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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
48/75

48話(信玄餅を食べに行こう)

店に到着すると、開店前だというのに既に行列が出来ている。


青々とした空の下、まだ午前9時だというのに太陽は容赦なく照りつけ、蝉の鳴き声が延々と耳にこだました。


空気は既に生ぬるくて、車外に出ただけで冬子は身体中熱気に包まれ、汗がにじみ出てきた。



「わぁ凄い、水晶玉みたい!これをずっと食べてみたかったの♡」


智子が嬉しそうに水信玄餅を頬張る姿を、本日カメラマンを担当する大地が撮影する。


最近の智子はカメラ慣れしているようで、上手に食レポ風のコメントなんかもしていた。


「梓馬さん!撮影は大地さんに任せて、私達も食べよう!!」


久々の梓馬との遠出に喜びを隠せない冬子は、梓馬に水信玄餅を差し出した。


「なんやコレ、、めっっちゃ綺麗やん。こんなん、食べれる?綺麗すぎて、勿体なくて食べられんわ。」


梓馬は水信玄餅を愛しそうに眺めた後、一呼吸おいて一気に平らげた。


そんな梓馬を、冬子は愛しそうにうっとり眺める。

はぁ…、梓馬さん、可愛くて見てて飽きないなぁ。


「なんや冬子…、ちょっと気持ち悪いぞ。はよ食べんと、消費期限30分や」


冬子は梓馬に急かされ我に帰り、水信玄餅を口に運ぶ。ひんやりとした食感が喉を通るが、冬子の熱い気持ちは冷めなかった。


「梓馬さん、今日撮影終わったら時間ある?」

「今日はこの後友達と飯かな…」

「そっか…、じゃ、待ってよーかな。場所…どこかな?」

「え?」

「ご飯終わるの待ってるから、その後また会いたいの。」

「……OK分かった!場所は歌舞伎町やけん、ちょっと遅くなるけど大丈夫?」

「うん、何時まででも待ってるから!!」


今日の冬子は、いつも以上に暴走気味だ。


「2人とも、食べれた?水信玄餅、冷たくて美味しかったね!まぁ、、思った以上に水そのものって感じだったけど。梓馬さん、わざわざご同行ありがとうございました。」


「結構いい感じで撮影出来たよ。智子さん、カメラの前で喋るの上手っすね。冬子ちゃん、同行ありがとね」


一通り撮影を終えた智子と大地がこちらに声をかけてきた。


「大地、撮影サンキュー!水信玄餅は冬子みたいに美しかったわ〜。ま、すぐ食べたけど!そろそろ行きますかー?」


母親の手前、梓馬の軽薄な言葉により微かに空気が凍ったが、智子はそんなものお構いなしだ。


「そうですか梓馬さん、これからも末永く冬子をよろしくお願いいたします」


梓馬を見つめにっこりと微笑んだ。


年の功…だろうか。

梓馬も大地もただ笑うことしか出来なかった。



帰りの車内では、今日の感想や次回叶えたい夢などについて撮影した後、久々に早起きした智子はそのまま眠りおちた。

智子の幸せそうな寝顔を見て、冬子も嬉しくなった。


車内では梓馬と大地がずっと仕事の話をしていたので、とても冬子が入り込む余地は無い。

冬子はイヤホンをしながら夏休みの宿題に没頭した。

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