22話
あいつらが性格悪い事なんて、昔から知ってた。
表面上は普通に振る舞っていたけど、みんな心の中ではマウントの取り合いをしているのは、ずっと知ってた。
今まで成績は最下位を彷徨い続け、何でも我関せずの冬子がいじめの対象になることはなかった。
ただ、そんな事実があることは知っていた。
そして、今回その当事者が自分自身になっただけの話だ。
クラスの嫌な空気から抜け出したくて、午後の授業終了後は、急いで教室を後にした。
帰り際には聞こえるような声で
「そんな急いで、今日もトー横?」
と聞こえてきたが、振り向く余裕もなく、急いで帰宅した。
帰宅すると、智子が笑顔で迎えてくれた。
「お帰り、やっぱ冬子が帰ってきてくれると安心するね〜。」
リビングのテーブルには、取り寄せたであろう大学の資料と、数件の塾のパンフレットが並べられていた。
「冬子、先生から褒められたってさっそくおばあちゃんに電話したんだ〜!凄いねって、おばあちゃんも喜んでた!!安心して志望校狙えるよう、塾、もう一回チャレンジしよう!パンフレット、見ておいてね。」
「分かった、見とくよ、ママ」
パンフレットを重ねカバンにしまうと、冬子は力なく2階へ上がっていった。
智子は上機嫌でハーブティーを選ぶ。
「今日はレモンバーム淹れてあげよ♡」
梓馬のTwitterを開くと、何やら大阪の女性youtuberグループとコラボし、USJデート企画とやらで楽しそうな写真を上げていた。
その後、とある迷惑系配信者に絡まれ警察沙汰になった旨のツイートが上がっていた。
何やら緊急事態のようだ。
1番頼りたかった梓馬に頼れない事実を知り、心の支えを失った冬子は、再度Twitterを開くと
「学校もママも嫌だ。今から広場行く。あえる人いる?」
と呟き、家を後にした。
智子が何か言ってるのが聞こえてきたが、イヤホンをしてたので全く耳に入らなかった。