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〜第五章〜 真実と捏造と奇跡の力

―とあるゴシップ誌の出版社―

(ナレーション)

 ここはゴシップを専門に扱う出版社。

 ここでは政治や芸能等の、ありとあらゆるゴシップネタを取り扱っていた。

 そしてその真偽に重点を置くのではなく、ただその記事のインパクトだけでどのネタを掲載するかを決めていた。

 間違っていた場合は後で訂正を行えばいい。

 そんな考えだけでネタを掲載し続ける。

 その記事で誰かが悲しい思いをすることなどはお構いなしに。


 そして、今日もこの出版社には大量のネタが流れて来ていた。

 社員達はその情報を精査して、それを次々に記事にして編集長に提出していた……



(編集長)「こんなネタじゃダメだ! もっとデカイの持って来い!」

(編集者)「……すいませんでした……」


 そんな怒号が毎日の様に飛び交う中を、一人の眼鏡を掛けた金髪ショートボブヘアの少女が、大きなカメラを携えてスタスタと歩いていく。

 彼女の名前は曲見真実。

 七鬼衆の一人であり、このゴシップ誌の社長の一人娘だ。


 そして、彼女は今日も自分で手に入れたスクープを、編集長の元に持って来たのであった。


(真実)「最近売れて来たガールズグループの人気メンバーの昔の流出映像よ」


(編集長)

「こ……これは……凄い!」

「こんなネタどこから?」


(真実)

「ネタの出所は言えないわ」

「例え貴方でもね」


(編集長)「……まさか……またお前……」


(真実)

「……真実かどうか、ネタ元がどうか何て私には何も関係ない」

「そのネタが面白いかどうか、それだけよ」


 その少女は笑顔を見せてそう言った。

 そして、その写真と自分が書いた記事を置いて去っていった。


(編集長)

⦅またか……あの嬢ちゃんは……⦆

⦅社長の娘だからってこんなこと許されるのか?⦆

⦅でもこの記事を載せないと俺の立場も危ういし……⦆

⦅ええいままよ!⦆

「おい! この記事を今週のトップにするぞ!」



―良子の部屋―

 舞と一匹の白い猫は、良子の部屋に置いてある大きな四角いものから見えるものを見ながら、精神上で会話をしていた。


(舞(精神))

「しっかし本当にこの世界はくだらんな! 同じ生き物同士の生活やら仕事ぶりやらなんか見て何になるんだ?」


(フローラ(精神))

「それがこの世界の理なのでしょう」

「私にも理解は出来ませんが」

「ただ少なくともこれを多くの人間が見てるということはこのモノにはその価値があるということなのでしょう」


(舞(精神))

「成程……そういうことになるか…」

「……しかし下賤な……どうせ大衆に見せるならもっと凄いものを見せればいいのにな」


(フローラ(精神))「凄いものとは?」


(舞(精神))「例えば人間を大量に虐殺しているところとか磔にして拷問にしているところとかだな!」


(フローラ(精神))

「はぁ〜〜っ……本当に貴方はこの世界のこと何もわかってないのですね」

「いいですか……一部の人間がどんなに見たいものでもそれを大多数の人間が見たくないと判断されるものはこの世界では見せることはありません」

「この世界ではそれを倫理上の問題とか不適切な表現とか言うみたいですが」

「とにかくこの中から見せるものはそんな多くの人間が色々試行錯誤してその中でこれなら問題無いだろうというモノしか見せることはありません」


(舞(精神))「……何か……面倒だなこの世界……」


(フローラ(精神))「ええ……我々の世界みたいに単純では無いですね……」



 そんな二人の精神上での会話の間に、現実の良子の声が聞こえて来た。


(良子)「……舞! 舞ってば!」 


(舞)「……ん? ん? 何? 何?」


(良子)

「何ぼーっとしてんの?」

「さっきから声ずっとかけてんのに!」


(舞)「あ〜ゴメンゴメン……ちょっとぼーっとしちゃってさ」


(良子)「まったくもう……それでさ……」


(舞)

「あ〜良子ちゃん」

「その前に聞きたいことあるんだけどさ」


(良子)「何? 何?」

(舞)「七鬼衆の曲見真実っているでしょ? 彼女ってどんな人なの?」


(良子)

「曲見真実か」

「私のイメージだと、とても社交的でよく笑顔を見せる人なんだけど、常に目だけは笑ってない感じかな」

「彼女は七鬼衆にいるってよりは雇われているに近い感じかも」

「何か麗子さんが直々にスカウトしたとか」

「あんま私も詳しくは知らないけど」

「カイゼルが七鬼衆に売り込みに来る前までは、この学園の監視役をしていたとか聞いたことがあるわ」

「彼女はとても嗅覚が優れていて、それでいてそれなりにSNSの編集や監視も出来たから、適役だったのね」

「それで今は、七鬼衆のSNS用の動画や写真の編集作業を担当していたはずよ」


「ただ彼女は学園だけでなく、この世界全体を相手に記事を作っている女性なの」

「そういう点では学園だけを監視しているカイゼルとはまた違うかもね」

「そして彼女がカイゼルと最も違う点は、卓越した捏造技術を持っているということ」

「写真の加工もお手のもので、コメントもその人がまるで話しているような文章を作り出すことが出来るのよ」

「その余りにも凄い技術で、誰もそれが偽の情報とは思えない」

「その捏造技術を駆使して、七鬼衆に歯向かうものを社会的に葬ったなんてこともあるらしいわよ」

「それで付いた異名が捏造の真実なの」


 舞は良子の話しを聞いていたが、何も理解出来なかった。


(舞)

