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〜第六章〜 異世界最強✖️人間界最強 意地とプライドの強者達の戦い

―とある闇格闘技場―

(ナレーション)

 その男はそこで勝ち続けていた。

 その男は、とても筋骨隆々で大きな身体をしている短髪の男だった。

 その男の片方の眼には大きな傷があり、全身には色んな傷が刻まれていた。

 そしてその男は、次々に挑戦して来る者を返り討ちにしていった。


 その男には誰も敵わない。

 ボクサーもプロレスラーも空手家も喧嘩家やヤクザでさえも。

 そうやってその闇の中でただ一人、また一人一人と再起不能にしていく。


 その男には笑顔は無い。

 その姿はまるでただの殺人鬼の様に。

 ただ眼の前の敵をただ倒すだけ。

 その男の名は金剛寺虎次郎。

 別名、殺人鬼虎次郎……



 その虎次郎の前にいつもの様に麗子が現れた。


(麗子)「お疲れ虎次郎。相変わらずの強さだね」


 だが虎次郎は何も言わない。

 虎次郎は無口だった。

 そして麗子にただ軽く頭を下げた。

 そしてその場を後にした。


(虎次郎)

⦅何も疲れてなんかいない⦆

⦅皆んな弱過ぎる……⦆

⦅あんな奴等何人倒しても何も感じない⦆

⦅もういないのか……俺の心を震わせる様な強者は……もうどこにも……⦆



―良子の家―


 舞と一匹の猫が精神上で会話をしていた。


(フローラ(精神))「これでいよいよ残すは五人ですね……」

(舞(精神))「ああそうだな……さてそれでどいつから血祭りに上げるんだ?」

(フローラ(精神))「血祭りって……何度も言いますが改心ですから……」

(舞(精神))「はいはい……」


(フローラ(精神))

「……次の相手はもう決まってます」

「ここからは四天王と言われている者達との戦いになります」

「そしてその中でもまず倒さないといけないのがこの男です」


 そう言って白い猫は写真を咥えて舞に見せてきた。


(フローラ(精神))

「金剛寺虎次郎」

「力で学園を支配する存在です」

「カイゼルさんの情報によると今まで喧嘩でも格闘技でも負けたことが無いそうです」


(舞(精神))「無敗だと!? この俺様ですら勇者に敗れたというのにか?」


(フローラ(精神))

「ええ……彼には小細工は一切通用しないと言っていいでしょう」

「カイゼルさんの情報によると彼は元はとても優しい男だったそうです」

「しかし数年前に試合の途中に人を殺めてしまいました」

「そしてそれ以降鬼頭家に仕えることになったそうです」

「どうやらその殺人を揉み消したのがその時のスポンサーをしていた鬼頭冷道だそうです」


「そして彼は鬼頭麗子のボディーガードとなりました」

「その後鬼頭冷道が主催する闇格闘技場の選手にもされてしまった」

「そんな生活をしている内に彼はどんどんどんどん心を閉ざしてしまったのでしょう」

「今では誰とも口を利かなくなったそうです……」


(舞(精神))

「なるほどな……俺様にはなぜかこの人間の気持ちだけはわかるぞ」

「強者は常に孤独な者……そして大衆に利用される定めを持つ者……」

「例え相手がどんな弱者であろうと戦いとなったら叩き潰さないといけない」

「そして強者は力を抜いても大抵の人間には勝ててしまう」

「そしてそれがとても虚しく感じる」


「恐らくこの人間は戦いに乾いているんだと思うぞ」

「もし俺様が昔の力を持っていたらこの人間に味あわせてやりたいものだ……敗北の味をな……」


(フローラ(精神))

「だけど貴方は今やこの世界の女性よりも少し強いぐらいの身体しか持たない身」

「そんな身体ではこの人間の相手にもなりませんよ」


(舞(精神))

「そうなんだよな……」

「せめて力だけでも戻れば何とかなるとは思うのだが……」


(フローラ(精神))

「おや……?」

「貴方は魔力だけが最強の魔王なのではないのですか?」


(舞(精神))

「……フローラさんよ……俺様はエルドラド最強の魔王だぞ」

「人間如きならまず肉弾戦でも負ける事などありえないわ!」


(フローラ(精神))「……そうですか……そこまで言うなら貴方の力を試してもいいですか?」


(舞(精神))「俺様の力を試すってどうやって?」


 次の瞬間、白い猫は白い光を放った。

 そしてその光の中に舞と白い猫は消えていった。



(舞)「ここはどこなの?」


 舞が目を開けると、そこは何も無いただ広い場所だった。


(白い猫)

「ここは私が作り出した異空間です」

「ここでなら何が起きても外の世界に影響が出ることがありません……」


 次の瞬間、白い猫は光を放ち出した。

 そして、その光の中からフローラが現れた。


(フローラ)「……さてでは始めましょうか……」


(舞)

