表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

これは私の母親の話【不問2】

作者: まなお

〈注意事項〉


過度なアドリブはお控えください


台本を使用する際は、タイトルと作者名を記載の上で上演お願いします。

課金制・無課金制問わず自由に使用してもらって結構です。


使用の際の連絡は不要ですが、作者にDMを送ってくだされば、聴きにいけたら行きます!

アーカイブも残っていたら、送ってくだされば聴きます!

Twitter:manaosoda_


A:

B:


15分目安


−0−


A:これは私の母親の話。


B:私の母親の話。


A:私の母親。


B:私の母親。


A:あなたの?


B:私の。


A:私の。


B:あなたの?


A:私の。


B:私?


A:あなた。


B:「あなた」は誰?


A:私。「わたし」は誰?


B:あなた。


A:あなたは私で、


B:私はあなた。


A:母親は?


B:母親は母親。


A:母親は誰?


B:誰は母親。


A:これは私の、


B:母親の話。



−1−


A:僕には母親がいない。


B:僕は孤児みなしごだから。


A:とある冬の寒い日。雪が降ってた日。僕は教会の入り口に、段ボールに入れられて捨てられた。


B:とある夏の暑い日。空が青く晴れてた日。僕は教会の出口に、段ボールに入れられて捨てられた。



−2−


A:お前は母親が欲しいと思ったことはある?


B:僕?ないかな。母親がいなくても僕はここまで育った。それで十分さ。


A:母親がいたらもっと育ったかもしれない。


B:今よりも大きくなったって仕方がないよ。


A:体の大きさじゃないよ。


B:じゃあなんの?


A:なんのだろう。


B:お前にわからないんじゃ僕にはわからないや。お前は?母親が欲しいと思ったことはある?


A:僕もないかな。母親がいなくてもここまで育ったし。それで十分だよ。


B:同じことを言っている。


A:同じことを言ってしまった。


B:著作権問題で50円払ってもらおう。


A:なんか微妙な金額。もっと、1億円とか言い出すかと思った。

B:1億なんて持ってないじゃん。


A:そういう無理な金額を出すと思ったんだよ。


B:バカなの?現実味がない話は好きじゃない。それに1億あったって困っちゃうよ。


A:1億もあったらなにに使う?


B:ためとくかな。お前は?


A:貯金も悪くないけど、僕は世界中の孤児のために寄付するかな。


B:善人だ。


A:そんなんじゃないよ。


B:自分のために使わないんだろ?じゃあ善人だ。


A:そうかな?


B:そうだよ。それに対して僕は悪人だ。


A:貯金ってことはまだ使ってないんだから、お前も善人じゃないの?


B:でもいずれは自分のために使うんだ。


A:使わなければいいじゃないか。貯めるだけで使わない。私欲のために使わなければ悪人にはならないよ。


B:じゃあ一般人だ。善人にはなれっこないよ。


A:なんでさ。


B:善人は他の人の幸せのために働くんだ。僕は自分に働いてなくても、他人にも働いてないから、間をとって一般人なのさ。


A:一般人か。


B:一般人だよ。


A:普通ってこと?


B:普通が一番。


A:普通はつまんないよ。


B:そういうやつもいるよね。「普通はつまんない」。でも僕はそう思わない。


A:それはなんで?


B:「普通」として生まれてくる人なんていないから。誰も「普通」じゃないから、みんな「普通」になりたがる。みんな「普通」になろうとして「普通」を演じてる。でも生まれ持った「普通」じゃないなら、誰も「普通」じゃないんじゃないか。


A:つまり?


B:まだ誰も「普通」になれていない。ということは「普通」は特別なんだよ。


A:じゃあ「特別」は?


B:「特別」が普通なのかもしれない。


A:でも今の世の中「普通」を良くないとして、「特別」になろうとしてる。


B:そう。その「特別」が増えることによって、「普通」が減っていく。


A:減っちゃうと、「普通」の方が特別になっていくのか。


B:そういうこと。


A:なんか奥が深いね。


B:深いかな?


A:深いよ。お母さんはどっちだったのかな?


B:どっちって?


A:普通になってきてる「特別」か、特別になってきてる「普通」か。


B:前者かな。


A:前者ってどっち?


B:普通になってきてる「特別」


A:特別なの?


B:いいや、普通だね。


A:普通か。


B:お母さんは普通の母親だったんだ。


A:普通の「特別」か。


B:子供を捨てるんだ。それは「普通」じゃないだろ。


A:「普通」じゃないね。とても「特別」だ。


B:そう、きっと「特別」な理由があったんだ。


A:でもきっと「特別」な人の「特別」な理由は普通なんだろうね。


B:普通なんだと思う。



−3−


B:アイス何味がいい?


A:バニラ。


B:ない。


A:チョコ。


B:ない。


A:いちご。


B:ない。


A:じゃあなにがあるの?


B:メロンとピーチとグレープ。


A:それアイスクリームじゃないし。シャーベットだし。


B:アイスだよ。クリームじゃなくてキャンディだけど。


A:じゃあアイスキャンディって言えよ。


B:それってちょっと不公平だと思うんだよね。


A:は?


B:なんでアイスクリームは「アイス」だけでいいのに、アイスキャンディは「キャンディ」もつけないと認識されないの?ずるいくない?同じアイスなのに。


A:アイスクリームの方が有名だから「アイス」だけで通るんだよ。キャンディの方は、息子的な存在なの。ジュニアなの。


B:マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、みたいな?