⦅ん? ん? ん?⦆

⦅つまりどういうことだ?⦆

⦅何も悪いことをしてないのではないか?⦆


 白い猫はそんな舞の様子を見て、首を傾げていた。


 次の瞬間、白い猫は眼を光らせた。

 そして良子は眠り出した。


(白い猫)

「まったく貴方という方は」

「折角こちらの方が話してくれていたというのに何も内容わかってないんですね」


(舞)

「だってぇわっかんないんだもん!」

「カイゼルはさ! 何かわかりやすく悪! って感じだったじゃん!」

「でもこの女は悪って感じが全くしないもん!」


(白い猫)

「……言いたいことはわかりますよ」

「しかしね……しかし本当にね……本当にどうしましょうか……」


(舞)「フローラだって悩んでんじゃん!」


(白い猫)

「ええ……でも彼女をどうにかしないとやはりこの先には進めない様な気がします」

「だからやっぱり裁きを下すことにしましょう!」


(舞)

「それでどうやって?」

「正直今回は難しくない?」

「だって私達にはこの世界がどういうもので、どうやって何の目的で、何でこんなもん皆んな見てるかもわかんないのに、どうやってその価値を一番わかっている人間に対して戦うの? 無理じゃん!」


(白い猫)

「……ええ……そうですね……」

「せめて何か彼女と同じ目線で戦える事が出来れば……まだ……何とか……」


「……仕方ない……あの者の力を借りますか……」


 白い猫は呪文を唱え出した。

 すると白い猫は光り出し、その光の中からフローラが姿を現した。

 その後、フローラはすぐに何かを唱えた。

 そして右手にノートパソコンを出現させ、メールを打ち込み始めた。


 それからしばらくした後で、メールから返信が来た。

 メールの相手はカイゼルだった。


『神様。お久しぶりです。曲見真実の情報ですね。情報を載せたので添付ファイルを開いて下さい』


 フローラはその指示通りに、カイゼルから送られてきた添付ファイルを開いた。

 そこには曲見真実の生年月日からスリーサイズまで全ての情報が載っていた。


(舞)「凄いな……カイゼルってやっぱり只者じゃないんだな……」


(フローラ)

「ええ……味方になるととても心強い存在ですね」

「さてそれで……」


 フローラは真実の情報を全て黙読した。


(フローラ)

「……成程……とにかく自分の写真? ってものにとても自信があるお方の様ですね」

「嘘の情報を真実に見せる技術」

「これはある種魔法に近いものかもしれませんね」


(舞)

「確かに俺様のマインドオペレーションに少し似ているな」

「偽りなのに本物だと信じ込ませる」

「悪かどうかはともかくこれは結構厄介な力だな」

「だが所詮偽りは偽りよ! 本物の力の前には何も出来ない! 幻では攻撃出来ないことと同じでな!」


(フローラ)

「そうですね」

「……ん? 待って下さい」

「ってことはその幻でもし攻撃出来たなら……その幻を現実に出来たなら……」

「こちらにも勝ち目はあるんじゃないですか?」


(舞)「は? フローラ? 何を言ってんだ?」



―とあるゴシップ誌の出版社―

 その日は普段とは違う雰囲気だった。

 そして、その中をいつもの様にスクープを持って真実が現れた。

 そんな真実を見かけると、編集長は真実に声を掛けた。


(編集長)「真実……有り得ないことが起こっている……」


(真実)

「どうしたの?」

「また何か訴訟でも起こされた?」

「そんなんいつもみたいに謝っちゃえばいいじゃん!」


(編集長)

「違う!」

「……お前がこの間持って来た記事を今週号に掲載したんだが……」

「その記事に……有り得ないことが起こって……皆んなパニックになっている……」


(真実)「……言っている意味がわかんないんだけど……」


 真実は、編集長が手に持っていた自分のスクープが載っている週刊誌を奪い取った。


(真実)

「……これ……どういうこと……?」

「ねぇ! 誰のイタズラなの!」

「私の記事に誰がこんなイタズラしたの!」


(編集長)

「……こんなイタズラ出来ると思うか?」

「お前が持って来た記事の原案もここにあるが、これにどう細工したらこんな記事になる?」

「有り得ないだろ!」

「そもそも目的は? こんな文章載せて売ることの目的は何だ!」

「俺には全くその意味がわからない……」


 編集長も誰も、何が起こっているのか全くわからなかった。

 真実が持って来た記事は、確かにそのまま掲載されていた。


 ただその記事の一番後ろに、本来書いていなかった文字が追加されていたのだった。


『捏造の真実さん。貴方と勝負がしたいのでここまで来て下さい。住所は・・・』


 そしてそのまま今週号として掲載されて販売されていた。


(真実)