「そうか!」

「貴様と肉弾戦で闘うんだな!」

「そいつはちょうどいい! 今までの憂さも晴らせそうだ!」

「いいぜ! かかって来な!」

「二度と偉そうな口聞けなくしてやるからな!」


 舞はファイティングポーズを取った。


(フローラ)

「……まったく……貴方って方は」

「どうしてそこまで野蛮なんでしょうか……」

「今の私と貴方が戦っても貴方の真の強さはわかりませんよ」

「そもそも試すってのは別の意味ですから」


(舞)「別の意味ってどう言うことだ?」


(フローラ)

「……今からわずかな時間だけ貴方の全盛期の肉体を私の力で戻します」

「そしてその状態で貴方には私が召喚したゴーレムと戦ってもらいます」

「それで貴方の言葉が真実かどうかを私は判断します」


(舞)

「……ゴーレムか……」

「中々手強そうだがこの鈍った身体には丁度いい刺激になるかもしれんな」


 舞は身体のアップを始めた。


(舞)「いつでもいいぜ!」 


(フローラ)

「わかりました……それでは……参ります……」

「主の御心によりこの者に一時の力を戻したまえ」

「ミラージュエフェクト!」


 フローラがその魔法を唱えた瞬間、舞の身体が光り出した。


(舞)

「おっ……おー!」

「力が! 力が湧き出て来る! 魔王の時の力が!」


(フローラ)

「では行きますよ!」

「我の名の元に……出でよゴーレム!」


 フローラがそう叫ぶと、地面の中からとても大きい石の巨人が現れた。


(舞)「どれ! どんなもんか試させてもらうとするか!」


 舞は手の骨を鳴らした。

 そして、ゴーレムに向かっていった。

 ゴーレムはその大きい手で、舞に殴りかかって来た。

 そしてそれは舞の身体に直撃したかの様に見えた。

 だが、舞はそのゴーレムの手を自らの小さな手で受け止めていた。


(フローラ)「……ほう……中々やりますね……」


(舞)

「あー痛えーなー……」

「やっぱり身体が小さいから衝撃だけは来るなこれ!」

「じゃー次はこっちの番だ!」


 舞はゴーレムの手を受け止めた手で力強く押し返した。

 そしてゴーレムがバランスが崩れたところを見ると上空に飛び上がり、上空からゴーレムの腹に思いっきり蹴りを入れた。

 その衝撃でゴーレムは吹き飛んだ。

 そしてその吹き飛んだゴーレムを追いかけて、舞は何度も拳で連撃を加えていった。

 そしてゴーレムの顎に膝蹴りを浴びせ、更にそのまま上空高く飛び上がり、回転しながらゴーレムの腹に蹴りを放った。

 その衝撃でゴーレムの土手っ腹に穴が開き、ゴーレムは動かなくなってその場に倒れて消滅した。


(舞)「まーざっとこんなもんよ」


 舞はその倒れたゴーレムを見ながら満足そうな表情を浮かべている。


(舞)

「しかし人間の体は不憫だな」

「衝撃は全て自分の身体に来るんだもんな……イテテ……」


 舞は自分の拳を見せながら、痛そうな素振りを見せた。


(フローラ)

「……凄いですね……想像以上です……」

「いやむしろこれだとちょっとマズイですね」

「ちょっと全部の力を戻すのはやめた方が良さそうですね」


(舞)

「まー確かにな!」

「どんな強いって言ってもたかが人間だろ?」

「ゴーレム相手だと手も足も出ないのではないか?」

「ワッハッハッハ」


(フローラ)

「……そうですね……」

「ちょっと何度か繰り返して人間と闘うレベルまで戻す力を調整したほうがいいかもしれませんね」

「あっ! この魔法は私が決めた時間が経過すると力は元に戻りますので」

「そしてそれと同時に反動が来ますので気をつけて下さいね」

「ちなみにそろそろその時間になりますよ」


(舞)「なに!?」


 その直後、とんでもない痛みが舞の全身を駆け巡っていった。


(舞)「グワーーーーーーーー!」


 舞は断末魔の様な叫び声を上げながらその場に気絶した。


(フローラ)「……反動も考えると……この強さの10%ぐらいが丁度いいのかもしれませんね……」


 フローラは冷静にそんな事を呟きながら、舞が意識を取り戻すのを待った。


 それから数時間後、舞は意識を取り戻した。


(舞)

「……イテテテ! クソッ! おい! フローラ!」

「俺様を殺す気か! 何だ今のは!」


(フローラ)

「仕方ありませんよ」

「大いなる力を得るには代償が付き物です」

「ましてや人間の女性の身体で貴方の力に耐えれる訳なんか無いでしょう」

「だからここから調整していかないと」

「しかしよく生きてましたね……てっきり死んだのかと……」


(舞)「おい! それはどういう意味だ!」


(フローラ)

