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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
31/75

31話

「ただいま〜!お姉ちゃん、帰ってるの??」


塾から帰り、勢い良くリビングに入ってきた美月は、母親が泣き崩れ、割れた花瓶の惨状を見て、何となく状況を把握した。

しかし、テーブルの上に無造作に置かれた写真が視界に入った途端、そんな惨状以上に、写真に目が釘付けになったようだ。


「……え?  まってこれ、厨二企画の梓馬じゃん?ちょっとなになに?お姉ちゃんーー!」


どうやら美月は、厨二企画を知ってるらしい。むしろファン?


「お帰り美月、、今日は早いんだね。冬子の彼氏だって。知ってるの…?」



涙と鼻水だらけの智子が、自分の惨状には触れず、淡々と尋ねた。



「ママ……大丈夫?いやいやいや、え?梓馬がお姉ちゃんの彼氏なの?嘘だよね?えーーーー!


厨二企画は美月が大好きなYou Tubeのグループだよ♡学校でもみんな見てるよー!」


「ヤクザじゃないの…?」


「へ…?ヤクザって(笑)そんなのは知らないよ。お姉ちゃんの方が詳しいんじゃない?」美月はニヤリと笑い、冬子を見つめた。



「えぇと、、別に付き合ってるとかじゃなくて、私と梓馬さんは、もう少し違った関係というか…」


「え、じゃあ遊ばれてるってこと?でもこの写真、…昨日のだよね?大阪から会いに来たんでしょ?はるばるお姉ちゃんに会いに。。遊びの関係ではなくね?」


随分大人な事を言い放つ美月に、智子と冬子は意表を突かれる。



美月は母親の涙の理由などは頭からすっぽり抜けてしまったようで、姉が推しグループメンバーと恋仲であった事に興味津々だ。


厨二企画がどんな人たちなのか?を母親に説明するために動画を見せることにした。


3人で並びながらソファーに腰掛け、テレビの大画面にYouTubeを映し、サムネイルから動画を選ぶ。


梓馬と冬子の写真、調査報告書などの上に無造作にお菓子を広げながら、美月と冬子は少しでもマトモな動画を選りすぐるために熟考した。


「この動画はママが見たら失神するからやめよ。」

「これも多分無理」

「これは…、まぁ、いけるかなぁぁ」



冬子はトー横広場でリンネと2人で丸まりながら夢中になって、厨二企画の動画を探した事を思い出した。


母親に見せられる内容の動画を美月と探し当てた。


「○○(友達のユーチューバー)の家に新居祝いを持って遊びに行ってみた」という内容だ。


これならいけるよね?と美月と頷き、再生ボタンを押した。


初っ端からハイテンションの梓馬と大地が、怪しげな箱(新居祝い)を持って、玄関の前で怒鳴り込んでいる。。



「何この人たち…新居祝いに来たんじゃないの?」


智子は無表情で少々顔を引きつらせながら、動画を眺める。


これ、親に見せられない系…?

冬子と美月は不安が込み上げてきた。


箱の中身はなんと、生きたゴキブリで、新居に放ってちゃんと回収したチームが勝ちで、回収出来なかったら負けで、回収した全てのゴキブリを唐揚げにして…。



途中で辞めようと思いストップボタンを押そうとしたら、何と智子が止めてきた。



「気になるし、最後まで見ようか?」




その晩、パパは大阪出張のため帰ってこなかった。

智子は割った花瓶を片付けながら、呟いた。



「ママ、離婚しようかな、、、」


冬子と美月は目を丸くして顔を見合わせた。


「え?いきなりどうしたのママ?ママが一人で美月達を養っていけるわけないじゃん!」


ひょっとしたら、美月は想像以上に現実を理解しているのかもしれない。



「ふたりとも、聞いて?パパね、他に彼女がいるの。今日も、きっと彼女に会ってるんだと思う。


ママはずっと何も言ってないけど、結構前から知ってたんだよ。あなた達の為に、何も言わないでずっと耐えてたの。


でももう、こんなに大きくなったあなた達を見たら、もう、我慢しなくても良いんじゃないかって思えてきた…。」


「ううん、ママ、私達の住む家は?学校は?美月はちゃんと志望校に合格して、女子アナになってプロ野球選手と結婚するっていう夢があるの。

離婚して母子家庭になんかなられたら、美月の人生がぐちゃぐちゃになっちゃうじゃん…。」



「美月、、野球選手なんてモテるんだから、浮気なんかされたら大変だから辞めな?もっと堅いお仕事の…」


「ちょっと待ってママ、話が逸れてるよ。あのね、ママ実は……、私も知ってたよ。」


梓馬と付き合い話が逸れることに慣れていた冬子は、上手いこと話を是正すると、父親の誤爆ラインの件を打ち明けた。

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