⦅……いったい誰が……?⦆

⦅……いやそんなことはどうでもいい!⦆

⦅私と勝負がしたいって?⦆

⦅上等だよ!⦆

⦅私の記事に手を出すってことがどういう意味か教えてあげるわ!⦆


 真実は、その自分の記事が載っていた週刊誌を地面に叩きつけて、その出版社を飛び出して行った。



―???―


(真実)

「……書かれていた住所って確かここだったよね」

「……でもここって確か……カイゼルをこの間見たところ?」

「何でこんなところに呼び出したの……?」


 真実はそんなことをブツブツ言いながら、ある家の扉を開けた。


 そこは真っ暗な家だった。

 真実はその異様な不気味さに少し怖がりながらも声を張り上げた。


(真実)「言われた通り来たよ! 何が目的なの? 姿を現しなよ!」


 すると、その暗がりの中から一人の女性が現れた。


(真実)「アンタの仕業なの? アンタは何者? 勝負って何さ?」


 その言葉に反応するかの様に、その女性は喋り出した。


(謎の女性)

「次の掲載号の一面を決める時にどちらがより優れた記事を出せるか勝負しましょう」

「もし私が負けたら貴方の望むものを何でもあげます」

「その代わり貴方がもし負けたらもう一度ここに来て下さい」

「そしてその判定は……貴方の父親にしてもらうことにします……」


(真実)

「は〜っ? あんたバカなの?」

「そんなの私に有利になるに決まってんじゃない!」

「馬鹿にしてんの?」

「そもそもアンタは何者なの?」

「それにアンタはどうやってその記事を届けるのさ?」


 真実は女性のふざけた提案に激怒した。

 しかし少女は真実の態度に何も動じることなく、何も言い返すこともしなかった。


 次の瞬間、その女性から眩い光が発せられた。

 そして女性はその場から消えた。


(真実)

「……き……消えた……?」

「……夢……じゃないわよね…」

「……何でもいいわ!」

「とにかく勝負を挑まれたのは間違いないんだし!」

「私のとっておきの記事で絶対勝ってやる!」


 真実はその家を飛び出した。



 それから数日が経過した……


―とあるゴシップ誌の出版社―

 この日は次の週の掲載号を決める日だった。

 その場に真実はいた。

 そしてなぜか知らないが真実の父親であるその出版社の社長もその場にいた。

 真実には自信があった。

 絶対に誰も撮れないスクープを真実はずっと隠し持っていたからだ。

 そしてそんな真実の前で編集長が告げる。


(編集長)「次の掲載号のトップ記事はこれでいく!」


 その編集長が出した記事に真実は驚いた。

 それは真実の持って来た記事では無かったからだ。


 そして次の瞬間、真実は編集長の襟首を持って怒り散らした。


(真実)

「おい! ふっざけんなよ!」

「アタシの記事が負けるわけないだろ!」

「わかった! お前パパに対して忖度しただろ?」

「あの記事載せたら大変なことになるのわかってたから!」

「じゃなきゃあのスクープで私が負ける訳ないじゃんか!」


 その真実の言葉を聞いて、それまで黙っていた社長が口を開いた。


(社長)

「やめんか! バカタレ!」

「俺に忖度だと?」

「ある訳ないだろそんなこと!」

「お前の記事はきちんと載せるわ!」

「それが社長としての俺のあるべき姿だからな!」


「ただ、それは翌週に回すことにした」

「それ程この記事は凄い! 歴史的な写真だ」

「この少女は間違いなくこの後でブレイクするだろう」

「そしてこの記事を出すことで我が社はその先陣を切ることが出来る」

「スクープ大賞も恐らく取れるだろうな」

「それ程この記事……いやこの写真はとてつもない……」

「それがお前にはわからんのか!」


 父親のその言葉を聞いて、真実は冷静になってその写真をもう一度見た。


 その写真には一人の眼鏡を掛けた少女が、写真に撮られるのを嫌がりながら写っていた。

 それだけなら普通の写真かもしれない。

 だが、驚くべきはその少女の手だった。

 その少女は指から火を出していた。


 そして、もう一枚の写真にもその少女は写っていた。

 そしてその写真は、その少女が出した火が本物であることを証明していた。

 その写真に写っていたのは、その少女が出した火に近付けた紙が実際に燃えている光景だった。


 そして、他の写真では手から水を出す写真もあった。

 そしてその水を飲む写真もあった。


 また、その少女が指と指の間から放電の様な雷も発生させる写真もあった。


 そして極め付けが、その少女と一緒に写っていた白い猫が急に光り出した後で、コスプレをした人間になるという様子を写した数枚の写真だった。


(真実)

「こ……こんなの……合成……合成に決まってんじゃん!」

「絶対無理じゃん! こんなの……」

「そ……そもそもゴシップ紙なんだからゴシップ扱うのが当然じゃん!」

「こんなよくわからない写真……うちで取り扱う必要なんかないじゃんか!」


(社長)

「よくわからん写真……か……確かにそうだな」

「だがな! 自分が凄いスクープだと思うものを最初に掲載しない判断は、社長として出来ない!」

「確かにお前の記事はお前だから手に入れることが出来たのかもしれない」

「だが今すぐ掲載する程のものではない!」

「でもな! この少女の記事はまさに今! この今動く必要がある!」

「このスクープだけは絶対に他社に渡してはいけない!