「さっ! 気を取り直してここからは力の調整を行っていきましょう」

「とりあえずゴーレムは強過ぎるので」

「そうですね……強い人間の魂でも呼んでそれを具現化した人形とでも闘ってみますか」

「そしてそれを何回か繰り返して力の調整を行っていきましょう!」


(舞)「……何か実験みたいな事されてる気がするんだが……」


 舞は愚痴を溢しながらも、フローラと共に力の調整を行なっていった……



―とある闇格闘技場―


(虎次郎)「誰だこんなところに呼び出したのは! 出て来い!」


 虎次郎は手紙を持ちながら、闇格闘技場に来ていた。


 その手紙にはこう書いてあった。

【拝啓 金剛虎次郎様  貴方に敗北の味を教えてあげます 闇格闘技場まで来て下さい】


 その手紙は曲見真実の手によって、虎次郎に渡されていた。


(虎次郎)「誰もいないのか? イタズラか?」


 虎次郎がそう思っていると、コーナーの向かい側から一人の少女と白い猫が現れた。


(虎次郎)「おい! まさかお前じゃないよな?」


(舞)「私が書いたわけではないけど……闘うのは私よ!」


 その舞の言葉を聞いて、虎次郎は大笑いした。

 そして、その後で怒りの形相を見せた。


(虎次郎)「ふざけてるのか? リンチにしかならんぞ! それでもいいならかかって来い!」


 虎次郎は舞を睨み付けた。


(白い猫)「……その言葉……対戦を受けたって事でよろしいですね?」


(虎次郎)

「……ん? 今の声は誰だ?」

「確か下の方から聞こえた様な……でも今この場所には……」

「……ん? ……まさか……今この猫が喋ったのか!?」


 虎次郎が驚いていると、次の瞬間白い猫は光り出した。

 そしてその光の中から羽根の生えた女性が現れた。


(虎次郎)

「な……何だ……!?」

「……お前……今どこから現れた!」


 その目の前に起こった光景に、虎次郎は驚いて動揺を隠せなくなっていた。

 そして無意識で、その女性に向かって殴り掛かって来ようとしていた。

 だが、その拳はその女性の前にある見えない壁に弾かれた。


(虎次郎)「クソッ! お前何者だ!」


(フローラ)

「私はフローラ」

「転生界の守り人です」

「そして舞さんのセコンドみたいなものと思って下さい」


(虎次郎)

「セ……セコンド……!?」

「……いやそれよりも……アンタ……その……羽根……!?」


 虎次郎の興味はフローラの方に向いてしまっていた。

 そんな虎次郎の態度に舞はイライラしていた。


(舞)

「ゴチャゴチャうるせーなー!」

「ほらやるぞかかって来い!」


(虎次郎)

「……わかったぞ……手品かなんかだろ……それで俺の動揺装って……」


 虎次郎がそう言ってる間に、舞は素早く寅次郎の懐に入り込みハイキックをお見舞いした。

 だが虎次郎は無防備でその蹴りを受けたにも関わらず、何も効いている感じは見せず、微動だにしなかった。


(虎次郎)

「……いい蹴りだ……」

「だが所詮女の力では俺は倒せん!」


(舞)

「どうやらそうみたいだな」

「じゃーここからは俺様の力で闘わせてもらうとするぜ!」

「フローラ! やれ!」


(フローラ)「行きますよ! ミラージュエフェクト10%」


 フローラがそう言った瞬間、舞の身体は弱く光り出した。


(虎次郎)「また小細工を」

(舞)「小細工かどうか貴様の身体で感じてみろ!」


 舞はそういうと素早く懐に入り込み、さっきと同じ様にハイキックを放った。


(虎次郎)(さっきよりも早い! だが所詮女の蹴りなぞ……)


 だがその蹴りを喰らった虎次郎は、そのまま少し後ろに吹っ飛んだ。


(虎次郎)

「グハッ! バカな!」

「さっきとは比べものにならないくらい蹴りが重い!」

「これが女の蹴りだというのか?」


(舞)「少しは目が覚めたか?」


(虎次郎)

「ああ……」

「何をしたのかは分からんが、どうやら俺を倒そうとしてるのは本気なことはよくわかった!」

「女だからと舐めていたが、ここからは俺も本気を出すとしよう!」


 虎次郎は舞に殴りかかってきた。

 だが舞はその虎次郎の拳を躱し、代わりにカウンターでパンチをお見舞いした。

 だが虎次郎はダメージを受けていない。


(虎次郎)

「ウグッ! いいパンチだ」

「だが! まだ軽い!」


 虎次郎は今度は逆側の手で舞に殴り掛かった。

 舞はすかさずその拳をガードしたが、そのあまりの衝撃で吹っ飛んだ。


(舞)

「ったく痛えなあ」

「貴様は本当に人間か?」

「我が配下共の中でもこれだけの力を持っていた奴は中々いなかったぞ」


(虎次郎)

「今のをガードするとは中々な反応だ」

「だがお前の攻撃では俺には勝てんぞ!」


(舞)

「……どうやらその様だな」

「仕方ない!」

「フローラ! 出力を上げろ! 30%だ!」


(フローラ)

「正気ですか?」

「相手は人間ですよ?」

「魔獣相手の時の出力なんかにしたらその人死にますよ?」


(舞)

