32話
冬子はつい数ヶ月前に、父親から「史恵」という人宛に送ったであろうラインが届いた事、そしてすぐさま送信取消がなされた事を母親と妹に話した。
「そっか、、パパ、冬子にそんなの送っちゃったんだね…。バカだなぁ…。」
智子は涙ぐみ、どこにもぶつけられない感情を、堪える事しか出来なかった。
「ママ、私、パパに聞いてみるよ。。いいかな…?」
「冬子、、そんなの、ママ何回も聞いてるけど、無駄だよ?全部はぐらかされるから。
本当にパパって、そういうのが上手いの。探偵さんも雇って、証拠写真だって出したのに、色々と理由をつけては全部上手くまとめられちゃうんだから。」
「うん、確かにパパ、嫌な話からは逃げちゃうよね。。パパにはおねだりだけしておくのが1番だって、美月も思う!」
美月の発言は、いつも的を得ているから困る。
「そっか、そうかもね…。それでも私、パパに聞いてみたい。」
冬子は、母親の目をまっすぐ見て、自分の意志を伝えた。
「ふゆ…、なんかちょっと話さない間に大人になったね。分かったよ。聞いてみな?」
冬子の毅然とした態度に智子は、戸惑いを隠せなかった。
そして僅かに、心が高揚した。
娘がこんなに頼もしくなるなんて、思わなかった。
もう、冬子は子供じゃないのかもしれない。
私の物じゃないのかもしれない。