「この少女だけは絶対うちが独占する! これは社長命令だ!」


 社長の眼は血走っていて、真実の言葉を何も受け付けない様に真実には感じれた。

 これ以上は何を言っても埒が明かないと思った真実は、それ以上の抵抗はやめた。


(真実)「それで……この写真を撮ったのは誰なの?」


(編集長)

「……それがわからないんだ」

「今日来たら机の上に置いてあって……」

「あっそういえば手紙が付いていたな……」


 編集長は、その写真と一緒に届いた手紙を読み上げ出した。

 その手紙にはこう書いていた。


『編集長様。私はこの写真が本物であるということを実際に見せる事も出来ます。もしお気に召したのであれば取材を受けても構いません。但しその条件として真実さんにもう一度会わせて下さい。待ち合わせ場所は、真実さんはならわかっていると思います。』


(編集長)

「……なんだ……この内容……」

「でも取材出来るってよ!」

「この写真の少女が生で撮れたらうちの特大スクープになるぞ!」

「……でも何で真実が指名されてんだ?」

「うちの人間でもないのに……?」

「真実、お前実はこの写真の少女と知り合いなんじゃないのか?」


 編集長はその手紙の内容に喜びながらも困惑していた。

 だが、真実だけはその意味がわかってた。


(真実)

⦅……つまりアタシが負けたからもう一度あそこに来いってことね⦆

⦅……上等じゃんか!⦆

⦅アンタの記事の化けの皮剥がしてやるよ!⦆


 真実は編集長の声も聞かない内に、その出版社を飛び出していた。



―あの家―


(真実)

「アンタやってくれんじゃん!」

「あんな合成バリバリな写真撮るなんてさ!」

「でもね! アンタのやったやり方はインチキだから!」

「だからそれを暴いてそれを次の号に載せてやんよ! さあ姿を見せな!」


 真実はその家に入るやいなや、暗がりのその家に入り大声でそう叫んだ。

 そして自分のカメラを構えて、何も無いその空間にフォーカスを合わせた。


 だが、そこには何も無かった。

 そうして真実がその構えたカメラを下すと、次の瞬間眩い光と共に真実の眼の前に写真の少女と、白い猫が現れた。

 だが、その少女も白い猫もこの間の真実の前には現れていなかったのだった。


(真実)

「アンタはこの間の女性の知り合い?」

「まあいいわ! さあ私に見せてごらんなさい! 本当に出来るんならね!」


 真実はカメラを構えた。

 するとその少女は渋々した顔を一瞬見せた。


 だが次の瞬間、真実の眼の前で本当に指から火を出してみせた。


 真実はその眼の前で起こったことが全く理解出来なかった。

 そしてシャッターも押さずにカメラを力無く下に落とした。


(真実)「嘘……嘘よ……こんなの……そんな訳ない……そんな訳……」


(写真の少女)

「……えっと〜……これの何が凄いの?」

「私、元々はこんなもんじゃないもっと巨大な炎とか手から出していたんだけど……」


 その少女はそう呆気らかんとした顔で答えた。

 真実はその言葉の意味が全くわからなかった。


(真実)

「な……何言ってるの? 嘘付くにも程があるわよ!」

「まさか指から火が出ることがどれだけ凄いことか何も気づいてないの!?」


(写真の少女)

「そんなこと言ったってさ……事実なんだから仕方無いじゃん……」


 真実にはその少女が嘘を付いている様には思えなかった。

 それ程その少女があっさりとそして淡々と、訳のわからないことを言ったからだ。


 そんな何が起こっているかわからない状況に真実は困惑していた。

 その真実の様子を白い猫は、首を傾げながら見ていた。


(白い猫)「……やれやれ……仕方ないですね……」


(真実)

「……え……?」

「……今……ね……猫が……喋らなかった!?」

「ど……ど、ど、ど、どういうこと!?」


 真実は急に喋り出した猫を見て混乱していた。


 次の瞬間、白い猫は光り出した。

 そしてその中から神々しい姿をした女性が現れた。

 その女性こそが、真実が最初にこの家で会った女性だった。


(真実)

「あ……アンタ! 」

「……って……えっ?……今……どっから来たの……!?」

「しかもその姿……私が最初に見た時はそんな姿じゃなかったじゃんか!」


(謎の女性)

「……ええ……あの時は人間っぽく見せる為に羽根とかは隠してましたので」

「そんなことよりも……曲見真実さん……」

「貴方は今見た真実は全てインチキだと……そう言う訳ですね……」


(真実)

「あ……当たり前でしょ!」

「これが真実なら本当に大スクープよ!」

「でもこんなこと実際に起こる訳ないでしょ?」

「大体事実ならどんなカラクリなのよこれ! 説明してよ!」


(写真の少女)

「ガタガタうるせえな!」

「真実? 幻? そんなの決めることがそんなに大事か?」

「いいか! 貴様が今眼の前で見たものが全て真実だ!」

「わかったか!」


 真実は急に口調の変わったその少女にとても驚いた。


(謎の女性)