「……むしろまだその出力でも足らないかもしれないぞ」

「こいつは魔族に等しい力を持っている!」

「それだけは断言出来る!」

「お前は実際戦っていないからわからんかもだけどな!」


(フローラ)

「……絶対やり過ぎないで下さいね!」

「私が危険だと感じたらすぐ解除しますからね!」

「じゃーいきます! 出力30%!」


 舞の身体は更に強く光り出した。


(虎次郎)

「ワッハッハッハ」

「いいぜ、どんな小細工も俺には通用しないことを証明してやるよ! かかって来い!」


(舞)

「最強の魔王の俺様の三割の力と闘えることを光栄に思うんだな!」

「俺様の今の強さは悪魔と戦える強さだからな!」

「それじゃーいくぜ! 死ぬなよ!」


 舞はそう言いながら虎次郎に殴り掛かった。

 虎次郎はガードしようとしたが、先程とは比較にならない速さの拳にガードが一瞬遅れて直撃を喰らった。

 そしてそのまま虎次郎は壁まで吹っ飛んだ。

 そしてよろめきながら起き上がると、口から血を吐いた。


(虎次郎)

「グハッ! 何て重い拳だ」

「まだこんな力隠し持っていたとはな……」

「ワッハッハッハ! 沸る! 久しぶりに沸るぞ! 来い!」


 今度は虎次郎が舞に殴り掛かった。

 だが舞は微動だにせずに、その拳を自らの手で受け止めた。


(舞)「もう吹き飛ばねえよ! 力が違うからな!」


 舞は、殴りかかって来た虎次郎の拳を掌で握った。

 そして虎次郎の腕を素早く自分の肩に背負うと、そのまま虎次郎を地面に高速で叩きつけた。

 そして舞は、地面に倒れた虎次郎に追撃を加えようとした。

 だが倒れていた虎次郎は、身体を起こしてその追撃を交わした。


(虎次郎)「グボッ! ハアハア……久しぶりに投げられたぜ……」


(舞)「どうした? もうお仕舞いか?」


(虎次郎)

「ハアハア……まさか……ようやく身体があったまって来たとこだ」

「もう何も考えねえ!」

「とにかくお前をぶっ潰してやる! 来い!」


(舞)「やれるもんならやってみな! ここからは殺し合いだ!」


 この後二人はお互いノーガードで数分間殴り合いを続けた……。



(フローラ)

「……まったく……どっちも化け物ですね……」

「しかし二人共何だか楽しそうですね」


 そのフローラの言葉通り、殴り合いをしている二人はとても楽しそうに見えた。


(フローラ)

「おっと……そろそろ時間ですね」


 フローラは何処からともなく出して来た鐘を叩いた。

【カンカンカンカン!】

(フローラ)「はい! 終了! 終了です!」


 その鐘の音が鳴った瞬間、両者共その場で気を失って倒れ込んだ。

 舞は魔法の反動によるものだったが、虎次郎は立ってるのもやっとの状態だったのを気力だけで立っている状態だった為、鐘の音で気が緩んでしまい、そのまま気を失ったのだった。



 そして二人が気を失ってから数時間が経過した。


 虎次郎が目を覚ますと、そこには舞と白い猫がいた。


(舞)「あっようやく起きた」「もう起きないのかと思って心配してたんだよ」


 舞はそう言って虎次郎に駆け寄った。

 虎次郎は、さっき闘った人物の様子が変わっていたことに戸惑った。


(虎次郎)「お前……本当にさっき戦った奴か?」


(舞)「うん」「そうだよ」「話すと長くなるけど……一応同じ人間だよ」


(虎次郎)

「そうか……夢かと思ったが……この痛みは夢では無いな……」

「そうか……俺は負けたのか……」


(舞)

「うーん……引き分け……かな……私も気失ってたし」

「しかし凄いね! 私の三割の力に耐え続けた奴なんてそうはいないわよ」

「私の仲間にしたいぐらい! あなたならきっといい戦士になれるわ」


 その舞の話しに虎次郎はキョトンとしていた。


(虎次郎)

「……ちょっと待ってくれ……」

「三割って今言ったのか?」

「あれで全力じゃなかったのか?」


(舞)

「ええそうよ」

「全力出したら私の方が死ぬかもだし」

「それに人間じゃ私の全力は耐えれないわよ」

「ウフフフフ……」


 虎次郎はただキョトンとするしか出来なかった。


(虎次郎)

「クッハッハッハッハ」

「だったら俺の負けだ!」

「俺は全力も全力だったからな!」

「完敗だ完敗! まさかこの国にまだ俺よりも遥かに強いのがいるとは思わなかったぞ」


(舞)(この国どころかそもそも世界が違うんだけどな……)


(虎次郎)「女! 名は何て言う?」


(舞)

「私は魔王デスターニャよ!」

「あなたが望むなら私の仲間にしてあげてもいいわよ」


(虎次郎)

