表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三捕手のみっちゃん  作者: 房一鳳凰
第三章 覚醒編
PR
88/439

番外編⑨ ゲーム②

 去年少しだけ触った野球ゲーム。わたしとみやこはゲームのど素人だったから早々に挫折したけど、チームメイトたちの持っている最新版を見せてもらった。


「あっ、パワーアップしてますね、わたし」


「打撃能力は一気に強打者に、守備位置も捕手だけじゃない、何よりピッチャーもできるからね。本物そのものだわ」


 低すぎる走力も完全再現だ。100段階評価の2ってどういうこと?去年より遅くなってる。



「ホームランバッター、チャンス◎、送球◎、初球○、エースキラー……使える特殊能力のオンパレードだよ」


 高い評価を受けているというのはわかった。現実の世界で活躍すればゲームの世界でも皆に頼られる選手になれるってわけだ。


「………?あれ、でもこのなかのわたし、ピッチャーじゃなくなってますよ?」


「あっ………!いや、これはその」


 メイン守備位置はサード、その他キャッチャー、ファースト、ライトにレフト……ピッチャーができなくなっている。



「こればかりは現実通りとはいかなかったみたい。みっちゃんのよさはゲームじゃうまく再現できないから……」


「………」


 球速は絶対に150に届かない、変化球はスライダーとカーブだけ、それも大してキレがない。スタミナと体力回復能力だけが異様に高く、これが全国の『横浜使い』を大いに悩ませていたらしい。


「自分で操作せずにペナントを回せるモードがあるんだけど、放っておくとみっちゃんは2勝23敗とか平気でやるからね」


「……23敗………」


 武器がないから簡単に打たれる、でも体力があるからなかなか降板しないし一年間ローテーションに居座るしで、ゲームの横浜ブラックスターズを最下位に導いているようだ。


「防御率7点台はザラだし……そこで横浜でプレーする人は開始早々にみっちゃんを野手に専念させるところからスタートするのよ」


 今年から投手再挑戦したと思ったら開幕早々に封印……忙しすぎる。



「ピッチャーのままだと油断してたらすぐに登板してるからね。サードかファーストをメインにさせないと………」


「なるほど………現実の世界で「あいつまた投げてる…今日は負けだな」なんて言われないように気をつけないといけませんね」


 実際には通算で5勝もしていない投手がゲームのなかだと最強クラスになったり、ほんとうにこんなものが成立したらファンの暴動待ったなしというトレードが平気で行われていたり、やっぱりゲームはゲームだ。



「だからネットでみっちゃんの名前を検索すると投手廃業とか弱いとかいう文字が出てくるけどゲームの話だから落ちこまないでね」


「自分の名前で検索なんてしませんよ?」 


「それはよかった。「私の能力が低すぎ!」ってゲーム会社に文句を言う選手もほんとうにいるらしいからね……」


 そもそもチームの連絡以外で支給されたスマホに触ることはほとんどないし、家のパソコンはみやこ専用になっているくらいだ。

 

「みっちゃんは大丈夫でも木谷はどうかな?最強の太刀川みちを作るとか言い出してゲームに没頭しなけりゃいいけど」


「平気ですよ。ゲームを触っているところを見たことがないですから」


「ゲームもいろいろあるからなぁ。ゴーレムズの田沼とロメックが性能に差がないアホなゲームもあるくらいだし……」


 開幕したときは能力の高い選手でも、スランプや衰えで結果が出ないと能力を下げられてしまうらしい。頻繁にデータを更新するようで、最新作が出る前の最終更新のときには販売したばかりのときとはまるで別人に成り果てた選手もいたとか。もちろんその逆もある。





「頻繁に更新………なるほど」





 ゲームの画面を見せてもらってから三日後、その先輩たちが大慌てでわたしのところにきた。


「みっちゃん、凄いことになってるよ。ネットの話題はみっちゃんで持ち切りだ」


「え?何もしていませんよ」 


「いや、あのゲームの話だよ。あれが女子プロ野球ゲームの最大手だからね。いきなりメンテナンスとアップデートが入って、終わったと思ったら………みっちゃんの投手能力がめちゃくちゃ強化されていたんだ!」



 ゲームのことなんてどうでもいいかと思っていたけど、突然急激に強くなっていると聞いたら気になるのは仕方ない。実際に画面を見せてもらうと、


「球速や変化球……基礎能力はそのままですね」


「問題なのは特殊能力だよ。野手みっちゃんには前からたくさんあったけど投手みっちゃんはほとんどなかった。それが………」


 強打者◎、ピンチ◎、針の穴を通す制球、無尽蔵のスタミナ、ドクターK、絶対的球威………それ以外にもたくさんの能力が追加されていた。



「しかもわざわざ公式が説明しているわ。『ブラックスターズの太刀川選手の能力があまりにも現実とかけ離れていると指摘をいただいたため、考えられる最善の方法で修整致しました』だそうで………」


「条件さえ満たせば165キロよりも打てない球が投げられるようになったわ。これでペナントを回すと25勝くらい、防御率は約1点台後半になるからいまのペースを考えたら確かにこっちが現実に近いと言えるけど………」



 影響力のある何者かが大のブラックスターズファン、もしくは太刀川個人のファンで、ゲーム会社を脅して『真・太刀川みち』を登場させたと話題になっているとかなんとか。ゲームバランスがおかしいぞという悲鳴も上がっているとのことだ。


「まあわたしに文句を言われてもどうしようもないけどね。ねえ、みやこ」


「ええ。しかしあなたが本気のときに投げる至高の一球、光り輝くストレートを再現するにはあれでも足りない。やはりみちの魅力はまだまだ底知れないということ」


「ははは、照れるなぁ。ゲームのわたしに負けないように頑張らないとね!」

 


 しばらくしてから、このゲームを一日何時間も遊んでいる人たちが『隠しデータ』を見つけた。太刀川みちは木谷都とバッテリーを組むと能力がさらにアップするけど、他の捕手と組むと弱体化して勝てないようになると。

 どれだけ強化されてもみっちゃんの走力は永遠にG、成長もしないようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 確かにこれが正しいみっちゃんの性能。強い!でも○ワプロ作ってる人達は分からないだろうなあ。納得できないステータス多いし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