「……彼女の言い方は少し悪いですが……」

「自らの眼の前に写るものだけが唯一の真実です」

「それが例えどんなに酷くても……例え常識離れしていても」

「そして……例え眼を伏せたくなる事実でもです」


「貴方は過去にとんでもない事実を知ってしまった」

「そしてそれを公表したことで取り返しのつかない過ちを犯したと聞きました」

「そしてそれ以降は真実を探すのではなく事実の捏造をする様になったと」

「でも実は貴方はその時真実を見ている様で見ていなかった」

「いや見ようとしなかった」

「なぜなら自分が出したものが誤りだと言うことを認めたくなかったから」

「でもそのせいで貴方は大きな過ちを犯してしまった」

「その件以降貴方は真実の公表から逃げて人が求めるものそのものを作る様になってしまった」

「恐らくその時の罪滅しも含めてかもしれませんが……いずれにしても……」


(写真の少女)「……ああ……いずれにしても貴様はその時の自分自身と闘う必要がある!」


(真実)

「やめて!」

「あの選択は何も間違ってない! 何も間違ってないから!」

「そもそもアンタ達にとやかく言われる筋合いもない!」


(謎の女性)「……間違っていないならもう一度貴方の眼で真実を見て来て下さい……」


(真実)「見て来るってどういうこと? 過去には誰も戻れないんだよ!」


(写真の少女)「ガタガタ言うな! 行くぞフローラ!」 

(謎の女性)「ええ」


 そう言いながら二人は手を取り合った。


(二人)「マインドオペレーション!」


 その言葉と共に眩い光を二人は放ち出した。



その光に目が眩んだ真実が次に眼を開けると、その真実の眼の前には中学生の真実と、とある少女が手を繋いで仲良さそうに話しをしている姿が見えた。


(真実)

「……あれは……私……?」

「しかも……その横にいるのは……ち……千佳!?」

「……嘘……なんで……?」


 真実はその女の子の姿を見ると、無意識に一滴の雫を眼から溢した。


(真実)

「まさか……また生きて会えるなんて……」

「あっ! マズイ! もしここが過去なら早く私を止めないと!」


 真実は自分が過去に飛ばされたと思ったので、中学生の真実にこれから起こることを告げようとした。


(フローラ)

「……無駄ですよ……これから起こる真実を告げることは出来ません」

「ここは過去ではなくて貴方の閉ざした記憶の中……精神の空間です……」


(真実)「……精神の……空間……!?」


(舞)「そうさ! 貴様は今自分の心の中にいる! そしてこれから起こることを見るんだ!」


(真実)

「……なんで……?」

「なんでもう一度見ないといけないの……?」


(フローラ)

「貴方は何も間違ってないと言いました」

「だからもう一度本当に間違ってなかったのか」

「千佳さんが亡くなった事に貴方は関係していないのか」

「もう一度自分の目で見て下さい」


(真実)「そ……そんな……」


(フローラ)

「……貴方が本当の気持ちを話した時……その時は中学生の貴方が代わりにその気持ちを相手に伝えてくれます」

「……でもそれ以外は……何も変わりません……過去は神でも変えれないので……」


(真実)

「……なら……何の為にこんな酷いことをするのさ!」

「一番見たくないその景色を私に見せるなんてアンタは鬼か悪魔なのか!」


(舞)「よくぞ言った! 俺様は……」

(フローラ)「違いますよ……向き合って欲しいだけです! 真実に!」



(真実)

⦅真実……そう……これから起こることは紛れもない真実……⦆

⦅この日これから私は大きな間違いを犯す……⦆

⦅この日を忘れたことは一度もない!⦆

⦅この日の私のカキコミがきっかけで、数日後私の親友だった千佳は自殺する……⦆

⦅千佳は気弱で真面目な少女だった……そして私のことを誰よりも理解していた……⦆


⦅この当時私達の学校には、まだ教師に成り立てのイケメンで優しい女子から人気者の先生がいた⦆

⦅そしてそれは私達の担任だった⦆

⦅私はあんまり興味は無かったけど、千佳もその先生のことが好きなことはいつも聞いてた⦆


⦅そんな先生がある日突然クビになった⦆

⦅当時からスクープを狙うことに命を掛けていた私は、この真相を追い掛ける事になった⦆

⦅そしてこの日、私はその真相を学校のSNSに上げる⦆

⦅その理由が生徒からの告発であることを……そしてその告発内容がセクハラによるものであったことを……⦆



(女子生徒達)「真実! これ本当なの!?」


 中学生の真実の元に、真実が上げたそのカキコミを見た女子生徒達が近づいて来た。


(中学生の真実)「本当よ……私も最初は信じれなかったけど……」


(女子生徒達)「マジなんだ……でも相手は一体誰なの?」


(中学生の真実)

「それは私もまだ突き止めれていない」

「でも、恐らくこのクラスの誰かだってことまでは突き止めているわ」


(女子生徒達)「そうなんだ……」


(中学生の真実)