「魔王と来たか!」

「そりゃー強いわけだ」

「ワッハッハッハ」


 拳をぶつけ合った二人は、まるで旧知の仲の様な関係になっていた。

 その様子を不機嫌そうな顔で白い猫は睨んでいた。


(白い猫)(まったく貴方という方は……)


 次の瞬間、白い猫は光り出した。

 そしてその光の中から、先程と同じ様に羽根の生えた女性が現れた。


(フローラ)

「死ななかったから良かったものの殺していたらどうするつもりだったのですか? まったくもう……」


(舞)

「フン! こいつの強さは本物だった」

「だから三割ぐらいの力じゃ殺せないって本能で感じたからな」


 そんな二人の言い争いを、虎次郎は少しの間見ていた。


(虎次郎)

「……さっきと同様にまた光ったと思ったら、羽根の生えた天使が現れたか……」

「最初は夢かと思ったが、これは現実なんだよな……」

「そうか……」


 虎次郎はフローラの姿を見ても、何故か妙に落ち着いた顔をしていた。


(虎次郎)

「……アンタらこの世界の奴じゃねえよな」

「さっきこの女は自分の事を魔王って言ってたしよ」


 その虎次郎の言葉にフローラはとても驚いた。


(フローラ)

「……どうやら貴方は賢い人間の様ですね」

「貴方の思っている通りです」

「我々は異世界から訳あってやって来ました」

「私は転生界の守り人フローラと申します」


(虎次郎)「成程、流石の俺も魔王や天界の生物には勝てねえわな」


(フローラ)

「いえ……貴方は我々の予想よりも遥かに強かったです」

「だからこそ貴方にはこれから自分自身と戦ってもらいたいと思っています」


(虎次郎)「自分自身と戦うってどういうことだ?」


(フローラ)「貴方にはこれから自分の心の奥深くに沈めた思いと向き合ってもらいます」


(舞)

「お前は強い! お前なら絶対向き合える!」

「だから行って戦って来い!」


(虎次郎)「だからお前達は一体何を言ってるんだ!?」


 舞とフローラは困惑している虎次郎を無視して、手を取り合った。


(二人)「マインドオペレーション!」


 その言葉と共に辺りは光に包まれた。



(虎次郎)「……ここは……一体……何処だ……?」


 虎次郎が眼を開けるとそこはとある格闘技の試合会場だった。

 そして、虎次郎はその場所をよく知っていた。

 その場所こそが、虎次郎が道を誤った試合会場だったからだ。


(虎次郎)「ま、まさか……ここは過去なのか!?」


 困惑している虎次郎の後ろから声が聞こえた。


(フローラ)

「いいえ……残念ながらここは過去ではありません」

「ここは貴方の精神の中です」


(虎次郎)「俺の精神の中?」


(フローラ)「そうです……そしてここは貴方が閉した思い出の中です」


 そこには高校生になったばかりの虎次郎がいた。

 虎次郎は中学生時代は、その格闘技で無敗を誇る全国チャンピオンだった。

 そして高校生になっての初めての全国大会に挑んでいた。

 虎次郎はその中学生の頃の強さであっという間に勝ち進んでいった。

 そしてそんな虎次郎は今とは比べ物にならないくらい、いつも笑顔だった。

 そんな虎次郎の周りには多くの仲間が集まっていた。


(虎次郎)

「精神の中……か……」

「確かにここは俺にとって忘れられない思い出の場所だ」

「それでここで俺に何をしろと?」

「過去じゃないなら結果は変わらないんだろ?」

「今日この日俺はここで対戦相手を殴り殺す」

「そしてそこから奴隷人生の始まりさ」


(フローラ)

「対戦相手を殺した……ですか……」

「果たしてそれは本当なんでしょうか……」


(虎次郎)

「……何を言ってるんだ?」

「俺が対戦相手を殺したことは間違いない事実だぞ?」


(フローラ)「……とりあえず見てみましょうか……」


 二人の目の前では決勝戦が始まろうとしていた。

 虎次郎の対戦相手は、その格闘技の高校生での王者だった。

 だがその見た目は同じ階級にしてはとても細く見えた。

 だがその相手は虎次郎と同じく、その高校生の大会では無敗を誇る絶対王者だった。

 つまりこの試合は、中学最強と高校最強の対戦となっていた。


 試合は一方的な展開となった。

 虎次郎は何度も鋭い攻撃を繰り出していた。

 だが、その対戦相手はことごとくその攻撃をかわし、虎次郎に鋭くて重い攻撃を与えていく。

 相手の方が明らかに格上なのを虎次郎は感じていた。


(虎次郎)

