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溶けた恋  作者: ピンクムーン
三章
21/75

21話

梓馬が東京を発ち、一週間が過ぎた。


大阪のBarでは早速営業が開始されたらしく、厨二企画のファンも押しかけ、売上好調らしい。


「櫻井さんのインスタ見たらね、なんか、梓馬さんの女性ファンがめっちゃシャンパン入れてくれたらしくてね、、肩とかこう!寄せ合ってなんか親密そぉなストーリー上がっていたんだぁぁぁ…」


リンネの新居にて、ホットコーヒーを飲みながら冬子は愚痴をこぼした。


「そりゃあねぇ、、梓馬さんってコミュ力高いし、、キャラ立ちしてて安心感あるし、意外と女性ファン居るよね?」


「そうそう、普通に女のコにモテるよね!大阪ですぐセフレとか作ってそう!!」


梓馬を尊敬しているリンネ彼氏のせつなも加わった。


冬子が「ああもう、言わないで〜。」と頭を抱えると、パシッとリンネの突っ込みが入る。


「ちょっとせつな、そんな事トーコの前で言わないの!!」


「あー、そっかぁ〜、トーコ、ゴメンゴメン!」



2人は相変わらず仲良しだ。


同じ時期にトー横界隈で意気投合し、その中でも薬物や暴力事件等の危険行為は避けながらも共に生きてきた2人は、固い絆で結ばれているようだった。


今月から新居も借りて、新婚夫婦みたい。

あー、羨ましい。。


新居や仕事など、新生活に慌ただしくしているリンネは最近、トー横広場には顔を出さなくなっていた。



私も、前を向いて前進しないとな。




梓馬達が大阪へ発ち、リンネも多忙な為、冬子も自然とトー横からは足が遠のき、家へ帰る頻度が増えていた。



「冬子さん、前期のテストでは赤点取ってしまいましたが、後期は努力されたんですね、一気にここまで伸びる生徒さん、中々居ませんよ。このまま志望の大学目指すのも、十分アリですよ。頑張りましょう!」


最近出席率も高く、クラスでも笑顔が増えた冬子を、担任は面談で褒めちぎった。


先月まで頻繁に家出していた上、塾も行かず、冬子が勉強している姿なんて一切見ていない智子は、冬子の成績アップの理由を知る由もなく、ただただ笑顔で相づちを打った。



冬子は担任より「笑顔が増えた」とは言われたものの、以前に比べればの話で、実際問題そこまでクラスに馴染めてはいなかった。



午前の授業が終わり昼食を済ませた冬子は、自席で陽炎の新曲を聞きながら勉強していると、クラスメイトの琴葉が、冬子の目の前にスマホを差し出した。


「冬子って、地雷系なんでしょ……?」


探るような上目遣いを向けると、キャーと叫びながら教室後方の集団と共に爆笑した。


スマホには、冬子がトー横広場であげたTikTokの動画が流れていた。

顔は伏せているが、最近は顔出しなんかもしてたので、バレたのだろう。別にいいけど。



「休みの日はそういう格好してるけど、悪い?」


冬子は喧嘩腰で言い返す。


「え、、ちょっと待って!冬子ヤバい!やっぱ本人なんだ!怖すぎるんですけど!そうすると何?…冬子って本物のトー横キッズなの?

パパ活とかで生活してんだよね?キモすぎる!!無理〜!」


琴葉が皆に聞こえるよう大声で話す。


「パパ活」というキーワードに、思春期のクラスメイトの何人かが反応した。


「パパ活…?」

「ヤバいよ、お金貰ってそういう事するの…?」

「キモい、キモすぎる!」

「やっぱ冬子ってそういうオーラある」

「何で学校来始めたの?」


皆ぼそぼそと陰口で話してるのが聞こえてきた。



最近登校する事が増えて注目を浴びているのもあるが、厄介なのは成績が上がった事への妬みだった。



出席率が悪いのにもかかわらず成績を挽回させた冬子に対し、冬子を疎ましく思ってるクラスメイトが一定数の割合で存在した。


主に、成績を抜かれた生徒たちだ。




チャイムがなり皆大人しく席についた。

社会科の教師が淡々と日本史の授業を行う。


まるでお経のような授業に眠気を催してきたところで、冬子のスマホのバイブが鳴った。


スマホを見ると、クラスの女子だけのグループラインだった。


そこには、地雷系のスタンプとともに、冬子のTikTok動画が貼られている。


琴葉からだ。


その後立て続けに、トー横界隈のディープな記事が3件ほど貼られ、「パパ活は犯罪です」と締めくくられた。


後ろからはクスクス笑い声が聞こえてきた。


どうやらお経のように淡々と話し続ける授業には、時間が過ぎるのを遅くさせる効果があるらしい。


冬子は時計を睨みつけながら、少しでも早く針が進むよう祈り続けた。



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