「大丈夫! その内私がきっと暴いてみせるから! 真実はいつも一つ! ってね」


 そしてその日、私はとんでもない事実を知ってしまう。

 そしてそれを学校のSNSに書き込んだことが、全ての悲劇の始まりだった……


(女子生徒達)「真実! これはどういうことなの!? 昨日と言ってること違うじゃん!」


 真実の元にその書き込みを見た女子生徒達が、真実を囲む様に集まっていた。


(中学生の真実)

「ごめんなさい!」

「でもこっちが真実なの」

「私もちょっと下調べが甘かったのは謝る! 本当にごめん!」


(女子生徒達)

「でもこれが真実なら……許せないよねこの子……」

「私達のアイドルだった先生をこんなことで貶めて……」


 女子生徒達は、真実のそのカキコミを見て怒っていた。

 真実のその日のカキコミにはこう書いていた。


『勇気ある告発はある少女の嫉妬により捏造された真実!』

『先生を告発した内容は全て嘘だった』

『その告発は振られたことによるただの腹いせによる捏造だった!』


(女子生徒達)「ねえ真実! この少女が誰か知ってんでしょ?」


(中学生の真実)「うーん……それは私も知らない……けど……」



(真実)「ダメ! 絶対次の言葉だけは言っちゃダメェ!」


 真実の声も虚しく、中学生の真実は次の言葉を言ってしまうのだった……



(中学生の真実)「クビになった日の3日前に告白した子ってことだけはわかってるわ」


 その言葉を聞いて女子生徒達がザワザワしだした。

 そしてふと中学生の真実が千佳の方に目を向けると、千佳が震えているのが目に見えてわかった。


 まだ、中学生の真実は自分が言った言葉の意味がわかっていなかった。


 そんな真実を押し除けて今度は一人の女子生徒達が千佳の元に詰め寄った。


(女子生徒達)「千佳ちゃん……確か三日前に誰かに告白して振られたって話ししてたよね?」


(千佳)「違う! 私じゃない! 私そんなことしてない!」


 いつもは静かな千佳が珍しく声を荒げていた。


(中学生の真実)「えっ!? どういうこと?」


(女子生徒達)「真実、アンタ千佳から聞いてないの? 親友なのに?」


(真実)

⦅そう……千佳はその事実を私にだけ話していなかった⦆

⦅今思えば親友だからこそ言いたくなかったのかもしれない⦆

⦅でもそのことがより不信感を周りに抱かることになってしまった……⦆


(女子生徒達)「真実も知らないってことは……千佳ちゃんやっぱりアンタじゃないの?」


(千佳)「知らない! 私じゃない! 信じて!」


(真実)

⦅そう……全ては私の不用意な発言が原因だった……⦆

⦅そしてその発言が何者かによって拡散されてしまったことで、更に多くの人がそのことを知ってしまった⦆

⦅今思えばその拡散した人物を怪しんでも良かったのかもしれない……⦆

⦅でもあの日の私は千佳のことを信じれなかった……⦆

⦅だから千佳の言葉を信じるのではなく、そんな千佳でも守って行こうって思った……⦆

⦅友達なら……誰よりも千佳の言葉を信じないといけないのに……私はそれを放棄していたんだ……⦆


⦅そして始まった女子生徒全員からの無視と学校のSNSに寄せられる千佳への誹謗中傷⦆

⦅そして次第に千佳は心が壊されていった⦆

⦅もちろん私も色々庇ったりもしてた……けど……⦆


『何でそんな嘘つき野郎を庇うの?』

『自分で追求して見つけた真実なんでしょ? 』

『そこまで庇うなら他の真実提示してよ!』

『真実は一つなんでしょ?』

『アンタもグルなの?』


⦅そんな言葉を聞く度に私も反論が出来なくなっていった⦆

⦅そして次第に庇いきれなくなってきたある日、その事件は起こった……⦆


⦅千佳が学校の屋上から飛び降りた⦆

⦅そしてその屋上には、私への感謝の言葉と一言「ごめん・・・ありがとう・・・」と綴られた手紙が置いてあった……⦆


⦅千佳の自殺後、学校に警察が連日押し寄せて来て、生徒全員から事情聴取が行われた⦆

⦅警察は千佳の自殺がイジメだったことと、そのイジメの原因がその捏造の一件によるものだったことまでを、すぐに突き止めた⦆


⦅その数日後だった⦆

⦅ある人物が警察に自首をした⦆

⦅自分が全てを仕組んだ犯人だと⦆

⦅その人物は、私に情報を提供してくれていた少女だった⦆


⦅でもその情報こそが仕組まれた罠だった⦆

⦅その少女は、自分が先生を嵌めた張本人だとバレたくなくて、今回のことを思い付いた⦆

⦅そしてその少女は、最初に千佳が犯人だと言い始めたあの時の女子生徒だった⦆

⦅更に私の発言を拡散したのも彼女だった⦆


⦅だけど千佳が自殺したことで自分のところまで捜査が及ぶことを恐れて、今回のことを親に話した⦆

⦅そして、その少女は親と一緒に警察に自首する事に決めた……⦆


⦅私はそのことをその少女の友達から聞き、急ぎ警察署まで走って向かった……⦆


(中学生の真実)

「何で? ねえ何でなの?」

「もっと前に言ってくれてたら千佳だって死ななかったのに!」


(自首した少女)