「この時の俺は焦っていた」

「初めて負けるかもしれないかと思った」

「だがこの後、対戦相手が急にバランスを崩したんだ」

「別にそれはこういう格闘技ではよくあることだ」

「何か一つの身体の使い方をちょっと間違えただけで隙が生まれる」

「そしてその隙を突いた者が勝者になるのは、至極当たり前のことだ……」


 虎次郎の言葉通り、急に対戦相手がバランスを崩した。

 虎次郎はそこをチャンスと見て、最後の力を振り絞り一気にラッシュを仕掛ける。

 対戦相手はさっきまでとは打って変わってその攻撃を全て受け、最後に虎次郎のハイキックをくらった後で倒れた。

 その瞬間、審判の手が上がり虎次郎の勝ちが決まった。

 そして同時に対戦相手は救急車で運ばれた。


 その翌日、対戦相手の死亡が虎次郎にも伝えられた。


(虎次郎)

「これが事実だ!」

「何も違わない!」

「俺は対戦相手を殴り殺してしまった!」

「そしてそれで鬼頭に脅され、俺の奴隷人生が始まったんだ!」


(フローラ)「……それで……この方の死因が何かはその時確認しましたか?」


(虎次郎)

「死因だって?」

「……そりゃだってあれだろ……」

「打撃によるショック性何とか……みたいな……」


(フローラ)

「……やはり何も知らなかったのですね……」

「この方の死因は心臓発作による心停止です」


(虎次郎)

「バカな! 心停止だと!?」

「それは絶対ありえねぇ!」

「俺の最後の攻撃は首へのハイキックだった!」

「延髄損傷ならまだわかるが心停止には絶対ならねぇはずだぞ!」

「その前のラッシュだってそこまで心臓を狙って攻撃なんかもしてねぇし……」


(フローラ)

「……やはり何も聞いていなかったのですね……」

「この対戦相手の方は心臓に爆弾を抱えていたのです」

「そして医者からは余命数日と宣告されていました」

「もういつ心臓が止まってもおかしくない」

「そんな状態で貴方との試合に臨んでいたのです」

「もちろん向こうの仲間も監督もそれを知っていました」

「その上でこの大会への出場を許可したのです」

「それがその方の最後の願いだったので」


(虎次郎)「バカな! そんなことありえない! デタラメだ!」


(フローラ)

「……貴方も薄々感じていたのではないですか?」

「あれだけ攻撃をかわしていた方が急に攻撃を受け続けるのはおかしいと……」


(虎次郎)

「……それは……」

「……でも意識はあったはずだ!」

「だから俺は攻撃を続けたんだ!」


(フローラ)

「……そうですか……」

「それでは直接本人に聞いてみますか?」


(虎次郎)

「直接本人に聞くだと?」

「何を言ってるんだ?」

「相手は死んだんだぞ!」


(フローラ)

「……私は転生界の守り人です」

「例え世界が違ってもその魂を呼び寄せることなどは造作もないことです」


(虎次郎)「……お前……何を言ってるんだ!?」


 フローラは詠唱を始めた。

 そして詠唱が終わると、フローラの目の前に一つの魂が現れた。

 そしてその魂は見る見る内に一人の人間に変わっていった。


(虎次郎)「そんな……バカな……」


 その人間を見て虎次郎は驚いた。

 そこにはその時の対戦相手が立っていたからだ。


(フローラ)「さあ……貴方が聞きたかったことをこの方にぶつけて下さい」


 虎次郎は戸惑いながら、フローラに促されるまま尋ねた。


(虎次郎)「……本当にアンタは心停止で死んだのか?」


(対戦相手)

「ああ……それは紛れもない事実だ……」

「あの時……君の攻撃を食らう前に……俺の心臓は停止していた……」

「だけど君に……それを悟られたくなくて……必死で意識だけは保ってた……」

「でも君の攻撃が凄くて……耐えれなかった……」

「あの試合は……俺の人生でも最高の試合だった……」

「……ありがとう……」


(虎次郎)「なぜだ! なぜ最初にそれを言わなかった!」


(対戦相手)

「……言ったら君はどうしていた?」

「手加減したんじゃないのか?」

「もしくは審判に告白して……棄権させていたんじゃないのか?」

「……いずれにしろ……それだと君との真剣勝負は……出来なかった」

「俺は君とただ真剣に戦いたかった」

「中学最強と言われた君と……同じ強者として……」

「俺は自分の選択には何も後悔していない」

「ただ君には……申し訳ないことをしたと思ってる……」

「本当にすまない……今まで苦しめてしまったな……」


(虎次郎)

「すまないなんて今更そんなこと言うな!」

「俺はアンタと戦えて最高に幸せだった!」

「道を踏み外したのはただの俺の愚かさだ!」

「アンタのせいなんかじゃない!」


(対戦相手)

「……そうか……ありがとう……」

「……君と話しが出来て……良かった……」


 その後、対戦相手はまた魂に戻った。

 そしてその魂は消滅した。


 次の瞬間、周りが光に包まれた。



 虎次郎が次に眼を開けると、そこはさっきまでいた闇格闘技場だった。


(フローラ)

「これが事実です」

「さて貴方はこれからどうしたいですか?」


 そのフローラの問いかけに対して、虎次郎は自らの拳をぶつけ合って答えた。


(虎次郎)

