20話
「実際そんな事するやつおるんや…。やっぱトー横は危険な場所やな。それにしても、冬子が無傷で良かった。」
梓馬は冬子を抱きしめ、冬子の存在を噛みしめる。
「しかしそんな状況下で、よくそんなうまく対応できたね。警官に向いてるんちゃう?マジで尊敬するわ…」
冬子をうっとりと見つめ、夏樹との武勇伝を褒めちぎる梓馬からは、ラブホ写真の件を揉み消そうとする意図を感じる。
冬子は話が逸れないよう、すかさず梓馬に尋ねた。
「で、その件は、本当なんでしょうか…?」
「ごめんネ、実は俺、今家がないけん、色んな所に寝泊まりしちょるけん、ホスト企画の時は毎日色んな女と…」
もうそれ以上は聞きたくない!
と言わんばかりに、冬子は自分のパーカーのフードを被り、耳を塞いだ。
まもなく、梓馬は東京を離れる。
こんなしょーもない尋問をしている時間すら、貴重だ。
「オレを信じてほしい。やってはない。ただ一緒にベッドで寝たり、風呂は…入ったかも、あとは…」
「もーー、わかったよ、わかったから、大丈夫。梓馬さんは私の事だけ好きだって、信じてるから。」
冬子は梓馬のパーカーの胸元を引っ張り、一生懸命顔を近付け、キスをした。
梓馬もそれに応えるべく、冬子の頭を抱え、何度もキスを重ねてくる。
外は雪が降ってきて、いつもより冷え込んでいたが、2人の熱で雪なんか溶けてしまいそうだった。
汗ばんだ手を繋いで見つめ合い、再びキスをする。目を開くと、物欲しげな冬子の瞳がこちらに訴えていた。
梓馬は冬子の全てを奪ってしまいたいと本気で思い、そのまま首筋に唇を這わせた。