「怖かった……あんなイジメ私には耐えれないって思った」

「でも……もう罪の意識に耐えられない!」

「……今まで庇ってくれてありがとうね」

「貴方の言葉が無かったら私がターゲットになっていたかもしれなかったから」


 中学生の真実は、その言葉を聞いて膝から崩れ落ちた。


(中学生の真実)

「……違う! 私が庇いたかったのは貴方じゃない! 私は……千佳を……」


 中学生の真実はそのままずっと号泣し続けた。


(真実)

⦅私はどこで間違えた?⦆

⦅こんな事件暴かなけりゃ良かった?⦆

⦅いや違う! 最初のままにしとけば良かったんだ!⦆

⦅捏造のままだったなら千佳も死ななかった⦆

⦅イタズラに真実を暴いたから千佳は死んだんだ!⦆

⦅だから私はもうあの日以降、真実を暴くことをやめたんだ⦆

⦅私が作り出すスクープは全て捏造……でもそれこそ皆が求める真実……⦆



 次の瞬間、真実は光に包まれた。

 そして真実が次に眼を開けると、そこは元の場所だった……



(フローラ)「それで真実は見えましたか?」


(真実)

「ええわかったわ!」

「私はあの日以降真実を憎んでる!」

「だから真実を暴かなくなった!」

「これが私! 紛れもない私なの!」


(舞)

「……なんか面倒だな……」

「真実とか真実じゃないとか」

「そんなことがそんなに大事か?」

「一番大事なことはそうじゃないだろ?」


(真実)「どういうことよ!」


(舞)

「貴様はただ自分の言葉の責任から逃げただけだと言ってるんだ!」

「最初から自分の言葉に責任を持って動いていたらこんな事にはならなかったんじゃねぇのか?」

「それを貴様は放棄した」

「自分の言葉が間違っていると認めたくなかったから」

「それを認めるということは自分がその言葉の責任を取るということになるからな」


「自分の言葉に責任も持てねえなら始めから何も話すんじゃねえよ!」

「言った言葉は取り消せやしねえ!」

「だからその後で貴様に出来ることはその言葉に対して責任を持つことだけだ!」


 舞の説教にも似た言葉を、真実はしっかりと噛み締めていた。


(真実)

「……確かにそうね……」

「もし私があの時少しでもその気持ちがあれば千佳を本気で守れたし、千佳の為に真相を暴こうともしたと思う」

「そしたら千佳も守れたはず」

「……それなのに私は……放棄していた……自分でも気付かない内に……」

「それが一番ジャーナリストとして、真実を伝える者として必要だったことを知っていたはずなのに……」


 真実は、大粒の涙を流しながら泣き出した。


(真実)

「……千佳……ごめん……全部……私のせいだ……」

「私がもっと自分の言葉に責任をもって行動出来てたら……」

「……本当に……ごめん……」


(フローラ)

「……悔やんでも仕方ありません……」

「生きている者が亡くなった者に対して出来ることはその者が望んでいた姿を見せることだけです」

「千佳さんは今の貴方の姿こそ待ち望んでいたんだと私は思います」


 真実はそのフローラの言葉を聞いて、深く頷いた。


(フローラ)

「さて貴方は今ようやく自分の真実と向き合いました」

「別に貴方が今までしたことを私は咎めたりはしません」

「それよりも大事なのはこれから貴方がどうしたいかです」


(真実)

「これからどうしたいか……か……」

「わかったよ……私はもう無責任なことは記事にはしない!」

「これからは責任持てる範囲で記事にしていく!」

「そしてそれが真実でも嘘でももう自分の言葉から逃げたりしない!」

「千佳の為にも、私はこの姿で生きていくことにするわ!」


「舞さん! そしてええと……フローラさん?」

「色々ありがとう!」

「そうと決めたら私行かなきゃ!」


 真実はその部屋を飛び出して行った。


(舞)「……やれやれ本当に騒がしい人間のメスだな」


(フローラ)「メスって言い方はやめて下さい……あの者は人間の女性です……まったく貴方という方は……」


(舞)

「フン!」

「……それよりもだ……これがお前の望んでいた結末で間違い無いんだな?」


(フローラ)

「……あの者は自らの過ちを悔い改めました……」

「もう道を踏み外すことは無いと思います……」

「これからはあの者の動向を我々も見守る事にしましょう……」


(舞)「……しかし貴様からあの提案を聞いた時は俺様にはこの結末は予想出来なかったぞ……」


【話しはここより数日前に遡る……】



ー良子の家―


(フローラ)

「そうですね」

「……ん? 待って下さい」

「ってことはその幻でもし攻撃出来たなら……その幻を現実に出来たなら……」

「こちらにも勝ち目はあるんじゃないですか?」


(舞)「は? フローラ? 何を言ってんだ?」


(フローラ)

「貴方はこの世界の人類が驚愕する異能の持ち主です」

「だから貴方の力を使ってこの世界に奇跡を起こすのですよ」

「そしてそれをこのカメラと呼ばれるもので映像にして世に出せば我々にも勝ち目はあると思いますよ」


(舞)「……こんなちっぽけな力でか?」

(フローラ)「そんなちっぽけな力でです」


(舞)