「……決まってる!」

「鬼頭をぶっ殺して俺は警察に自首する!」

「それしか俺が自由になる道はねえ!」

「そして俺は俺の人生をこれから生きる!」


 その言葉を聞いて、フローラは困った顔を見せた。


(フローラ)

「……そうですか……」

「うーん……でもそれは流石に認めれませんね……」

「自首することはいいことなんですが……」


(虎次郎)

「だが自首するならそれしか方法がねえ!」

「奴等は裏切り者は許さねえ!」

「俺がその執行人だったからそれはよくわかってる!」

「だからやられる前にやるしかねえ!」


(舞)

「いいねえ!」

「よしっ! 俺も一緒に行くぜ!」

「もうまどろっこしいのは面倒だ!」

「やっぱりこの拳で言うこと聞かせるのが一番手っ取り早いぜ!」


(虎次郎)

「よっしゃ! 魔王! お前も行くか!」

「 お前が来てくれりゃ百人力だ!」


(フローラ)

「……待って下さい!」

「まったくもう貴方方は本当に野蛮ですね」

「でも言いたいことはわかりました」

「要は貴方の存在を七鬼衆と鬼頭冷道から消せばいいのですね?」


(虎次郎)

「……そりゃーまー……それが出来ればなぁ」

「でもそんなこと出来ないだろ?」


(フローラ)

「はぁ……」

「出来なくは……ないです……」

「ただこれは禁を犯すことになります」

「でもそうでもしないと残りの方々に貴方が裁きを下しそうですし」

「それだけは天界に住む者としては認めれないので……」


(舞)

「おい! フローラ! 何をがちゃがちゃ言ってんだ! やっちまえばいいじゃねえか!」


(フローラ)「貴方は黙ってて下さい!」


 フローラは舞に口封じの呪文を使った。

 舞は何も喋れなくなった。


(フローラ)

「まったく……」

「さて……虎次郎さん確認させて下さい」

「本当に貴方の存在を七鬼衆と鬼頭冷道から消せたら……大人しく自首しますか?」


(虎次郎)

「男に二言はねえよ!」

「まー記憶を消すんなら俺だけの責任ってなるんだろうけど」

「あの人にもうこれ以上恥は晒したくないからな」

「それに実際に暴力振るってたのは俺だし」

「俺は過去を清算して新しい人生を歩みたい!」

「魔王とあの人が俺にそう思わせてくれたからな」

「その気持ちは無駄にしたくねえ!」


(フローラ)「……わかりました……それでは……」


 フローラは詠唱を始めた。

 そしてその詠唱が終わった後で虎次郎に告げた。


(フローラ)

「これで貴方の存在を特定の人物から完全に消し去りました」

「その人物が強く貴方のことを思い出そうとしない限りもう貴方のことを思い出す事は無いでしょう」


(虎次郎)「本当か?」


 虎次郎はその言葉を信じれなかったので、鬼頭に携帯で電話してみた。


(虎次郎)「もしもし。虎次郎です」

(鬼頭冷道)「誰だ貴様! どこでこの番号を知った!」


 その鬼頭の反応に虎次郎は驚き過ぎて、電話を即座に切った。

 同じ様に七鬼衆全員に電話を掛けたが、誰も虎次郎のことをわからなくなっていた。


(虎次郎)「これは一体……アンタ何者なんだ?」


(フローラ)

「私は魂を司る者」

「人の魂の中には人々の記憶も存在しています」

「なので記憶の操作も私には出来てしまうのです」

「もちろんその人への思いが弱いことが条件ですが」

「幸か不幸か……貴方は鬼頭冷道にも七鬼衆にもそこまで思われていなかったということです」


(虎次郎)

「そうか……所詮俺はただの力だけの存在ってことか……」

「でもこれでわかったよ」

「そんな風にしか思われてない奴らなら殴る価値もねえな」

「……わかった……俺はこのまま大人しく自首するぜ」

「おそらく俺のことを忘れている連中は、俺の告発をただの戯言だと言うんだろうがな」

「そして俺を切り捨てることだろうな」

「だがもうそれでいいと思えたよ」


「ありがとう」

「お前達のお陰で俺はようやく俺の人生を歩めそうだ」


 虎次郎はその闘技場を出ようとしていた。

 だが、その足をぴたりと止めて振り向き、フローラに向かって叫んだ。


(虎次郎)

「もしアンタが本当に神様なら、知恵を救ってやってくれ!」

「アイツも過去の過ちから麗子にただ利用されているだけだ! 頼む!」


 虎次郎はフローラに頭を下げた。


(フローラ)「……わかりました……必ず救ってみせます……」

(虎次郎)「ありがとう……頼んだぜ」


 虎次郎はそのまま振り向きもせずに、闘技場を後にして歩き出した。

 そんな虎次郎の後ろ姿を、舞と白い猫はずっと見ていた。


(舞)

「しかし凄いわね」

「フローラって本当何でも出来るんだね」


(白い猫)

「何でも出来るわけではありませんよ」

「記憶の操作は出来ても異世界の魂を呼び寄せることなど出来るわけが無いですよ」


(舞)

