39話
既に桜は散り、冬子は無事二学年へ進級出来ていた。
クラスメイトが馬鹿にしてくることもたまにはあったが、辛い時は保健室登校を挟むようにし、彼らとの距離を取るように心がけたら、自然と彼らの発言も気にならなくなった。
彼らも何も行ってこなくなった。
「美味しい♡幸せ…♡」
今日は進級祝いということで、梓馬は冬子を少しお高めの焼肉屋に誘っていた。
さすが女子高生の冬子は焼肉に目がないらしく、とろけるような肉の旨味に釘付けだ。
冬子が肉の美味しさを噛みしめながらうっとりする表情に、梓馬は胸の奥が高鳴る。
梓馬のトー横キッズを救いたい企画は、長期での継続が難しいと見込まれ、短期企画として終了した。
今後はフラミンゴでやりたい事を見つけた子に焦点を当て、期間を空け、改めての取材を予定しているらしい。
現在厨二企画は、以前のように他のyoutuberとのコラボや、メンバー内で出来る企画に一旦落ち着いているが、アンチのお陰か?チャンネル登録者数、再生回数共に伸びしろで、着々と中堅ユーチューバーとしての地位を確保していた。
冬子の方も、両親へ自分の想いをぶつけ、また彼らの正直な気持ちと向き合い気持ちの整理が出来た為か、家で居心地の悪さを感じることもなくなり、トー横広場への足は遠のいていた。
「自分の居場所」を自分自身で確立することが出来た冬子は、一人前の大人として、着実に成長する事が出来ていた。
「梓馬さんと出会って、私の人生変わったよ、本当に感謝してる。ありがとう。」
「俺の方こそ、冬子が居たからここまでやってこれたけん、感謝してる。ありがとう。…そういえば、進路とかは決まっとぅの?」
「うーん、、まだ何も、梓馬さんのお陰で数学が伸びたから、理系で考えてるけど。。また教えてほしいなぁ~?」
「もちろん良いけど、、ちょっとあっちのホテルに行って考えてみますか?」
「……そうします…?」
最近は食事後、そんな流れがお決まりコースだった。
梓馬と手を繋いでホテルへ向かう途中、冬子のスマホが鳴った。
ラインではなく、家からだ。
妙な胸騒ぎがした。
「もしもし?」
「お姉ちゃん、、」
美月からだ。
「ママが、、血を吐いて、今救急車を呼んだ所なんだけど、、帰ってきて…。ぅっ…お願い…」