6 チートなアホ毛
30あるAGIを活かしフィールドを駆け巡り、スライムらしき生物を見つけ次第討伐、と8体はそうやって倒せたのだが。
「全然いない…」
スライムと遭遇しなくなったのだ。
「そこら辺にうじゃうじゃいるのかと思ってたのに…。おかしいなぁ…。――痛っ!?」
何かが背後から気配もなくマナを攻撃してきた。
その正体を確認せずに振り返りながら剣を振ろうとしたが…。
「……ふぇ?」
思わず振り切るのを中断してしまった。
攻撃してきたのはスライムだ。
アホ毛が生えたスライムだ。
「スライムに、アホ毛…。なんかかわいい、けど倒す!」
無慈悲な一撃にスライムは光となって消えたが、その場に別の小さな光が残っていた。
「レアアイテム?アイテム名は…、あほげ!?」
衝撃的で大胆なアイテムがドロップしたことに困惑を隠しきれなかった。
何はともあれ重要なのはこのアイテムの能力だ。
という事で確認してみた。
あほげ 装飾
あほげれーだー:敵からの視線を察知しアホ毛がその敵の方向に向く
「ふざけたアイテムのように見えるけどこれは…、チートか何か…?まぁいっか。装飾スロットに入れとこ」
自分の姿を見れないのでまだ気付いていないが、今マナの頭にはチート性能のアホ毛が付いている。
そして視界左下には索敵レーダーのような円が表示されていた。
「私は軍用ヘリにでもなったのかな」
残りの数は5体。
気持ちを奮わせてクエストクリアの為にスライム討伐を再開しようとした。
その時だった。
「わっ!?」
突如頭を後ろに引っ張られているような感覚がマナを襲った。
「レーダーに赤色の点?もしかして!」
レーダーを信じて後ろを振り向くと一匹のスライムがいた。
問答無用スライムを斬る。
当前スライムは光となって消えていった。
「凄い、このアホ毛」
残り5体。
レーダーを頼りにスライムを見つけ次第狩っている。
順調とは言えないほど見つからなかったが、苦労の末残り1体にすることが出来た。
だが残りの1体を見つけることが出来なかった。
「全然いない…。これじゃさっきと同じ…。まっ、丁度いっかな。少し休みたかったし」
と言って寝転がった。
「スライムと戦うって…、やっぱゲームなんだなー。しかもこうやって綺麗な空気を吸いながら平原でごろごろできるなんて。今じゃ考えらんないなぁ」
プレイ初日でまだまだ浅くはあるものの、現実では不可能で非常識な事が出来るという事に改めてこれがゲームであると実感出来るほどに充実していた。
「真治には感謝しないとな。ふぁあ、ごろごろしてたら眠く……」
ゲームだから睡眠とか無いと思ったら大間違い。
疲労はちゃんと溜まるのでごろごろしてたら眠くなるのは当たり前だ。
「すぅ……」
眠ってから5分ぐらいが経ったが、まだ眠っている。
モンスターのいる平原の中で。
危機が近づいているとも知らずに。
「ん…。なんか変な音が…。ん?警告音…?」
迫ってくる。
かなりヤバいのが。
目を開きレーダーを確認する。
「ん…?ん!?」
レーダーに映っている赤い点は雑魚モンスターのものではなく、別のものだった。
しかもそれが2つもあるではないか。
そしてようやく寝てる暇ではないと悟り、慌てて剣を取りモンスターの方に体を向けた。
「で、でかい…。まさか…、ね」
今ここで真治の言っていたことを思い出す。
「稀に大型モンスターっていう通常モンスターよりかなりデカいモンスターが湧くっす。かなり強いっす。戦うときは気を付けるっすよ。最悪の場合逃げるっす」
とな。
「しかも、火が着いてる…。あぁ、終わった…」
マナが今見ているモノはさっきまで倒してきたスライムではない。
大型のスライムで、しかも火属性のモノだ。
「この状況…。ふっ、今ここで引く訳にはいかないよね!【オーラ】!」
非常に強い不愉快感を耐え忍び、今までよりも強く【オーラ】を発動する。
戦闘態勢へと移り、さっきよりも強い光が黒剣に纏う。
魔力放出量は50%。
準備は完了だ。