtuberってあんななの…??



「あのっ!顔出しはやめてください、モザイクかけてください!」


梓馬に対し怒りの感情が込み上げてきたや否や、冬子の口から自然と、気持ちが声として表出されていた。


「?はじめからせつな君に聞いちょるけん、気にせんでええよ!大丈夫大丈夫!」

「私は聞いてなかったんで!何かあなた達、勝手に顔出ししてきそうなので念のため言っときます!」


「オレら印象悪!」仲間の大地と顔を見合わせ苦笑いすると、梓馬は冬子の瞳をまっすぐ見つめ

「信じてよね!あとで動画みてみて!」と冬子を指差すポーズを取った。


そして軽く手をふると、そのまま人混みの中へ消えていった。


あんなチャラくて派手な格好をしていて、そこそこ有名人なのに、人混みに入ると途端に埋もれてしまう現実に冬子は落胆した。


そして、少しだけ胸がぎゅっと締め付けられた。

この気持ちがまさに恋の始まりだなんて冬子は、気付かなかった。




リンネと冬子の出演した動画は、一週間ほどでアップされていた。


彼らは「厨二企画」というグループ名で、ゲーム実況やプログラミング等の動画投稿の傍ら、自分達で企画した動画をyoutubeにアップした所それが当たったという、現在伸びしろの大学生youtuberだ。


メンバー内には冬子(母親)が目指す有名大学に在学中のメンバーもいたりして、奇抜な外見の割には知的な印象を受ける。

そこに梓馬の痛快な個性が融合し、グループとして注目されている感じだった。


何やらリーダーの梓馬が「厨二病」のため、このおかしなグループ名になったとか。


「やっぱりいい加減なグループ…。」


心の声が漏れてしまい、冬子は自動的につぶやいた。

「また厨二企画の話かい。そんな悪い人達じゃないって、せつなが言ってたけど?ちゃんとモザイクもかけてくれたじゃん!…あ、トーコ、ちょっと恋してるんじゃね…?」

「違う違う!私はね、もっと色白で、線が細くてね、黒髪で、不健康そうな、、陽炎カゲロウの朔夜みたいな人が好きなの!」


陽炎カゲロウの朔夜とは、冬子の推しグループのメンバーだ。


「前は取材受けたけど、めっちゃ失礼すぎて苛立ってるだけ!むしろさあ、リンネ夫婦がラブラブすぎて尊いんですけど。。なんなの?彼氏いるのうらやますぎる。」

自然とリンネカップルに話題を変えると、リンネの話を聞きラブに浸りながら、自分自身で、自分の気持ちを誤魔化した。


やっぱ理想の男性は朔夜。朔夜たんとリンネカップルみたいにイチャイチャできたらなぁ〜。と、ニヤニヤしながら話を聞いた。


「あ、せつなからライン。

どーしよ。おごるから飲みにこないかだって。お客さんいなすぎて暇らしい。トーコもおいでよ。せつなが身分証パスしてくれるらしいよ!」


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