7・できる女、明美姉さんの名推理
「まず運転ね。犯人はなにかを配達する仕事をしている。そしてそのまま女の子のようすを見に行っているわね。だから、その乗り物がわかれば何かの手掛かりになるかもしれない」
「配達ってことは、あれか、ヤマトとか佐川とか」
明美姉さんの話しに刑事も食いついた。
「可能性はあるわ。いろんな会社の受付を通って中に入っているからそういう職業の人間かもしれない。でも、会社ばかりなのが気になるのよね。いくらオフィス街の担当でも宅配ならその周辺の民家にも配るんじゃないかしら」
「そうか?会社専門のとこもあるんじゃないか?」
「それに会社でも宅配なら大勢の人と顔を合わせるでしょ、彼が見た映像にはそういう気配はない」
「うーん」
「あと私が気になったのは、君が聞き覚えがあると言った音」
「音、ですか。そうなんです。金属的なころがるような音がして」
「これじゃない?」
明美姉さんは駅前の自販機に行くと、ケータイで缶ジュースを一本買った。
ガチャコロン。
「ああ!これですこれ!」
「そうか、犯人は会社の自販機の充填の仕事をしてたのか!きっと住宅街の自販機もやっていたんだろう。それでターゲットの女の子を見つけて、狙いをつけてトラックに乗せたってわけか!!」
刑事の気づきとともに俺も気づいた。
そしてその瞬間、隠されていて見えなかった犯人の、仕事の部分が目の裏に浮かんでくる。
そう、ジュースの箱をはこび、自販機に詰めている。ゴミを回収しお金の回収も。そして建物を出て。見えた!
赤い。
赤い車に白いロゴの大手メーカーだ。
「わかりました、犯人の乗っていた車が!」
俺は今見えた映像のことを明美姉さんと刑事に説明する。
「だけどそれじゃ何にもならねえぞ。そんな車何台あるとおもってる!?」
「君、よく思い出して。何か特徴はない?犯人は今日、その場所に行っている。その車に何か特徴があれば、それを追えば被害者の居場所がわかる」
俺は必死に気持ちを集中させる。
いろいろな会社を回るたびに車をみている犯人の目線。
特徴、特徴。
と、 何かを耳に突っ込まれるような違和感があって俺は反射的に身を逸らし頭を振る。
なんだ?一体。
「どうしたの?」
「いえ。でも、一つだけ。犯人の車は前のバンパーが大きくへこんでいました。見たらわかるくらい。きっとどこかでぶつけたんじゃないかと」
「そんなこと言ったってよ、実際の写真でもありゃあなんとかなるかも知れねえがバンパーのへこみで探すなんて無理じゃねえか?」
明美姉さんが考えている。
そして俺を見た。
「君に大きな負担をかけるかも知れないけど、一つ考えがある」
「いいです、言ってください」
明美姉さんはうなづき、刑事に向き直った。
「やってほしいことがあるの」