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「うー、緊張するなあ……」
「そんな緊張するなよ。大丈夫だって」
扉の前でぼやくアスクモアをクラバスが苦笑しながら励ましていると、そこにサンドリヨンが現れた。
「アスクモアさん――こんなところに来られて大丈夫なんですか?」
「うん、父上の許可は貰ったよ。ちょっと用事があったからね」
アスクモアもさすがに腹が決まったのか、いつものように口ごもることなく返答した。
「じゃあこんなところじゃなんですし、中で待っててください。あ、クラバスさんもどうぞ」
そう言いながらサンドリヨンは家の扉を開けた。
何かがかみ合っていない気がしたアスクモアは、確かめるようにサンドリヨンに尋ねる。
「えっと……待ってる、って言うのは?」
「お母様かお姉様に用事なのでしょう?」
さらりと答えたサンドリヨンの言葉に、クラバスは笑いをかみ殺していた。
どうやら、アスクモアはなかなか苦労をしそうだ。
「君に用事があるんだよ」
「私に?」
その考えを全く持って考えていなかったのか、サンドリヨンの顔は意外そうだ。
「そう、僕は君に用事があって来たんだ」
アスクモアはそこで言葉を一度切り、緊張で乾いた唇を舐めた。
「サディさん、僕の妻になってくれませんか?」
「それって……」
「僕と、結婚してください」
不意の言葉に、サンドリヨンの動作が止まる。
数拍の後、サンドリヨンはやっとの思いで口を開く。
「冗談は――」
「冗談なんかじゃありません」
アスクモアがサンドリヨンの言葉を遮って否定する。
アスクモアの瞳に宿る光に、本気であることを悟ったのか、サンドリヨンは考え込むように少し俯いた。
アスクモアからすれば永遠とも取れるような、実際にはそれほどではない時間を経て、サンドリヨンはおずおずと口を開いた。
「はい……」
その返答を聞いたアスクモアと、その返答を言ったサンドリヨンの顔は、赤い。