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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
29/75

29話

智子が仁志のささいな変化に気付いたのは、冬子が中学2年の頃だった。


それまでは「美味しい」と言って喜んでくれたハーブティーを残すようになり、代わりに今までの好みとは全く異なるサーフ系ブランドの小物が目につくようにな

った。


「パパ、こういうの好みだったっけ?」

と問いかけると

「うん、昔から持ってたけど、知らなかった?」


とすっとぼけられて逆に違和感を感じた。



その辺りから「経営者の女性」の特集をテレビで見かけると、やたら褒めちぎってるのも気になった。

「頭がいいだけじゃなくてエネルギーに満ち溢れている」

「新しいことにどんどんチャレンジするって素敵だなぁ!」



ある日

「俺もなにか起業しようかな?ママ、どう思う?」


なんて問いかけられたから、石橋を叩いて渡るタイプの智子は

「今でも十分お給料頂いてるじゃない?そんな事して借金抱えて、子ども達が路頭に迷ったら大変だと思う。このままで十分満足だよ?」


と答えたら、呆れたような顔でため息をつかれて、その後は何も話さなくなってしまったのは、記憶に鮮明だ。


私は、何も悪いこと言ってないのに。


パパは疲れているんだ。家族の為にお仕事頑張って、疲れているんだ。そりゃそうだ。毎日10時間近く仕事に縛られて、、私も頑張らないと!


そう自分自身に言い聞かせ、智子は家族の為に身を捧げ、尽くしてきた。



そんな智子の思惑をよそに、その辺りから仁志は、外出の機会が増え、出張の機会も増えていった。




自分自身に、夫からの愛が向けられていないと感じたのは、いつ頃だろうか?



徐々に夜の生活の頻度が減り、1年近く行為が無いと気付いた辺りで、智子はようやく焦りを覚えた。



色々とネットで調べた上で、失敗のないように比較検討した上で、上品なランジェリーを購入し、勇気を出して夫の前で披露してみたのだ。




しかし、智子の思惑は外れた。


仁志は、少し驚いた顔をしたあと

「ゴメン、トシかな……。ここ一年ぐらい、、全然ダメなんだよ…。」


智子が傷付かないように言葉を選びながら、やんわりと智子の気持ちを断わった。


「もうさ、俺たちそんなトシじゃないじゃん。そういうの、辞めよう?別にさ、そんな事しなくても、可愛い子供たちもいて、成長も楽しみじゃん。他に幸せなこと、沢山あると思うよ。」



夫が優しく、智子を傷付けないように言葉を選んでくれたお陰か?智子も、仁志の気持ちをすんなり受け入れられた。


「そんな感じになってたんだね、パパ……。気付いてあげられなくてごめんね。

それなら仕方ないね。これからは無理せず、家族みんな仲良くやっていこう!」

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