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第四話:追放後のヒロイン(?)枠登場


 ~某王国某町の宿屋内~



 四人は現在生ける屍の様な状態になっている。

 

 『ディックがいない』この事実が四人に大きくのしかかっている。

 

 予想していたこととはいえ、想像以上にメンタルがやられている。

 

 たった数時間で見事にやつれたマリーは三人を呼んで現在のディックの状況を確認するために追跡用魔道具の視界を部屋の中に映し出した。

 

 「「「「こっ、これは!」」」」

 

 


~ 四人が気絶している時のディック(少し遡ります) ~



「追い出された……」


 つい数時間前まではこうなるなど誰が予測できただろうか…… ディックはあの時の会話を思い出す。

 

「そうだ、マリーは言っていた。僕のランクが問題なんだと。セリーヌも言っていた。僕が足を引っ張るのだと…… ならば、足を引っ張らないまで成長するしかない」


 そう決意したディックの足取りは自動的に冒険者ギルドまで運んでいた。

 

 意を決したディックは一人で冒険者ギルドの入口をくぐる。

 

 そこにはディックの姿を見て頭を抱える受付のハンスがいた。

 

 ハンスは『予定通り始まっちゃったかあ』という表情をしている。


 ハンスはアリスから弱みを握られていた。万が一にでもディックに女がいるパーティーを紹介しようものなら明日以降この街…… いや、この国にはいられない程のダメージを心に負う事になる。

 

 それだけは避けなければいけない。自分の味方はだれもいない。

 

 あんな性癖を晒される訳にはいかない。

 

 あれは笑われれるじゃすまないんだ。社会的に軽蔑…… いや、抹殺されてもおかしくない。

 

 しかもギルドマスターですら懐柔されているのだから。

 

 ハンスは自分の未来の為にアリスに従う道以外にないと既に理解している。

 

 

 

 失敗は許されない。




「やあ、ディック君。いらっしゃい、何の依頼を探しているのかな?」


「こんにちわ、ハンスさん。あの…… 僕強くなりたいんです。討伐系って何かありませんか?」


 ハンスの心臓が高鳴っていく。頑張れハンス。負けるなハンス。明日の自分の為に。

 

「ディック君に丁度いいのがあるよ。ゴブリン退治なんてどうかな。これならソロでも行けると思うよ」


「あれ?僕ソロって言いましたっけ?何で知ってるんですか?」


 マズイ、いきなりやらかした。

 

 どうする? どうする? アリスがどこで見ているかわからないのに迂闊な事は言えない。

 

 考えろハンス! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

「あれ、ディック君。何してるんすか?」


 ハンスにとっての助け舟。それはディックの事を秘かに狙っていた少女、ロクサーヌであった。

 

 ハンスにとってロクサーヌは神か悪魔か?

 

 ハンスはロクサーヌがディックを狙っていることを知っている。

 

 頼むから今日はパーティーを組もうとか言わないでくれ


「あれ?ロクサーヌさんじゃないですか。こんちにわ。実は当分の間ソロ活動することになりまして……」


 ディックの表情は暗い。何か事情があるっぽい……

 

 しかし、ロクサーヌにとっては天の采配とも言えるこのシチュエーション

 

「てことはあの四人はいないってことっすよね。ラッキー」


 ハンスにとって一番最悪なパターンが来たアアアアアアアアアアアアア。

 

「ロクサーヌちゃん! 悪いんだけどさ、緊急で斥候を必要としているパーティーがあるの! お願い、そっちのヘルプに行ってほしいの」


 ハンスの慌てように胡散臭さを感じるロクサーヌ

 

「ハンスさん、何か企んでないっすか?」


 脂汗が止まらないハンス。クソッ、兎に角ディック君にはソロ活動してもらわないといけないんだ。

 

 落ち着けハンス! 冷静になれハンス! やればできる子!

 

「ディック君は強くならなきゃいけないんだ。ギルド職員としてはね、安全を確保してほしいからパーティー推奨なんだけどさ……

 ほら、彼の場合はパーティーメンバーが特殊でしょ? 少しでも近づきたいって言う彼の思いを尊重してやりたいんだ」

 

 ロクサーヌが突如真顔になって少し考え事をしているようだ。

 

「わかったっす。今日の所は引き下がるっす。ディック君、頑張ってくださいっす」


 うおおおおおおおおおおお、勝った、勝ったぞ。明日はまだこの国で生きていける。


「はい、頑張ります」


 『えへっ』と言いながらにっこりガッツポーズをロクサーヌに見せるディック。

 

 これで男の子なんだもんなあ。性別知らなかったら惚れるわマジで。

 

 ハンスが真面目にディックにドキドキしている。

 

 次の瞬間背中に悪寒の様なものが走り、すぐに我に返った。


「では、行ってきますね。ゴブリン退治」


 ディックは気合を入れるとギルドから出て行った。

 

 ロクサーヌはその様子を見守りながらディックがギルドを出ていくとハンスに振り返った。

 

「ハンスさん、今日は気分じゃなくなったので、お休みしますっす」


「そ、そう。残念だね。また何かあったら言ってね」


「わかったっす」


 ロクサーヌはそう言うとギルドから出て行った。

 

 まるでディックの後でも追うかのように……


 ディックは知らない。ディックを狙う女性はディックが思っている以上に多い事を。


 ディックは知らない。ディックを狙う男性もまれに登場する事を。

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