「ん? どう言うこと?」

「だって今さっき目の前で魂を出して虎次郎と話しさせてたじゃんか」


(白い猫)

「あーあれは幻ですよ」

「幻術魔法を使ってそう見せただけです」


(舞)

「……どういうこと?」

「あれは幻で実際の魂ではなかったってこと?」

「でもそれって……虎次郎を騙したってことなんじゃないの?」


(白い猫)

「騙したわけではありませんよ」

「私はただ事実を繋いで真実を導いただけです」

「……でも全て事実だったかどうかはわかりません」

「ただ対戦相手の方は少なくともこの試合で死んでもいいという思いであの試合に臨んでいた」

「それだけは紛れもない事実だと私は信じています」


(舞)

「そっかー……人間って本当面倒な生き物だね」

「でも、その対戦相手をそこまでの気持ちにさせたものが、強者の宿命ってことなんだろね」

「それだけは何かわかるな〜」


(白い猫)

「大事なのは自らが得た力をどう使うかです」

「おそらくその対戦相手の方は中学最強の男に見せたかったのだと思います」

「自らの力とその生き様を」

「ただその思いがまさかその人物を苦しめることになるとは、想像もしていなかったことでしょう」

「真の強者とはその強さや生き様を、誰もが無意識に称えることが出来る者のことだと、私は思います」


(舞)「……成程……つまり私だね」

(フローラ)「……ええそうかもですね……」


 そして一人と一匹の白い猫も、闘技場を後にしたのだった。



 虎次郎は闘技場を出た後、その足で警察署に向かった。

 そしてそこで、数々の自分が今まで行なって来た悪行を全て告白した。

 警察官は、最初虎次郎が何を言っているのかわからなかったが、その目に嘘は無いと判断し、そのまま自首と見なして虎次郎を逮捕したのだった。



ー英傑学園ー


 翌日、虎次郎逮捕の一件は、鬼頭冷道の耳にも届くこととなった。


(鬼頭冷道)

「金剛寺虎次郎? 誰だ? そんな奴は知らんぞ!」

「大体私のこの学園でそんなこと起こってるわけないだろ!」

「それはそいつのただの戯言だ!」

「そっちで処理しろ!」


(鬼頭麗子)「パパどうしたの?」

(鬼頭冷道)「麗子か……七鬼衆を集めろ! 今すぐだ!」

(鬼頭麗子)「七鬼衆? 何言ってるの? 六鬼衆だよ?」


 鬼頭冷道は自分で今言った言葉に違和感を感じていた。


(鬼頭冷道)

「ん? ……そう……だった……か……?」

「……どうやら私は疲れているようだ……」

「やっぱり集結はいい……私は少し休むとする」

「麗子。お前の方で今回の件は処理しといてくれ」


(鬼頭麗子)「わかったわ」


 

 その後、鬼頭麗子は六鬼衆を集結させて状況を話した。


(鬼頭麗子)

「と言うわけなの。みんな各自宜しくね」

「しかし誰の仕業? うちにそんな力担当なんかいなかったはずだけど……」


(財前剛)

「麗子さん、おそらくうちに反旗を翻した者の仕業でしょう」

「いざとなれば僕の財力で警察如き口封じしますよ」


(高裁判士)

「剛さん、それだと何かあった時に足が着きます」

「ここは私に任せて下さい」

「法の名の元にこの学園には非が及ばない様に致します」


(真実)「麗子さん、何かあったら私が証拠押さえて来るから心配しないで!」

    (多分あの二人の仕業ね……今度は何をしたの?)


(カイゼル)

「皆さん大丈夫ですよ」

「どこにもそんな証拠は存在しませんから」

「それにもしあったとしても消しておきますから」

(神様これでいいんですか? 後で確認しないと……)


 そんな六鬼衆の中で、才加知恵だけは何か言いようの無い違和感を感じていたのだった。


(鬼頭麗子)「知恵、どうしたの?」

(知恵)「ん? 何でも無いよ……何でも……」


 麗子はそんな知恵に不思議そうな顔を浮かべながらその場を後にした。

 その後に続く様にそれぞれ他の六鬼衆はバラバラに散っていった。


(知恵)

⦅……何か……おかしい……誰か……忘れてる……そんな気がする……⦆

⦅そしてそれは私のよく知っている人……でも……思い出せない……なんでだろ……⦆

⦅……そもそも本当に私達って六人だったっけ?⦆

⦅確かもう一人いた様な……でも……思い出せない……⦆


 知恵は言い様の無いもどかしい思いをずっと感じていたのだった……



(ナレーション)

 こうして七鬼衆の四天王の一角である金剛寺虎次郎は、自らの罪を認め警察に自首したのだった。

 そんな虎次郎が自首する前にフローラ達に残した言葉。

 果たして知恵を助けてくれという言葉を残した虎次郎の真意とは?

 そして才加知恵と鬼頭麗子の関係とは?


 〜第七章〜 非道の悪脳 天才故の苦悩と非情の過去 【前編】

 へ続く

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