「……だけどいいのか?」

「そんなことしたらこの世界で目立つんじゃないのか?」

「下手したらそれこそ七鬼衆の奴等にまで俺達の存在バレて面倒な事にならないか?」


(フローラ)

「その点は大丈夫です」

「私は転生界の守り人」

「つまり全ての魂をコントロール出来るのです」

「その力を使えばこの世界の人間の記憶の操作をすることなど造作もありません」


(舞)「……それは……大丈夫なのか?」


(フローラ)

「ま〜ちょっとルール違反かもしれませんが」

「今回は目を瞑る事にします」

「ま〜だから今回は私を信じて貴方は自分の力を大いに使って下さい」


(舞)「……お……おう……」


 その後二人は場所を良子の庭に移した。

 そして、フローラはどこからともなくカメラを出し、舞の異能の力を撮り始めた。


(フローラ)「……もう少し笑顔になれませんか?」


(舞)

「うるさい! これが精一杯だ!」

「だいたい俺様の本気はこんなもんじゃないんだからな!」

「俺様はまだ自分の力に納得してないんだからな!」


(フローラ)「はいはい……じゃー撮りますよ〜……」


 こうして舞は、嫌々ながら言われるがままフローラに協力していただけだった。

 そして、さっきも渋々真実の前でその力を見せただけだったのだ。

 でも、それがこんな結果となったことに舞はただただ困惑していた……



―とあるゴシップ誌の出版社―


(編集長)

「真実、お前本気なのか?」

「だってこれはお前が自信持って出したスクープじゃないのか?」


(真実)

「……いいんです」

「今の私にはこの記事を出した事による責任は取れません」

「だからワガママで申し訳ありませんがこの記事の差し止めをお願いします」


(編集長)「俺にはこの件は決めれない! 直接社長と話してくれ!」


 真実は一人社長室に向かった。


(社長)

「真実よ、どういうつもりだ?」

「この記事が捏造ではなく真実であることはお前が一番よくわかっているはずだろ?」


(真実)

「いいんです」

「大事なのはそこじゃありませんから」

「今の私にはこの記事を出す責任は取れません」

「だから自分に責任が取れる様になった時に、この記事は改めて提出させてもらうことにします」


(社長)「……そうか……わかった……」


(真実)

「それと……私はしばらく自分を見つめ直す事にします」

「だからここにはもう来ません!」


(社長)「……どういうことだ?」


(真実)

「私はもう自分の責任が持てる真実しか記事にしたくありません!」

「だからこの会社、そして貴方から旅立とうと思います!」

「社長! 今までありがとうございました」


 真実は社長に向かって深く頭を下げた。

 そして、まだ状況を飲み込めていない社長を置いて、社長室を飛び出した。



―舞の家―

 真実が舞を呼び出していた。

 その舞に白い猫も付いて来ていた。


(舞)「……ちょ……ちょっと待って!」

「……今、なんて言ったの!?」


(真実)

「だから〜私を貴方達の専属カメラマンにして欲しいって言ってるの!」

「貴方達が起こす奇跡を一つ一つこのカメラで収めたいのよ! ね! いいでしょ?」


(舞)「そ……そんなこと言われてもね〜……」


 舞は横目で白い猫を見た。

 白い猫は首を横に振っていた。


(真実)「専属カメラマンにしてくれないなら貴方達の事全部麗子さんにバラすから!」


(舞)「え〜〜!? それはちょっと困るなぁ……」


 舞は困惑しながら白い猫の方を見た。

 白い猫もちょっと困惑した表情を浮かべている。


(真実)

「その代わり専属カメラマンにしてくれたら私七鬼衆のスパイになって貴方達に全ての情報回すから!」

「だからいいでしょ? ね! ね!」


(舞)「う〜ん……」


 舞はとても悩んだ。

 白い猫はずっと舞の方を見ながら、首を横に振り続けていた。


(舞)「……わかった! ……いいよ!」

(真実)「ホントに! やったね! じゃー改めてよろしくね」


 真実はとても喜んで舞の手を握り締めた。


(フローラ(精神))「ちょ……ちょっと何を勝手な約束してるんですか!」

(舞(精神))「……だってこうでも言わないとコイツ納得しないだろ?」

(フローラ(精神))「それはまー……確かにそうですが……」


(舞(精神))

「それにお前の記憶操作を使えばいくらでも記憶の捏造なんか出来るんだろ?」

「頼りにしてるぜフローラ様」


(フローラ(精神))「まったく貴方という方は……」



 その後フローラは、人々の記憶の中から奇跡の少女に関する記憶を全て消し去った。

 そして、その少女の写真自体も誰も気付かない内に消し去った。

 こうして人々は、奇跡の少女の存在など無かったかの様にいつもの日常を送っていった。


 だが、何故か真実だけはその記憶が消えることは無かったのだった……



(ナレーション)

 二人は七鬼衆の一人である曲見真実の改心に成功した。

 しかし本当の闘いはこれから始まるのだった……


 〜第六章〜 異世界最強✖️人間界最強 意地とプライドの強者達の戦い

 へ続く

最後まで読んで頂きありがとうございます。


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