A:そう。だからクリームは「アイス」だけでいいけど、キャンディは「アイスキャンディ」じゃなきゃいけないわけ。


B:そうなんだ、アイスクリーム・キャンディ・ジュニア。


A:お前、バカなのか?


B:私の名前は「バカ」じゃない。


A:知ってる。


B:私の国籍も「バカ」じゃない。


A:知ってる。


B:だから私は「バカ」じゃない。


A:うん、バカだ。


B:ああ、そう。お前にアイスあげないから。


A:アイスクリーム・キャンディ・ジュニアくれないのか?


B:いや、アイス。


A:一世のアイス?


B:そう、ジュニアじゃなく、シニアのアイス。


A:あるの?


B:バニラとチョコといちご。


A:お前、騙したのか?


B:いいや、別に聞かれなかったし。


A:は?


B:アイスクリーム・キャンディ・ジュニアのことを聞いたんだよ、さっきは。今言ったのはクリームの方。


A:ふざけんな。


B:ふざけてないけど。


A:(ため息)わかった自分でとってくる。アイス。


B:ないよ?


A:ん?


B:え?


A:え?


B:だってないもん。


A:いや、あるでしょ、アイス。さっきから言ってるじゃん。


B:ないよ。


A:どういうこと?


B:氷はもうないよ?


A:アイス、、か。


B:そう。アイス。


A:じゃあ、クリームとってくる。


B:それもないかな。


A:さっきあるって言ってたじゃん!


B:カスタードクリームはもうないよ。


A:アイスクリームをとってくる!


B:ああ、バニラとチョコとイチゴがあるやつか。


A:そう。


B:どれにするの?


A:バニラ。


B:いい判断だ。アイスクリームのバニラはとても美味しいからね。


A:めんどくさいやつ。


B:お母さんは何味が好きだったんだろう。


A:どれのなに?


B:アイスクリーム・キャンディ・ジュニア。


A:キャンディの方ね。何味があったんだっけ?


B:メロンとピーチとグレープ。


A:じゃあ、ピーチって感じがする。きっと優しい人だっただろうから。


B:え〜、僕はグレープって感じがするな。ミステリアスで掴みどころがない。


A:じゃあメロンの印象はどんな?


B:無難でつまらなくてあまり好きじゃないやつ。


A:ひどい言われようだ。じゃあアイスの方だとどれが好きだったんだろう。


B:アイスクリーム?


A:そう。アイスクリーム。バニラかチョコかイチゴ。


B:チョコだと思う。


A:その心は?


B:グレープと似てミステリアス。


A:チョコはミステリアスなのかな?


B:ミステリアスだよ。色も濃いし。


A:色だけじゃん。


B:じゃあお前はどう思う?


A:僕は、お母さんはバニラ好きだったと思う。


B:なんで?


A:僕のバニラ好きは遺伝だと思いたいから。


B:なるほどね。


A:そう。


B:まとめるとアイスはグレープで、アイスはチョコってことだよね。


A:僕のお母さんは、アイスはピーチで、アイスはバニラだ。


B:なんか対照的な母親だね。


A:だね。



B:名前って大事だよな。


A:名前?


B:さっきのこと。アイスだけじゃ伝わらなかったじゃないか。だからちゃんと名前を言わないといけないんだ。


A:それはお前だけだと思う。


B:「お前」っていうのも名前じゃない。


A:それはそうだ。


B:今は二人だけだから許してあげるけど、もっとたくさんの人と話してたら「お前」だけじゃわからないよ。名前がなきゃ。


A:そうだな。名前って大事なのかもしれない。


B:アイデンティティなのさ。


A:「お前」って呼ばれるのがアイデンティティじゃないのか?


B:じゃあ私の名前は「お前」なのか?


A:そういうこと。


B:じゃあお前は?お前も「お前」だったら僕になってしまう。


A:僕は「僕」だよ。あ、でもさっきお前も自分のことを「僕」と言ったからお前も「僕」になってしまうのか。いいや、でもお前は「お前」で通そう。


B:そっか。じゃあお前は「お前」だ。


A:そして僕は「僕」だ。


B:じゃあお母さんは?


A:「お母さん」だ。


B:なるほど。


A:名前成立か?


B:名前成立だ。




−4−


A:昔々、あるところに「僕」と「お前」と「お母さん」がいました。「お母さん」は「特別」な人でした。「特別」な人で「特別」な理由があって「僕」と「お前」を教会の入り口と出口の前に置いた段ボールの中にいれて、さようならをしました。そして「お母さん」はもう二度と「僕」と「お前」の前に姿を表すことがありませんでした。


B:悲しいお話だね。特別なお母さんの特別な理由ってどんな理由だったんだろう。


A:普通に「特別」な理由でした。特別な人の間ではとても普通な理由でした。


B:お話の続きはあるの?


A:さようならをした後のお話はわからないよ。


B:なんで?


A:これは私の母親の話なのに、もう母親はあらわれることないのだから。


B:じゃあ「僕」と「お前」のお話をすればいいじゃないか。


A:いいや、「僕」も「お前」も「お母さん」もみんな私の母親だから、話せない。


B:それは私の母親のお話なの?



A:私の母親のお話さ。


B:あなたの?


A:私の。


B:私の?


A:あなたの。


B:そっか。


A:そう。これは私の


B:私の母親の


A:母親の話。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