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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
41/75

41話

翌日冬子達が病院に到着すると、智子は丁度内視鏡手術を終えた所で、HCU(高度治療室)で眠っていた。


沢山の管に繋がれた母の様子を見て、冬子は涙が止まらなかった。


受験勉強に集中できず、ナイフで脅されながら机に向かった事


母の淹れたハーブティーが不味かった事


母親を脅して、お金を巻き上げてた事


トー横界隈に入り浸り家に帰らなかった事



嫌な記憶と後悔ばかりが冬子を襲い、冬子は泣きじゃくった。


「パパ…、ママって、酷いの…?」


「…分からない。ひとまず出血は止まったって。でも、数日間は食事も出来ないみたいだね。

これから精密検査とか色々あるらしくて、もう少し入院はするらしい。」



仁志はつい最近冬子に見せつけた威勢の良さは失われ、やつれ果てていた。



智子が目を覚まし、意識がはっきりしてきたのはその翌日だった。


「冬子、ママ、血を吐いちゃって、、ゴメンね…迷惑かけて…。」


「ママ……、そんな事ないよ、昨日内視鏡手術して、無事出血もおさまったから、もう大丈夫だよ?」


「そっか、、先生は何て?」


「胃潰瘍で胃に穴が空いて出血してたらしい。智子…、今まで心配ばかりかけてたよな、ごめん…。」


仁志は肩を震わせながら、智子の手を握りしめた。

智子はそっぽを向いたまま、何も言わなかった。






「梓馬さん、この前は急にごめんね。ママは胃潰瘍で緊急手術したけど、とりあえず落ち着きました。


もう少し入院することになりそうだから、しばらく会えないと思う。」


梓馬には、途中でデートを切り上げてしまったことをラインで謝罪した。


今梓馬さんの声を聞いたら、ずっと泣いてしまって話なんて出来なそうだから。


梓馬からはすぐに返信が来た。


「落ち着いて良かった。お母さん冬子がいてくれたら安心やね。また落ち着いたら連絡してな。」



本当は、梓馬さんの胸の中に包まれて泣きじゃくりたい。


本当は、泣きじゃくる冬子を胸の中に抱きしめて包んであげたい。


ふたりとも、同じ時、同じ事を考えていたけれど、実現することなんて出来なかった。


今はただ、母の無事をひたすら願う。


冬子は台所へ降り、棚を開けた。母がぎゅうぎゅうに詰め込んだハーブティーを1つ取出し、適当に淹れてみた。



いい香りがして、心がリラックス出来た。



「なんだ……、美味しいんじゃん…。」


冬子は溢れる涙をタオルで拭いながら、ハーブティーを味わった。

明日は美月にも淹れてあげようって、思った。




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